いわせひろし絵本活用術
いわせひろしさんの絵本は保育教材として不向きです。
いわせひろしさんの絵本の魅力と保育での位置づけ
いわせひろしさんは、子どもたちを笑いの渦に巻き込む絵本作家として知られています。代表作『ぶたのたね』は、足の遅いおおかみが「ぶたのなる木」を育てようとする奇想天外なストーリーで、1989年の出版以来35年以上も子どもたちに愛され続けています。
このシリーズは累計150万部を超える人気作品です。
作品の特徴は、予想を裏切る展開とナンセンスなユーモアにあります。『ぶたのたね』では、木に実ったぶたたちがドタドタ落ちてくる場面で、子どもたちは大笑いします。こうした「ありえない」設定が、子どもの想像力を刺激するのです。
保育現場では、笑いを共有する体験が集団の一体感を育てます。いわせ作品は、クラス全体で楽しめる読み聞かせ教材として最適です。特に4歳児から5歳児クラスでは、物語の面白さを友達と共感し合う姿が見られます。
ただし、ナンセンス絵本は「正しい知識」を教える教材ではありません。むしろ「考えること」「感じること」を大切にする時間として活用するのが正解です。
いわせひろし絵本の年齢別活用法
3歳児クラスでは、絵の面白さに注目させる読み方が効果的です。『ぶたのたね』の表紙を見せながら「このぶたさん、どこにいるかな?」と問いかけると、子どもたちは木の上のぶたを探し始めます。ページをめくるたびに「わあ!」という驚きの声が上がるはずです。
この年齢では物語全体を理解するより、視覚的な驚きを楽しむことが大切です。
4歳児になると、ストーリーの展開を予想する力がついてきます。おおかみが水やりをする場面で「次はどうなると思う?」と尋ねると、「ぶたが大きくなる!」「木が倒れちゃう!」など、様々な意見が出てきます。この予想タイムが、子どもの思考力を育てる貴重な時間になるのです。
5歳児クラスでは、物語の矛盾を楽しむ余裕が生まれます。「本当にぶたは木になるのかな?」という疑問から、現実とフィクションの違いを考える対話に発展させることもできます。ただし、正解を教え込むのではなく、「面白いよね」という共感が基本です。
読み聞かせの時間は10分程度が目安です。子どもの集中力が途切れる前に終わらせることで、「もっと読んで!」という気持ちを残せます。
いわせひろし絵本から広がる保育活動の実例
『ぶたのたね』を読んだ後、「自分だけの不思議な木」を描く制作活動が人気です。画用紙に大きな木を描き、そこに「おにぎりの実」「くるまの実」など、子どもが好きなものを貼り付けていきます。5歳児クラスでは、「どうしてこの実がなるの?」とストーリーも考えさせると、想像力がさらに広がります。
実がなるまでの過程を劇遊びにする方法もあります。水やり係、肥料係、収穫係など役割を分担し、みんなで不思議な木を育てる設定です。最後に実が落ちてくる場面では、ホールの天井から風船を落とすと大盛り上がりになります。
この活動で大切なのは、正しさより楽しさです。
図鑑と組み合わせる活動も効果的です。絵本で不思議な木を楽しんだ後、本物の植物図鑑を見せて「本当の木には何がなるかな?」と問いかけます。りんご、みかん、柿など、実際の果物を知ることで、現実とフィクションの区別がつくようになります。
保護者向けの絵本紹介コーナーに、いわせ作品を置くのもおすすめです。「家でも笑いながら読めます」というコメントを添えると、貸し出し率が上がります。親子で笑い合う時間が、家庭での絆を深めるのです。
いわせひろし作品を使った言葉遊びと読解力育成
『ぶたのたね』には、擬音語・擬態語が豊富に使われています。「ドタドタドタ」「ズシーン」など、ぶたが落ちる音を体で表現する活動が効果的です。保育者が最初に手本を見せ、次に子どもたちが自由に体を動かします。
音と動きを結びつけることで、言葉の理解が深まります。
オリジナルの擬音語を考える遊びも盛り上がります。「もしうさぎが落ちてきたら、どんな音がする?」と問いかけると、「ピョンピョン」「フワフワ」など、子どもらしい発想が飛び出します。これらを紙に書いて壁に貼ると、文字への興味も育ちます。
物語の「続き」を考える活動は、5歳児クラスで特に効果的です。「おおかみはこの後どうしたかな?」と尋ねると、「今度はきりんのたねを育てる」「ぶたと友達になる」など、多様な展開が生まれます。絵と文章でオリジナルの続編を作ると、小学校入学前の表現力育成につながります。
文字を読み始めた子どもには、絵本のセリフを指でなぞる活動が有効です。「ぶたのたねをうえよう」などの短い文を一緒に読むことで、読む力の基礎が育ちます。
ただし、無理強いは禁物です。
保育士が知っておきたいいわせひろし作品の選び方
いわせひろしさんの絵本は20冊以上出版されています。その中で保育現場に最も適しているのは、やはり『ぶたのたね』シリーズです。シリーズ4作すべてが異なる展開を持ち、繰り返し読んでも飽きません。
初めて導入するなら、1作目から順に読むのがおすすめです。
『100かいだてのいえ』シリーズで知られるいわいとしおさんと混同されることがありますが、いわせひろしさんは全く別の作家です。いわせ作品はナンセンスなユーモア、いわい作品は縦に開く絵本の仕掛けが特徴で、どちらも保育で使えます。
季節行事に合わせた選び方もあります。秋の運動会シーズンには『ぶたのたね』の「走る」テーマが、夏のプール遊びの時期には『100かいだてのいえ』(いわいとしお作)の海編が、子どもの体験とリンクして楽しめます。
購入時は図書館で試し読みしてから決めるのが確実です。自分が心から面白いと感じた作品でないと、読み聞かせの熱量が子どもに伝わりません。保育者自身が笑える絵本を選ぶことが、成功の秘訣です。
作品一覧とレビューが確認できる公式データベースで、保育士の実践例も掲載されています。
いわせひろし絵本を使った保育記録の書き方
保育記録には、子どもの具体的な反応を記録します。「Aちゃんが『ぶたが落ちるところ』で大笑いし、隣のBくんも笑い出した」という観察が、次回の読み聞かせの改善につながるのです。
記録のポイントは、笑ったタイミングと理由です。
「予想外の展開に驚く姿」「友達と目を合わせて笑い合う場面」「自分なりの解釈を話す発言」など、具体的なエピソードを残します。これらは保護者面談での話題にもなり、家庭での絵本選びのアドバイスにも使えます。
保育指針との関連を記録する場合は、「言葉」領域の「絵本を通じて想像する楽しさを味わう」に該当します。また「人間関係」領域の「友達と共通の体験を楽しむ」とも結びつきます。こうした記述が、保育の質を証明する材料になります。
写真記録も効果的です。子どもたちの笑顔や、制作した「不思議な木」の作品を撮影し、ドキュメンテーションとしてまとめます。保護者が見える場所に掲示すると、保育の意図が伝わりやすくなります。


