懐かしい童謡・唱歌集を保育士が子どもに伝える活用術

懐かしい童謡・唱歌集を保育士が子どもに活かす全知識

「古い童謡の歌詞は著作権が切れているので、SNSに自由に投稿できます」は誤りで、著者死後70年以内の曲を無断投稿すると損害賠償を請求されます。

この記事でわかること
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童謡・唱歌の種類と歴史

「童謡」と「唱歌」の違いや、実は海外発祥の定番曲まで、保育現場で使える背景知識をまとめて解説します。

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季節別おすすめ唱歌集

春夏秋冬それぞれに合った定番曲を紹介。子どもが季節感を体感しながら歌える選曲のポイントも解説します。

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著作権の注意点と安全な活用法

「古い曲だから大丈夫」は危険な思い込み。保育士が現場でやりがちな著作権違反と、トラブルゼロで使える方法を解説します。

懐かしい童謡・唱歌集の「童謡」と「唱歌」の違いを知っておこう

 

保育の現場では「童謡と唱歌の違いは?」と聞かれても、明確に答えられない保育士は意外に多いものです。実はこの二つ、生まれた背景も目的も、かなり異なります。

唱歌(しょうか)は、明治時代に文部省が学校教育のために制定した歌のことです。1881年(明治14年)に最初の音楽教科書「小学唱歌集」が刊行されたのが始まりで、子どもに日本語と音楽を同時に教えることを目的とした「文部省製の教材」でした。歌詞には文語体(書き言葉)が使われており、「春の小川」「朧月夜」「ふるさと」などがその代表例です。

童謡(どうよう)は、大正時代に北原白秋西條八十野口雨情などの詩人たちが子どものために自由な発想で創作した歌です。1918年に雑誌『赤い鳥』が創刊されたことで童謡運動が本格化し、「シャボン玉」「赤い靴」「七つの子」などの名曲が次々と生まれました。唱歌が「教育のための歌」であるのに対し、童謡は「子どもへの純粋な贈り物」として書かれた点が大きな違いです。

つまり唱歌は学校教育の産物、童謡は芸術家の創作作品ということですね。

今日では両方をまとめて「童謡・唱歌」と呼ぶのが一般的です。日本童謡学会によれば、教育用教材の「唱歌」と日常生活を綴った「童謡」は、「次世代の子どものために、対価を求めることなく純粋に創作された」という共通点があったとされています。

保育士がこの違いを押さえておくと、曲の背景を子どもや保護者に伝えるときに説得力が増します。「この歌は100年以上前に詩人が子どもへ贈った歌です」と一言添えるだけで、歌の時間がぐっと豊かになるでしょう。

日本童謡学会「唱歌・童謡の歴史について」:童謡と唱歌が生まれた時代背景と共通の理念を解説。保護者への説明にも活用できる参考資料です。

懐かしい童謡・唱歌集から選ぶ季節別おすすめ曲一覧

保育現場での歌の活動は、季節に合った選曲が子どもの情操教育に直結します。以下に、保育士に広く使われている春夏秋冬の定番曲をまとめました。

🌸 春の唱歌・童謡

曲名 区分 ポイント
春の小川 文部省唱歌 1912年発表。作詞・高野辰之、作曲・岡野貞一
朧月夜(おぼろづきよ) 文部省唱歌 菜の花畑と霞む月の美しい情景。歌詞は文語体
チューリップ 唱歌 1932年発表。作詞・近藤宮子、作曲・井上武士
春が来た 文部省唱歌 「春が来た どこに来た」シンプルで覚えやすい
ちょうちょう 唱歌 実はドイツ民謡原曲(後述)

☀️ 夏の唱歌・童謡

曲名 区分 ポイント
文部省唱歌 「松原遠く消ゆるところ」と情景豊かな歌詞
夏は来ぬ 文部省唱歌 高齢者にも人気の定番曲
たなばたさま 童謡 七夕行事に欠かせない一曲
かえるの合唱 童謡(唱歌) 原曲はドイツ民謡「Froschgesang」

🍂 秋の唱歌・童謡

曲名 区分 ポイント
もみじ 文部省唱歌 紅葉の美しさを歌った名曲
まつぼっくり 童謡 秋の自然遊びと合わせて歌うと◎
どんぐりころころ 童謡 著作権保護期間が満了しパブリックドメイン化済み
七つの子 童謡 作詞・野口雨情。歌詞の意味に諸説あり

❄️ 冬の唱歌・童謡

曲名 区分 ポイント
ふるさと 文部省唱歌 作詞・高野辰之、作曲・岡野貞一の名コンビ
たき火 童謡 かきねのかきねの曲がり角」の情景
お正月 文部省唱歌 新年の行事うたとして定番
冬景色 文部省唱歌 「さ霧けぶる」の文語体が特徴的

季節の歌は子どもに「もうすぐ秋だね」と感じさせるアンテナになります。行事や製作活動と組み合わせると、歌が単なる「音楽時間」を超えた総合的な学びの場になるのが大きなメリットです。

世界の民謡・童謡「春夏秋冬・季節の曲・四季のうた」:季節別の童謡・唱歌一覧が整理されており、選曲の参考になります。

懐かしい童謡・唱歌集に隠れた「実は海外発祥」の定番曲

「かえるの合唱」を子どもたちと一緒に歌いながら、「この曲の原曲はドイツ語の歌だ」と知っている保育士はどれくらいいるでしょう? 実は、日本の保育現場で日常的に歌われている童謡・唱歌の中には、海外発祥の曲が30曲以上存在します。これは意外ですね。

代表的な海外発祥の童謡・唱歌をいくつか見ていきましょう。

  • かえるの合唱:19世紀ドイツの童謡「Froschgesang(フロシュゲザング)」が原曲。岡本敏明が日本語詞をつけて普及しました。「クヮクヮクヮ」という擬音も、ドイツ語の原曲から引き継がれたものです。
  • ちょうちょう:「ちょうちょう とまれよ なのはにとまれ」でお馴染みのこの曲も、元々はドイツの民謡「Hänschen klein(ヘンシェン・クライン)」を原曲とするとされています。
  • こぎつね:「こぎつね こんこん 山の中」はドイツ民謡「Fuchs, du hast die Gans gestohlen(キツネ、お前がガチョウを盗んだ)」が原曲で、原曲ではキツネへの「脅し」の歌でした。日本版とのギャップが面白い一例です。
  • 蛍の光:スコットランドの民謡「Auld Lang Syne(オールド・ラング・サイン)」が原曲。卒園式の定番曲であることを思うと、改めて不思議な縁を感じます。
  • おお牧場はみどり:スロバキア・チェコ民謡が原曲で、アメリカ経由で日本に伝わった曲です。

海外発祥の曲が多い理由は歴史にあります。明治維新後、日本政府は西洋の音楽教育を取り入れようと、ドイツ・アメリカ・フランス・スコットランドなどの民謡・童謡に日本語の歌詞をつけて「唱歌」として学校で教えたのです。当時の子どもたちは知らず知らずのうちに西洋音楽を口ずさんでいたわけですね。

保育士としてこの豆知識を持っていると、少し年上の子どもたちに「この歌は遠いドイツから来た歌なんだよ」と伝えることができ、世界への関心を育てるきっかけにもなります。これは使えそうです。

RAG Music「【びっくり!】海外発祥の童謡。なじみ深いあの童謡も実は」:海外発祥の童謡30曲以上を音源付きで紹介。保育士の知識補強にも役立ちます。

懐かしい童謡・唱歌集の歌詞が持つ「本当の意味」と子どもへの伝え方

保育士が「ふるさと」や「朧月夜」を歌うとき、歌詞をそのまま流して終わっていませんか? 文語体の唱歌には、現代の子どもにはなじみのない言葉が多く含まれています。これを「難しいから」と素通りするのか、「面白いから」と一緒に探るのかで、歌の時間の質がまったく変わります。

研究によると、20年以上の保育経験を持つ保育者の多くが「古い童謡・唱歌を歌わなくなった理由」として「子どもになじみのない言葉が使われているから」と回答しているとのこと(保育園の歌サイト調べ)。しかし、難しい言葉こそが子どもの語彙力と感性を育てる鍵でもあります。

歌・フレーズ 難しい言葉 わかりやすい言い換え例
朧月夜「菜の花畠に 入日薄れ」 入日(いりひ)・薄れ 夕日がだんだん沈んでいくよ
春の小川「すみれれんげの花」 れんげ ピンクのお花がさいてるよ
ふるさと「山は青き故郷 故郷(ふるさと) ずっと前に住んでた大切な場所
冬景色「さ霧けぶる江の辺に」 さ霧・江の辺 川のそばに霞がかかっているよ

大切なのは、すべての言葉を説明し切ろうとしないことです。「この歌の中に秘密の言葉があるよ。”入日”って何だと思う?」と問いかける形にすると、子どもが自分で考える力を育てられます。絵本や外遊びで見た風景と結びつけて「あの夕日が”入日”だよ」と伝えると、言葉と体験がつながる瞬間が生まれます。

また、唱歌の歌詞は日本の四季の情景を丁寧に描いたものが多く、自然への感性を育てるという教育的価値が非常に高いとされています。ヤマハ音楽振興会の研究でも、幼児期の音楽経験が語彙獲得や感情的な発達に貢献することが指摘されています。これが基本です。

ヤマハ音楽振興会 ON-KEN SCOPE「幼児〜児童期の音楽経験が与えるもの」:幼少期の音楽経験が語彙力・感性・社会性の発達に与える影響を研究データとともに解説しています。

懐かしい童謡・唱歌集を使うときの著作権トラブル回避術

「どんぐりころころ」も「ふるさと」も、昔から歌われている曲だから著作権は切れているはず——そう思っている保育士は多いはずです。しかし、これが保育現場で起きやすいトラブルの第一歩です。

著作権の保護期間は、著作者の死後70年間です。2018年の法改正で、従来の「死後50年」から「死後70年」に延長されました(文化庁)。つまり、ある作曲家が1970年に亡くなった場合、その曲の著作権は2040年まで有効であり、現在でも保護されています。

具体的に確認しておくべき点を整理しましょう。

✅ 保育室で子どもに歌って聴かせる

→ JASRACのルール上、「非営利・無料・著作隣接権者の録音物を使わない演奏」は手続き不要です。保育士が生で弾いて歌う分には問題ありません。

⚠️ 楽譜を印刷・コピーして配布する

→ 著作権が生きている曲の楽譜をコピーして複数枚配布する行為は、複製権の侵害になります。JASRAC管理楽曲であれば100部まで1,600円の手続きが必要です。

❌ 園のSNS・ホームページに歌詞をそのまま投稿する

→ 歌詞の無断転載は公衆送信権の侵害です。「ふるさと」の歌詞を園だよりやSNSに載せる場合、著作権の保護期間がまだ生きている可能性があります。歌詞投稿には必ずJASRACへの確認が必要です。著作権侵害は損害賠償の対象になるため注意が必要です。

❌ 子どもが歌っている動画をそのままYouTubeやInstagramに投稿する

→ バックで流れた音楽が著作権保護中の場合、著作権侵害になります。過去に保育園アカウントが動画削除・アカウント停止処分を受けた事例もあります。損害賠償リスクに加え、施設の信頼にも関わります。

安全に活用するための確認手順は1つだけ覚えておけばOKです。JASRACの公式サイト「J-WID(作品データベース)」で曲名を検索すると、その曲がJASRAC管理かどうか、著作権が生きているかどうかをすぐに確認できます。

JASRAC「学校など教育機関での音楽利用」:保育園・幼稚園など教育機関での音楽利用ルールが整理されています。手続きの要否を判断する際の公式資料です。

また、著作権の保護期間が明確に満了しているパブリックドメインの曲(例:「どんぐりころころ」「赤い靴」など)については、楽譜のコピーや歌詞の印刷も自由に行えます。どの曲がパブリックドメインかを音楽著作権の専門サイトや書籍で確認しておくと、園の運営がスムーズになります。

IP MAG「音楽の著作権の保護期間は何年?計算方法や著作権切れの曲も一覧で紹介」:著作権が切れている主な童謡・唱歌の一覧も掲載。保育士が現場で確認するのに役立つ実用的な記事です。


女声二部合唱/ピアノ伴奏 懐かしい童謡・唱歌集 坪野春枝 編