さようならの歌の楽譜を保育士が正しく選ぶ方法
楽譜を1部コピーして園内で全員に配ると、著作権侵害で損害賠償請求を受ける場合があります。
さようならの歌の楽譜を選ぶ前に知っておくべき基本情報
「さようならの歌(さよならのうた)」は、作詞・高すすむ、作曲・渡辺茂によって作られた、保育園や幼稚園の帰りの会で毎日歌われる定番曲です。作曲者の渡辺茂は1912年生まれの童謡作曲家・教育者で、「たきび」「ふしぎなポケット」など生涯500曲以上を残した人物です。渡辺が生きた時代は、リトミック(エミール・ジャック=ダルクローズが提唱した音楽教育法)の影響を受け、子どもが身体を動かしながら自然に歌えるメロディを意識して作曲していました。
この曲が今も全国の保育園・幼稚園で歌われ続けている理由のひとつは、その構造のシンプルさにあります。使われているコードは主に3つ程度で、音域も子どもが歌いやすい範囲に収まっています。音楽の専門家でなくても弾きやすく、かつ子どもが歌いやすいという絶妙なバランスが、長年にわたって保育現場で愛される理由です。
楽譜を選ぶにあたっては、「誰が使う楽譜か」「どこで使うか」「どの程度のピアノスキルか」の3点を明確にしておくことが重要です。つまり目的と使い手のレベルで選ぶのが基本です。
市販・ダウンロードで入手できる「さようならの歌」の楽譜には、以下のような種類があります。
| 種類 | 難易度 | 主な用途 | 取得方法 |
|---|---|---|---|
| ピアノ弾き語り(入門) | ⭐ | 現場で毎日使う | 有料DL(Piascoreなど) |
| ピアノ弾き語り(初級) | ⭐⭐ | 弾き歌いが安定してきた保育士向け | 有料DL・市販楽譜集 |
| ピアノ弾き語り(中級) | ⭐⭐⭐ | 音楽系養成校出身者向け | 有料DL・市販楽譜集 |
| ピアノソロ(初級〜) | ⭐〜⭐⭐ | BGM・発表会等 | 有料DL・市販 |
Piascoreのような楽譜ダウンロードサービスでは、1曲あたり300〜500円程度で購入・印刷できるため、1冊丸ごと買う市販の楽譜集よりも経済的です。これは使えそうです。楽譜集を1冊購入しても「さようならの歌」しか使わない、という場合には単曲ダウンロードを活用するのが賢明です。
さようならの歌の楽譜を無断コピーすると1,600円以上の損害賠償リスクがある
保育現場では、楽譜を1部だけ購入して全スタッフにコピーして配る、というケースが少なくありません。しかしこれは、著作権法上の「複製権の侵害」に該当する可能性があります。知らずにやりがちな行動が、実は法的リスクを生むのです。
文化庁が公表している「楽譜コピー問題協議会(CARS)」の資料によれば、JASRACが管理する楽曲の楽譜をコピーする場合、100部以内であれば1曲につき歌詞・楽譜(音符)それぞれ1,600円(消費税別)の使用料が発生します。無断コピーをした場合、最悪のケースでは著作権法第119条に基づき「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」という刑事罰の規定があります。実際に保育士個人が刑事訴追される事例は稀ですが、民事上の損害賠償請求は発生し得ます。
📌 JASRAC(日本音楽著作権協会)の楽譜コピーに関する詳細はこちら
他人の著作物を無断で利用すると、どうなりますか?(JASRAC公式FAQ)
「でも保育園だから教育施設として許可されるのでは?」と思う方もいるかもしれません。著作権法第35条では、学校その他の教育機関での授業における複製は一定の範囲で認められています。保育所・認定こども園もこの「教育機関」に含まれます。ただし、「授業(保育活動)で使うから」という理由で無制限にコピーできるわけではなく、「著作権者の利益を不当に害する場合」は許可されません。
具体的には、市販されている楽譜をコピーすることは「著作権者の利益を不当に害する」と見なされやすいため、事前に発行元の楽譜出版社に相談するか、JASRAC等への申請が必要です。楽譜コピーは許可申請が条件です。
📌 楽譜のコピー問題に関する詳細(文化庁)
楽譜の無断コピーが音楽の未来にピンチをまねいています(CARS・文化庁)
では、どうすれば合法的に楽譜を準備できるのか。最も簡単な方法は、スタッフの人数分を正規購入することです。Piascoreなどのダウンロード販売サービスでは、各自が個人のアカウントで購入・印刷できる仕組みになっています。複数人で使いたい場合は、それぞれが購入するか、園として申請・ライセンス契約を行うのが正しい対応です。
さようならの歌の楽譜を保育士が選ぶ3つのコード活用術
「さようならの歌」はシンプルな構成の曲ですが、それでも「ピアノが苦手で最初から両手で弾くのは難しい」と感じる保育士は多くいます。ピアノが苦手なのは問題ありません。実は、この曲はわずか3つのコードで伴奏できるアレンジ楽譜が複数存在しており、そちらを活用すれば現場でも十分に対応できます。
3コードとは、一般的にハ長調(Cキー)の場合、C(ド・ミ・ソ)、F(ファ・ラ・ド)、G(ソ・シ・レ)の3つです。これはコードの面積で言えば「ピアノの全鍵盤88鍵のうち、使うのはせいぜい9鍵ほど」です。絵でいえば「3色のクレヨンだけで絵を描く」ようなイメージで、限られた道具でも十分音楽として成立します。
3コードを使った「さようならの歌」の練習手順は次のとおりです。
- 📌 ステップ1:まず歌だけを覚える。歌詞とメロディを完全に体に入れてから楽器を触る。
- 📌 ステップ2:右手のメロディラインだけを弾きながら歌う練習をする。
- 📌 ステップ3:左手のコード伴奏(C・F・G)だけを弾きながら歌う練習をする。
- 📌 ステップ4:2小節ずつ両手を合わせながら少しずつつなげていく。
このステップを繰り返すことで、現場で安定した弾き歌いができるようになります。段階的に練習するのが基本です。
Piascoreで販売されている「【3つのコードで弾く】さよならのうた(歌詞・指番号・お手本動画付き)」(渡辺 茂 作曲、堀優香 編曲)は、指番号とお手本動画付きで、独学でも取り組みやすい構成です。右手・左手それぞれの個別練習動画が購入特典としてつく商品もあり、保育士のピアノ練習における「どこをどう弾けばよいかわからない」という悩みに直接応えてくれます。
なお、弾き歌いのテンポについては、「さようならの歌」では♩=126前後が子どもの心拍数に合った自然なテンポとされています。子どもが歌いやすいリズムを作ることが、弾き歌いの本来の目的です。遅すぎず、急ぎすぎず、子どもがついてこられるテンポ感を意識しましょう。
さようならの歌の楽譜を「後奏」まで使い切る保育の工夫
「さようならの歌」をただ演奏して歌って終わり、にしている保育士は多いかもしれません。実はこの曲の後奏部分は、子どもとのコミュニケーションにも使える”余白”として活用できます。厳しいところですね、と思いきや、実はここが一番楽しい部分でもあります。
後奏の使い方として、いくつかの実践例があります。
- 🙌 後奏のリズムに合わせて手拍子をする(子どもがリズム感を自然に身につける)
- 🎉 最後の音のタイミングで「グッドバイ!」「またあした!」などの掛け声を入れる
- 👋 後奏に合わせて順番に先生に手を振ってさようならをする
これらは特別な準備なしに、楽譜通りに演奏するだけで実践できます。つまり楽譜1枚が保育の質を高めるツールになるわけです。
また、「さようならの歌」には複数のバージョンが存在します。帰りの会でよく使われる渡辺茂作曲のバージョンのほかに、「さようならのうた(バイバイ・終わりの会の歌)」として別途公開されているアレンジ版もあります。mucomeやPiascoreなどのプラットフォームで「さようならのうた」と検索すると複数のタイトルが出てくるため、購入前に歌詞・曲調を確認することが大切です。購入前の曲確認は必須です。
Piascoreであればサンプル譜面が一部表示されるため、視覚的に確認したうえで購入できます。YouTubeにも複数の演奏動画が上がっているため、まず聴いてみて、自分が普段歌っているバージョンと一致しているかを確認してから楽譜を選ぶとよいでしょう。
📌 保育士向け弾き歌い練習のポイント(外部参考)
【保育士必見】ピアノでの弾き歌いのコツは?練習方法を紹介(保育求人ラボ)
保育士が知らない「さようならの歌」楽譜の著作権が切れていない理由
「古い童謡だから著作権は切れているはず」と思いがちですが、「さようならの歌」は著作権保護期間の対象です。これは意外ですね、と感じる方も多いでしょう。
日本の著作権法では、著作者の死後70年間が保護期間とされています。作曲者・渡辺茂は2002年8月2日に没していますので、著作権が消滅するのは早くとも2072年12月31日以降となります(保護期間は没年の翌年1月1日から起算)。つまり現時点では、「さようならの歌」は著作権保護期間内の楽曲です。
一方、たとえ原曲の著作権が消滅していたとしても注意が必要な点があります。編曲・訳詞・独自アレンジが施された楽譜の場合、そのアレンジ自体に別途の著作権が発生します。CARSの資料にも「原曲の著作権が消滅していても、編曲や訳詞の著作権が存続していることがある」と明記されています。著作権の有無は原曲と編曲で別々に確認が必要です。
保育士が楽譜を入手・使用する際のチェックリストを整理すると、次の点を確認することになります。
- ✅ 楽譜は正規の有料または無料配布(著作権処理済み)のルートで入手しているか
- ✅ 1アカウントで購入したデータを複数人に配布していないか
- ✅ 市販の楽譜集をコピーして全員に配っていないか
- ✅ SNSや個人ブログで公開されている楽譜画像を無断でプリントしていないか
- ✅ MuseScoreなどのサービスで無料公開されている楽譜の著作権処理を確認しているか
MuseScoreなどの無料楽譜共有サービスには、ユーザーが独自に作成・アップロードした楽譜が多数あります。これらが合法かどうかはサービスの許諾状況によって異なります。「無料=著作権フリー」ではないことをしっかり覚えておきましょう。無料イコール著作権フリーではありません。
適切な楽譜を正規ルートで手に入れることは、作曲家・作詞家への正当な対価の支払いでもあります。渡辺茂のような作曲家たちが生み出した楽曲を次世代の子どもたちに届け続けるためにも、著作権への意識を日常の保育業務の中に取り入れていくことが大切です。
📌 著作権の保護期間に関する詳細(JASRAC)
音楽を自由に使える場合もあるの?(JASRAC)

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