飛行機の歌・童謡を保育で活かす選曲と手遊びのコツ

飛行機の歌・童謡を保育で使いこなすための完全ガイド

保育で使われる歌の約70%が幼児の声域を超えており、歌わせるほど子どもが音楽嫌いになる可能性があります。

この記事でわかること
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飛行機の歌・童謡の種類と特徴

保育現場で使える「飛行機」テーマの童謡を種類別に整理。歌詞・音域・対象年齢まで詳しく解説します。

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声域に合った選曲の基準

研究データをもとに、年齢別の声域と選曲ポイントを紹介。子どもに無理なく歌わせるために知っておくべき知識です。

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手遊びへのアレンジと保育活用術

「むすんでひらいて〜飛行機ver」など、実際の保育で使える手遊びアレンジと、歌わせ方の注意点を徹底解説します。


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飛行機の歌・童謡の種類と保育現場での位置づけ

 

保育の現場では、「乗り物」テーマの童謡が子どもたちに根強い人気を誇っています。なかでも「飛行機(ひこうき)」をテーマにした童謡は、空への憧れやワクワク感を刺激しやすく、特に男の子が多いクラスでは盛り上がる定番コンテンツのひとつです。

飛行機の歌・童謡には、大きく分けて以下のような曲が保育現場で使われています。

曲名 特徴 対象年齢の目安
ひこうき(山東直樹 作詞/菅野浩和 作曲) シンプルな歌詞で空を飛ぶ飛行機を表現。保育名歌集にも収録 3〜5歳
ひこうきのうた(佐々木信綱 作詩・作曲) ジャンボジェットをテーマにした現代的な内容の童謡 4〜5歳
10きのひこうき(Super Simple Songs日本語版) 1〜10の数を飛行機の数で数える知育ソング 2〜4歳
とべとべひこうき(ピンキッツ) アニメーション付きで視覚的にも楽しめる現代的な子どもの歌 2〜4歳
むすんでひらいて〜飛行機ver(手遊び 「むすんでひらいて」の替え歌・アレンジで飛行機の動きを表現 0〜5歳

この中でも特に保育士から注目を集めているのが、「10きのひこうき」です。Super Simple Songsが制作したこの曲は、1機から10機までの飛行機を数えながら歌う構造になっており、数の概念を楽しく学べる知育的な要素を持っています。保育の「ねらい」として「数への興味を育む」を設定できる点でも使いやすい楽曲です。

発達の観点から見ると、飛行機の歌・童謡は「乗り物への興味」という子どもの自然な関心に沿った素材です。2〜4歳の子どもは乗り物の名前を覚える時期でもあり、歌を通じて「ひこうき」「ヘリコプター」「ロケット」などの言葉を自然に習得できる環境を作ることができます。つまり「乗り物=言語発達のフック」として活用できるということですね。

ほいくisが行ったアンケートでは、保育士の78%が「日々よく童謡を歌う」と回答しています。8割近くの保育者が毎日童謡を活用している現場において、テーマのバリエーションを広げることは、子どもたちの飽きを防ぎ活動の幅を広げる意味でも重要です。飛行機の歌はそのバリエーションのひとつとして十分な価値を持っています。

飛行機の歌・童謡を選ぶ前に知っておくべき声域の基礎知識

飛行機の歌をはじめ、どの童謡を選ぶ際にも「子どもの声域に合っているか」という視点を持つことが不可欠です。これを知らずに選曲すると、知らないうちに子どもに無理な発声を強いるリスクがあります。

宮崎国際大学の日髙まり子氏(2021年)による研究では、保育や幼児教育で実際に使われている歌曲集から300曲を分析した結果、その約70%が音域1オクターブ以上の楽曲だったことが明らかになっています。

幼児の声域はどれほど狭いのでしょうか。先行研究をまとめると、以下のようになります。

年齢 無理なく歌える声域の目安 音程の幅
1〜2歳 ド〜ソ付近(C¹〜G¹) 3〜4度程度
3歳 シ♭〜ラ(B♭⁰〜A¹) 5度程度
4歳 シ♭〜シ♭(B♭⁰〜B♭¹) 5〜6度
5歳 ラ〜シ(A⁰〜B¹) 6〜7度

ピアノで例えると、3〜4歳の子どもが無理なく歌える範囲は「ドからソまで」程度の幅、はがきの横幅(約14.8cm)くらいの狭さと考えると分かりやすいでしょう。

関東学園大学の論文「幼児の歌唱指導に必要な指導者の技術に関する考察」では、「現場の半数以上の保育者が、子どもの声をどなり声と認識しつつ歌わせ続けているという調査結果」が紹介されています。これは保育士として見過ごせない実態です。

飛行機の歌のなかで「10きのひこうき」が特に低年齢向けに推奨される理由のひとつは、音域の狭さです。1〜10を数える繰り返し構造でシンプルなメロディーが中心になっており、3〜4歳の声域に収まりやすい設計になっています。発達段階に合った音域の曲を選ぶことが原則です。

一方、「ひこうきのうた(佐々木信綱版)」は「ジャンボジェット」「空高く飛ぶよ」といったダイナミックな表現を持ち、音域がやや広くなる傾向があります。このタイプの曲は4〜5歳のクラスに向いており、低年齢のクラスではテンポを落とし保育士が一緒に声を出す形で補うことが大切です。

選曲の段階で「この曲は何歳向けか」を確認してから使うことが、子どもの音楽体験を守る第一歩です。

宮崎国際大学紀要|幼児の歌唱声域と子どもの歌曲集の音域についての考察(PDF)

飛行機の歌・童謡を使った手遊びのアレンジと保育への取り入れ方

保育現場で注目度が高まっているのが、「むすんでひらいて〜飛行機ver」という手遊びのアレンジです。これは「むすんでひらいて」の定番の手の動きに、飛行機が飛ぶ動作(両腕を広げてゆっくり横に振る)を加えたアレンジバージョンで、TikTokやInstagramを中心に多くの保育士から発信されています。

手遊びが保育現場で重宝される理由は、「歌・動作・コミュニケーション」が同時に成立する活動だからです。大阪芸術大学の論文(2021年)では、コダーイ・ゾルターンの音楽教育理念を引用しつつ、「子どもは音楽をすることで、ただ音楽を学ぶだけでなく、歌うことで解放され、緊張が解け、仕事への関心をもつようになり、規則正しさに慣れる」と述べられています。これは使えそうです。

飛行機の動作を取り入れた手遊びの振り付けの流れは、次のように整理できます。

  • 🤲 むすんで:両手をグーに握る(飛行機が地上にいるイメージ)
  • ひらいて:両手をパーに開く(翼を広げるイメージ)
  • ✈️ 手を打って:両手を胸の前で合わせる
  • 🌤️ むすんで:再びグー(上昇するイメージで腕を上げる)
  • 🛬 ひらいて〜飛行機:両腕を水平に広げてゆっくり横に傾ける(旋回・着陸のイメージ)

この手遊びは0歳から5歳まで対応できる柔軟性が魅力です。0歳・1歳児では保育士の手の動きを目で追うところから始め、2〜3歳では「ひらいて」の動作を模倣し、4〜5歳では歌詞を覚えて自分でアレンジするという段階的な関わり方が可能です。年齢によって関わり方が変わるということですね。

香川短期大学のPDF資料「保育者養成音楽表現における手遊びの検討」によると、保育者が手遊びに求める効果として「言葉の発達を助ける」「数の理解を促す」「リズムを記憶する」の3点が特に高く評価されています。飛行機の手遊びも、「ひこうき・とびます」などの言葉の繰り返しが言語発達につながることを意識すると、保育計画の「ねらい」に落とし込みやすくなります。

手遊びを活動に取り入れる際は、「食事前の待ち時間」「集まりの始まりの導入」「外遊びが終わった後の気分の切り替え」など、短時間の隙間に使えるシーン設定がおすすめです。特に飛行機の手遊びは腕を広げる動作が多く、椅子に座ったままでも体を動かす満足感を得やすいのが強みです。

香川短期大学紀要|保育者養成音楽表現における手遊びの検討(PDF)

飛行機の歌・童謡で数の概念を育てる:「10きのひこうき」活用法

「10きのひこうき」はSuper Simple Songsが提供する「10 Little Airplanes」の日本語版で、「いっき にき さんきのひこうき」と1〜10の数え方を飛行機の数に合わせて歌う構造です。保育の場では「数への興味を育む」というねらいで活用できる数少ない乗り物テーマ童謡として、幅広い園で取り入れられています。

この曲の最大の特徴は、数を歌いながら自然に覚えられる「繰り返し構造」にあります。単純に「いち・に・さん」と数えるより、「飛行機が1機から10機に増えていく」というイメージを持って歌うほうが、子どもの記憶に残りやすいのです。日本サンライズキッズ保育園の資料によれば「乳幼児期では1〜5までの数字を感覚的に認識できるとされており、認識している時期に数の表現も学習する」とされています。

実際の保育活動への取り入れ方としては、以下のような展開が効果的です。

  • ✈️ 紙飛行機を1〜10機用意する:歌いながら1機ずつ登場させることで数の変化を視覚的に捉えられます
  • 🖐️ 指を使って数を表す:歌いながら両手の指を折り曲げて数の概念を体で覚えます
  • 🎨 歌詞カードにイラストを描く:幼児クラスでは模造紙に飛行機のイラストと数字を書いて掲示すると、歌詞と数が視覚でリンクします
  • 🔄 逆から数えるアレンジ:10機から1機に減っていく「カウントダウン版」にアレンジすると、5歳児には特に盛り上がります

ここで一つ、保育士が見落としやすいポイントがあります。「10きのひこうき」は数える楽しさが中心ですが、数を正確に言えることよりも「歌いながら楽しむ体験」を優先することが重要です。関東学園大学の論文でも、「幼児に無理なく歌われる歌はリズム的には多少複雑でも良いが、音程の正確さよりも参加することの楽しさを重視すべき」という考え方が紹介されています。数を言い間違えても、指摘より笑顔で巻き直す姿勢が大切です。

活動終わりのまとめとして、「今日は何機飛んだ?」と子どもたちに問いかけることで、会話を通じた言語発達にも自然につながります。数と言葉の両方を同時に伸ばせるのが「10きのひこうき」の魅力だということですね。

YouTubeの「Super Simple 日本語」チャンネルでは無料で動画が公開されているため、CDがない保育室でもタブレットやモニターを活用して手軽に取り入れることができます。1台のタブレットがあれば、専用教材なしでも実践できます。

飛行機の歌・童謡における「歌わせ方」の保育実践への応用

飛行機の歌をどのような曲にするかが決まったら、次に重要なのは「歌わせ方」です。実はここに、多くの保育士が気づかないうちに行ってしまいがちな落とし穴があります。

玉川大学の山口圭介氏による論文「幼児期における『生活の歌』の教育的意義と役割」(2021年)では、次のような指摘があります。「音楽の本質的な意義を度外視して、ひたすらに上手に歌わせようとする保育は、子供に規律や忍耐力を学ばせているだけに過ぎない」。この言葉は重いですね。

宮城学院女子大学の論文「保育所保育指針にみる表現(音楽)の方向性」では、「保育士等と一緒に歌ったりということは、子どもに『さあ、歌いましょう』と指示を出し、子どもだけに歌わせて保育士等はピアノなどの伴奏に専念するということではない」と明記されています。つまりピアノだけ弾いて子どもに歌わせる形は、研究上も推奨されていないということです。

飛行機の歌を保育に取り入れる際に、特に意識したい歌わせ方のポイントを整理します。

  • 🎤 保育士自身が声を出して歌う:伴奏に専念せず、できるだけCDやタブレット音源を活用して保育士も一緒に声を出す形が推奨されます。子どもは大人の声を聞きながら歌い方を学びます。
  • 🛑 音程の間違いを指摘しない:「ひこうき」を「ひこきー」と歌っても、それは子どもなりの表現です。特に3歳以下では音程の正確さより「声を出す楽しさ」を重視するのが音楽教育研究の基本的立場です。
  • 🌱 替え歌・アレンジを受け入れる:「ひこうきじゃなくてロケット!」と言い出す子どもがいたら、それは創造性の芽生えです。「じゃあロケットバージョンも歌おう!」と受け入れることで、音楽が自由な表現の場になります。
  • 🔁 繰り返しを怖がらない:「また同じ曲?」と感じても、子どもは繰り返しによって安心感と達成感を得ます。同じ飛行機の歌を1週間続けて歌うことは、むしろ推奨される方法です。

高崎健康福祉大学の岡本拡子教授は、「『こんな音楽』という教材から考えるのではなく、『子どものなにを育てたいか』と考えることが大切」と述べています。飛行機の歌を選ぶ前に「今週このクラスで何を育てたいか」を先に考えることが、専門家としての選曲力につながります。

音楽を楽しむ経験が先、技術は後が基本です。飛行機の歌で空への興味を育て、数を学ばせ、手遊びで身体を使い、そして何よりも「歌うことが楽しい」という記憶を子どもたちに残すことが、保育士として最も大切なゴールだといえるでしょう。

保育計画に飛行機の歌を取り入れるときは、「ねらい(何を育てたいか)→選曲(声域・内容が合っているか)→歌わせ方(保育士も一緒に歌うか)」の3ステップで組み立てることを習慣にしてみてください。この3ステップが定着すると、選曲で悩む時間が大幅に減ります。

玉川大学学術リポジトリ|幼児期における「生活の歌」の教育的意義と役割
ほいくらし|岡本拡子教授インタビュー「子どもが歌うために作られた歌」とは

わが心に歌えば(字幕版)