くもの巣の歌でぞうさんと楽しむ保育の全ガイド
この歌、実は「手遊び」として使うと子どもの数の理解が育ちにくくなることがあります。
くもの巣の歌「ぞうさんとくものす」の歌詞と原曲の意外な由来
「ぞうさんとくものす」は、保育現場で長年にわたって親しまれてきた童謡ですが、その起源を知っている保育士は意外と少ないかもしれません。この歌の原曲は、イギリス発祥の伝承童謡「マザーグース(Mother Goose)」に収録されている「One Elephant Went Out to Play」です。マザーグースとは、主にイギリスやアメリカで口伝えに受け継がれてきた童謡・歌謡の総称で、その数は700〜1000曲ともいわれています。
原曲の英語歌詞は以下のとおりです。
| 英語(原曲) | 日本語(意味) |
|---|---|
| One elephant went out to play | 一頭のぞうさんが遊びに出かけた |
| Upon a spider’s web one day | ある日くもの巣の上で |
| He had such enormous fun | とても楽しかったので |
| That he called for another elephant to come | もう一頭呼んできた |
日本語版の作者も翻訳者も不明です。そのため、歌詞の一部やメロディを変えることが慣習的に自由とされており、保育現場や地域によってさまざまなバリエーションが生まれています。
日本語版では「ひとりのぞうさん」「ふたりのぞうさん」と人を数える助数詞(〜り)が使われているのが特徴的です。これは原曲の英語版(One, Two, Three…と数字のみ)にはないユニークな表現で、日本語ならではの豊かな助数詞文化を子どもたちが自然に体感できるよう工夫されています。
また、この歌のラストには複数のバリエーションがあり、よく使われる代表的な終わり方は次のとおりです。
- 🐘「あんまりおもたくなったので ぱちんとくものす きれました」
- 🐘「ぞうさん あんまりふえたので いとが ぷつりと きれました」
- 🐘「あんまりおおくなったので おうちにかえろと いいました」
どのバリエーションを使うかは保育士によって異なるため、ペアで担当する先生と事前に確認しておくことが重要です。歌い方がバラバラだと子どもたちが混乱してしまうことがあります。
ペアの先生と歌詞を統一しておくのが原則です。
参考:ぞうさんとくものすの遊び方・ねらい・アレンジ例の詳細解説(ほいくis)
くもの巣の歌の集団遊びとしての遊び方・ルール完全解説
「ぞうさんとくものす」を実際に保育で取り入れる際の流れを、ステップごとに確認しておきましょう。これを押さえておくだけで、初めて導入するクラスでもスムーズに進められます。
- 🐘 ぞうさん役を1人決める。ぞうさんのお面があると視覚的にわかりやすい(なくても可)。
- 🐘 ぞうさん役以外の子は部屋の中で自由に座って待つ。
- 🐘 歌に合わせてぞうさん役の子が歩き回る。「もひとりおいでとよびました」の部分でお友だちを名前で1人呼ぶ。
- 🐘 呼ばれた子は先頭の子の肩を両手で持って後ろにつながる(電車ごっこ方式)。
- 🐘 どんどん人数を増やし、全員つながったら最後の歌詞を歌って手を離してごろんと寝転がる。
注意点がいくつかあります。まず、2歳ごろはまだお友だちの肩を触ること自体を嫌がる子もいます。そのときは腰に手を当ててつながる形に変えてあげると、スムーズに参加できます。また、最後に全員が床に寝転がる場面では、お友だちと体がぶつかったり踏んでしまったりすることがあります。つながりが解けた瞬間は特に注意が必要ですね。
人数が多いクラスでは、1列だけで進めると最後の子が名前を呼ばれるまでにかなりの時間がかかります。待っている間に子どもの集中が切れてしまうことも考えられます。そのため、クラスの人数が多い場合は最初のぞうさん役を2〜3人に増やし、列を複数作ることをおすすめします。
この遊びのよいところは勝ち負けがない点です。競争要素がないため、繰り返し気軽に楽しめます。
参考:2〜3歳向け集団遊びとしての「ぞうさんとくものす」の実践紹介
くもの巣の歌が育てる発達効果——数概念・社会性・リズム感
「ぞうさんとくものす」は楽しい遊び歌というだけでなく、複数の発達領域に同時にアプローチできる教材です。ただ「楽しいから使う」にとどまらず、何を育てているのかを意識することで保育の質が大きく変わります。
大阪芸術大学の研究(白倉朋子, 2021)によれば、保育現場で手遊び歌が「導入として使われている」と答えた保育士は実に83%にのぼります。導入が全てではない、ということですね。手遊び歌には言葉の発達・数の理解・旋律の記憶・拍子感・リズム感など、多岐にわたる発達効果があることが指摘されており、それを見据えて活用することが求められています。
「ぞうさんとくものす」が育む発達の要素を整理すると、以下のようになります。
- 🔢 数概念の習得:「ひとり→ふたり→さんにん…」と1ずつ増えていく歌詞が、数が増える感覚を体験的に学ばせてくれる。数え歌として機能するため、算数的思考の芽生えにつながる。
- 🤝 社会性・コミュニケーション力:お友だちの名前を呼ぶ・呼ばれる体験が、他者への意識や関わり方を育む。自分以外の子への関心が芽生え始める2〜3歳の時期に特に有効。
- 🎵 リズム感・旋律の記憶:繰り返しの多い歌詞とメロディが、旋律を覚えやすくし、音楽の基礎となる拍子感を自然と体に染み込ませる。
- 👐 身体協調性:電車ごっこのように列になって歩くことで、前の子と呼吸を合わせる力・力加減の調整が育まれる。
ハンガリーの音楽教育家コダーイ・ゾルターン(1882-1967)は「歌うことは子どもの本能的な言語であり、歌と動きが一体となることが幼児期に大切だ」と述べています。「ぞうさんとくものす」はまさにその考え方に合致した遊び歌といえるでしょう。
つまり、この歌は遊びながら学ぶ教材です。
参考:保育における「手遊び」の効果——コダーイ・メソードとの関連から(大阪芸術大学 紀要)
https://www.osaka-geidai.ac.jp/files/2021geikyou5_2.pdf
くもの巣の歌を手袋シアター・スケッチブックシアターで活用する方法
「ぞうさんとくものす」はストーリー性のある歌詞が特徴で、集団遊びだけでなく「シアター」形式で演じることでも大きな効果を発揮します。シアター形式とは、保育士が教材(手袋・スケッチブックなど)を操作しながら歌や物語を演じる保育スタイルです。
代表的な活用方法は次のとおりです。
- 🧤 手袋シアター:両手の指にカラフルなぞうさんを付けて、1匹ずつ登場させていく。最後にくもの巣が切れる場面でインパクトを出せる。市販品(minneやcreemaなどのハンドメイドサイトで3,000〜5,000円程度で購入可能)もある。
- 📒 スケッチブックシアター:スケッチブックの各ページにぞうさんを描いていき、ページをめくるたびに仲間が増えていく演出ができる。画材さえあれば0円で手作り可能。
手袋シアターの場合、指人形のぞうさんが1匹ずつ登場するたびに子どもたちの「あ、また増えた!」という反応が生まれます。これが数の増減を視覚で感じさせる絶好の機会になります。これは使えそうです。
スケッチブックシアターは、絵が苦手な保育士でも取り組みやすいのがメリットです。輪郭だけシンプルに描いたぞうさんでも、色を変えれば子どもたちにはカラフルで楽しく見えます。制作時間の目安は1時間程度です。絵の出来映えよりも、ぞうさんが増えていくテンポと保育士のテンション(表情・声のトーン)が重要です。
シアター形式は特に1歳〜2歳の乳児クラスで有効です。集団遊びとして全員が参加するにはまだ難しい月齢でも、目で見て楽しむシアターなら興味を持って見続けられます。集団遊びとシアター、両方の引き出しを持っておくと対応できる場面が広がります。
参考:手袋シアター「ぞうさんとくものす」の販売・解説(minne)
くもの巣の歌を英語でも歌う——保育に生かせるバイリンガル活用法
「ぞうさんとくものす」はそのルーツがイギリスのマザーグースにあるため、日本語と英語の両方で歌えるという珍しい特徴があります。同じ曲を2つの言語で楽しめる歌は多くなく、これは保育への活用という観点では大きなアドバンテージです。
英語バージョンは以下のように歌います。
| 英語歌詞 | ポイント |
|---|---|
| One elephant went out to play | oneで指を1本立てる |
| Upon a spider’s web one day | 両手を広げてくもの巣を表す |
| He had such enormous fun | 楽しそうなジェスチャーをする |
| That he called for another elephant to come | 「おいでおいで」のジェスチャーをする |
英語版を活用するメリットは2つあります。1つ目は、子どもが英語に自然な形で触れるきっかけになること。知っているメロディや動きとセットで英語が入ってくるため、英語への抵抗感が生まれにくいのです。2つ目は、保育士自身の英語への自信づけにつながること。完璧な発音でなくても、子どもにとっては「先生が楽しそうに英語で歌っている」こと自体がポジティブな体験になります。
岐阜大学の研究(「国際理解の意識の芽生えを培う手遊び歌の有用性」)では、手遊び歌が単に幼児を惹きつけるだけでなく、保育者の教材研究によって教育的効果を一層高められることが示されています。日本語で十分楽しんでから英語バージョンを導入するという2段階の流れが、実践上最も取り入れやすい方法です。
まず日本語で慣れさせてから英語、が基本です。
参考:国際理解の意識の芽生えを培う手遊び歌の有用性(岐阜大学 教育学部)
https://www.ed.gifu-u.ac.jp/file/badf719c7d76a6756a2666e6db746a70.pdf

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