日本の唱歌一覧で保育士が知るべき季節と歌の選び方

日本の唱歌一覧で保育士が知るべき選び方と活用法

「ちょうちょう」を日本の歌として子どもに紹介すると、実はスペイン民謡のため誤りになります。

🎵 この記事の3つのポイント
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唱歌と童謡の違いを正しく理解

「唱歌」は明治時代に文部省が作った学校教育用の歌。「童謡」は作家が子どものために創作した芸術的な歌。現場での説明に迷わないよう、まず定義から整理しましょう。

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季節別・唱歌の定番一覧を把握

春夏秋冬ごとに保育現場で歌われる唱歌を厳選して紹介。月案・週案を立てるときに、すぐ参照できるリストとして活用できます。

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著作権と海外発祥曲の落とし穴

「著作権が切れた唱歌ならSNSに動画投稿しても問題ない」は間違い。著作隣接権や演奏権が残る場合があります。知らないと損するルールを確認しましょう。

日本の唱歌とは何か・童謡・わらべうたとの違いを整理

 

「唱歌」「童謡」「わらべうた」は、保育現場でほぼ同じ意味で使われることも多いですが、その成り立ちはまったく異なります。それぞれの定義を正確に把握しておくと、保護者への説明や行事資料の作成にも自信を持って対応できます。

まず「唱歌(しょうか)」とは、明治政府が1879年(明治12年)に文部省の内部組織「音楽取調掛」を設置し、学校教育用に編纂した楽曲群を指します。日本の子どもたちに西洋音楽を普及させることを目的に作られたため、当初は海外の民謡や賛美歌に日本語の歌詞をあてはめた「翻訳唱歌」が中心でした。その後、1911年(明治44年)から編纂が始まった「尋常小学唱歌」で初めて日本人の作曲家による独自のメロディーが採用されました。つまり唱歌が対象にしていたのは「子ども」ではなく「小学生の授業」です。

一方で「童謡」は、1918年(大正7年)に北原白秋西條八十といった一流の文学者と山田耕筰らの音楽家が協力して創刊した雑誌『赤い鳥』が起点です。当時の唱歌は軍国主義的・道徳教育的な色彩が強く、子どもの純粋な感性を育てる歌が少ないという問題意識から生まれたのが童謡運動でした。童謡は「情操教育を目的に一流の芸術家が創作した子どもの歌」と定義されています。

「わらべうた」はさらに違います。これは民間伝承によって受け継がれてきた子どもの遊び歌で、作者が特定されていないものが大半です。ドレミファソラシドのような西洋音階ではなく、3〜5音程度のシンプルな音階で構成されており、乳児や低月齢の子にも自然になじみやすいのが特徴です。「かごめかごめ」「ひとつひとつ」「おちゃらかほい」などが代表例で、特に0〜2歳児クラスの保育で積極的に取り入れることが推奨されています。

整理するとこうなります。

ジャンル 起源 目的 代表例
唱歌 明治政府・文部省 学校教育・愛国心 「ふるさと」「春の小川
童謡 大正期の芸術家 情操教育・子どもの感性 赤とんぼ」「七つの子
わらべうた 民間伝承 子どもの遊び・絆 「かごめかごめ」「いちじくにんじん

唱歌と童謡の区別が基本です。どちらも保育現場では「子どもの歌」として扱われますが、成り立ちと教育目的が異なることを知っておくと、選曲の意図を保護者にも丁寧に伝えられます。

日本童謡学会「唱歌・童謡の歴史について」−唱歌・童謡・わらべうたの定義と歴史的変遷を学術的に解説

日本の唱歌一覧・季節別に保育現場で使える代表曲

保育の月案や週案を作るとき、季節の歌の選曲で毎回悩む保育士は少なくありません。ここでは文部省唱歌を中心に、保育現場で実際によく歌われる定番曲を春夏秋冬別にまとめます。

🌸 春の唱歌(3〜5月)

春は子どもたちが新しい環境に慣れ、自然の変化を一緒に感じる大切な季節です。

  • 🌼 春の小川(文部省唱歌・1912年):「春の小川はさらさらいくよ」のメロディーが親しみやすく、3歳児から歌えます。川のせせらぎや春の草花を表現する保育活動との組み合わせが効果的です。
  • 🌸 さくらさくら(日本古曲):雅楽の音階で構成された古典曲で、年長クラスの発表会にも向いています。日本の「春」を象徴する曲として文化的意義が高いです。
  • 🦋 ちょうちょ(翻訳唱歌・原曲スペイン民謡):保育現場でよく歌われますが、実はスペイン民謡が原曲。日本の歌と思い込んでいる保育士が多いため注意が必要です。
  • 🌺 花(春のうらら)(滝廉太郎作曲・1900年):「春のうらら の隅田川」の書き出しで有名な名曲。厳密には唱歌ではなく「芸術歌曲」ですが、保育の春の歌として広く使われています。
  • 🎏 こいのぼり(甍の波)(文部省唱歌・1911年):5月の端午の節句にあわせて歌われる定番です。

☀️ 夏の唱歌(6〜8月)

  • 🌊 海(松原遠く)(文部省唱歌・1913年):「海は広いな 大きいな」で始まるシンプルな曲。夏の水遊びや海のイメージと結びつけた保育活動に活用できます。
  • 🌿 茶摘み(文部省唱歌・1912年):「夏も近づく八十八夜」の書き出しで、5月〜6月初旬に歌われます。手合わせ遊びと組み合わせると幼児クラスでも盛り上がります。

🍂 秋の唱歌(9〜11月)

  • 🍁 もみじ(文部省唱歌・1911年):「秋の夕日に照る山もみじ」の二部合唱が有名で、年長クラスの発表会でよく歌われます。
  • 🦗 虫のこえ(文部省唱歌・1912年):秋の虫の声を「ちんちろりん」「リーンリーン」などの擬音で表現した曲で、子どもたちの言語感覚を豊かにします。

❄️ 冬の唱歌(12〜2月)

  • ⛄ 雪(雪やこんこ)(文部省唱歌・1911年):「犬は喜び庭かけまわり 猫はこたつで丸くなる」の対比表現は、子どもたちのイメージを広げるのに最適です。
  • 🌙 冬景色(文部省唱歌・1913年):やや難易度が高いですが、年長クラスの発表会で歌うと情感豊かな表現力が育まれます。

これが保育の選曲の基本です。月案を立てる際は、まず「季節感が伝わるか」「子どもが音程を追えるか」の2点を確認するだけでOKです。

世界の民謡・童謡「尋常小学唱歌 有名な唱歌 一覧」−尋常小学唱歌の全6学年・全120曲の構成と有名曲の概要

実は海外発祥の日本の唱歌一覧・保育士が誤解しやすい12曲

保育士が子どもたちに「これは日本の歌だよ」と紹介してしまうと、正確な文化教育にならないケースがあります。実は、保育現場でよく歌われる唱歌の中には、海外の民謡や歌曲が原曲になっているものが12曲以上確認されています。

これは意外ですね。ただ、知っていると選曲の幅が広がります。

代表的な曲を確認しましょう。

  • 🦋 ちょうちょ:スペイン民謡が原曲。稲垣千穎と野村秋足が日本語歌詞を作成。
  • 🌿 おお牧場はみどり:チェコスロバキアの民謡が原曲。NHK「みんなのうた」第1回放送曲という歴史もあります。
  • 🏠 埴生の宿:イギリスの作曲家ビショップの「たのしき我が家」が原曲。
  • 🍂 旅愁:アメリカの作曲家オードウェイの「Dreaming of Home and Mother」が原曲。
  • 🌌 星の界(ほしのよ):アメリカの賛美歌「いつくしき深き友なるイエスは」が原曲。
  • 🌬️ 春風:アメリカの作曲家フォスターの曲が原曲。
  • ❄️ 冬の星座:アメリカ人ヘイスのラブソング「愛しのモーリー」が原曲。

これらの曲は、明治時代に西洋の音楽文化を急速に取り入れる過程で、外国の旋律に日本語の歌詞をあてはめた「翻訳唱歌」として広まったものです。当時の日本には西洋音楽の作曲技術が十分に普及していなかったため、こうしたスタイルが主流でした。

この情報を知っていると得です。例えば、行事のプログラム冊子に「日本の唱歌」と一括記載するのではなく「原曲はスコットランド民謡」などと添えることで、保護者への文化的発信として差別化できます。また、年長クラスの活動で「この曲の生まれた国はどこでしょう?」というクイズを取り入れると、世界への興味を広げる地球市民教育にも展開できます。

音楽療法士・柳川円「意外と知らない⁉︎海外発祥の日本の童謡・唱歌12選まとめ」−海外発祥の唱歌12曲の原曲と日本語歌詞の成り立ちを詳細に解説

日本の唱歌の著作権・保育士が現場で間違えやすい3つのポイント

「文部省唱歌は古い曲だから著作権はない」と思っている保育士は多いです。しかし、これは完全な正解ではありません。著作権のルールを誤解したまま保育動画をSNSに投稿すると、思わぬトラブルに発展するリスクがあります。

ポイント①:楽曲の著作権と「著作隣接権」は別物

「ふるさと」「春の小川」などの文部省唱歌は、作曲家・作詞家の死後70年が経過しているため、楽曲自体の著作権(著作財産権)は消滅しています。つまり旋律と歌詞は自由に使えます。ただし、市販の楽譜やCDの「演奏・録音」には別に「著作隣接権」が発生します。これが落とし穴です。

具体的には、市販のCD音源をそのまま保育動画のBGMに使ってSNSに投稿した場合、楽曲の著作権は切れていても、そのCD制作会社のレコード製作者権(著作隣接権)は保護期間内の可能性があります。著作隣接権の保護期間は、音源の発売から70年間です。実際に子どもたちと一緒に歌った動画を先生自身が撮影・投稿するのは問題ありません。これが原則です。

ポイント②:発表会・行事のオンライン配信には手続きが必要な場合がある

非営利で行われる保育園の発表会での演奏・歌唱は、著作権法第38条により原則として著作権者の許諾は不要です。しかし、その様子をYouTubeやSNSでライブ配信・録画公開する場合は「公衆送信権」が発生するため、JASRAC等への手続きが必要になることがあります。保育園が加入している施設使用契約の内容によって条件が変わるため、園の管理職や法人に確認することが大切です。

ポイント③:歌詞の一部を保育だよりや掲示物に転載するとき

著作権が消滅した唱歌の歌詞は自由に転載できます。しかし、著作権が残っている童謡や現代の子どもの歌(例:「さんぽ」「となりのトトロ」など)の歌詞を保育だよりにそのまま掲載するのは著作権侵害になる可能性があります。歌詞の転載は「引用」の要件(出所明示・主従関係の明確化など)を満たすか、JASRACへの申請が原則です。

著作権に注意すれば大丈夫です。ただし、「古い歌だから何でもOK」という判断は禁物で、使い方のシーンごとに一度確認する習慣をつけることが、現場でのトラブル回避につながります。日本音楽著作権協会(JASRAC)の公式サイトには、保育・教育現場向けのQ&Aが無料で公開されているので、年度初めに一度チェックしておくことをおすすめします。

学童クラブ運営「【著作権法に注意】学童や保育園で知らないとヤバい違反行為」−保育・学童現場での著作権違反になりやすい具体的な行為を事例別に解説

日本の唱歌一覧を保育に活かす・独自視点の活用術「原曲クイズ保育」とは

唱歌の一覧を覚えるだけでは、保育の質はなかなか上がりません。唱歌の「背景や原曲」を知ることが、保育活動の深みを大きく変えます。

音楽療法の現場では以前から、海外発祥の唱歌を「どこの国で生まれた曲でしょう?」というクイズ形式で紹介する手法が使われています。これを保育に応用したのが「原曲クイズ保育」という考え方です。

具体的な実践例を見てみましょう。年長クラス(5歳児)の活動として、「かえるの合唱」を歌った後に世界地図を取り出し、「この歌はどの国で生まれたでしょう?」と問いかけます。子どもたちは「アメリカ?」「中国?」とさまざまな予想をした後、「ドイツ」という答えを知り、「ドイツってどんな国?」という疑問が自然に生まれます。そこから地図遊びや国旗絵本につなげると、1つの歌が30分以上の探究的保育に広がります。つまり唱歌は異文化理解の入口です。

また、別の活用法として「作曲家当て」があります。「赤とんぼ」(山田耕筰)や「ふるさと」(岡野貞一)など、著名な作曲家の顔写真や簡単な紹介カードを作って壁面に掲示し、「今日の歌を作った人は誰でしょう?」と問いかけます。子どもたちは歌に「作った人がいる」ことを自然に学び、音楽を人と結びつけて感じるリテラシーが育まれます。これは使えそうです。

季節の唱歌の「なぜその季節に歌うのか」という由来を短くスピーチするのも有効です。例えば「茶摘み」を歌う前に「八十八夜(立春から88日目)ってどんな日か知ってる?」と一言添えるだけで、子どもたちの暦や自然への関心が高まります。このような「1曲1トリビア」の習慣を持つと、保育士自身の専門性の向上にもつながります。

唱歌の一覧を知ることはスタートラインです。そこに「なぜ?」「どこから?」の視点を加えることが、保育における音楽教育の本当の意味を引き出します。子どもたちに歌の背景を伝えられる保育士は、音楽の時間をただの「歌の時間」ではなく「考える時間」に変えられます。唱歌は単なる歌集ではなく、日本と世界の文化をつなぐ教材の宝庫です。

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