保育唱歌「風車」を保育士が知っておくべき歴史と活用術

保育唱歌「風車」の歴史と保育士が活かす遊戯・指導のすべて

「風車」は、実は現在の日本国歌「君が代」と同じ制作チームが作った曲です。

📜 保育唱歌「風車」とは?3つのポイント
🎵

日本最古の幼児音楽教育の作品

明治10年(1877年)に宮内省の雅楽師・東儀季煕が作曲。「保育唱歌」は日本で最初に作られた幼児向け教育唱歌集で、「風車」はその代表曲です。

🌀

遊戯唱歌として体を動かす活動に使われた

「風車」は子どもたちが円陣を作り、手を組みながら回転する「遊戯唱歌」として設計されています。歌いながら身体表現を行う、現代のリトミックに通じる活動です。

🔄

輪唱(二部合唱)にも対応できる構造

「風車」は短くシンプルな曲構成ながら、輪唱(カノン)形式でも歌えます。保育士が少し工夫するだけで、年長クラスの音楽活動に深みが生まれます。

保育唱歌「風車」の誕生背景と東儀季煕の功績

 

「保育唱歌」は、明治10年(1877年)11月に誕生した、日本で初めての幼児教育用唱歌集です。正式名称は「保育並ニ遊戯唱歌」といいます。依頼したのは当時の東京女子師範学校(現・お茶の水女子大学)附属幼稚園で、作曲を担当したのは宮内省式部寮雅楽課の伶人(楽人)たち24名でした。

この「保育唱歌」の中でも特に有名なのが「風車(かざぐるま)」です。作詞者は不詳(作詞者未詳)ですが、作曲は東儀季煕(とうぎすえひろ)によるもので、明治10年11月3日に式部寮へ提出されたという記録が残っています。歌詞は「かざぐるま 風のまにまにめぐるなり やまずめぐるもやまずめぐるも」という五七五七七の短歌形式になっており、シンプルながらも風雅な趣があります。

当時の楽人たちは、西洋のフレーベル式幼稚園教育書から参考になる原歌を選んで翻訳・参考にしながら、日本の古歌の大意に置き換えて作曲しました。「風車」の参考となった西洋原歌は英語の「Windmill」という曲で、歌詞に「See the windmill how she goes,(風車の行く末を見よ)」とあります。しかし実際には、メロディも歌詞もほぼ別物に仕上げられています。唯一共通するのは「四分音符32個分」というリズムの長さだけで、遊戯の動きに合わせた拍数を揃えた可能性が指摘されています。

雅楽と西洋音楽では基本語法がまったく異なります。楽人たちは「西洋式の唱歌を作れ」と命じられながら、長年の雅楽の様式から完全には離れられず、保育唱歌全体が非常に雅楽風の仕上がりになったといわれています。それでも音の動きや拍子、伴奏楽器の面で従来の雅楽の枠を踏み越えようとした工夫が随所に見られます。これが「和洋折衷」を目指した日本音楽教育の最初の試みといえるでしょう。

つまり「風車」は、日本の幼児音楽教育が生まれた瞬間に作られた、歴史的な一曲です。

保育唱歌に関する学術的な解説は、お茶の水女子大学附属図書館のリポジトリでも確認できます。

『保育唱歌』明治十六年 清水たづ譜|お茶の水女子大学附属図書館(保育唱歌の成立経緯と全体像を解説した学術資料)

保育唱歌「風車」の歌詞と音楽的特徴を保育士向けに解説

「風車」の歌詞は非常に短く、全体で2番構成になっています。

歌詞 内容
一番 かざぐるま 風のまにまにめぐるなり やまずめぐるもやまずめぐるも 風車が風に従ってひたすら回り続ける様子
二番 みづぐるま 水のまにまにめぐるなり やまずめぐるもやまずめぐるも 水車が水の流れに乗って回り続ける様子

一番が「かざぐるま(風車)」、二番が「みづぐるま(水車)」という構成で、同じ旋律に乗せて2つの情景を歌います。どちらも「やまずめぐるも(止まらずに回る)」という繰り返しのことばで、子どもがイメージを膨らませやすい構造になっています。

音楽的な観点からもこの曲は興味深い特徴を持っています。まず音階の面では、雅楽の「呂旋(りょせん)」の音の動きが使われており、これは後に学校唱歌で多用されるヨナ抜き長音階(ドレミソラの5音)と同じ動きになっています。つまり現代の保育士が「どこかなじみやすい」と感じるのは、この音階が日本人の耳に長く親しまれてきたからです。

意外ですね。

また「風車」の旋律は輪唱(カノン)形式で歌うことができます。2024年に公開されたYouTube動画でも、一人でアカペラによる二部合唱を実演した映像が公開されており、短い旋律の中に豊かなハーモニーが生まれることが実証されています。シンプルな曲に見えますが、音楽的な奥行きは想像以上に深い曲です。

ヨナ抜き音階が保育活動にどう機能するかを知りたい保育士は、以下の研究論文が参考になります。

保育活動における童謡・唱歌の機能|椙山女学園大学(ヨナ抜き音階と保育現場での歌い継ぎに関する研究)

保育唱歌「風車」を使った遊戯の具体的な指導方法

「風車」はもともと「遊戯唱歌」として作られた曲です。ただ歌うだけでなく、体を動かす活動(遊戯)と一体になって保育に使われることが前提でした。これが原則です。

明治20年(1887年)に文部省取調掛が刊行した『幼稚園唱歌集』には、「風車」での遊び方として以下の動作が紹介されています。

  • 🌀 円形遊戯:子どもたちが円陣を作り、8人程度が中央で十字に手を組み、風車の形を模して雅楽調の唱歌に合わせてゆっくりと歩きながら回転する。
  • 🤝 手つなぎ輪回り:全員で手をつなぎ、歌のリズムに合わせて時計回りや反時計回りに回転する。歌詞の「やまずめぐるも」でさらにテンポを上げるなどのアレンジも可能。
  • 🎶 輪唱とからだ表現:年長クラスであれば、二グループに分かれて輪唱(カノン)に挑戦しながら、それぞれのグループが逆回りに動く遊び方もできる。

特に注目したいのは、この遊戯が「唱歌の歌詞の内容が変わっても、動作は変わらず同じ動作の繰り返しである」という点です。舞踊学会の研究報告でも指摘されているように、明治期の唱歌遊戯は「一定の隊形と繰り返しの動作」が基本でした。保育士にとってこれは大きなメリットになります。なぜなら、子どもたちが動き方を一度覚えれば、歌詞が変わっても対応できるからです。

現代の保育活動に取り入れる際の注意点として、「指示を出す前に保育士自身が一度動いてみる」ことが大切です。「やまずめぐるも」のフレーズで子どもがどのタイミングで動き始めるか、実際に体を動かしながら確認しておくと、当日の混乱を防げます。これは使えそうです。

保育唱歌「風車」が保育士の音楽指導力向上につながる理由

多くの保育士は「古い唱歌は子どもに響かない」と思っています。しかし実際には、「風車」のようなヨナ抜き音階の曲は、子どもが音感を自然に身につけるための土台として非常に有効であることが複数の研究から示されています。

椙山女学園大学の研究では、保育者たちの音感覚がすでにヨナ抜き音階のみに依拠していない実態も明らかにされています。一方で、ヨナ抜き音階を持つ唱歌は子どもたちに「歌い継がれにくい」という課題もあることが指摘されています。これは言い換えると「保育士が意識的に取り上げない限り伝わらない曲」ということでもあります。

「風車」が現代の保育に持つ価値は3点に整理できます。

  • 🎵 音域が狭い:全体の音域が約1オクターブ以内に収まっており、声域がまだ発達途中の幼児でも無理なく歌いやすい。
  • 🔁 繰り返し構造:「やまずめぐるも」というフレーズが繰り返され、記憶定着がしやすく、1~2回で子どもが覚えられる。
  • 🌸 季節を問わない:歌詞に特定の季節の情景が含まれないため、年間を通じていつでも使える汎用性の高さがある。

保育士が「風車」を活動に導入することで得られるもうひとつのメリットは、「日本の音楽文化の根を子どもたちに伝える」という専門性の向上です。保育所保育指針の「表現」領域には、音楽を通じて季節・風景・想像力を育むことが明記されています。「風車」はまさにその目標に合致した教材です。

ピアノ伴奏が不安な保育士も多いかもしれません。「風車」はア・カペラ(無伴奏)でも成立する曲ですので、伴奏なしで歌うだけでも十分な音楽活動として機能します。ア・カペラが基本です。

保育所保育指針における音楽活動の位置づけについては、以下が参考になります。

保育唱歌「風車」と「君が代」に隠れた知られざる共通点

「保育唱歌」という名前は多くの保育士がどこかで耳にしたことがある言葉でしょう。しかし「保育唱歌の制作チームが日本国歌『君が代』と深く関わっている」という事実を知る保育士はほとんどいません。

「保育唱歌」を作った宮内省式部寮雅楽課の伶人たちは、明治10年から13年にかけて約100曲を作曲しています。この中には、のちに国歌として定着する「君が代」の旋律に深く関与した東儀季芳(東儀季煕の同僚)も含まれています。東京大学の音楽学研究者ゴッチェフスキ氏の論文では「君が代が保育唱歌として作曲されたという説への反証」が詳しく論じられており、両者の関係は学術的にも注目されています。

「風車」だけが、保育唱歌の遊戯歌の中から明治20年刊行の『幼稚園唱歌集』に採用されました。100曲近く作られた保育唱歌のうち、後世まで引き継がれたのはわずか1曲です。これは「風車」がいかに当時の保育現場で高く評価されていたかを示す事実です。

この唯一の「生き残り」という事実は、現代の保育士にとっても示唆に富んでいます。子どもたちに本当に届く音楽とは、複雑さよりも「シンプルな繰り返し」と「身体で感じるリズム」にあるということを、「風車」は約150年の時をかけて証明しているからです。結論はシンプルです。

「風車」がどのような経緯で『幼稚園唱歌集』に採用されたかについては、以下の論文に詳細な記述があります。

明治の洋楽草創期における幼児唱歌集に関する研究|大阪城南女子短期大学(保育唱歌から幼稚園唱歌集への移行と「風車」採用の背景)

RICISUNG 風車 【10本セット】かざぐるま ガーデニング 6枚葉6色 手芸 おもちゃ 贈り物 涼しい 庭 装飾 DIYキット