七夕の歌 歌詞の意味と保育士が知るべき背景知識
「たなばたさま」の歌詞には、一度も「七夕」という言葉が登場しないって知っていましたか?
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七夕の歌「たなばたさま」の歌詞と作者について
保育現場で毎年歌われる「たなばたさま」ですが、この歌がいつ、誰によって作られたかを正確に知っている保育士は意外と少ないかもしれません。正しい知識を持つことが、子どもへの文化教育の第一歩になります。
「たなばたさま」は、1941年(昭和16年)3月に文部省が発行した「うたのほん 下」に掲載された唱歌です。作詞は童謡詩人の権藤はなよ(本名:権藤花代)、補作詞に詩人の林柳波、作曲は音楽教育家の下総皖一が担当しました。長年、作詞が「林柳波」のみとされていた時期がありましたが、現在はもとの作者である権藤はなよ(花代)の名前が正式に認められています。これが原則です。
歌詞は次の通りです。
| 番 | 歌詞(原文) |
|---|---|
| 1番 | ささのは さらさら のきばにゆれる おほしさま きらきら きんぎんすなご |
| 2番 | ごしきの たんざく わたしがかいた おほしさま きらきら そらからみてる |
たった2番・8行の短い歌ですが、一度も「七夕」という言葉が使われていません。それでも聴いた瞬間に七夕の情景が目に浮かぶのは、選ばれた言葉の一つひとつに意味と情感が凝縮されているからです。つまり、言葉の力が詰まった歌なのです。
戦時下の時代に書かれたとは思えないほどやさしい雰囲気の歌で、一般社団法人七夕協会も「戦争中に作られたとは思えないほどやさしく、子どもの情感を大切にした歌」と紹介しています。また、歌詞の中では「さらさら→きらきら」「すなご→ごしき(”ご”でつなぐ)」など、韻を踏む巧みな言葉遊びが散りばめられており、優れた文学作品としての側面も持っています。いいことですね。
一般社団法人七夕協会「楽曲・たなばたさま」(作者の詳細・歌の背景)
七夕の歌 歌詞に出てくる「のきば」の意味とは
「ささのは さらさら のきばにゆれる」——この最初のフレーズで出てくる「のきば」は、子どもたちからも「どういう意味?」と聞かれやすい言葉のひとつです。
「のきば」は漢字で「軒端(のきば)」と書き、家の屋根が壁より外側に張り出した部分のことを指します。現代の住宅でも、雨よけのために壁から突き出た屋根の先端部分がありますよね。まさにあの部分のことです。軒端の長さは家によって異なりますが、昔の日本家屋では30〜60cmほど張り出しているものが多く、そこに笹飾りをぶら下げる習慣がありました。
つまりこの歌詞は「家の軒先に飾った笹の葉が、夏の夜風にさらさらと揺れている」という情景を歌っています。夜の涼しい空気と笹の揺れる音が目に浮かぶような表現ですね。
現代の保育園・幼稚園では、笹を室内や玄関先に飾ることが多く、「軒端に飾る」という感覚が子どもたちにはなかなかイメージしにくいかもしれません。そこで、園で実際に笹飾りを外に出してみる場面を作ったり、写真や絵を見せて「昔はお家の屋根の端っこに飾っていたんだよ」と一言添えるだけで、子どもの理解がぐっと深まります。これは使えそうです。
笹自体にも深い意味があります。笹は古くから神道において清めや魔除けの力があるとされ、「邪気を払う聖なる植物」として扱われてきました。まっすぐ天に向かって伸びる姿が「天に届く」象徴ともなり、お願いが空に届くという七夕の信仰と結びついたのです。つまり、笹飾りを飾ること自体に「祈り」が込められているということです。
七夕の歌 歌詞「金銀砂子(きんぎんすなご)」の意味を知ると保育が変わる
「おほしさま きらきら きんぎんすなご」——この「きんぎんすなご」という言葉は、読み聞かせや歌唱指導の際に「どういう意味?」と保護者から聞かれることも多い言葉のひとつです。意外ですね。
「きんぎんすなご」は漢字で「金銀砂子(きんぎんすなご)」と書きます。砂子(すなご)とは、金箔や銀箔を砂のように細かく砕いた粉末のことです。日本の伝統工芸では、蒔絵や襖絵、金屏風、色紙や短冊などを美しく飾るための技法として使われてきました。金屏風の表面にキラキラと輝く模様がありますよね。あの輝きを作る技術のひとつが「砂子蒔き(すなごまき)」です。
この歌詞では、夜空に輝く星々や天の川の美しさを「金銀砂子をまいたよう」と表現しています。「星がキラキラしている」だけでなく、そこに金と銀の輝きを重ねることで、より豊かな情景が浮かぶ美しい比喩です。
保育現場では「星がきらきらしているよ」と簡単に言い換えてしまいがちですが、それだけでは本来の文化的な意味が伝わりません。「お星さまがまるで金と銀の砂みたいにキラキラ輝いているんだよ」という一言を加えるだけで、表現の深みが子どもに伝わります。この補足が文化教育の質を上げることにつながります。これが原則です。
余裕があれば、金や銀の折り紙をちぎって台紙に貼る「砂子風アート」を製作活動と組み合わせてみてください。「きんぎんすなご」の言葉と視覚的なイメージが一致し、子どもの記憶に残りやすくなります。
金銀砂子の技法と意味の詳細解説(日本画・伝統技法の観点から)
七夕の歌 歌詞「五色の短冊」に込められた中国由来の深い意味
2番の歌詞「ごしきのたんざく わたしがかいた」に出てくる「五色(ごしき)」にも、深い文化的背景があります。単なる「カラフルな短冊」ではないのです。
五色とは、古代中国の「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」に由来する5つの色「青(緑)・赤・黄・白・黒(紫)」のことを指します。五行説とは「万物は木・火・土・金・水の5つの元素からなる」という自然哲学の思想で、中国から日本に伝わり、七夕や端午の節句など多くの年中行事に深く影響を与えています。
それぞれの色には以下の意味が対応しています。
- 🟦 青(緑):木の気・成長・仁(思いやり)を象徴
- 🟥 赤:火の気・礼(礼節)・感謝を象徴
- 🟨 黄:土の気・信(誠実)・人間関係を象徴
- ⬜ 白:金の気・義(正義)・規律を象徴
- 🟫 黒(紫):水の気・智(知恵)・学業を象徴
日本では「黒は縁起が悪い」という考え方から、黒の代わりに紫が使われることが多くなっています。また、短冊に願い事を書く習慣の起源は中国の「乞巧奠(きこうでん)」という儀式で、機織が上手だった織姫にあやかり裁縫や手芸の上達を祈ったものでした。それが時代を経てさまざまな願いごとを書く形に変化し、現代の七夕の短冊文化へとつながっています。
保育現場で短冊を作るとき、「好きな色で書いていいよ」で終わりにするのではなく、「この色には○○の意味があるんだよ」と一言添えるだけで、子どもたちの「なんで5色あるの?」という素朴な疑問に答えられます。つまり、一言の知識が保育の深みにつながります。
保育士だけが知っておきたい「たなばたさま」歌唱指導の独自ポイント
「たなばたさま」は、保育現場で何百回と歌われてきた定番曲ですが、歌唱指導の場面でいくつか見落とされがちなポイントがあります。これを知っておくと、保護者対応の質も上がります。
まず「おほしさま」という表記について、原文の歌詞では「おほしさま」と書かれています。これは現代仮名遣いの「おほ(oo)」が「おお(oo)」に相当する旧仮名遣いで、「大きな星様(お大きな星)」というニュアンスが込められた表現です。子どもには「おほしさまって書いてあるけど、大きくてきれいなお星さまのことだよ」と伝えると理解しやすくなります。
次に、この歌には3番以降の歌詞が存在するという点も覚えておきましょう。教育現場では主に1番・2番が歌われますが、実は補作された歌詞がほかにも存在します。ただし、現在一般的に広まっているのは1番と2番のみであり、保育現場では2番まで歌うのが基本です。
もう一点、見落とされやすいのが「たなばたさま」というタイトルの意味です。「七夕様」の「様(さま)」は敬称であり、七夕の神様・織姫・彦星への敬意が込められた呼び方です。単に行事の名前を呼んでいるのではなく、祈る相手への敬意が込められているということです。つまり、歌自体が「お祈りの歌」でもあります。
子どもへの指導では、いきなり意味を全部教える必要はありません。年齢に合わせて「のきばは屋根の端っこ」「金銀砂子は星のキラキラ」「五色は願いを込めた5つの色」と、1年に1つずつ新しい意味を伝えていくと、成長に合わせた文化教育として機能します。つまり、毎年積み上げる学びが保育の継続性につながります。
保育士として歌詞の背景を正確に理解していれば、保護者から「この言葉どういう意味ですか?」と聞かれても自信を持って答えられます。日常的な質問に対する安心感が、保護者との信頼関係構築にも直結します。これは保育士にとって大きなメリットです。


