象列車の歌を保育に活かす実話と歌詞の伝え方

象列車の歌を保育で伝える:実話・歌詞・活動のすべて

「象列車の歌」を子どもに歌わせると、戦争の残虐さより先に”人の優しさ”への関心が芽生える。

この記事でわかること
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象列車の歌の実話と背景

1949年に実際に走った「ぞうれっしゃ」の歴史と、それが合唱曲になるまでの経緯をわかりやすく解説します。

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合唱曲11曲の構成と見どころ

「ぞうれっしゃがやってきた」全11曲の流れと、保育で取り上げやすい曲の選び方を紹介します。

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保育士が実践できる伝え方

絵本・劇遊び・歌活動など、年齢や場面に応じた具体的な保育への取り入れ方と、注意すべき著作権のポイントもカバーします。

象列車の歌「ぞうれっしゃがやってきた」が生まれた実話の背景

 

「象列車の歌」として知られる合唱構成曲「ぞうれっしゃがやってきた」は、1949年(昭和24年)に名古屋・東山動物園を舞台に実際に起きた出来事を原作としています。太平洋戦争末期、空襲で檻が壊れ猛獣が逃げ出すことへの恐怖から、日本全国の動物園では軍の命令によって動物たちが次々と殺処分されていきました。上野動物園・天王寺動物園でも象は命を落としましたが、名古屋の東山動物園だけは異なる結末を迎えます。

北王英一園長をはじめとする職員たちが、足を鎖で拘束するという条件でかろうじて処分を延期させ、深刻な食糧難の中でも象のエサとなるフスマやマイロをかき集めて生き延びさせたのです。軍が兵糧庫として置いた穀物袋を「忘れた」ふりをして象舎の通路に置き、飼育員たちが”盗む”ことを黙認した軍の獣医大尉もいたと伝わっています。人知れず命を救った大人たちの奮闘によって、マカニーとエルドという2頭の象が戦後まで生き残ったのです。

これは奇跡といっていい話です。

戦争が終わると、「本物の象を見たい」という子どもたちの声が全国から上がり始めました。1949年5月、東京・台東区の子ども議会の代表2人が名古屋市長と東山動物園長を直接訪問し「象を貸してほしい」と請願しました。しかし2頭を引き離す実験をしたところ、象たちは暴れて象舎の鉄壁に頭をぶつけ血を流したため、東京への移送は断念せざるを得ませんでした。その代わりに出た案が「子どもたちを名古屋に連ぶ特別列車」でした。これが象列車の始まりです。

GHQ(連合国軍総司令部)の管理下で自由に臨時列車も立てられない時代に、鉄道局員たちが何度も米軍の輸送機関に請願を繰り返し、ようやく許可を取り付けました。1949年6月18日、彦根から1,400人の子どもたちを乗せた第1号象列車が走りました。続く6月25日には東京からも「エレファント号」(15両編成)が出発し、1,156人の子どもたちが上野駅から夜行で名古屋へ向かいました。その後も大阪・京都・石川・福井・埼玉・千葉など各地から象列車が仕立てられ、その年の秋までに合計1万数千人、近鉄だけでも約4万5,000人の子どもたちが東山動物園へ象を見に訪れました。

つまり、象列車はたった1本ではありません。

この実話は元名古屋市立小学校教諭の小出隆司氏が1976年に自費出版した原作を経て、1983年に岩崎書店から絵本として刊行されました。さらにその絵本をもとに、1985年から1986年にかけて作詞・清水則雄、作曲・藤村記一郎によって合唱構成曲「ぞうれっしゃがやってきた」が完成し、1986年3月30日の初演以降、全国各地で歌い継がれています。

参考:象列車の詳細な経緯と列車の運行記録が確認できる公式ページです。

象列車 – Wikipedia(日本語版)

象列車の歌「ぞうれっしゃがやってきた」全11曲の構成と歌詞のポイント

合唱構成曲「ぞうれっしゃがやってきた」は全11曲から成り、上演時間はおよそ45分です。ただ歌うだけでなく、ナレーションとセリフで物語が進む構成になっており、子どもも大人も一緒に声を合わせて「体験」できるよう設計されています。各曲が比較的短く、シンプルな旋律であることも、幼稚園・保育園の現場で歌いやすい大きな特徴です。

全11曲の構成は次のとおりです。

曲名 内容
第1章 サーカスのうた 木下サーカスで人気者だった4頭の象の紹介
第2章 ぞうを売らないで サーカスから動物園に象が譲られる場面
第3章 雪よ降るな 戦争が始まり、象への不安が募る場面
第4章 動物園へようこそ 子どもたちに愛される象の姿
第5章 動物を殺せ 軍の命令で動物の殺処分が進む悲劇
第6章 悲しみの日 次々と命を落とす動物たちへの悼み
第7章 いくさの終わる日まで 職員たちが必死で象を守り続ける場面
第8章 本物のぞうが見たい 戦後の子どもたちが象を求めて声を上げる
第9章 ぞうをかしてください 子ども議会の代表が園長に直訴する場面
第10章 ぞうれっしゃよはしれ 象列車が全国から名古屋へ走り出す場面
第11章 平和とぞうと子どもたち 子どもたちが象と再会する喜びのクライマックス

保育の現場でよく取り上げられるのは、第10章「ぞうれっしゃよはしれ」と第11章「平和とぞうと子どもたち」の2曲です。実際にたんぽぽ保育園(埼玉県)でも5歳児クラスと職員が「ぞうれっしゃがやってきた」「ぞうをかしてください」「平和とぞうと子どもたち」の3曲を歌い、平和のつどいの場で子どもたちとその意味を共有する取り組みが行われています。

曲の構成が3つのパートに分かれていることもポイントです。第1〜4章(パート1)が象と子どもたちの幸せな日常、第5〜7章(パート2)が戦争による試練と悲しみ、第8〜11章(パート3)が子どもたちの行動と象との再会という流れになっています。この3段構成は「日常→危機→希望の回復」という物語の黄金律に沿っており、幼児が感情的に理解しやすい構造です。

歌詞の特徴としては、難解な言葉を避け、子どもの視点で語られる表現が随所に使われている点が挙げられます。特に第11章の「ワーイ象だ!でっかいな!長いお鼻!大きなお耳!」というセリフは、子どもたちが自分の言葉として自然に発せられる感嘆の表現です。歌詞と物語が一体となっているため、歌いながら自然と「なぜ象列車が走ったのか」を理解できる構成になっています。

これは使えそうです。

楽譜は全音楽譜出版社(ISBN: 978-4117190717)から混声合唱版が発行されており、音楽センターからも合唱構成版楽譜集が約2,000円前後で入手できます。楽譜や参考CDを事前にそろえてから活動に入ることが、クオリティを安定させる基本です。

参考:合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」全11章の歌詞・台本が確認できるページです。

合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」目次 – サークルおけら

象列車の歌を保育に取り入れるための年齢別・場面別の伝え方

「ぞうれっしゃがやってきた」を保育の場でどう伝えるかは、子どもの年齢と活動のねらいによって変わります。年齢別に大まかな目安を押さえておくことが、活動を成功させる第一歩です。

0〜2歳児に対しては、歌のメロディーを聴かせること自体が目的になります。「ぞうれっしゃよはしれ」のような繰り返しが多くリズムが明快な曲を、日常の保育の中でBGMとして流したり、保育士が歌って聴かせる機会を設けたりするだけで十分です。意味の理解より先に「この曲を聴いたことがある」という音の記憶を刻むことが大切です。

3〜4歳児の場合は、絵本との組み合わせが最も効果的です。岩崎書店刊行の絵本「ぞうれっしゃがやってきた」(作・小出隆司、絵・箕田源二郎)を読み聞かせ、象が大好きな子どもたちがどうして列車で名古屋まで行ったのかという「旅の理由」を絵とともに感じ取らせましょう。「戦争」という言葉を使わなくても、「動物たちが大変な目にあった時代があったんだよ」という伝え方で十分に伝わります。読み聞かせのあとに第11章のクライマックスの曲を流すと、子どもたちが自然と「よかった!」という感情を抱きやすくなります。

5歳児には、劇遊びや発表会での取り組みが広がります。11曲全曲上演は約45分かかるため、保育の現場では第8〜11章のパート3をベースにした短縮版の構成が現実的です。ナレーションを保育士が担当し、子どもたちは合唱と一部のセリフを受け持つ形にすると、年長クラスでも十分に発表として成立します。北海道・富山・福岡などさまざまな地域の保育園・幼稚園がこの形で平和のつどいや学習発表会に取り組んでいます。

象列車の歌が伝われば大成功です。

また、8月の平和月間・終戦記念日(8月15日)前後に特化した活動として取り入れる園も多くあります。たとえば「平和を願うタペストリーづくり」として、象のシルエットを描いた台紙に子どもや保護者がメッセージを書き込むといったクラフト活動と歌活動を組み合わせる方法も、実践例として報告されています。歌だけに終わらず、視覚的な成果物として残せることで、保護者への発信にもなります。

参考:保育園での「ぞうれっしゃがやってきた」を活用した平和のつどいの実践報告です。

平和のつどい|たんぽぽ保育園の活動レポート

象列車の歌を保育で使う際に知っておくべき著作権の注意点

保育士が「ぞうれっしゃがやってきた」を保育や発表会で歌う際、著作権の扱いについて知らないまま進めると思わぬトラブルにつながることがあります。ここを正しく理解しておくことで、安心して活動に集中できます。

まず基本的な考え方として、著作権法第38条では「非営利・無料・無報酬」という3つの条件がすべて揃う場合に限り、著作権者の許諾なく公に演奏・上演できると規定されています。つまり、保育園の日常保育の中で子どもたちが歌ったり、入場無料の発表会で演じたりする場合は、この条件を満たせばJASRACへの使用料申請なしで問題ありません。

ただし、「有料の発表会チケットを販売している」「保育士に演奏報酬が発生している」「CDや動画に録音・録画してネット配信する」といったケースでは、著作権38条の免除対象外となります。特に近年は保育園の行事をYouTubeなどで限定公開する取り組みも増えており、この「配信」の部分が見落とされやすいポイントです。JASRACのルールでは、インターネットを通じた配信は「演奏」とは別の利用形態として扱われるため、無料公開であっても別途手続きが必要になります。

著作権の問題は見落としがちです。

また、発表会で使うために楽譜を必要な分だけコピーするという行為も、著作権法上は「複製権」の侵害にあたります。園で使う楽譜は、人数分を正規購入するか、全音楽譜出版社や音楽センターの楽譜集を活用するのが正しい対応です。楽譜集は1冊約1,200〜2,000円程度で流通しており、複数の合唱メンバーが使う場合は人数分購入するのが原則です。

学校教育法に基づく教育施設(保育所・幼稚園・認定こども園を含む)では、授業の一環として音楽を利用する場合は著作権法35条の適用があり、複製にも一定の許容範囲があります。ただしこれも「授業の過程における利用」という限定がつくため、広報物や保護者向け配布物への楽譜掲載などは対象外です。不明な点はJASRACの公式サイトで確認するか、問い合わせフォームで照会することが最も確実です。

著作権の基本ルールはJASRAC公式で確認が条件です。

学校など教育機関での音楽利用 – JASRAC公式サイト

象列車の歌が持つ平和教育としての可能性と保育士の独自視点

「ぞうれっしゃがやってきた」が他の戦争関連教材と根本的に異なるのは、悲劇ではなく「希望の成就」でストーリーが締めくくられる点にあります。上野動物園の象の餓死を描いた「かわいそうなゾウ」などは感情的な衝撃が大きく、幼児に伝えるには内容が重すぎるという声もあります。一方で「ぞうれっしゃがやってきた」は確かに戦時中の悲劇を扱いながらも、クライマックスは子どもたちが象に会えた喜びです。保育士の立場からすると、「怖い・悲しい話」ではなく「人の優しさが奇跡をつくった話」として語ることができるのが、この教材の最大の強みです。

平和教育でよくある失敗は「怖さで伝えてしまうこと」です。

「平和だから動物園に動物がいる」という逆説的な視点も、保育の文脈で使いやすい切り口です。子どもたちが毎日見ている動物園の風景が、実は平和の象徴であると気づかせることができます。近くの動物園への遠足の前後に「ぞうれっしゃ」の話を組み込むと、「象に会えること自体が幸せなことだ」というメッセージを体験として刷り込むことができます。遠足→絵本・歌活動→感想を描く、という3ステップの流れは、保護者からの反応も得やすい実践的な構成です。

また、この歌は3歳から83歳まで世代を超えて共に歌えることが確認されています(富山県・NPO法人「大空へ飛べ」の活動実績)。保育園での活動だけでなく、祖父母参観や地域の平和イベントに合わせて保護者・地域の方と一緒に歌う機会に発展させることも可能です。「子どもと一緒に初めて知った」という保護者の反応が生まれやすく、家庭でも話題が続きやすい教材でもあります。

歌が家庭での対話のきっかけになるのが理想です。

さらに、発表会などで子どもたちが「ぞうれっしゃよはしれ」を歌う姿には、普段の発表とは異なる”真剣さ”が生まれることがあります。歌詞の意味を自分のこととして理解した上で歌う経験は、音楽的な表現力だけでなく、「自分の声で伝える」という意識の芽生えにもつながります。保育士がただ練習させるのではなく、「なぜこの歌を歌うのか」を毎回の練習の始めに1〜2分話すだけで、子どもたちの歌い方が変わることは多くの実践保育士が報告しています。

参考:「ぞうれっしゃがやってきた」を平和教育の文脈で深く解説した音楽専門家による考察記事です。

平和だからこそ・・・『ぞうれっしゃがやってきた』 | 京都市原楽器

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