カッコウの歌を保育で活かす歌詞・弾き歌い・自然活動のすべて
「カッコウ」の歌詞は1種類だと思っていたら、子どもに教えるとき恥をかくかもしれません。
カッコウの歌の原曲はドイツ民謡「Kuckuck, Kuckuck, ruft’s aus dem Wald」
保育の現場で春から初夏にかけてよく歌われる「カッコウ(かっこう)」。日本の童謡と思っている方も多いですが、実はドイツ民謡が原曲です。原曲のタイトルは「Kuckuck, Kuckuck, ruft’s aus dem Wald(カッコウ、カッコウ、森から響く声)」といいます。
作詞は19世紀ドイツの童謡作家、ホフマン・フォン・ファラースレーベン(Hoffmann von Fallersleben)によるものです。もともと「カッコウが森から春の到来を告げる」という内容で、原詞には「歌おう、踊ろう、飛び跳ねよう、春はもうすぐそこ」というような躍動感あふれる言葉が並んでいます。
つまり日本の子どもたちが歌い親しんでいるあのメロディは、元々は春の喜びを全力で表現したドイツのうたなのです。意外ですね。このことを子どもに伝える必要はありませんが、保育士として背景を知っておくと、歌い方や声のトーンにも自然と気持ちが込めやすくなります。
英語圏にも「The Cuckoo」として伝わっており、「Winter is going, soft breezes blowing(冬は過ぎ行き、優しいそよ風が吹く)」という歌詞で春の到来を喜ぶ内容です。民謡が国境を越えて愛される理由が、この歌には凝縮されているといえます。
日本へ伝わったのは明治時代以降とされており、そのメロディーに複数の日本語作詞者が別々に歌詞をつけたことが、後述するバージョン違いを生み出す原因となりました。
参考:ドイツ民謡「かっこう」の歌詞・日本語訳と背景解説
世界の民謡・童謡 | かっこう Kuckuck, Kuckuck, ruft’s aus dem Wald
カッコウの歌詞バージョンが5種類以上ある理由と保育現場での選び方
「カッコウ」の歌詞を子どもたちと歌おうとしたとき、「あれ、私が知っている歌詞と違う」と感じたことはないでしょうか。これには明確な理由があります。
ドイツ民謡のメロディーが日本に伝わった際、複数の作詞者がそれぞれ独自に歌詞をつけたことで、今日に至るまで複数のバージョンが流通することになりました。以下に主なバージョンをまとめます。
| 作詞者 | 歌い出し | 主な収録・使用場面 |
|---|---|---|
| 小林純一 | かっこう かっこう しずかに よんでるよ きりのなか | 現行の小学校音楽教科書(教育芸術社・教育出版) |
| 大浦正美 | かっこう かっこう どこかで なつをよぶ もりのこえ | 「ピアノひけるよ!」シリーズなどピアノテキスト |
| まついけんすけ | かっこう かっこう ないてる ふゆがすぎ はるがきて | 昭和26年再版の小学校教科書『二ねんのおんがく』 |
| 川路柳虹 | カッコー カッコー しずかに やまのおく もりのかげ | 昭和30年発行『音楽2 教師用指導書』 |
| 堀内敬三 | カッコウ カッコウ どこかに きこえるよ とりのこえ | 昭和30〜50年代の『しょうがくせいのおんがく2』など |
つまり原則は「現在の教科書に準じた小林純一バージョン」が標準です。ただし保護者の世代によって「昔の歌詞と違う」と感じる方も多く、そこにコミュニケーションが生まれることもあります。
保育の現場では、どのバージョンを使うかを統一しておくことが大切です。園によって使っているピアノテキストが異なるため、大浦正美バージョンが浸透しているケースも少なくありません。複数のバージョンが存在することを知っておくだけで、保護者からの「あれ、歌詞が違う気がする」という声にも慌てずに対応できます。
これは知っておいて損はないですね。
参考:歌詞バージョンの違いについての詳細な解説ページ
童謡「かっこう」の歌詞 七変化のなぞ | ひろこのピアノブログ
カッコウの弾き歌いをマスターするための音域とピアノのコツ
「カッコウ」は保育士が弾き歌いの練習として最初に取り組むのにうってつけの曲です。実は右手のメロディーに使う音は「ドレミファソラシド」の8音だけで構成されており、音域も狭く、音の跳躍もほとんどありません。
具体的には、ハ長調(Cメジャー)で演奏した場合、メロディーの音域は中央ドから1オクターブ上のドに収まります。ピアノ鍵盤に置き換えると、中央のド(C4)からド(C5)の間、約13センチ幅の鍵盤の中で曲が完結するイメージです。この狭さが、初心者や手が小さい人にとっての大きなメリットとなっています。
弾き歌いで気をつけたいのは「スラー」の表現です。「カッコウ」のメロディーは2音ずつが対になって下降するフレーズが多く、ここにスラーをかけることで本物のカッコウの鳴き声のような滑らかさが生まれます。スラーを意識するだけで、子どもの聴きやすさが大きく変わります。
左手の伴奏は、最もシンプルなアレンジでは「ド+ミ+ソ」のようなブロックコード(和音をまとめて弾くスタイル)を使います。1拍目と3拍目に和音を置くだけで十分な伴奏感が生まれるため、歌うことに集中しやすくなります。
🎹 弾き歌いで意識したい3つのポイント
- スラーを丁寧につける:2音ひとまとまりの「ふわっとした音の動き」がカッコウらしさを演出します。
- テンポはゆったり目に:子どもが歌詞を思い出す時間を作るため、速くなりすぎないようにしましょう。四分音符=80〜92程度が目安です。
- 左手はシンプルに固定する:初心者のうちは凝った伴奏より「歌いながら左手が自然に動く」状態を優先することが大切です。
ぷりんと楽譜やPiascoreなどのダウンロード楽譜サービスでは、「かっこう 保育 ピアノ 初心者」などのキーワードで検索すると、ハ長調に移調済みの弾きやすい楽譜が有料・無料で入手できます。100〜200円程度で購入できるものも多く、手軽に準備できます。
参考:ハ長調アレンジのかっこうピアノ楽譜と解説
Piascore楽譜ストア | かっこう (ドイツ民謡) ピアノソロ 入門
カッコウの歌で自然への興味を育てる:托卵の話と愛鳥週間の活用法
「カッコウ」という鳥を子どもに伝えるとき、単に「カッコーと鳴く鳥だよ」で終わらせるのはもったいないです。カッコウには子どもたちが「えっ、どうして!?」と目を輝かせる生態の不思議があります。
カッコウ(学名:Cuculus canorus)は、毎年5月ごろに東南アジア方面から渡来する夏鳥で、九州以北の明るい草原や林で観察できます。「カッコー、カッコー」という特徴的な鳴き声は、主にオスがテリトリーを誇示したりメスを呼んだりするために出す声です。
この鳥の最大の特徴が「托卵(たくらん)」です。托卵とは、自分では巣を作らず他の鳥の巣にそっと卵を産みつけ、その鳥に育ててもらう習性のことです。オオヨシキリやホオジロなど、自分より体の小さい鳥の巣に卵を1個産みつけ、孵化したカッコウのひなはその家の卵を巣の外に押し出して1羽で育てられます。
保育でこの話をするときのポイントは年齢に合わせた説明の深さです。
- 3〜4歳児向け:「カッコウはお友達の鳥さんの家に赤ちゃんを預けるんだよ」という程度の、優しい言い回しが適切です。
- 5歳児・年長向け:「自分でお家を作らないで、別のお鳥さんに育ててもらう不思議な鳥がいるんだよ、なんでかな?」と問いかけの形で自然への問いを引き出す方法が有効です。
5月10〜16日は環境省が定める「愛鳥週間」でもあります。この時期に「カッコウ」の歌を歌いながら、「どんな鳥を知っている?」「鳥のお家はどこにある?」といった問いかけから自然観察活動へつなげることで、音楽活動と生活・自然探索の活動が有機的に結びつきます。歌が自然観察の入口になるのです。
🐦 カッコウにまつわる豆知識
- カッコウは春から夏(5〜7月)が渡来する時期で、夏の終わりには再び南に帰ります。
- 「カッコー」という鳴き声は主にオスで、メスは全く異なる「ピピピ」というような声を出します。
- 托卵先の親鳥21種が「カッコウへの警戒音」を共有しているという研究(オーストラリア・2025年)もあり、自然の「いたちごっこ」の面白さを感じさせます。
参考:カッコウの生態・托卵の仕組みについての詳細解説
あきた森づくり活動サポートセンター | 野鳥シリーズ81 カッコウ
カッコウの歌を保育でより効果的に使う独自のアイデア:「鳴き声リレー」活動
「カッコウ」は歌そのものが短くシンプルなため、そのまま「歌って終わり」になりがちです。保育の音楽活動として深みを出すために、ここでは検索上位ではあまり紹介されていない独自の活用アイデアを提案します。
それが「鳴き声リレー」という遊びです。カッコウの鳴き声「カッコー」を子ども同士で順番に呼びかけ合う活動で、歌の後半をゲーム形式に変形させた保育アイデアです。
具体的な進め方は次の通りです。
まず全員で「カッコウ」の歌を1〜2番歌います。次に2人1組や輪の形で向かい合い、片方が「カッコー!」と呼びかけ、もう一方が「カッコー!」と応えます。これを繰り返しながら徐々に距離を広げたり、声の大きさを変えたりすることで、歌のメロディーを体感として覚える活動に発展させられます。
この活動のねらいは3つあります。
- 音程感の育成:「カッコー」のソ→ミの下降音程を繰り返し聴いて歌うことで、自然に音の高低を耳で学びます。
- コミュニケーション力の育成:呼びかけと応答のやり取りを通じて、「声で伝える・受け取る」体験ができます。
- 自然・生き物への想像力の育成:「本物のカッコウはどんなふうに鳴いているのかな」と想像することで、自然への興味につながります。
年齢別に見ると、3歳以下では「先生が言ったら同じように返す」エコー遊びとしてシンプルに楽しみ、4〜5歳になると「森に住む鳥になったつもりで鳴いてみよう」という役割遊びに発展させることもできます。
また、手の動きを加えるアレンジも有効です。「カッコー」と呼びかけるときに手を口にあてて遠くに向かって呼ぶ動作をすると、体全体で音楽を表現する活動になります。楽器が得意でない保育士でも、このような音あそびの工夫を取り入れることで音楽活動の幅が広がります。
💡 活動時の注意点
- 声の呼び合いが盛り上がると大声になりがちです。「鳥のように優しい声で鳴いてみよう」と声量コントロールも意識させると、音楽的な表現力の育成にもつながります。
- 「鳴き声リレー」の後にカッコウの写真や絵本を見せると、歌と自然・生き物の結びつきがより強まります。
カッコウの歌は何月に歌う?季節のねらいと保育計画への組み込み方
「カッコウ」はどの時期に保育計画に組み込むのが最も効果的でしょうか。
結論は5月〜6月が最適です。実際のカッコウが日本に渡来するのが5月ごろで、鳴き声が一番よく聞かれるのが5〜6月です。この時期に合わせて歌うことで、「保育室での音楽」と「外の自然」がつながる体験を子どもに与えられます。
5〜6月の保育活動には、こいのぼりや母の日が終わり、梅雨入り前の散歩や自然探索が増える時期という背景があります。晴れた日の戸外活動の前後に「カッコウ」を歌うことで、「今日お外でカッコウが鳴いてたかな?」という自然への目向けが生まれやすくなります。
月案・週案への組み込みの際は、以下の3段階で計画すると活動がつながりやすいです。
- 第1段階(導入):「カッコウ」の歌を覚え、鳴き声の特徴を体感する。
- 第2段階(展開):カッコウという鳥を絵本や写真で知り、「どんな鳥か」を考える。
- 第3段階(発展):散歩中に鳥の声を聴いたり、「鳴き声リレー」などの音あそびに発展させる。
3日〜1週間かけてこの流れを踏むことで、単なる「今月の歌」としてではなく、「音楽」「自然」「言葉」の3領域をつなぐ体験学習として機能させることができます。
また、秋の終わりや冬に「カッコウはもう南に帰ったね」と振り返ることで、渡り鳥の季節感を一年を通じて学ぶきっかけにもなります。季節を感じる感性を育てるのが童謡の力です。
参考:保育における季節の歌のねらいと音楽活動の役割


