ちいさなくも歌で保育に使える手遊びと振り付け完全ガイド

ちいさなくも歌の振り付けと保育への活用ガイド

この歌を「英語だから難しそう」と避けてきた保育士ほど、子どもの語彙力を伸ばす機会を毎月逃しています。

この記事でわかること
🕷️

歌詞・日本語訳・振り付け

「ちいさなくも(Itsy Bitsy Spider)」の歌詞の意味と、保育現場で使える手遊びの具体的なやり方を丁寧に解説します。

🧠

脳科学的効果と年齢別ねらい

2歳〜5歳の発達段階に合わせたねらいと、手遊び歌が語彙学習に与える科学的根拠をわかりやすく紹介します。

🌈

現場で使えるアレンジ・活用法

梅雨の季節や雨の日の室内活動としての使い方、スピード変化などの応用アレンジも具体的に紹介します。

ちいさなくも(Itsy Bitsy Spider)の歌詞と日本語訳

 

「ちいさなくも」は、英語圏で100年以上にわたって親しまれてきた子ども向けの手遊び歌です。英語のタイトルは「The Itsy Bitsy Spider」。「Itsy Bitsy」は幼児語で「very small(とても小さい)」を意味する言葉で、愛らしい響きが子どもたちに大人気です。

日本語では「チビグモちゃん」という曲名で親しまれることも多く、英語童謡をもとに日本語訳されたバージョン保育現場で広く使われています。

英語の歌詞と日本語の意味は次のとおりです。

英語歌詞 日本語訳(意訳)
The itsy bitsy spider ちっちゃなクモが
Crawled up the water spout. 雨どいを登ってく
Down came the rain 雨が降ってきて
And washed the spider out. クモを流してしまった
Out came the sun 太陽が出てきて
And dried up all the rain. 雨がすっかり乾いたら
And the itsy bitsy spider ちっちゃなクモが
Crawled up the spout again. また雨どいを登ってく

歌詞は短くシンプルです。物語の構造は「挑戦→失敗→再挑戦」というわかりやすい展開になっています。「雨に流されてもまた登る」というクモの姿が、あきらめない心をやさしく伝えています。これは保育の5領域のひとつ「人間関係」にも関わる大切なメッセージです。

なお、イギリスやオーストラリアでは同じ歌が「Incy Wincy Spider(インスィ・ウィンスィ・スパイダー)」という名前で知られています。「Incy Wincy」も「Itsy Bitsy」と同じく「とても小さな」という意味で、どちらも正式な単語ではなく愛嬌のある幼児語です。歌詞も若干異なりますが、基本的な物語は同じです。

参考:歌詞の詳細と手遊びの遊び方をわかりやすく解説しているページです。

Itsy Bitsy Spider 歌詞の意味 遊び方|世界の民謡・童謡

ちいさなくも歌の振り付けと手遊びのやり方

手遊びの動作は指先を使うため、初めて見ると「難しそう」と感じる保育士も少なくありません。コツをつかめばシンプルです。

基本の振り付けは次のステップで覚えましょう。

  • 両手でクモを作る:右手の親指と左手の人差し指、右手の人差し指と左手の親指をそれぞれ合わせて長方形(ロの字)の形を作ります。これがクモの体になります。
  • 雨どいを登る:合わせた指を少しずつ離しながら、手首を交互に180度回転させます。片方の指をくっつけたまま、もう片方を離して上に移動させる動作を繰り返します。両手が少しずつ上に移動していくイメージです。
  • 雨が降る:両手を上から下へ、指を広げてサラサラと落とします。
  • 太陽が出る:両手を中央から左右に大きく広げます。
  • また登る:最初のクモの動きを繰り返します。

「クモを登らせる」動作は文字で説明すると複雑に感じますが、コツは「どちらかの指が常にくっついている」という点です。雨どいに吸い付きながらじわじわ上っていくクモをイメージするとやりやすくなります。

小さな子どもには、より簡単なアレンジも使えます。両手でチョキを作り、向かい合わせにして「足」のように交互に動かすだけでもクモらしさが出ます。または、片手をパー(雨どいの壁)、もう片方をチョキ(足)に見立てて、チョキをひとさし指と中指で「歩かせる」ようにするとよいでしょう。

参考:年齢別の導入方法とねらいが詳しく解説されています。

チビグモちゃん|まな&ゆうによる振り付き動画 ほいくnote

ちいさなくも歌の脳科学的な効果と保育研究からわかること

「手遊びは遊び」と思いがちですが、脳科学と保育研究の両方で、その教育的価値は裏付けられています。

「身体化された認知(embodied cognition)」という理論があります。私たちの知識や記憶は、身体が経験する感覚・運動と深く結びついているという考え方です。たとえば「登る」という単語は、実際に手や体を使って「登る動作」を経験することで、言語情報だけで覚えるよりも格段に記憶に残りやすくなります。

オーストラリアで行われた研究(Mavilidi et al., 2015)では、プリスクール(就学前)の子どもたちを4グループに分け、外国語の語彙14語を4週間で学習させました。「全身を使って単語の意味を実演したグループ」は、「座って繰り返すだけのグループ」に比べて6週間後のテストで明確に高いスコアを記録しました。実演効果(enactment effect)は記憶の定着に直接貢献します。

つまり、手遊び歌は単なる気晴らしではありません。

保育所保育指針(厚生労働省, 2018)でも、手遊び歌は「子どもの豊かな感性や表現する力を養う活動」として位置づけられています。保育研究の分野では、手遊びの保育的意味として次の4点が挙げられています(児島, 2021)。

  • 情緒の安定や人への信頼感を育む
  • 身体能力や指先の巧緻性を養う
  • 数量の感覚、空間認識、言葉のやり取り等の能力を養う
  • 音楽的能力の基礎を培う

また、大阪芸術大学の研究では、「手遊びをすることで言葉の発達や数の理解を助け、旋律を記憶する・拍子を感じる・リズムを記憶するといった経験ができる」ことが確認されています。「ちいさなくも」は英語と日本語の両方で歌えるため、日英両面から言葉の発達にアプローチできる珍しい手遊び歌です。

指先の複雑な動きという観点でも重要です。「ちいさなくも」の指の動きは「Head, Shoulders, Knees and Toes」などと比べても難易度が高く、2歳以降から取り組むことで集中力と手先の器用さを同時に育てることができます。

参考:「身体化された認知」理論と手遊び歌の語彙学習効果についての詳細な解説。

英語の手遊び歌は子どもの英語学習に役立つ?|バイリンガルサイエンス

ちいさなくも歌の年齢別ねらいと保育への導入方法

「ちいさなくも」は2歳から5歳まで幅広く使える手遊び歌ですが、年齢によってねらいと導入の仕方を変えることが大切です。

年齢 ねらい 導入のポイント
2歳児 クモを真似て手の動きとリズムを合わせ、音と身体の一致を楽しむ 「クモさんになろう!一緒に手でクモを作ってね」と呼びかけ、保育士が大きくゆっくりやって見せる
3歳児 繰り返しの歌詞のリズムと構造を感じ取り、自分も一緒に歌う喜びを育てる 「雨でクモさんが流されたね。どうするかな?」と問いかけながら展開への期待感を引き出す
4歳児 「がんばる」「また挑戦する」という前向きな気持ちを育む 「太陽が出たね。また登ろう!」と展開を一緒に想像しながら導入する
5歳児 スピードや表現を自分なりに工夫し、表現力を育てる 「速く歌ったりゆっくり歌ったりして、クモさんの気持ちを表現してみよう」と提案し、主体的な表現を促す

2歳児クラスで大切なのは、完璧な動きよりも「一緒にやる楽しさ」を優先することです。テンポはゆっくりめにして、保育士が笑顔で繰り返しやって見せましょう。3歳以上になると歌詞の展開を楽しめるようになるため、「流された!」「また登ってる!」という感情を一緒に表現すると盛り上がります。

5歳児向けのアレンジとして、速さの変化が特に有効です。最初はゆっくり、次第にテンポを上げて「速クモさん」にアレンジすることで、集中力と反応速度が必要になり、ゲーム性が生まれます。テンポ変化はどの年齢でも活用できますが、5歳児はさらに自分で表現の工夫を楽しめる段階です。

おすすめの活用シーンは「梅雨(6月)」と「雨の日の室内活動」です。雨どいを登るクモというテーマがそのまま6月の季節感に直結するため、壁面製作や絵本との組み合わせも自然にできます。ただし通年での使用にも問題はなく、活動の切り替えや待ち時間の活用にも適しています。

保育士も知らない「ちいさなくも」にまつわる意外な豆知識

保育の現場で「ちいさなくも」を歌っている保育士でも、この歌の意外な背景を知っている方は多くありません。知っておくと、子どもたちや保護者に語れるちょっとした話のネタになります。

まず、メロディについてです。「ちいさなくも(Itsy Bitsy Spider)」のメロディは、日本でキャンプの定番として知られる「静かな湖畔の森のかげから♪」と非常によく似ています。「静かな湖畔」の作詞は山北多喜彦で1936年に作られましたが、その曲のもとになった楽曲として「Itsy Bitsy Spider」と同系統のメロディ(スイスのドイツ語童謡「Auf der Mauer, auf der Lauer」)が挙げられています(Wikipeida「静かな湖畔の森の影から」)。これらの正確な関係は諸説あり、起源は不明とされていますが、日本人にとって「どこかで聴いたことがある」と感じやすいのにはこういう理由がありそうです。

次に、歌の名前の多様性です。「Itsy Bitsy Spider」は地域によって呼び名が変わります。アメリカ式の「Itsy Bitsy」に対して、イギリス・オーストラリアでは「Incy Wincy Spider」と呼ばれます。さらに日本語では「チビグモちゃん」「ちっちゃなクモさん」「ちいさなくも」など複数の表記が混在しています。保育の場で使う場合、子どもたちには日本語で「チビグモちゃん」「ちいさなクモさん」と呼ぶのが定着しやすいでしょう。

また、英語版と日本語版の振り付けには差が生じることがあります。「ちいさなくも」の手遊びは、英語圏では特定の公式バージョンがあるわけではなく、家庭や教室によって多様なやり方が存在します。これは逆に保育士にとって柔軟にアレンジできるという利点になります。「こうでなければダメ」という固定ルールがないため、クラスの年齢や子どもたちの様子に合わせて動作を変えてよいのです。

「Itsy Bitsy Spider」の最古の文書記録は1910年前後とされており、100年以上にわたって世界中で歌い継がれてきた歴史的な童謡です。この歌が持つ「くじけても立ち上がる」というテーマは時代を超えて子どもたちに受け入れられ続けています。

参考:静かな湖畔との関係を含む、歌の来歴についての解説。

静かな湖畔の森の影から|Wikipedia

Itsy Bitsy Spider(ちいさなクモさん)