絵描きの歌ボカロを保育で活かす方法とコツ
ボカロの絵描き歌は「子どもには難しすぎる」と思っていると、子どもの成長機会を1年以上ロスします。
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絵描きの歌ボカロとは何か基本を確認しよう
「絵描きの歌(えかきうた)」とは、歌詞の流れに合わせて線や図形を書き続けると、最後にキャラクターや動物などの絵が完成する遊び歌のことです。わらべうたの一種として昔から子どもたちに親しまれてきました。拓殖大学北海道短期大学の2023年の研究紀要でも、えかきうたは「わらべうたの10分類の一つ(小泉1987)」として位置づけられており、音楽と造形が自然に結びつく遊びとして保育活動における可能性が高いと示されています。
一方、「ボカロ(VOCALOID)」とは、ヤマハが開発した音声合成技術を使ったソフトウェアであり、初音ミクや鏡音リン・レンなどのキャラクターが歌声を生成します。近年、ニコニコ動画やYouTubeには「ボカロ×絵描きの歌」として、初音ミクのキャラクターを歌詞に乗せて描く動画が多数公開されています。これが今注目されているのです。
保育でのポイントはシンプルです。子どもが知っているキャラクターや音楽のリズムに乗せることで、「描きたい!」という意欲を引き出せることが最大の魅力です。ボカロ楽曲のビート感やメロディーは記憶に残りやすく、繰り返し遊ぶ動機にもなります。従来の童謡絵描き歌に慣れた保育士さんが少し視野を広げるだけで、クラスの雰囲気がガラリと変わる可能性があります。
つまり「えかきうた+ボカロ」は、音楽・造形・認知発達を一度に刺激できる活動なのです。
絵描きの歌ボカロが子どもの脳と発達に与える3つの効果
歌いながら絵を描くという行為は、単純に見えてとても高度な「マルチタスク」です。耳でリズムを聴き、頭で歌詞を処理し、同時に手を動かして線を描く──この同時作業が脳全体をフル回転させます。これは使えそうです。
① 集中力と記憶力の向上
脳科学の観点から見ると、絵を描く動作は前頭葉を活性化させ、神経伝達物質のドーパミンを放出させることが研究で示されています(聖隷クリストファー大学・中道2007)。えかきうたでは「歌詞の展開=描く手順」という構造があるため、子どもが「次は何が出てくるんだろう?」とわくわくしながら集中を保ちやすくなります。これが集中力の継続につながります。
② 創造力と自己表現力の育み
えかきうたの途中段階では、何の絵か分からない謎めいた形が続きます。この「途中の正体不明な形をどう解釈するか」という過程が、子どもの想像力を強く刺激します。同じ歌詞でも人によって描き上がりが微妙に違うため、完成した絵を見せ合う活動が自己表現の発表の場にもなります。
③ 手指の巧緻性と運動機能の発達
歌のリズムに合わせて線を引く作業は、指先のコントロール訓練にもなります。特にボカロ楽曲はテンポが明確で、「速く動かす」「ゆっくり丁寧に」という緩急がつきやすいため、手指の動きを意識する機会が増えます。3〜4歳ごろから取り組むのに適した活動です。
拓殖大北海道短大のゼミ研究では、えかきうたについて「音楽に接する意識がなくても自然と音楽に触れられる」「誰でも口ずさみながら楽しめる」「最後の完成形を楽しみに想像しながら進める」といった保育的魅力が報告されています。3つ全部、保育の「ねらい」に直結しますね。
+hug「幼児教育とお絵描きの関係・脳を育てる力と保育実践法」|お絵描きが前頭葉の発達に与える影響や保育実践への応用が解説されています
初音ミクの絵描きの歌ボカロ動画おすすめの選び方
保育現場でボカロの絵描き歌動画を活用したいとき、何を基準に選べばよいか迷う保育士さんは多いです。選ぶ軸は大きく3つあります。
① テンポとメロディーの聴きやすさ
ボカロ楽曲の中にはBPM(テンポ)が非常に速いものも多く、子どもが歌詞を追いきれないことがあります。初音ミクの絵描き歌の場合、「コックさん」のような伝統的な絵描き歌をボカロ音声で再現したものは、元のテンポを維持しているため子どもにも親しみやすいです。YouTubeの「初音ミクの絵描き歌」シリーズはゆったりめのテンポのものが多く、保育現場でも扱いやすい傾向があります。
② 描く絵の難易度
描く絵がシンプルな動物や顔のものを選ぶと、3〜4歳でも楽しめます。一方、初音ミクやキャラクター本人を描く動画は、複雑なパーツが含まれるため5〜6歳以上向きです。同じ「ボカロ絵描き歌」でも、「動物をボカロ音声で歌う」タイプと「ボカロキャラクター自身を描く」タイプでは難易度が大きく異なります。年齢別に使い分けるのが原則です。
③ 字幕・歌詞表示の有無
保育士が子どもにガイドしやすいよう、字幕や歌詞が動画内に表示されているものを選ぶと便利です。絵を描くステップが分かりやすくアニメーションで示されているものは、保育士が手を動かしながら「一緒に描く」進行をしやすいです。
YouTubeで「えかきうた ボカロ」「絵描き歌 初音ミク」などで検索すると、子ども向けに作られた丁寧な動画が複数見つかります。実際に自分でひと通り描いてみてから子どもに見せることが大切です。
保育士が絵描きの歌ボカロを実践するときの授業設計ポイント
実際に保育活動へ取り入れるには、事前の設計が重要です。場当たり的に動画を流すだけでは、子どもの集中が続きません。以下のステップを意識すると、活動のねらいが達成しやすくなります。
ステップ1:導入でワクワクを作る(2分)
「今日は歌いながら絵を描くよ!最後に何ができるかな?」と問いかけてから始めます。答えを教えないことがポイントです。この「正体不明のわくわく感」がえかきうた最大の魅力であり、子どもが最後まで集中し続ける原動力になります。
ステップ2:全員が描きやすい準備をする(3分)
用紙は大きめのA4以上、鉛筆よりも太めのマーカーやクレヨンを使うと、歌のテンポに合わせて描きやすくなります。テーブルに余裕があれば、隣の子の絵も見えるようにすると「見せ合い」の楽しさも生まれます。
ステップ3:動画を一緒に見ながら描く(5〜7分)
最初は一度通して聴かせ、次に一フレーズずつ止めながら描かせる方法がベストです。ボカロ動画の再生速度は0.5倍速に落とすと、描く時間が確保できます。スピードに合わせられない子どもがいても「正解はない」ことを伝えてください。
ステップ4:完成した絵を見せ合う(3分)
同じ歌を使っても、誰一人まったく同じ絵にはなりません。「みんな違う絵になったね!」と言葉にするだけで、子どもの自己肯定感につながります。掲示物として使ったり、連絡帳に貼って保護者に伝えたりするのも良いでしょう。
絵描きの歌ボカロを保育で使うときの著作権の注意点
保育現場でボカロ楽曲を使う際、著作権は避けて通れない重要な問題です。知らずに使うと、最悪の場合、保育園全体への法的リスクが発生します。
まず基本として、ボカロ曲には楽曲を作ったボカロP(プロデューサー)の著作権が存在します。その管理方法は楽曲によって異なり、JASRACやNexToneに信託されているものもあれば、作者が個別に管理しているものもあります。文化庁の資料によれば「ボカロ楽曲の場合、放送権はJASRAC信託、配信権はNexTone管理という形が混在している」とされており、一律に判断できないのが現状です。
保育園でのBGMや活動での楽曲使用については、JASRACは保育園や幼稚園向けに包括的な著作権許諾契約を提供しています。保育園が施設利用許諾契約を結んでいる場合、JASRACが管理する楽曲は適法に使用できます。ただしボカロ楽曲で特に注意が必要なのは、JASRAC未登録のもので、その場合は作者本人への確認が必要です。
安全に使える選択肢として、以下の方法があります。
- クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス付きの楽曲を使用する(商用不可のものもあるので確認必須)
- ニコニコ動画の「ニコニ・コモンズ」に登録された楽曲を活用する
- ボカロPが「保育・教育目的での無償使用OK」と明記している楽曲を選ぶ
- わらべうた由来の伝統的なえかきうた(著作権保護期間満了のもの)をボカロ音声で歌わせた動画を使う
著作権の疑問が生じたときは「使ってからトラブルになる前に確認する」が鉄則です。JASRACの公式サイトでは学校・教育機関向けの案内が公開されているので、必ず保育園の管理者と情報を共有しておきましょう。
JASRAC「学校など教育機関での音楽利用」|教育機関における著作権管理楽曲の取り扱いルールが公式に解説されています
愛知文教女子短期大学「保育現場で必要な著作権の知識」|保育士が知っておくべき著作権の基礎がまとめられています
絵描きの歌ボカロを使った保育士オリジナル制作という視点
ここからは、他のブログではあまり触れられていない独自の視点をご紹介します。既存のボカロ絵描き歌を使うだけでなく、保育士自身がオリジナルのえかきうたを作り、ボカロ風の音楽に乗せて活用するという方法です。
拓殖大北海道短大の研究ゼミでは、学生たちが実際に「うさぎ」「鬼」「ソフトクリーム」「雪だるま」などをモチーフに、独自のえかきうたを作成しています。その手順はシンプルです。まず描きたい絵を決め、シンプルな線画を用意し、それを歌詞のステップに分解してわらべうたの節をつけるだけです。
これをボカロに応用するなら、無料で使えるボーカロイド教育版(ヤマハ)や、スマートフォンアプリ「ボイスロイド」などを活用する方法があります。ただし商用利用・施設利用の場合はライセンスの確認が必要なので、あくまで教育・非営利の保育活動の範囲で使うことが大切です。
オリジナルえかきうたを作るメリットは3点あります。まず著作権フリーであること、次に「先生が作った歌」という特別感が子どもの喜びになること、そして子どもの好きなテーマ(例:好きなどうぶつや給食のメニュー)に自由にカスタマイズできることです。今すぐできる第一歩は、紙に描きたい絵のイラストを用意して歌詞を書き出してみることです。


