スル・ポンティチェロの歌への応用と保育士が知るべき音楽知識
「スル・ポンティチェロ」は、弦楽器の「騒音」を意図的に出す奏法として知られています。しかし、この知識を知らないまま保育士試験の音楽問題を受けると、1問分を確実に落とすリスクがあります。
スル・ポンティチェロの歌と音楽用語の基本を知ろう
スル・ポンティチェロ(sul ponticello)は、ヴァイオリンやチェロなどヴァイオリン属の弦楽器に用いられる特殊奏法の一つです。日本人演奏者の間では「スルポン」と略されることも多く、弦楽器を習ったことがある方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。
「sul(スル)」はイタリア語で「~の上で・~の線で」を意味し、英語の “on the” や “at the” に相当します。「ponticello(ポンティチェロ)」は「弦楽器の駒(こま)」を意味します。「ponti」が「橋・甲板・駒」を表し、接尾辞「-cello」が「小さな」を意味するため、直訳すると「小さな橋の上で」というニュアンスになります。つまり「スル・ポンティチェロ」は「駒(ブリッジ)の近くで弾く」という演奏上の指示なのです。
逆に、弓を指板(フレットボード)側に寄せて弾く奏法は「スル・タスト(sul tasto)」と言います。音のイメージとしては正反対で、スル・タストは柔らかく温かみのある音色になるのに対し、スル・ポンティチェロは硬く金属的な質感のある音になります。この2つはセットで覚えておくのが原則です。
保育士試験の「保育実習理論」では、音楽に関する問題が全20問中6問出題されることが知られており、楽器の種類・分類・特徴は頻出ジャンルです。これは使えそうです。スル・ポンティチェロ自体がそのまま出題されるケースは限られますが、「弦楽器の特殊奏法」として演奏法の特徴を問われる流れで関連知識が求められる場合があります。
| 用語 | 意味 | 音色の特徴 |
|---|---|---|
| スル・ポンティチェロ(Sul ponticello) | 駒の近くで弾く | 硬質・金属的・倍音が多い |
| スル・タスト(Sul tasto) | 指板の上で弾く | 柔らかく・温かく・倍音が少ない |
楽譜上では「Sul pont.」と略記されるケースも多いため、スコアを見る機会がある方は覚えておくと役立ちます。音楽用語はイタリア語が多いので、語源から理解しておくと覚えやすくなります。
参考:スル・ポンティチェロの基本情報(Wikipedia)
スル・ポンティチェロ – Wikipedia(弦楽器の特殊奏法、登場する楽曲例も掲載)
スル・ポンティチェロの歌への影響と倍音の仕組み
スル・ポンティチェロによって生み出される特徴的な音色の正体は「倍音(ばいおん)」です。弦楽器において、通常の演奏位置では「基音(きほん音)」が中心に鳴りますが、駒(ブリッジ)に極端に近づいて弓を当てると、基音が少なくなり代わりに高次の倍音が大量に含まれた特殊な音色が生まれます。
倍音とは何か、少し整理しましょう。
ある音(基音)が鳴ると、その2倍・3倍・4倍…の周波数を持つ音が同時に重なって響きます。これが倍音です。人間の耳はこの倍音のバランスを無意識に聞き取っており、それが楽器ごとの「音色の違い」として感じられます。たとえばピアノとヴァイオリンが同じ「ラ(440Hz)」を奏でても音色が異なるのは、倍音の構成が違うからです。
つまり倍音が音色を決めます。
スル・ポンティチェロでは、このバランスが極端に崩れた状態になるため、黒板をひっかくような、あるいはガラスを引き裂くような独特の緊張感ある音が生まれます。演奏者にとっては「誰しも初学者時代に経験する嫌な音」に通じると言われるほどで、あえてその音を意図的に引き出す奏法です。
歌(声楽)においても倍音の概念は重要で、声の深みや艶(つや)に直結します。歌声に豊かな倍音が含まれていると、声が遠くまで通り、ホールの後方にいる聴衆にも響きやすくなります。これはオペラ歌手や合唱の指導でも強調される点です。保育の現場で子どもたちと歌う際も、明るく伸びやかな声を出すことが、声の倍音成分を豊かにするポイントです。
- 🎵 基音:その音の基本周波数(例:ラ=440Hz)
- 🎵 倍音:基音の整数倍の周波数の音(880Hz、1320Hz…)
- 🎵 スル・ポンティチェロ:基音を抑え、高次倍音を強調した特殊音色
- 🎵 スル・タスト:倍音を少なくし、基音中心の柔らかい音色
なお、「スルポン」が用いられた近代以降の楽曲には、不安定さや緊張感、あるいは幻想的な雰囲気の演出が意図されている場合が多いです。意外ですね。ハイドンの「交響曲第97番」やベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第14番」、さらにコダーイの「無伴奏チェロソナタ」など、クラシックの名作にも登場します。
参考:倍音と音色の関係についての解説
倍音が音色を決める(音楽の原点を探る)― 倍音の構造と楽器ごとの音色の違いを詳しく解説
スル・ポンティチェロが登場する歌と楽曲の具体例
スル・ポンティチェロは、特に20世紀以降の近代・現代音楽の作品に多く取り入れられています。作曲家たちがこの奏法を使うのは、単なる変わった音を出すためだけではなく、物語や感情の表現として意図的に用いるためです。
代表的な楽曲例をまとめました。
- 🎼 ハイドン「交響曲第97番」:古典派の中でも珍しいスル・ポンティチェロの早期使用例
- 🎼 ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第14番」:緊張と解放を繰り返す表現に効果的に使われる
- 🎼 バルトーク「弦楽四重奏曲」:民族音楽的なざらつき感を出す目的で積極的に多用
- 🎼 コダーイ「無伴奏チェロソナタ」:チェロの多様な表現力を極限まで引き出す楽曲
- 🎼 プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」:夢幻的な音世界の構築に活用
- 🎼 小山清茂「管弦楽のための木挽歌」:日本の民俗音楽を現代オーケストラで再現
スル・ポンティチェロが特徴的なのは、「わざと下手に聴こえる音」を意図的に使う点です。弦楽器の初心者が弓を駒に近づけすぎると意図せずこの音が出てしまいますが、熟練した演奏者はあえて同じ状況を作り出し、表現の道具として使います。
これは楽曲の場面設定にも大きな関係があります。たとえばバルトークの弦楽四重奏では、緊迫した心理状態や不安定な感情を聴衆に伝える場面でスル・ポンティチェロが指示されています。まさに「音で絵を描く」ような使い方です。
保育の観点から見ると、子どもたちに音の多様性を体験させる活動のヒントになります。たとえば「怖い音ってどんな音?」「嬉しい音ってどんな音?」という問いかけから始まる音楽体験は、子どもの感性を育てる上でとても有効です。スル・ポンティチェロのような「いつもと違う音」を実際に聞かせることで、音楽への興味が広がります。
こうした音楽体験のアプローチは、コダーイ・メソッドやオルフ・シュルヴェルクなど、幼児音楽教育の世界的手法とも共通する考え方です。音楽を「知識」としてだけでなく「体験」として提供することが、保育における音楽活動の核心だからです。
スル・ポンティチェロの歌と対比:スル・タストとの違いを整理する
スル・ポンティチェロを理解する上で欠かせないのが、対となる奏法「スル・タスト(sul tasto)」との比較です。この2つをセットで覚えておくと、音楽理論の知識として格段に整理しやすくなります。
スル・タストは「指板(フィンガーボード)の上で」という意味で、弓を駒から遠ざけ指板側に近づけて弾く奏法です。この位置で弾くと、弦の振動が穏やかになり、基音中心の柔らかく丸みのある音色が生まれます。楽譜では「Sul tast.」と略記されます。
| 比較項目 | スル・ポンティチェロ | スル・タスト |
|---|---|---|
| 弓の位置 | 駒(ブリッジ)の近く | 指板(フィンガーボード)の上 |
| 音色 | 硬くギラギラした金属的な音 | 柔らかく穏やかな音 |
| 倍音の量 | 高次倍音が多い | 倍音が少なく基音中心 |
| 使われる場面 | 緊張・不安・神秘的な表現 | 穏やか・夢幻・静謐な表現 |
| 楽譜上の略記 | Sul pont. | Sul tast. |
この対比を把握しておくことで、楽譜を読む際に演奏者が何を求められているのかを直感的に理解できるようになります。これが条件です。
また、ギターなどのプラック(弦を弾く)楽器でも同様の考え方が使われています。ブリッジ(駒)に近い位置でピックや指を当てると硬質な音になり、サウンドホール上や指板上で弾くと柔らかい音になります。つまり弦楽器全般に通用する音色の原理として理解しておけば、様々な楽器の話に応用できます。
保育士試験では「楽器の音の出し方の仕組み」が問われることがあるので、弦楽器がどのように音色を変化させるかという視点を持っておくことは有利です。知らないと試験で損をする可能性があります。
参考:スル・ポンティチェロとスル・タストの語源・意味の詳細
スル・タスト、スル・ポンティチェロと言葉の話(望月ギター教室)― イタリア語の語源から丁寧に解説
保育士試験の保育実習理論でスル・ポンティチェロの歌の知識を活かす方法
保育士試験の筆記試験「保育実習理論」では、20問中6問が音楽に関する問題として出題されます。この6問を確実に得点できると、試験全体の合格可能性が大きく高まります。得点チャンスです。
音楽問題の出題傾向は以下の通りです。
- 🎵 楽器の分類(弦楽器・管楽器・打楽器・鍵盤楽器):最頻出ジャンル、3回に2回は出題
- 🎵 音名・調号・移調:ピアノの鍵盤との対応が問われる
- 🎵 コードネーム(和音):伴奏づけの問題で登場
- 🎵 音楽用語・演奏記号:イタリア語の速度・強弱記号から特殊奏法まで
- 🎵 楽器の特徴・発祥・奏法:ヴァイオリン、三味線なども過去出題あり
特に弦楽器については、ヴァイオリン属4種(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス)のサイズや音域の違い、および音の出し方(弓で弦を擦る)という基本が押さえどころです。
スル・ポンティチェロのような特殊奏法は、「演奏記号や音楽知識を問う問題」として出題されることがあります。楽譜上に「Sul pont.」と書かれていたとき、それが何を意味するかを選択肢から選ぶ形式での出題が考えられます。
問題例として次のような形式が想定されます。
- 「Sul ponticelloとは( )の奏法である」→ ①駒の近くで弾く ②指板の上で弾く ③弓の木部で叩く ④弦を弾いて音を出す
正解は①です。これだけ覚えておけばOKです。
対策として有効なのは、楽典の音楽用語集を一通り確認しておくことです。保育士試験向けの楽典テキストには、スル・ポンティチェロが「弦楽器の駒近くで弾く特殊奏法」として掲載されているものもあります。試験まで時間が限られている場合は、「楽器の分類」「移調」「コード」の3分野を優先し、余力があれば特殊奏法の知識まで広げるという順序が現実的です。
また、音楽理論の勉強は視覚・聴覚両方を使うと定着しやすいです。YouTubeなどで実際のスル・ポンティチェロの演奏音源を聞いて「あの硬い金属的な音がスルポンだ」とイメージごと覚えると、試験での問題想起がスムーズになります。
参考:保育士試験の音楽問題頻出ジャンルの詳細(楽器編)
保育実習理論♪おぼえよう!音楽の基礎知識④いろいろな楽器(ほいくのおまもり)― 過去問分析を基に楽器の分類・特徴を整理
スル・ポンティチェロの歌への視点:保育現場での音楽表現教育との接点
スル・ポンティチェロの知識は試験対策だけに留まりません。保育の現場で子どもたちに音楽の豊かさを伝える際にも、このような「音色の変化」という概念は大きなヒントになります。
保育における音楽活動の目的は、演奏技術を磨くことではありません。子どもが音を楽しみ、音楽を通じて感情表現を豊かにすることが本質です。
そのために有効なのが「音色の変化に気づかせる体験」です。たとえば以下のような遊びを取り入れることができます。
- 🎶 タンバリンの叩き方を変える:手のひらで叩く音・フチをこする音・指先でたたく音など、同じ楽器でも奏法で音が変わる体験
- 🎶 声の「色」を変える遊び:「こわ~い声で言ってみよう」「柔らかい声で歌ってみよう」など、倍音の変化を体験として取り込む
- 🎶 弦楽器の生演奏を聴く機会:地域のアウトリーチコンサートや音楽家との交流で、実際にスル・ポンティチェロを目の前で聴かせてもらう
こうした活動は、文部科学省・厚生労働省が示す「保育所保育指針」においても、「表現」領域の「音楽的感受性の育ち」として位置づけられています。
さらに、保育士自身が音楽に対する幅広い知識と好奇心を持っていると、子どもへの音楽活動の提供が自然に豊かになります。スル・ポンティチェロのような専門的な知識を「面白い音楽の話」として子どもや保護者に伝えるだけで、保育士としての専門性の高さが伝わります。
音楽の「なぜ?」を知っておくことは、保育の質そのものを高める近道です。
なお、弦楽器のアウトリーチプログラムや音楽体験を保育施設に取り入れたい場合、地域の音楽大学や楽器メーカーが提供する教育支援サービスを活用すると、費用負担を抑えながら質の高い体験を子どもたちに提供できます。こうした情報は、地域の保育士会や行政の子育て支援窓口で確認してみましょう。
参考:保育士試験「保育実習理論」の音楽問題全般の学習ガイド
