表彰式の曲「見よ勇者は帰る」を保育士が使う方法と由来

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」を保育士が知っておきたい全知識

運動会の表彰式でCDを使っているあなた、その動画をSNSに投稿すると著作権侵害になります。

この記事でわかること
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曲の正体と由来

「見よ勇者は帰る」は1747年初演のバロック音楽。戦争の凱旋曲が表彰式定番になった意外な歴史を解説。

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保育士向けピアノ演奏のコツ

初級者でも弾けるアレンジの選び方と、子どもが喜ぶテンポ・強弱のポイントを紹介。

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著作権の正しい知識

運動会当日はOK、でも動画投稿はNG。JASRACルールを保育士目線で整理します。

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」とはどんな曲か

 

保育園の運動会でメダルや賞状を子どもたちに渡すとき、あの華やかなメロディが流れます。それが「見よ、勇者は帰る」です。多くの保育士さんが「表彰式の定番曲」として知っているこの曲ですが、正式なタイトルや作曲者を即答できる方は意外と少ないかもしれません。

この曲の正式名称は「See, the Conqu’ring Hero Comes(見よ、征服者は帰る)」。作曲したのはドイツ生まれでイギリスに帰化したバロック音楽の巨匠、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)です。ヘンデルは大バッハと同じ年に生まれた後期バロック音楽の代表的な作曲家で、「音楽の母」と呼ばれることもあります。

「見よ勇者は帰る」は、オラトリオ(宗教的な声楽作品)「ユダス・マカベウス」の第3部第58番目の合唱曲として登場します。オラトリオ全体の初演は1747年4月1日、ロンドンのコヴェント・ガーデン(現ロイヤル・オペラハウス)で行われました。なお、実はこの「見よ勇者は帰る」のメロディ自体は初演時には存在せず、1750年の再演時に書き加えられたという経緯があります。意外ですね。

日本では「得賞歌(とくしょうか)」とも呼ばれ、大相撲の優勝力士へのトロフィー授与、高校野球の甲子園表彰式など、幅広い場面で使われています。保育園の運動会でも、子どもたちへのメダル授与・賞状授与のシーンに欠かせない一曲となっています。この曲が流れた瞬間、子どもたちがスッと背筋を伸ばす——そんな光景を思い浮かべる保育士さんも多いのではないでしょうか。

「見よ、勇者は帰る」の歌詞の意味・ヘンデルの歴史的背景について(世界の民謡・童謡)

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」が持つ知られざる歴史的背景

この曲が表彰式のBGMとして世界中で使われるようになったのには、深い歴史的背景があります。単なる「めでたい曲」ではないのです。

1745年から1746年にかけて、イギリスでは「ジャコバイトの反乱」と呼ばれる内乱が起きていました。カトリック系のスコットランド勢力が、プロテスタントのイングランド国王に対して反乱を起こした戦いです。当初はイングランド側が劣勢でしたが、1746年4月のカロドン・ミュアの戦いでイングランド軍が決定的な勝利を収めます。

ヘンデルはその勝利を讃えるため、オラトリオ「ユダス・マカベウス」の台本に英雄の凱旋を祝う場面を書き加えました。つまり「見よ勇者は帰る」の「勇者」とは、この戦いを指揮したカンバーランド公爵ウィリアム・オーガスタスを暗示しているとされています。英雄が戦地から帰還する場面のための音楽だったのです。

戦争の凱旋を祝う音楽が、保育園の運動会でメダルを受け取る子どもたちに使われるようになるとは、ヘンデル自身も想像していなかったことでしょう。歴史は面白いですね。

その後、この曲は1908年のロンドンオリンピックでも演奏されたとされています。そして日本では、明治7(1874)年に東京・築地の海軍兵学寮で行われた「競闘遊戯会」(日本初の運動会とされる)の表彰式で演奏されたという記録が残っています。約150年前から、日本の「表彰式の曲」だったということになります。

歌詞の内容を見ても、その背景が伝わってきます。「見よ、英雄の凱旋を!トランペットを響かせ、ドラムを打ち鳴らせ、饗宴の用意を、月桂冠を運べ」——まさに戦いに勝って帰還する英雄を迎える情景です。

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」を保育士がピアノで弾くコツ

保育園の運動会でこの曲をピアノで生演奏できると、会場に一体感が生まれます。ただ、「ピアノが得意ではない」という保育士さんも多いはずです。この曲は原曲のまま弾こうとするとそれなりに難しいですが、初級アレンジを選べばグッとハードルが下がります。

まず楽譜選びが重要です。

  • 📄 右手メロディのみの片手演奏版指番号付きで市販されており、ピアノ初心者でも2〜3日の練習で弾ける難易度です。カイセイMusicやピアスコアなどで無料・低価格の楽譜が入手できます。
  • 📄 両手の初級アレンジ版:左手が単純な伴奏パターンになっているもの。1〜2週間の練習で安定して弾けるようになります。
  • 📄 モシュコフスキ編曲版:前奏・後奏付きの本格的なアレンジ。発表会レベルで、ピアノに自信がある方向けです。

テンポは「ゆったり堂々と」が基本です。保育園の表彰式では子どもが壇上に上がって賞状やメダルを受け取るため、動作に合わせたテンポが必要になります。目安は♩=72〜80程度。速すぎると子どもが走るような感じになってしまい、雰囲気が出ません。

強弱のつけ方も大切です。曲の始まりはmf(やや強め)で弾き始め、メロディのピーク部分に向かってクレッシェンドで盛り上げると、子どもたちへの授与の瞬間が際立ちます。逆に全編フォルテで弾き続けると単調になり、感動が薄れてしまいます。

繰り返し回数は、子どもの人数に合わせて調整が必要です。全員が壇上を降りるまで曲が止まらないよう、自然にリピートできる形で練習しておきましょう。つまり、楽譜を暗譜しておくと余裕が生まれます。

練習の際には、YouTube上の「保育のピアノ 運動会 表彰式 すぐ弾ける」といった動画を参考にするのがおすすめです。片手ずつ確認できる動画も多く、独学でも着実に弾けるようになります。

「見よ勇者は帰る」無料ピアノ楽譜(モシュコフスキ編曲版含む)(カイセイMusic)

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」は著作権フリーで使える?正しい知識

「見よ勇者は帰る」の著作権について、正しく理解している保育士さんはそれほど多くないかもしれません。著作権の扱いを間違えると、最悪の場合、保育園のSNSアカウントが著作権侵害で問題になることもあります。

まずよい知らせから。ヘンデルは1759年に亡くなっています。日本の著作権法では、著作権の保護期間は著作者の死後70年です。したがって、曲そのものの著作権(作曲者の権利)はとっくに消滅しており、パブリックドメインです。 原曲のメロディを演奏・使用すること自体には、今日においてJASRACへの申請も使用料も必要ありません。

ただし、パブリックドメインだからといって「なんでも自由」ではありません。注意が必要です。

  • 🎵 市販CDや配信音源を使う場合:その演奏や録音には「著作隣接権」(演奏者・レコード会社の権利)が残ります。運動会当日に流すだけなら問題ありませんが、その動画を録画して保護者に配布したり、園のホームページやSNSにアップする際は別途確認が必要です。
  • 🎵 運動会当日にCDを流す場合:JASRACの規定によれば、①入場料をもらっていない、②演奏者に報酬を払っていない、③営利目的でない——この3つを満たす学校行事での演奏・BGM使用はJASRACへの手続き不要とされています。保育園の運動会はこれに該当します。
  • 🎵 運動会の動画をSNSにアップする場合:市販CDの音楽が含まれていると、レコード会社・演奏者の著作隣接権が問題になります。JASRACの管理楽曲を含む動画のアップは、原則として手続きが必要です。

シンプルにまとめると、「演奏はOK、CD当日使用もOK、でも動画ネット公開はNG」が基本です。

トラブルを防ぐ最もかんたんな方法は、著作権フリーの音源を最初から使うことです。DOVA-SYNDROMEやポケットサウンドなどのサイトでは、「見よ、勇者は帰る」の著作権フリー版が無料でダウンロードでき、利用条件を守れば動画投稿にも使えます。運動会の準備段階で音源を選ぶ際は、ここから入手するのが一番安心です。

学校の運動会での音楽著作権の扱い方(JASRAC公式ページ)

表彰式の曲「見よ勇者は帰る」に合う独自の演出アイデア【保育士向け】

「見よ勇者は帰る」を流すだけでなく、少し工夫を加えることで子どもたちの記憶に残る表彰式になります。この視点は検索上位の記事にはあまり登場しない内容ですが、現場の保育士さんに特に役立つポイントです。

入場タイミングとの連動が、もっとも効果的な演出です。メダルや賞状を受け取りに壇上へ向かうタイミングで曲を流し始めると、子どもが「自分が主人公」という感覚を持ちやすくなります。曲が始まった瞬間に子どもの表情がパッと変わる——この瞬間は保護者にとっても印象深いシーンになります。

音量の調整も忘れがちなポイントです。BGMは会場全体に響かせる必要がありますが、司会の声や保育士の呼名がかき消されては困ります。事前のリハーサルで、BGMを流しながら「〇〇くん、おめでとうございます」と呼名する声がちゃんと聞こえるか確認しておきましょう。スピーカーの向きと出力の調整が必要になることもあります。

子どもが「この曲が流れたら表彰式だ」と条件反射的に感じるようになると、年中・年長になるにつれて自然と背筋が伸びるようになります。毎年同じ曲を使い続けることには、こうした教育的な積み重ねの意味もあります。曲の継続使用が条件です。

また、表彰式以外の場面で「見よ勇者は帰る」を使いすぎると効果が薄れてしまいます。例えば、毎日の朝の会でこの曲を流してしまうと、いざ運動会の表彰式で流したときに特別感がなくなります。「ここぞという場面」だけに絞って使うのが、長い目で見たときに効果的です。

さらに一歩進めると、表彰式の後に「見よ勇者は帰る」の話を子どもたちにしてみるのも面白い取り組みです。「このきょくにはね、すっごく昔の勇者さんのおはなしがあるんだよ」という導入で、280年以上前のヨーロッパへの興味につながることがあります。音楽を通じた文化教育の入口として活用できます。

  • 🎖️ メダル授与との連動:曲が始まるのと同時に子どもが歩き出す練習を事前にしておくと、本番でもスムーズに進行します。
  • 🎖️ リピートの準備:受賞者の人数によっては曲が終わってしまうことも。楽譜にはリピート記号を確認し、CDの場合はループ設定しておきましょう。
  • 🎖️ 静かなエンディング:全員が受け取り終わったら、急に音量を下げてフェードアウトするより、曲の自然な終わりに合わせて終了させる方が余韻があります。

表彰式全体の流れを一度書き出して、BGMのタイミングを具体的に決めておくのがベストです。当日に焦らないためにも、事前の段取り確認が基本になります。

表彰式におすすめの音楽の選び方と著作権の注意点まとめ(株式会社ニューズベース)

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