うみの歌を保育で深めるための全知識
「うみ」はただの夏の歌じゃなく、SNSに歌声動画をアップすると2044年まで著作権侵害になります。
うみの歌の歌詞の意味と3番のつながりを読み解く
「うみ(うみはひろいな)」は、1941年(昭和16年)に文部省唱歌として発表された、3番構成の童謡です。歌詞はひと言で言えば、子どもの目線から海を眺めたときの感動を時間の流れに沿って描いた詩です。
1番では、海を見た最初の印象を歌います。広くて大きく、月が登り日が沈む壮大な自然の舞台として海が描かれます。「月が登るし日が沈む」という表現は一見矛盾に思えますが、海は朝も夜も絶え間なく動いており、あらゆる天体を映し出す舞台だという意味が込められています。
2番では、波に焦点が移ります。大きな波がどこまでも続く様子を歌い、海の奥行きと無限感が表現されます。
3番では「海にお船を浮かばせて、よその国へ行ってみたい」という冒険心が語られます。つまり構成は「感動する→観察する→想像する」という、子どもの認知の自然な流れと一致しているわけです。
この3段階の流れはとても自然です。1番で海を体感し、2番で波をじっくり観察し、3番で遠い国への憧れへと心が広がる。保育士が歌詞を子どもに伝える際は、この「視線の流れ」を意識するとぐっと内容が伝わりやすくなります。
なお、3番の歌詞には「うかばして」という表現が元々ありましたが、昭和55年の新指導要領改訂のタイミングで「うかばせて」に変更されました。文語体から口語体への移行です。保育の現場でも現在は「うかばせて」が正しい歌詞です。
うみの歌の作詞者・林柳波が抱えた誕生秘話と歴史的背景
この童謡の誕生背景は、表面上ののどかな歌詞とは全く異なる、複雑な時代状況の中にあります。
作詞者・林柳波(はやし・りゅうは)は1892年生まれ、群馬県沼田市の出身です。群馬県は海に面していない内陸県です。つまり、「うみはひろいな」と歌うこの曲を作ったのは、実際には海を身近に見て育ったわけではない人物なのです。意外ですね。
それだけではありません。林柳波は当時の軍部から「海国日本を象徴し、子どもの頃から海への憧れを抱かせるような歌を作れ」という命令を受けていたとされています(金沢蓄音器館・館長ブログより)。つまり、この歌は1941年の太平洋戦争勃発の年に、戦意高揚を意図した教材として発表されたという背景を持ちます。
しかし実際の歌詞には「よその国へ行ってみたいな」という子どもらしい平和な願いが込められており、当時の激しい戦時統制の中で、作詞者が政治的意図に抗するような表現を密かに盛り込んだとも評価されています。
戦後、GHQ(連合国軍総司令部)はこの3番の歌詞を問題視しました。「よその国へ行く」という表現が、海外侵略を連想させるとして、教材への掲載を認めなかったのです。その後、長い空白期間を経て、1977年(昭和52年)にようやく小学校の「共通教材」として復活を果たしました。現在は小学1年生の歌唱共通教材として全教科書に掲載されています。
この経緯を知ることは、保育士として子どもに文化を伝える立場として非常に重要です。歌一つにも、時代の波と人々の願いが刻み込まれています。
また作曲者・井上武士も同じく群馬県(赤城山南麓)の出身で、林柳波(赤城山北麓)とは同郷の「内陸出身コンビ」が日本で最も有名な海の歌を生み出した、という事実も記憶に残るポイントです。
林柳波への軍部からの命令や誕生の背景について(金沢蓄音器館・館長ブログ)
GHQによる教材削除の経緯と1977年の共通教材復活の詳細(note・元音楽教員の記事)
うみの歌の年齢別ねらいと保育活動への導入方法
「うみ」は語りかけるようなゆったりとしたメロディと、シンプルな歌詞構成から、2歳児から5歳児まで幅広く活用できる一曲です。ただし、年齢によって何を育てたいかの「ねらい」は大きく変わります。
🔵 2歳児のねらいは、広い海のイメージを身体で感じることです。言葉の意味よりも、腕を広げる動作や手拍子を通じて「大きい・広い」という感覚を体験的に味わうことが中心になります。「海ってばーっと広いね!手を広げてみよう」という声かけが導入として効果的です。
🔵 3歳児では、「月がのぼる」「波がゆれる」という歌詞に合わせて身体表現を加えることで、言葉と動きのリンクを育みます。ゆっくりと腕を弧を描くように動かして「月がのぼるみたいにしてみよう」と伝えると理解が深まります。
🔵 4歳児は、3拍子のリズムを感じながら歌うことで、音楽的な表現力が育まれます。ちょうど東京ドーム5個分くらいの広さを想像させるような「どこまでも続く海」のイメージを持たせながら歌わせると、ダイナミックな表現につながります。3拍子が条件です。
🔵 5歳児では「どんな国に行ってみたい?」という問いかけを歌の前に挟むことで、子ども自身の言葉と想像力を引き出せます。歌の活動がそのまま「言語活動」や「想像表現」にも広がる年齢です。
保育者自身が穏やかな声と表情で語りかけるように歌うことが、どの年齢でも共通して大切なポイントです。これが基本です。
また「水色のスカーフ」や「おふねのカード」などの視覚補助を使うと、特に2〜3歳児には歌詞の意味がグッと伝わりやすくなります。100均などで手に入るアイテムで十分に対応できます。
うみの歌の3拍子を活かした振り付け・ジェスチャーのポイント
「うみ」の最大の音楽的特徴は、3拍子であることです。小学校の歌唱共通教材24曲のうち3拍子の曲はわずか4曲しかなく、1年生で触れる「うみ」はその貴重な1曲目にあたります。
3拍子のリズムは「波の揺れ」に例えるとイメージしやすくなります。1拍目に少し重さを乗せて、2・3拍目にふんわりと軽くなるような感覚です。まずは保育士が自分の体を左右に揺らしながら歌って見せると、子どもたちが自然に真似をしてくれます。
振り付けの具体的なポイントは以下のとおりです。
- 🌊「うみは ひろいな おおきいな」→両手を横いっぱいに広げる
- 🌙「つきが のぼるし」→片手をゆっくり円を描くように上へあげる
- ☀️「ひが しずむ」→その手をゆっくり下ろす
- 🌊「おおなみ こなみよ」→両手を交互にゆっくり上下させ、波を表現する
- ⛵「うみに おふねを うかばせて」→両手を合わせてお椀の形を作り、ゆらゆらさせる
重要なのは「ゆったりと、たっぷり」やることです。急がなくていいです。3拍子の波のような揺れを体に入れることが目的なので、テンポを上げてしまうと効果が半減します。
また、2小節を1つのまとまりとして「寄せ波・引き波」のように感じるのも有効な指導法です。最初の1小節で子どもたちに向かって腕を引き寄せ、次の1小節で遠くへ送り出すように動かすと、波のリズムが立体的に体感できます。これは使えそうです。
「うみ」のような情景描写を含む歌は、ジェスチャーをつけることで子どもの想像力と言語理解が同時に育ちます。歌を「体験する」ことが保育の歌活動の本質です。
うみの歌のピアノ伴奏で保育士が押さえるべき実践コツ
保育士にとって「うみ」のピアノ弾き歌いは、保育士試験(実技・音楽表現)の課題曲にもなったことがある(平成27年度実績)ほど、現場でも試験でも重要度の高い一曲です。
「うみ」の3拍子伴奏には大きく2つのパターンがあります。1つ目は左手がルート音と和音を「ドン・パン・パン」のように刻むスタイル。2つ目は左手でアルペジオ(分散和音)を弾くスタイルです。初心者には前者が安定しやすく、ピアノに慣れてきたら後者を試すと波のような柔らかい伴奏になります。
実際の練習で気をつけたい3つのポイントを整理します。
- 🎵 歌声とピアノのバランス:ピアノが大きくなりすぎると子どもの歌声がかき消されます。保育の場では歌声を主役にし、ピアノは「支える役割」だと意識することが重要です。
- 🎵 テンポを崩さない:3拍子の揺れを大切にしながらも、一定のテンポを保つことが子どもが乗りやすいリズムを作ります。速すぎても遅すぎてもNGです。
- 🎵 表情と視線:ピアノに集中するあまり下を向き続けると、子どもとの一体感が生まれません。鍵盤を暗譜か目線を上げられるレベルまで練習し、子どもを見ながら歌えることが理想です。
左手の伴奏パターンを習得するには、まず右手で旋律だけを歌いながら弾く練習からスタートするのが王道です。旋律と歌詞が頭に入ったら、左手だけで伴奏のみ練習し、最後に両手を合わせます。
「うみ」は音域がそれほど広くなく、コードも基本的なものが中心なので、ピアノ初心者の保育士にも比較的取り組みやすい曲です。YouTubeには「左手2パターン」「初級者向け伴奏」など複数の解説動画があり、自分のレベルに合ったものを選んで参考にするのが効率的な練習法です。
「うみ」の指導ヒントとピアノ伴奏のコツ(初級・上級両方の動画あり)
保育士が知らないと損する「うみ」の著作権と動画・SNS投稿への注意点
「うみはひろいな」という歌詞は日本中に知れ渡っており、保育の現場でも日常的に歌われています。そのせいか「パブリックドメイン(著作権フリー)」と誤解している保育士さんも少なくありません。しかしこれは大きな間違いです。
「うみ」の作詞者・林柳波と作曲者・井上武士は、ともに1974年(昭和49年)に亡くなっています。日本の著作権法では、著作者の死後70年間は著作権が保護されます。つまり2044年まで著作権は有効です。
これが何を意味するかというと、保育園での活動の様子をSNS(InstagramやYouTubeなど)に投稿する際、「うみ」の歌声や伴奏が入った動画を許可なく公開すると、著作権侵害になる可能性があるということです。保育士が善意でアップした動画が、知らないうちに侵害行為になるケースがここに当たります。
2044年まで要注意です。
具体的に気をつけるべき場面を確認しておきましょう。
- 📱 保育活動の様子をInstagramのリールやYouTubeに投稿する場合
- 📱 園の公式SNSに歌の練習動画をアップする場合
- 📱 発表会・お遊戯会の録画をそのままYouTubeに公開する場合
- 📱 保育士個人のTikTokで弾き歌いを投稿する場合
ただし、園内でのみ再生するなど「非公開・限定公開」の運用や、JASRACとの包括契約を結んでいる施設での使用は別途確認が必要です。著作権については、JASRACの公式ページで利用形態ごとに確認できます。また歌詞や楽譜をプリントして配布する場合も同様に著作権の対象になるので注意が必要です。


