もみじの歌の歌詞を保育士が深く知るガイド
「もみじ」の歌詞には「美しい」という言葉が1回も出てこないのに、子どもが情景をイメージできる。
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もみじの歌の歌詞・全文とひらがな読み
保育士として「もみじ」を子どもたちに伝えるとき、まず歌詞の全文を正確に頭に入れておくことが出発点になります。この曲は1番と2番の2つの節で構成されており、どちらもシンプルながら非常に詩的な表現に満ちています。
| 番 | 歌詞(漢字まじり) | よみがな |
|---|---|---|
| 1番 | 秋の夕日に 照る山もみじ 濃いも薄いも 数ある中に 松をいろどる かえでやつたは 山のふもとの すそもよう |
あきのゆうひに てるやまもみじ こいもうすいも かずあるなかに まつをいろどる かえでやつたは やまのふもとの すそもよう |
| 2番 | たにの流れに 散り浮くもみじ 波にゆられて はなれて寄って 赤や黄色の 色さまざまに 水の上にも 織るにしき |
たにのながれに ちりうくもみじ なみにゆられて はなれてよって あかやきいろの いろさまざまに みずのうえにも おるにしき |
注目すべきことが1つあります。この2つの節を通して、「美しい」「きれい」という言葉は一度も登場しません。それでも聴く人の頭に鮮やかな色彩が浮かぶのは、情景描写だけで感動を伝えるという、俳句や和歌の伝統を受け継いだ表現技法によるものです。
保育士がこの事実を子どもに伝えるとき、「どんな気持ちかな?きれいって書いてないのに、なぜかきれいな山が見えるね」と問いかけると、子どもたちの想像力が自然に引き出されます。これは使えそうです。
歌詞には少し難しい言葉も含まれています。「松をいろどる」の「いろどる」とは「彩る」と書き、色を加えて美しく飾るという意味です。「かえで(楓)」は秋に赤や橙色に染まる、いわゆるもみじの代表格の木。「つた(蔦)」はブドウ科の植物で、壁や木に巻きつきながら育ち、秋になると深紅に染まります。「すそもよう(裾模様)」は着物の裾だけに施された模様のことで、山のふもとに広がる紅葉の帯を美しい着物に見立てた比喩です。「にしき(錦)」は金銀糸を使って文様を織り出した最高級の絹織物を指し、川面に浮かぶ色とりどりの落ち葉が、まるで豪華な絹布を広げたように見えるという意味合いです。
つまり「すそもよう」が基本です。子どもに伝えるときは「山のふもとの飾りが、着物の模様みたいに見えるんだよ」と一言添えるだけで、ぐっと理解が深まります。
参考:歌詞全文と詳細な意味の解説は以下のサイトで確認できます。
もみじの歌の作詞・作曲の背景と高野辰之の秘話
「もみじ」は1911年(明治44年)に文部省が編纂した『尋常小学唱歌(二)』で初めて発表されました。もともとは2年生向け教材として掲載されていたのですが、その後1951年(昭和26年)以降に小学3〜4年生の音楽教科書へと移行し、現在も小学4年生の歌唱共通教材として使われています。さらに2006年には文化庁と日本PTA全国協議会が選定する「日本の歌百選」にも選ばれており、日本を代表する秋の歌として確立しています。
作詞は高野辰之(たかの たつゆき)、作曲は岡野貞一(おかの ていいち)という二人のコンビによるものです。この二人は「もみじ」以外にも「春がきた(小2)」「春の小川(小3)」「おぼろ月夜(小6)」「ふるさと(小6)」という現行の学習指導要領の歌唱共通教材を複数手がけており、日本の音楽教育を支えた黄金コンビとして知られています。
「もみじ」の詞が生まれた場所として広く伝わっているのは、群馬県と長野県の境に位置する碓氷峠(うすいとうげ)です。高野辰之が信越本線の熊ノ平駅(現在は廃線)付近から眺めた紅葉の美しさに感動し、この詞を書いたと伝えられています。現在でも旧碓氷峠見晴台からの紅葉と夕日の景観は絶景スポットとして知られており、毎年秋には多くの観光客が訪れます。
一方、作曲者の岡野貞一にはあまり知られていない側面があります。彼は14歳のときに地元・鳥取の教会でキリスト教の洗礼を受け、賛美歌との出会いが音楽の道に進むきっかけになりました。また、岡野は非常に寡黙な人物で、自分の作曲についてほとんど発言や記録を残さなかったため、「もみじ」を含む複数の作品において作曲者が「推定」とされているという意外な事実があります。意外ですね。
保育士としてこの背景を知っておくと、子どもたちへの語りかけが豊かになります。「この歌を作った人は、電車に乗りながら窓の外の山を見て、あまりにきれいだったから詞を書いたんだよ」と伝えるだけで、子どもたちの想像力が一気に広がります。
参考:「もみじ」が選ばれた日本の歌百選の公式資料は以下から確認できます。
もみじの歌の歌詞が描く情景の意味を保育士が解説する
「もみじ」の歌詞が描く情景は、1番と2番でまったく異なる視点から構成されています。この視点の切り替えに気づくと、歌の深みが大きく変わります。
1番は「山全体を遠くから眺めている視点」で書かれています。「秋の夕日に照る山もみじ」という冒頭は、夕方4時ごろ(11月の東京なら日の入りは16時30〜45分ごろ)に西から差し込む夕日に照らされた山全体の姿を描いています。「濃いも薄いも数ある中に」は、山全体に広がる紅葉が植物の種類によって色の濃淡がさまざまであることを観察した表現です。
そして「松をいろどるかえでやつたは 山のふもとのすそもよう」という後半では、常緑樹である松の緑を背景に、楓や蔦の赤や橙が山のふもとをまるで着物の裾模様のように帯状に彩っている様子を描いています。遠くから山を見ると、上の方は松などの緑も混じり、ふもと付近に紅葉が集まって見えることが多い、という自然の観察に基づいた表現です。
2番では視点がガラリと変わります。「たにの流れに散り浮くもみじ」という書き出しは、山全体を遠望していた1番から、谷間の川を見下ろすような近距離の視点へとズームインした場面です。散った紅葉の葉が川面を流れ、「波にゆられてはなれて寄って」というリズムで動いています。まるで生き物のように互いに近づいたり離れたりする葉の動きが、川の流れの複雑さを表しています。
「赤や黄色の色さまざまに 水の上にも織るにしき」という締めくくりは、川面に広がる落ち葉の色彩が、まるで金銀糸で織られた最高級の絹織物「錦(にしき)」を広げたように美しい、という意味です。
つまり「もみじ」の歌詞は、遠くから見た山の美しさと、近くで見た川面の美しさという2つの場面を対比させることで、「どこから見ても秋は美しい」というメッセージを伝えているのです。これが「もみじ」の構造です。
保育の場でこの「1番は遠くの山・2番は近くの川」という違いを子どもたちに伝えると、同じメロディーが繰り返されても気持ちを切り替えて歌う体験ができます。4〜5歳児なら「1番は大きな山を遠くから見てるね、2番は川に落ち葉が浮いてるよ」と声をかけるだけで、表現が豊かになります。
参考:歌詞の意味や情景の詳しい考察は以下のサイトで確認できます。
もみじの歌を保育で活かす年齢別のねらいと歌い方のコツ
「もみじ」の歌詞には「裾模様」「渓の流れ」「錦」など、日常語とは少し異なる詩的な言葉が並んでいます。そのため、言葉と自然への理解がある程度育まれた3歳以上に適した歌です。
年齢によってねらいも導入の仕方も変えるのが原則です。以下に年齢別のポイントを整理します。
- 🌱 3歳児:秋の紅葉の色や形を身体表現と結びつけ、自然への興味を育てることをねらいとします。「秋の山ってどんな色かな?赤や黄色を探してみようね」と問いかけながら導入すると、子どもが自分の体験と歌詞をリンクさせやすくなります。
- 🍂 4歳児:詩的な表現(山もみじ・裾模様・流水)を動作と結びつけ、語彙力や感受性を深めることがねらいです。「松の緑と楓や蔦の赤の違いを見てみよう」と、色と葉の観察から入ると理解が深まります。
- 🎵 5歳児:声の強弱や旋律の流れに合わせて表現を工夫する創造性を育てることがねらいとなります。「もみじの葉が川に浮いている様子を想像してみよう、どう動くかな?」と情景を語りながら導入すると、体全体を使った表現活動につながります。
歌い方の具体的なポイントとして、保育士自身が「秋の山に向かって遠くまで声を届けるような気持ち」で歌うことがまず重要です。メロディーはシンプルで音と音の距離が近い進行が多いのですが、「松をいろどる」の「まつを」部分だけがソ→ドという4度の跳躍になっています。ここを「ツーン!」と突き刺すような声にならないよう、上からそっと音を置くように発声すると落ち着いた美しさが生まれます。
「すそもよう」の最後の「よう」は付点2分音符という長い音符で伸ばす部分です。ここを短く切らずに「美しいなあ」という感動を長い音符に乗せることが条件です。長く伸ばす音符で気持ちを込めやすいので、「最後まで山の絵を心に持ち続けながら歌って」と声かけするだけで、子どもの表現が変わります。
ジェスチャーを取り入れる場合は以下の動きが有効です。
- 🙌 「秋の夕日に照る山もみじ」:両手を広げて山を描くように大きく動かす
- ✋ 「濃いも薄いも」:手の高さを変えて色の濃淡を表す
- 🌊 「波にゆられてはなれて寄って」:体を左右にゆったり揺らす
- 🍃 「水の上にも織るにしき」:手を水面に広げるようにゆっくり開く
歌い終わったあと「今、どんな景色が見えた?」と子どもに問いかけてみてください。色や動きを言葉で表現しようとする姿が、語彙力と感受性の両方を育てる瞬間になります。
参考:振り付き動画と年齢別指導ポイントが詳しくまとめられています。
もみじの歌の合唱構造と秋の製作・散歩との連動保育アイデア
「もみじ」は実は非常に高度な合唱曲でもあります。保育の現場ではあまり意識されていませんが、この1曲に「輪唱(カノン)」「3度ハーモニー」「副旋律」という3種類の合唱技法がすべて詰め込まれているという、唱歌の中でも珍しい構造を持っています。
曲の前半8小節(2行)は「カノン(輪唱)形式」で、低音部が高音部の1小節後ろを追いかけていく構造です。3行目の4小節は低音部が高音部の3度下を同時に歌う「3度ハーモニー」。最後の4小節は高音部とは全く異なるオリジナルのメロディーラインを低音部が担う「副旋律」という最も難度の高い形式になっています。つまり、1曲で合唱の主要技法をすべて体験できるということですね。
5歳児クラスでこれを段階的に導入する場合、まずクラス全員で主旋律のみを斉唱する期間を十分に確保します。次に「先生の声と子どもの声で追いかけっこしよう」と声かけしながら輪唱を体験させます。前半部分が1小節遅れで重なり始めた瞬間、「あれ、なんか違う音が聞こえる!」という子どもの反応が出たら、音楽的感受性が育っているサインです。
「もみじ」をただ「歌う時間」にとどめてしまうのは、もったいないことです。この歌は秋の自然観察や製作活動と組み合わせることで、聴く・見る・触れる・表現するという複数の感覚を同時に使う保育活動に発展させられます。
- 🍃 落ち葉探し散歩との連動:「もみじ」を歌う前に近隣の公園で落ち葉を拾い、「濃いも薄いも数ある中に」という歌詞と実際の色を対応させます。拾った葉を手に持って歌うだけで、子どもの集中度が大きく変わります。
- 🖐️ 手形もみじアート:手のひらに赤・橙・黄色の絵の具をつけて押す「手形もみじ」は1〜2歳児でも楽しめます。手の形がもみじの葉に似ていることから「わたしの手がもみじになった!」という発見と喜びが生まれます。
- 🖼️ 落ち葉の貼り絵・葉っぱスタンプ:拾ってきた落ち葉を和紙や画用紙に貼る「落ち葉の貼り絵」は色彩感覚と観察力を育てます。完成した作品を壁面に飾り、「もみじ」を歌うバックドロップとして使うと、歌の世界観が視覚的に広がります。
- 🍂 押し花・ラミネートしおり(5歳児向け):拾った落ち葉を新聞紙に挟んで1週間ほど乾かし押し花にする作業は、「波にゆられて散り浮くもみじ」を想像しながら葉を選ぶ時間が情緒的な体験になります。ラミネートして「秋のしおり」にすると長期間保存できる作品になります。
活動の順番も重要なポイントです。「歌 → 散歩・自然観察 → 製作 → 完成作品を前に再び歌う」という流れにすると、子どもたちは活動全体を通して「もみじ」の歌の世界を体全体で味わえます。活動をつなぐ構造が、学びを深めるということです。
また別の秋の童謡「こぎつね」の歌詞には「もみじのかんざし」「かれはのきもの」という言葉が出てきます。「もみじ」と「こぎつね」を同じ時期に並べて歌うと、秋の情景が2曲を通してより立体的に広がります。どちらも秋の保育に欠かせない1曲です。
参考:「もみじ」の二部合唱の構造について詳しく知りたい場合はこちらを確認してみてください。


