動物の謝肉祭の白鳥をピアノで弾いて保育に活かす方法
「白鳥」はピアノ曲ではなく、本来チェロが主役の曲です。
動物の謝肉祭の「白鳥」とは?作曲の背景と14曲の構成
「動物の謝肉祭」は、フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921年)が1886年に作曲した組曲です。正式な副題は「動物学的大幻想曲(Grande fantaisie zoologique)」といい、全14曲で構成されています。
この組曲がつくられたきっかけは、チェリストのシャルル・ルブークが催した「プライベートな夜会」への招待でした。つまり最初から公開演奏のためではなく、友人たちと楽しむ小さなサロンのために書かれた音楽だったのです。これが重要なポイントです。
14曲のタイトルは次の通りです。
| 曲番 | タイトル | 特徴 |
|---|---|---|
| 第1曲 | 序奏と獅子王の行進曲 | 荘厳なピアノのトレモロで始まる |
| 第2曲 | 雌鶏と雄鶏 | ピアノとクラリネットが鶏の鳴き声を模倣 |
| 第3曲 | 騾馬(らば) | ピアノ2台による激しい音階 |
| 第4曲 | 亀 | 「天国と地獄」をわざとゆっくり演奏するパロディ |
| 第5曲 | 象 | コントラバスがコミカルなワルツを奏でる |
| 第6曲 | カンガルー | ピアノ2台が跳ねる動きを描写 |
| 第7曲 | 水族館 | グラスハーモニカの幻想的な音色 |
| 第8曲 | 耳の長い登場人物 | 音楽評論家への皮肉とされる |
| 第9曲 | 森の奥のカッコウ | クラリネットがカッコウの声を再現 |
| 第10曲 | 大きな鳥籠 | フルートが小鳥の飛び回る様子を表現 |
| 第11曲 | ピアニスト | わざと下手くそに弾くユーモア曲 |
| 第12曲 | 化石 | 「きらきら星」など有名曲を組み合わせたシロフォン曲 |
| 第13曲 | 白鳥 | 優雅で気品ある名旋律。生前に唯一出版が許可された曲 |
| 第14曲 | フィナーレ | 全曲を締めくくる華やかな終幕 |
曲中には他の作曲家の名曲をパロディにした部分が多く含まれています。たとえば第4曲「亀」は、オッフェンバックの名曲「天国と地獄(運動会でおなじみのあの曲)」のメロディーをわざと極端にゆっくり演奏するユーモアたっぷりの曲です。
サン=サーンスはこうした「他者の曲を使ったパロディ」が含まれることを気にして、自身が亡くなるまで「白鳥」以外のすべての曲の出版・公開演奏を禁じました。彼の没後1922年に全曲が正式出版されたことで、世界中で広く知られるようになったのです。これが、曲集がありながら長い間世に出なかった理由です。
「白鳥」がなぜ唯一の例外だったかというと、他の13曲とは違ってパロディの要素を含まない、完全にオリジナルな美しい旋律だったからです。つまり「白鳥」に関しては自信作として世に出すことをためらわなかったのです。
「動物の謝肉祭」全14曲の構成や初演の詳細についてはWikipediaで確認できます
動物の謝肉祭の「白鳥」のピアノ演奏:原曲はチェロ主役の室内楽
「白鳥」をピアノ曲だと思っている保育士さんは少なくありません。でも実際は違います。
原曲の「白鳥」は、チェロのソロに2台のピアノが伴奏をつけるという室内楽の編成です。チェロが歌うように奏でる豊かな低音の旋律が水の上を優雅に漂う白鳥を表し、2台のピアノが8分音符の滑らかな伴奏で水面のさざなみを描写する、という構図です。
つまり「ピアノは伴奏」が本来の姿です。よく目にするピアノソロ版や連弾版はすべてアレンジ楽譜ということになります。この背景を知っておくと、ピアノで弾くときに「チェロの歌を支えているつもりで伴奏的に弾く」という意識が持ちやすくなります。
なお、バレエの名作「瀕死の白鳥」は、「白鳥」の音楽に振り付けを施したものです。バレリーナがチュチュ(バレエの衣装)を纏い、白鳥の儚い命を表現するこの作品は、この曲のイメージを世界規模で広める大きな役割を果たしました。子どもたちへの鑑賞活動の導入として映像を見せるときに「バレエの動きと音楽を合わせて感じてみよう」と声かけすると、表現活動に自然につながります。
ピアノソロ版での難易度は、アレンジ次第で初級〜中級と幅があります。
- 🎵 初級アレンジ:バイエル修了程度。左手の8分音符伴奏を流れるよう弾くのがポイント
- 🎵 初中級アレンジ:左手にアルペジオ(分散和音)が登場する。スムーズに繋げることが課題
- 🎵 中級アレンジ:原曲の雰囲気を活かした豊かな和声。「主旋律をいかに歌わせるか」が腕の見せどころ
保育現場でリトミックや劇遊びに使うのであれば、初級〜初中級のアレンジ楽譜で十分です。無料で入手できる楽譜も複数あります。
楽譜の無料入手先として実績があるのがPiaDoorやピアノ塾などのサイトです。印刷して繰り返し使えるため、試し弾きにも便利です。
ピアノ塾の「白鳥」無料楽譜ページ:初級〜中級の3種類が無料DL可能で、演奏ポイントの解説付き
動物の謝肉祭の「白鳥」ピアノ演奏のコツ:保育士が押さえるべきポイント
「白鳥」をピアノで弾くとき、多くの人がつまずくのは「音の流れ」です。
この曲の最大の特徴は、8分音符が続く滑らかなアルペジオ(分散和音)の伴奏です。この伴奏が水面のさざなみを表現しているため、ここがカクカクしてしまうと白鳥の優雅さが一気に損なわれます。1音1音を「転がすように」弾くイメージを持つと上手くいきます。水が流れていくような感覚です。
演奏のポイントをまとめます。
- ✅ 伴奏はピアニッシモに徹する:左手(伴奏)は「主旋律の邪魔をしない」のが原則です。いかに存在感を消しながら流れを作れるかが勝負です。
- ✅ 右手の主旋律はレガートで:音と音の間に隙間ができないよう、指をなめらかにつなぎます。白鳥がスーッと進む動きをイメージしてください。
- ✅ テンポは焦らない:「ゆっくりすぎる」と感じるくらいのテンポでもこの曲はサマになります。子どもたちがゆっくり動ける余裕を与える意味でも、急がずに弾くのが基本です。
- ✅ 強弱をつける:単調にならないよう、フレーズの頂点に向かって少しクレッシェンド(徐々に大きく)し、終わりに向かってデクレッシェンド(徐々に小さく)させると表情が生まれます。
練習のコツも一つ。最初は左手だけ、右手だけと分けて練習し、それぞれの動きが安定してから合わせるという手順が効果的です。特に左手の8分音符伴奏を単独でメトロノームに合わせて流れるよう練習するだけで、合わせたときの完成度が大幅に上がります。1日10分の練習を1週間続ければ、初級アレンジなら本番で十分使えるレベルになります。
ピアノが不安なときは簡単アレンジ版への切り替えをためらわないことも重要です。子どもたちの活動を支える伴奏に必要なのは「完璧な演奏」ではなく「安定した拍感」です。弾きやすいアレンジで安定して弾く方が、子どもたちの動きを引き出す伴奏になります。これが条件です。
動物の謝肉祭の「白鳥」を保育現場で活用する方法
「白鳥」はリトミック・劇遊び・鑑賞活動など幅広い保育場面で活用できる優秀な曲です。
まずリトミックへの活用から見てみましょう。「白鳥」のゆったりとした拍に合わせて「優雅に歩く」動作を引き出すのが定番の使い方です。3歳〜5歳のどの年齢にも使いやすく、特に5歳児では「手を翼のように広げてゆっくり歩く」「首を長く伸ばして白鳥になりきる」など自発的な表現に発展することが多い曲です。子どもが白鳥に変身するだけで、教室がホールのような空間に変わります。
劇遊びでの活用では、「白鳥」の音楽は次のようなキャラクターの登場シーンに合います。
- 🦢 妖精が森に現れる場面
- 🐟 水中の魚が泳ぐ場面
- 🕊 鳥が羽ばたいて空を飛ぶ場面
- 👸 お姫様が歩いて登場する場面
劇中のどのシーンに使うかによって、子どもたちへの声かけも変わります。「水の中を泳ぐように体を揺らして」「羽を広げてふわっと歩いて」など、音楽と動きをつなぐ言葉を添えることで、表現の幅が広がります。
生活発表会や音楽鑑賞会での活用では、「動物の謝肉祭」を題材にしたプログラムを組む園も多くあります。全14曲それぞれに動物の名前がついているため、各曲に子どもたちが絵を描いたり、その動物のコスチュームで登場したりと、音楽×造形×身体表現を統合した活動につながります。特に「水族館」「大きな鳥籠」「白鳥」「フィナーレ」の4曲を使ったセレクション構成が保育現場ではよく見られます。意外ですね。
鑑賞活動で使うときのポイントとして、「チェロとピアノが一緒に演奏しているバージョン」の音源を流すことをおすすめします。チェロの低くて温かみのある音色は子どもたちが感覚的に「白鳥が鳴いている」「水に浮いている」と感じやすく、イメージが膨らみやすいからです。
「保育でラララ♪」:白鳥のリトミック・劇遊び用ピアノ楽譜を無料配布。保育園・幼稚園での活用事例も紹介。
動物の謝肉祭の「白鳥」を使う保育活動:独自視点で見る音楽×情操教育
「白鳥」を保育に使う意義は、動きのガイドとしての音楽機能だけではありません。
この曲を子どもたちに「聴かせる」こと自体が、情操教育として大きな意味を持ちます。日本の幼稚園教育要領・保育所保育指針では、音楽活動に「感じたことや考えたことを表現する力を育てる」という目的が明記されています。「白鳥」のように情景や感情を豊かに表す音楽は、その目的に直接応える素材です。
具体的な情操教育的アプローチとして次のような活動が考えられます。
音楽を聴いて絵を描く(音楽鑑賞→造形表現)
「白鳥」を1分ほど流しながら、子どもたちに「聴いていて浮かんだものを自由に描いて」と伝えます。「白鳥」という情報を事前に与えない方が、子どもたちの自由な発想を引き出せます。描かれた絵を鑑賞し合う時間も設けると、音楽の感じ方が人それぞれであることを体験的に学べます。
音楽に合わせて動く(音楽表現→身体表現)
リトミックの発展形として、保育士が「この音楽は何を表してると思う?」と問いかけてから自由に動かせると、子どもたちの想像力が発揮されます。答えを一つに絞る必要はありません。「白鳥が泳いでるみたい」「雲が流れてる」「風が吹いてる」など様々なイメージが出てくることそのものが価値ある学びです。
音楽と楽器を結びつける(鑑賞→楽器体験)
「この曲ではどんな楽器が鳴っているでしょう?」と問いかけて、チェロとピアノの音色の違いを聴き比べさせる活動も有効です。チェロという楽器を子どもたちがほぼ知らないところから始まるので、「大きなバイオリンみたいな楽器」と視覚的な情報も加えながら紹介できます。小学校の音楽鑑賞授業にもつながる知識の土台になります。これは使えそうです。
保育士にとって「白鳥」は、ただ弾くだけでなく「音楽を通じた感性の育ちを支える道具」として活用できる曲です。難しい曲を完璧に弾く必要はありません。子どもたちが音楽に感動し、自分を表現するための窓口を開いてあげることが保育士の役割です。「弾ける・弾けない」で終わらせず、その先の子どもの体験まで視野に入れた使い方が、現場での充実につながります。
八戸学院大学研究紀要:保育者養成課程における幼児との総合表現の実践報告。白鳥を使ったリトミック身体表現活動の詳細が記載。

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