木管五重奏の楽譜を無料で手に入れる方法と保育現場での活用術
「無料」と書いてあっても、使い方次第で著作権侵害になり損害賠償を請求されることがあります。
木管五重奏とは何か・保育士が知っておきたい基礎知識
木管五重奏は、フルート・オーボエ・クラリネット・ファゴット・ホルンの5つの楽器で構成されるアンサンブル編成です。それぞれの楽器が全く異なる発音原理を持つため、音色のバリエーションが非常に豊かな点が最大の特徴です。鳥のさえずりのような柔らかい音から、どっしりとした低音まで、5つの楽器で多彩な音世界を作り出せます。
ここで一つ、意外に知られていない事実があります。ホルンは金管楽器ですが、木管五重奏に含まれています。これは古典派音楽の時代、ホルンが木管楽器と一緒に演奏する機会が多く、いつの間にか「木管五重奏」という呼び名にまとめられた歴史的な経緯があるためです。つまり「木管五重奏」という名前なのに、厳密には木管楽器だけではないということです。意外ですね。
保育現場においても、木管五重奏のコンサートは非常に人気があります。NPO法人パフォーマンスバンクが2016年に千葉県船橋市の保育園で行った木管五重奏コンサートでは、0歳児から年長クラスまで100人近くの子どもたちが集まりました。アンパンマンのテーマで始まり、童謡メドレー、アニメメドレーと続く構成で、保護者から「翌日も『あしたもコンサートあるかな?』と話していた」という感想が寄せられたほど子どもたちの心に残ったといいます。
| 楽器 | 分類 | 音域のイメージ |
|---|---|---|
| 🎶 フルート | 木管楽器 | 高音・明るく軽やか |
| 🎵 オーボエ | 木管楽器(ダブルリード) | 中高音・哀愁ある甘い音 |
| 🎷 クラリネット | 木管楽器(シングルリード) | 幅広い音域・柔らかい |
| 🎵 ファゴット | 木管楽器(ダブルリード) | 低音・温かみのある音 |
| 📯 ホルン | 金管楽器(例外的に含まれる) | 中低音・丸みのある響き |
保育士が木管五重奏の楽譜を探す場合、まずはこの5パート構成を念頭に置くことが基本です。ただし後述する「フレックス楽譜」を使えば、手持ちの楽器メンバーに合わせて柔軟に対応できるため、5種類の楽器がそろわなくても演奏できます。これは使えそうです。
参考:木管五重奏とホルンが含まれる理由について(ヤマハ楽器解体全書)
木管五重奏の楽譜を無料ダウンロードできる主なサイト一覧
無料で楽譜を入手できるサイトはいくつかありますが、品質・安全性・著作権の扱いがそれぞれ異なります。保育士として使う前に、各サイトの特徴を押さえておきましょう。
まず最も充実しているのが、「りんとちゃーの音あそび」(rinchar.site)です。パブリックドメイン(著作権フリー・著作権切れ)の童謡曲を中心に、フレックス木管五重奏アレンジ楽譜をPDFで無料配布しています。「春の小川」「七つの子」「こいのぼり」「たなばたさま」「うれしいひなまつり」「夕焼け小焼け」など、保育現場でよく使う季節の童謡が約30曲そろっています。スコア譜+各パート譜のセットで提供されており、利用規約も「商用・非商用問わず自由に使用可」と明記されています。クレジット表記や使用報告も不要です。
- 🎵 りんとちゃー(rinchar.site):童謡・唱歌・クリスマス曲など約30曲。フレックス編成対応。MP3音源付き。完全無料・商用利用可。
- 🎼 IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト):クラシックのパブリックドメイン楽譜が世界最大規模で収録。作曲家の死後70年経過した作品が対象。英語サイトだが日本からも利用可能。
- 🎶 MuseScore.com:世界最大の楽譜共有コミュニティ。無料アカウントで楽譜の閲覧・一部ダウンロードが可能。ただし著作権保護作品が混在しているため要確認(後述)。
- 🎵 Musopen:クラシック音楽のパブリックドメイン音源・楽譜を提供する非営利サービス。シェーンベルクの木管五重奏曲など、原典版楽譜も掲載。
保育の現場で一番すぐに役立つのは「りんとちゃー」のサイトです。日本語の童謡に特化しており、参考音源(MP3)を聴きながら楽譜を確認できるため、楽曲の完成イメージをつかみやすいという点で実用性が高いです。また、フレックス編成(後述)に対応しているので、メンバー構成が変わっても対応しやすいです。
参考:著作権フリー童謡の木管五重奏楽譜一覧(りんとちゃーの音あそび)

木管五重奏の楽譜を無料で使う際の著作権の落とし穴
「無料配布」と書いてある楽譜なら何でも自由に使えると思い込んでいると、思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。これが原則です。
日本では2018年12月30日のTPP11協定発効に伴い、著作権の保護期間が「著作者の死後50年」から「著作者の死後70年」に延長されました。そのため、これまでパブリックドメインだと認識されていた一部の楽曲が、改めて著作権保護の対象に戻るケースが出てきました。
特に注意が必要なのがMuseScore.comです。このサイトには世界中のユーザーが楽譜をアップロードしていますが、中には著作権保護期間内の作品が無断でアップロードされているケースもあります。「MuseScoreに掲載されているから無料で使えるはず」と判断するのはNGです。楽曲ごとに著作権の状態を確認する必要があります。
- ⚠️ パブリックドメインの確認が必須:作曲家の死後70年が経過しているか確認する。ラヴェル(1875〜1937年)は2008年に著作権が切れているが、プーランク(1899〜1963年)は2034年まで保護期間が続く。
- ⚠️ 編曲版には別途著作権が発生する:原曲がパブリックドメインでも、編曲したアレンジ版には編曲者の著作権が生じる。無断での再配布・再アップロードは違法になる可能性がある。
- ⚠️ 演奏権と複製権は別物:入場無料のコンサートでも、楽譜をコピーして配布することは著作権者の許諾なしには行えない(複製権の侵害)。
- ✅ 安全な選択肢:「りんとちゃー」や「IMSLP」のように、サイト側が著作権フリーであることを明示している楽譜を優先的に使う。
「無料」と「著作権フリー」は別概念です。無料でダウンロードできても、その楽譜を演奏会で使ったり、コピーして配布したりするには別の許諾が必要になる場合があります。保育園で行う内部の練習用途なら比較的問題は少ないですが、保護者向けの発表会や地域のイベントで演奏する場合は、楽譜の出所を必ず確認しておくことが必要です。
参考:クラシック音楽の著作権と保護期間の確認方法(ipmag)

フレックス楽譜の仕組みと保育士が使うメリット
木管五重奏の楽譜を探していると「フレックス編成」または「フレキシブル楽譜」という言葉を目にすることがあります。これが何なのかを理解しておくと、楽譜探しの選択肢が一気に広がります。
フレックス楽譜とは、5つのパート(①〜⑤)のそれぞれに複数の楽器が対応できるように作られた楽譜です。例えば「りんとちゃー」のフレックス木管五重奏楽譜「アルプス一万尺」では、パート①にフルートまたはクラリネット1が、パート②にオーボエまたはクラリネット2が対応しています。メンバーに合わせて自由に選択できる仕組みです。
| パート | 使用できる楽器例 |
|---|---|
| ① 主旋律 | フルート/クラリネット1 |
| ② 副旋律 | オーボエ/クラリネット2 |
| ③ 内声 | クラリネット3/アルトサックス |
| ④ 中低音 | テナーサックス/ホルン |
| ⑤ 低音 | ファゴット/バスクラリネット/バリトンサックス |
つまりフレックス楽譜なら問題ありません。「うちのグループにはオーボエ奏者がいない」という状況でも、クラリネットで代替して5重奏として成立させることができます。保育士同士や地域の演奏家と組んでコンサートを計画する場合、メンバーの楽器構成が固定していないことがほとんどです。フレックス楽譜はそういった現場ならではの柔軟な対応を可能にしてくれます。
BPM(テンポ)や演奏時間もあらかじめ楽譜に明記されている場合が多いため、保育のスケジュールに合わせて時間を調整しやすいのも実用的なポイントです。たとえば「かたつむり」は演奏時間が約23秒、「アルプス一万尺」は約28秒と短いので、他の出し物と組み合わせて使いやすいです。
参考:フレックス木管五重奏の楽譜構成例(りんとちゃーの音あそび)

保育士が無料楽譜で選ぶべき木管五重奏の曲・独自視点での選曲術
無料楽譜サイトで木管五重奏の曲を選ぶとき、「弾きやすい曲」や「有名な曲」を基準に選びがちです。しかし保育の現場では、別の基準で選ぶとより効果的です。
保育士が押さえておきたい選曲のポイントは「行事との連動」です。子どもたちは、保育園で毎日歌っている曲・知っている曲を生演奏で聴いたとき、最も強く反応します。実際に保育園コンサートで「さんぽ」が演奏されると、楽器の音がかき消されるほどの大合唱が起きたという事例があるように、馴染みのある曲への反応は絶大です。
- 🌸 春(3〜5月):「春の小川」「ちょうちょう」「こいのぼり」「思い出のアルバム(卒園式)」「仰げば尊し(卒園式)」
- ☀️ 夏(6〜8月):「かもめの水兵さん」「たなばたさま」「かたつむり」「あめふり」「アルプス一万尺(手遊び歌)」
- 🍂 秋(9〜11月):「七つの子」「虫の声」「証城寺の狸囃子」「紅葉(もみじ)」
- ❄️ 冬(12〜2月):「雪(ゆき)」「ジングル・ベル」「We Wish You A Merry Christmas」「一月一日」「星の界」
行事に合わせた選曲が基本です。季節の曲は子どもが日常の保育の中で繰り返し歌っているため、生演奏を聴いたときに親しみを感じやすく、集中して聴く時間が長くなります。脳科学的にも、4〜5歳の時期は聴覚の発達が最も活発であり、この時期に音楽に触れる経験が言語能力や集中力の発達に良い影響を与えるとされています。
また、もう一つの独自視点として「演奏時間の短さ」で選ぶという方法があります。子どもたちが一つの音楽に集中できる時間は年齢によって大きく異なります。0〜1歳児は2〜3分が限界であることを踏まえると、演奏時間が30秒〜1分程度の短い楽曲を複数組み合わせる構成が保育現場では実用的です。「かたつむり(約23秒)」「雪(約27秒)」「アルプス一万尺(約28秒)」などの短い楽曲は、まさに保育コンサート向けといえます。
楽譜を実際に使う前に、参考音源(MP3)を聴いておくことも重要です。「りんとちゃーの音あそび」では楽譜と一緒にMP3音源を無料配布しているため、保育士が事前に完成形のイメージを確認してから練習に取り組めます。いいことですね。
参考:NPO法人パフォーマンスバンクによる保育園木管五重奏コンサートの事例
https://p-bank.org/entry/2016/09/05/保育園コンサート(木管五重奏)

ミクスト・ノート〜木管五重奏曲集〜

