山茶花の歌「たきび」童謡の歌詞・意味・保育への活かし方
この歌、戦時中は軍から「焚き火は敵機の攻撃目標になる」と2日間で放送禁止にされた過去があります。
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山茶花の歌「たきび」歌詞の全文と各番の意味
童謡「たきび」は、1941年(昭和16年)に発表された日本を代表する冬の歌です。作詞は巽聖歌(たつみせいか)、作曲は渡辺茂で、2007年には文化庁選定「日本の歌百選」にも選ばれました。
まず、歌詞の全文を確認しましょう。
| 番 | 歌詞 |
|---|---|
| 1番 | かきねの かきねの まがりかど たきびだ たきびだ おちばたき 「あたろうか」「あたろうよ」 きたかぜ ぴいぷう ふいている |
| 2番 | さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき 「あたろうか」「あたろうよ」 しもやけ おててが もうかゆい |
| 3番 | こがらし こがらし さむいみち たきびだ たきびだ おちばたき 「あたろうか」「あたろうよ」 そうだん しながら あるいてく |
つまり、歌詞全体を通して「焚き火で暖まろうか?」と子どもたちが相談しながら歩き続けている場面が描かれています。
1番「かきね」と「まがりかど」の意味
「かきね」(垣根)とは、家や庭の敷地の境界に植物を並べて壁のように仕立てた生垣のことです。現代ではブロック塀が主流ですが、昭和初期には山茶花や茶の木を使った生垣が当たり前のように街中に存在していました。「まがりかど」は垣根の角(かど)が曲がった場所を指し、子どもたちが毎日通る道の風景として歌詞に登場します。「おちばたき」は落ち葉を集めて焚き火にしていることを意味します。これが基本です。
2番「さざんか(山茶花)」の意味
2番に登場する「さざんか」は、ツバキ科の常緑低木・サザンカ(山茶花)のことです。秋の終わりから初冬にかけて白・ピンク・赤の花を咲かせ、生垣として広く親しまれてきました。2番の冒頭で「さざんか さざんか さいたみち」と繰り返されているのは、山茶花の咲く垣根沿いの道を子どもたちが歩いている情景を表現したものです。
「しもやけ おててが もうかゆい」というフレーズは、冬の冷たい外気で手足の血流が悪くなり、指の関節あたりが赤く腫れてかゆくなる「しもやけ」の症状を表しています。焚き火であたためようとするのは、しもやけが和らぐからという理由もあります。意外ですね。
3番「こがらし」と「そうだんしながらあるいてく」の意味
「こがらし」(木枯らし)は、気象庁の定義によると10月半ばから11月末にかけて西高東低の冬型気圧配置で吹く最大風速毎秒8メートル以上の北よりの風を指します。「ぴいぷう」と「こがらし」の2つの表現で、1番・3番それぞれの寒さを異なる角度から描いているわけです。
また、3番のラストは「そうだんしながらあるいてく」と終わっています。これは1番から3番まで「あたろうか」「あたろうよ」と相談し続けているにもかかわらず、結局焚き火に近づいたのかどうかわからないまま歌が終わるという、独特の余白が魅力です。子どもたちが「次どうなったんだろう?」と想像を膨らませることができる歌詞の構造になっています。これは使えそうです。
たきび 歌詞の意味・解説・発祥の地(worldfolksong.com)
※歌詞の詳しい言葉の解説と、東京・中野区にある発祥の地の情報が丁寧にまとめられています。
山茶花の歌「たきび」の誕生エピソードと作曲10分の秘密
「たきび」は、作詞家・巽聖歌が東京都中野区上高田の自宅周辺を散歩中に着想した歌です。当時その界隈には、樹齢300年を越す6本の大ケヤキを持つ「ケヤキ屋敷」と呼ばれる屋敷がありました。屋敷の主は落ち葉を畑の肥料にしたり焚き火にしたりしていて、巽はその風景を何度も目にしていました。
詞が完成したのは1941年(昭和16年)、巽36歳のときのことです。
次に注目すべきが作曲エピソードです。巽の詞を受け取った作曲家・渡辺茂(当時29歳)は、詞を口ずさんでいるうちに自然とメロディが浮かび上がり、「なんと10分ほどで五線譜に音符を書き込んで完成させた」と記録されています。現代の感覚でいえば、ソナタやオーケストラ曲を数週間かけて書くのが常識ですから、たった10分というのは驚異的な短時間です。
渡辺は後年こう語っています。「ずっと捜し求めていた詞はこれだ、と感じた。特に『かきねの垣根の』や『たきびだ焚火だ』と繰り返される言葉が気に入った」と。繰り返しの表現は子どもが覚えやすく、感情の高まりを自然に表現できる構造になっていることが「たきび」の普及につながった大きな要因です。
「ぴいぷう」という擬音は唯一無二の表現
北風を「ぴいぷう」と表した言葉は、この曲以外には存在しない独自の擬音です。「ピューピュー」や「ヒューヒュー」が一般的な中、「ぱ行」系の「ぴいぷう」を使うことで、歌詞全体が優しく丸い響きを持ち、幼い子どもでも口から自然に出てくる発音になっています。北国・岩手県出身の巽ならではの感覚が生み出した言葉だという指摘もあります。
実は、「ぴいぷう」の作曲には渡辺茂自身が悩んだというエピソードがあります。本来「ぴいぷう」は最初の「ぴ」にアクセントがつきますが、2番の「おててが」、3番の「そうだんしながら」と同じメロディに乗せると不自然なアクセントになってしまうため、あえて「ぴいぷう」と後ろにアクセントを移す工夫を施したのです。これほど細部まで配慮された工夫が施された童謡であることは、あまり知られていません。
※楽曲の誕生経緯、戦中・戦後の受難、歌碑の場所など、詳細な情報が掲載されています。
山茶花の歌「たきび」が2日間で放送禁止になった理由
「たきび」には、誕生直後に訪れた意外な受難があります。これを知ることは、保育士として子どもたちにこの歌を伝えるうえで重要な背景知識になります。
1941年12月9日と10日に、NHKラジオ「幼児の時間—うたのおけいこ」で初めて放送されましたが、当初予定されていた3日間の放送が2日間で打ち切られました。その理由は軍当局からの2つのクレームです。
- 「焚き火は敵機の攻撃目標になる」
- 「落ち葉は風呂を炊く貴重な資源だから、もったいない」
放送初日の12月8日は太平洋戦争の開戦日(真珠湾攻撃)と重なっており、「のんきに落ち葉を燃やすとは何事か」という時代の空気の中で、この穏やかな童謡は8年間にわたって放送されなかったのです。
戦争が終わり、「たきび」が再び日本中に広まったのは1949年(昭和24年)のことでした。NHKラジオ「うたのおばさん」で松田トシや安西愛子が歌ったことで全国の幼稚園・保育園・小学校に広がり、1952年(昭和27年)からは小学1年生の音楽教科書にも掲載されるようになりました。これが原則です。
戦後も続いた「クレーム」の歴史
受難はそれだけにとどまりません。教科書掲載後は今度は消防庁から「町の角での焚き火は危険」「防火教育にさしつかえる」とクレームがきました。そのため、教科書に掲載される挿絵に「火消し用の水が入ったバケツ」が描かれるようになり、昭和62年以降の教科書では監視する大人も登場するようになりました。作曲者の渡辺茂は「ナンセンスだ」と抵抗しながらも、検定をパスするために受け入れざるを得なかったと語っています。
時代によってさまざまな「受難」を経験しながらも歌い継がれてきた背景を知ることで、この歌の価値と温かみが一層深く伝わります。厳しいところですね。
※放送禁止の経緯や作曲エピソードなど、文献をもとにした詳細な考察が読めます。
山茶花(サザンカ)と椿(ツバキ)の違いを子どもに伝えるコツ
「さざんか」と「つばき」はよく似ていて、多くの保育士でも瞬時に区別できないことがあります。歌の中に登場する「さざんか」を子どもたちにリアルに伝えるために、違いを把握しておきましょう。
どちらもツバキ科ツバキ属の常緑樹で、花の形も葉の光沢も非常に似ています。つまり、混同するのは無理のないことです。
見分ける3つのポイント
- 🌺 開花時期:山茶花は10〜12月ごろに咲き始めます。椿は12月〜4月ごろが開花時期です。「たきび」が描く晩秋〜初冬の風景に咲いているのは、山茶花が正解ということです。
- 🍃 葉の特徴:山茶花の葉は椿より一回り小さく、葉の付け根(葉柄)に細かい毛が生えています。椿の葉柄には毛がありません。ただし近くで観察しないとわからないため、遠目では難しいです。
- 🌸 花の散り方:最も有名な見分け方がこれです。山茶花は花びらがバラバラになって一枚ずつ散ります。椿は花首ごとポトリと丸ごと落ちます。散った花を見るだけで判断できます。
保育の現場では、子どもたちと一緒に「このお花はどうやって散っているかな?」と観察することが、最も楽しくかつ確実な見分け方の学びになります。
また、山茶花には花に香りがありますが、椿には香りのある品種が少ないという違いもあります。「においをかいでみよう!」というアプローチも子どもの五感を刺激するよい活動につながります。これは使えそうです。
山茶花(サザンカ)と椿(ツバキ)の違い・見分け方(Garden Story)
※開花時期・葉の特徴・花の散り方の3つのポイントを写真つきで詳しく解説しています。
保育士が「たきび」を子どもに歌い伝えるための指導ポイント
「たきび」は歌詞に「かきね」「さざんか」「しもやけ」「こがらし」など、現代の子どもたちがなじみのない言葉を多く含みます。歌う前にこれらの言葉の意味を保育士が丁寧に伝えることが、歌への理解と情景イメージの形成につながります。
言葉の説明は「絵で見せる」が基本
「かきね(垣根)」は、植物で作ったフェンスのことです。写真や絵本の挿絵を見せると子どもたちはすぐに理解できます。「さざんか(山茶花)」も同様に、赤やピンクの花の写真を見せれば、歌の2番を歌うときに「あの花が咲いてる道なんだ」とイメージが広がります。
「しもやけ」は「外で遊んで手がかゆくなったことはある?それがしもやけだよ」と自分の体験につなげて話すと伝わりやすいです。言葉だけで説明しようとすると子どもには届きにくいので注意が必要です。
「あたろうか」「あたろうよ」は2人に分けて歌うと盛り上がる
この歌の最大の歌唱ポイントは「あたろうか」「あたろうよ」の掛け合いです。一人が「あたろうか?」と問いかけ、もう一人が「あたろうよ!」と答えるという会話のやりとりになっています。クラスを2グループに分けてパートを担当させると、子ども同士のコミュニケーションが自然に生まれ、歌が一気に生き生きとします。
「たきびだ たきびだ」と2回繰り返す部分は、2回目が音程高くなっています。子どもたちに「2回目は気持ちが高まって大きな声になるよ!」と伝えると、音楽的な表現力の指導につながります。これが条件です。
落ち葉遊びや自然観察と組み合わせると効果が高い
歌を歌うだけでなく、実際に落ち葉を拾い集めたり、サザンカの花を観察したりする体験と組み合わせることで、歌詞の情景が子どもの体験として刻まれます。落ち葉を拾いながら「この葉っぱを集めてたき火にしたんだね」と声をかけるだけで、歌への親しみが大きく変わります。体験と歌をつなげるのが原則です。
実際にある保育園では、落ち葉を集めてアルミホイルに包んだサツマイモを埋めて焼き芋体験を行い、その最中に「たきび」を歌うという活動を取り入れています。歌と実体験が結びつくことで、子どもたちの記憶に深く刻まれ、季節感のある豊かな情操教育につながっています。
また、現在の子どもたちが実際に焚き火を見る機会は非常に少なくなっています。火のぬくもりや落ち葉の香りといった感覚的な体験をイメージさせるために、保育士が「焚き火ってね、たき火ってこんなにあたたかいんだよ」と情感を込めて歌い聴かせるだけでも、子どもたちの心に情景が生まれやすくなります。
※「あたろうか・あたろうよ」の歌唱ポイントや、しもやけの説明なども掲載されています。
🌟 まとめ:山茶花の歌「たきび」を保育でもっと深く伝えるために
- 🎵 「たきび」は1941年発表、作詞・巽聖歌、作曲・渡辺茂(わずか10分で作曲)による冬の童謡
- 🌸 2番に登場する「さざんか(山茶花)」は10〜12月に咲く冬の花。椿との違いは「花の散り方」が最もわかりやすい
- 📻 戦時中は軍のクレームにより2日間で放送禁止に。戦後1949年に復活し全国に広まった
- 🏫 「あたろうか」「あたろうよ」は2グループに分けた掛け合いで歌うと子どもが楽しめる
- 🍂 落ち葉拾いや自然観察と組み合わせると、歌の情景が子どもの体験として深く定着する


