シュタイナー教育おもちゃが保育士の保育観を変える理由

シュタイナー教育のおもちゃを保育士が現場で活かす方法

市販の知育玩具より「何もしない木の棒」の方が、子どもの創造力テストで3倍高いスコアを出すことがあります。

🧸 この記事でわかること
🌿

シュタイナー教育のおもちゃとは何か

自然素材・シンプルな形・特定の色彩にこだわる理由と、その教育的根拠を解説します。

🏫

保育士が現場で選ぶ基準

年齢別の選び方・素材の安全基準・コスト感など、実際の保育現場で使えるチェックポイントをまとめます。

💡

導入時のよくある失敗と対策

子どもが最初に遊ばない・保護者への説明が難しいなど、現場でありがちな壁とその乗り越え方を紹介します。

シュタイナー教育のおもちゃが持つ「自然素材」へのこだわりと保育士が知るべき理由

 

シュタイナー教育では、おもちゃの素材選びに明確な哲学があります。木・布・羊毛・石・貝殻など、自然界に存在する素材だけを使うことが原則です。ルドルフ・シュタイナーは「子どもは手のひらで世界を学ぶ」と考えました。

プラスチック製のおもちゃが触覚に与える刺激は、木材と比べて均一すぎるという指摘があります。木目の凹凸・重さ・温かみ・においは、脳の感覚統合に豊かな情報を与えます。これは保育士にとって見逃せない視点ですね。

実際、ドイツのシュタイナー系幼稚園(シュタイナー・キンダーガルテン)では、プラスチック製玩具の使用を原則として排除しています。日本国内でも、シュタイナー教育を取り入れた認定こども園が2020年代以降に増加しており、保育士が素材知識を持つことの重要性が高まっています。

自然素材のおもちゃは「五感を同時に刺激する」のが特徴です。たとえば羊毛フェルトのボールは、視覚(柔らかな色)・触覚(毛の質感)・固有感覚(重さと弾み方)を同時に使います。つまり1つのおもちゃで複数の発達を同時にサポートできます。

保育士が素材を選ぶ際は、ST(安全玩具)マークの確認が前提条件です。自然素材であっても、塗料・接着剤・表面加工に有害物質が含まれていないかを必ず確認しましょう。素材へのこだわりが原則です。

シュタイナー教育のおもちゃを年齢別に選ぶ際の具体的な基準

シュタイナー教育には「7年周期」という発達観があります。0〜7歳(第一七年期)は「意志の発達」の時期で、模倣と体を動かすことが学びの中心です。この時期のおもちゃ選びは、この発達観に沿うことが基本です。

0〜3歳は、感覚を刺激するシンプルな素材が適しています。

  • 🌲 木のリング・積み木:形の認識と手の操作を同時に育てます
  • 🧶 羊毛フェルトのボール:直径7〜8cm(みかん1個分くらい)が握りやすく安全です
  • 🌿 シルクのスカーフ:薄くて軽く、いないいないばあ遊びや色彩認識に使えます

3〜6歳になると、想像力を使う「ごっこ遊び」が急発達します。

  • 🪵 グナスター(木の棒):長さ約15〜20cm(ハガキの長辺より少し短い程度)で、剣にも橋にもなります
  • 🧸 シンプルな縫いぐるみ・人形:顔のパーツが少ないほど子どもの想像で補う余地が生まれます
  • 🪨 石・貝殻・松ぼっくり:お金ごっこ・料理ごっこなど多様な遊びへの転用が可能です

ここで重要なのが「顔のないシュタイナー人形」です。意外ですね。一般的な人形は目・鼻・口が描かれていますが、シュタイナー人形はあえて顔を描かない(または最小限にする)設計です。子ども自身がその瞬間の感情に合わせて「笑っている顔」「怒っている顔」を想像して投影します。これは感情認知と共感力の発達を促す設計です。

保護者への説明がしにくい場合は、「子どもの想像力が育つ人形です」という一言が伝わりやすいです。これは使えそうです。

シュタイナー教育のおもちゃの色彩選びと保育環境への応用

シュタイナー教育では、色は子どもの魂に直接働きかけると考えます。このため、おもちゃだけでなく保育空間の壁・カーテン・テーブルクロスの色まで厳密に設計されています。

0〜3歳には暖色系(黄・橙・赤)が推奨されます。これらは「温かさ・安心・エネルギー」を感じさせる色です。3〜6歳には青・緑・紫などの冷静な色を少しずつ取り入れることが多く、感情の幅が広がる時期に合わせた設計です。

日本では「モンテッソーリとシュタイナーどちらが良いか」が議論されますが、色彩観は対照的です。モンテッソーリでは原色・鮮明な色を使って視覚認識を明確にするのに対し、シュタイナーでは淡い混色・水彩的なトーンで感情と想像力を優先します。つまり目的が違う設計です。

保育士が実践しやすい方法として、おもちゃ棚に置くアイテムの「色の統一感」があります。たとえば木の棚に自然色の布を敷き、木製おもちゃ・羊毛製品をグルーピングすると視覚的なノイズが減り、子どもが落ち着きやすい環境になります。環境整備は保育士の力量です。

市販品で取り入れやすいのは、エルゴポイント社やNIC社(ドイツ)の木製ブロック、またはニチガン・マテリアルなど国内業者が輸入販売するシルクスカーフ類です。1枚1,000〜2,000円程度から入手でき、保育室に10〜15枚用意するだけでシュタイナー的な色彩環境に近づきます。

保育士がシュタイナーのおもちゃを導入する際の失敗パターンと回避法

保育士がシュタイナーのおもちゃを初めて導入するとき、最も多い失敗は「子どもが最初に遊ばない」という問題です。これには理由があります。

現代の子どもの多くは、音が出る・光る・キャラクターが描かれた玩具に慣れています。シュタイナー系のシンプルなおもちゃは、最初は「物足りない」と感じることがあります。適応期間は平均2〜4週間程度が目安です。

この移行を助ける方法が「モデリング遊び」です。保育士自身がシルクスカーフを広げてひらひらさせたり、木の棒を積み上げてみたりすることで「こんな遊び方があるんだ」と子どもに気づかせます。指示ではなく見せることが大事です。

もう1つのよくある失敗は「保護者への説明不足によるクレーム」です。シンプルなおもちゃを見た保護者が「何も教えてもらえていない」と誤解することがあります。特に、顔のない人形に対して「不気味」という反応を示す保護者が一定数います。厳しいところですね。

対策としては、入園説明会や保護者向け掲示で「シュタイナー教育の素材・色・遊び方の哲学」を1枚のフライヤーにまとめておくことが有効です。「なぜこのおもちゃか」の理由を先に伝えることで、理解と共感を得られます。事前の情報共有が条件です。

費用面では、既存のプラスチック玩具を一気に置き換えようとすると1クラス分で20万〜30万円規模になることもあります。まずは「木の積み木セット1箱(5,000〜8,000円)+シルクスカーフ10枚(約1万円)」の計1〜2万円から試験導入するのが現実的です。

保育士だけが知るシュタイナーおもちゃの「独自活用法」:季節の自然物と組み合わせる

これはあまり語られない視点です。シュタイナー教育では「季節の机(ネイチャーテーブル)」という習慣があります。これはシュタイナー幼稚園の定番設備ですが、日本の保育現場に応用するときに独自の工夫が生まれています。

ネイチャーテーブルとは、その季節に合わせた自然物(春なら桜の枝・春の野草、秋なら栗・どんぐり・紅葉した葉)を保育室の一角に並べたコーナーのことです。シュタイナーのおもちゃと自然物を組み合わせることで、子どもが「季節のサイクル」を体で感じます。

日本の保育現場での応用例をいくつか紹介します。

  • 🌸 :桜の小枝 + 羊毛フェルトのピンク・白スカーフで「桜吹雪ごっこ」
  • 🍂 :どんぐり + 木のお皿で「どんぐりレストラン」ごっこ
  • ❄️ :松ぼっくり + 白いシルクスカーフで「雪景色の世界」を構成遊び

コストはほぼ0円です。散歩中に子どもと一緒に集めることができ、集めること自体が保育活動になります。

この手法の最大のメリットは「おもちゃの入れ替えコストがほぼかからないこと」と「子どもが環境の変化に敏感になること」です。ある調査では、ネイチャーテーブルを設置した保育室では、子どもの「今日も来たい」という登園意欲が高まったという保育士の報告が複数あります。

さらに踏み込むと、シュタイナー教育では「おもちゃは子どもが触れる前に、大人が心をこめて作るものである」という考え方があります。保育士がフェルトで小さな人形を手作りして保育室に置くことは、このフィロソフィーの実践です。市販品0円・自作時間約2〜3時間(フェルト人形1体)で実現できます。

手作りキットは「羊毛フェルト 保育 手作り」で検索すると1,500〜3,000円程度で入手でき、初心者でも作れるキットが充実しています。作る過程も保育士自身の学びになるということですね。

以下は参考情報として有用なリンクです。

シュタイナー教育の理念・玩具の考え方について日本シュタイナー幼児教育協会が概要を公開しています。

日本シュタイナー幼児教育協会 公式サイト

自然素材おもちゃの安全基準(STマーク)について消費者庁・製品安全協会の情報が参考になります。

製品安全協会 STマーク制度について

シュタイナー教育入門Ⅱ 9歳から14歳までの子どもの成長と気質・メディア