三善晃 合唱|作品の特徴と演奏のポイント

三善晃 合唱作品の魅力

三善晃の合唱曲は幼児が歌うには難易度が高すぎます。

この記事の3つのポイント
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三善晃作品の特徴

現代音楽の技法を用いた高度な和声と、日本語の響きを活かした独特の音楽表現が特徴です

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保育現場での活用法

子ども向け作品の鑑賞を通じて、豊かな音楽性と表現力を育てる方法を紹介します

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演奏時の注意点

複雑なリズムと和声進行を正確に表現するための練習方法と指導のコツを解説します

三善晃 合唱作品の音楽的特徴

 

三善晃(1933-2013)は日本を代表する現代音楽作曲家で、合唱作品においても独自の世界を築きました。彼の合唱曲は、西洋音楽の技法と日本語の持つ音韻的特性を見事に融合させた点が最大の特徴です。

代表作「唱歌の四季」や「五つの童画」では、子どもの詩を題材にしながらも、和声やリズムに高度な現代音楽技法が用いられています。不協和音を効果的に配置し、緊張と解決のバランスを絶妙にコントロールしているのです。

音域の広さも特筆すべき点です。ソプラノパートでは高音域のhis²(シの♯)まで要求される曲も少なくありません。これは一般的な合唱曲よりも半音から全音高い設定です。バスパートも低音域のD(レ)以下まで下がる箇所があり、声域の広さが演奏者に求められます。

リズム面では、変拍子や複雑なシンコペーションが頻繁に登場します。4分の3拍子から8分の5拍子への急な転換、あるいは同時に異なる拍子が重なるポリリズムの使用も見られ、演奏には高い技術が必要です。

つまり専門的な訓練が不可欠です。

三善晃 合唱曲の演奏難易度と求められる技術

三善晃の合唱作品を演奏するには、通常の合唱曲以上の技術力が求められます。具体的にどのような技術が必要なのでしょうか。

まず音程の正確性です。無調性や十二音技法に近い手法が用いられる箇所では、隣接する音との音程差が半音単位で頻繁に変化します。絶対音感がなくても相対音感を高度に発達させる必要があります。音程のずれが0.5半音(約25セント)あるだけで、作曲家の意図した響きが損なわれてしまうのです。

リズム感覚も重要な要素です。8分音符を基準にした細かい音価の変化や、タイで結ばれた複雑なシンコペーションパターンが多用されます。メトロノームを使った地道な練習が欠かせません。特に「王孫不帰」などの難曲では、指揮者の拍を正確に読み取る能力が試されます。

発音の明瞭さも見逃せません。日本語の子音と母音の組み合わせを、音楽的なフレーズの中で自然に表現する技術が必要です。例えば「さくら」という言葉の「s」「k」「r」といった子音を、それぞれの音高とリズムに合わせて正確に発音しなければなりません。

声量のコントロールも高度です。pppp(ピアニッシッシッシモ)からffff(フォルティッシッシッシモ)まで、6段階以上の強弱変化を使い分ける必要があります。息の量と声帯の張力を繊細に調整し、音色を保ちながら音量を変化させる技術が求められるのです。

演奏には専門訓練が必須です。

音楽之友社「三善晃 合唱作品集」では、具体的な演奏技法と練習方法が詳しく解説されています。

保育現場で活用できる三善晃 合唱作品

保育現場で三善晃の作品をどう活用すればよいのでしょうか。直接的な演奏は難しくても、鑑賞教育や音楽的感性を育てる教材として価値があります。

「五つの童画」は保育現場での鑑賞に適した作品です。金子みすゞの詩を題材にした5曲からなる組曲で、各曲が2〜3分程度と短く、子どもたちの集中力が続く長さに設定されています。「わたしと小鳥とすずと」では、詩の世界観が音楽で見事に表現され、4〜5歳児でも情景をイメージしやすい内容です。

CDやYouTubeでプロの演奏を聴かせることで、子どもたちに多様な音楽体験を提供できます。演奏時間が短い曲を選び、絵本の読み聞かせと組み合わせる方法が効果的です。音楽を聴いた後に「どんな気持ちになった?」「何が見えた?」と問いかけることで、想像力と言語化能力が育ちます。

保育士自身の音楽的成長にも役立ちます。三善作品の楽譜分析を通じて、和声進行や対位法の理解が深まり、日常の音楽指導の質が向上するのです。例えば「おかあさん」という曲の冒頭4小節を分析するだけで、不協和音がどのように解決されるか、テンションがどう使われているかが学べます。

鑑賞教育が基本です。

ただし注意点があります。複雑な和声や無調的な響きに慣れていない子どもに、いきなり難解な現代曲を聴かせると混乱や拒否反応を示す可能性があります。まずはわらべうたや童謡で協和音に親しませ、段階的に音楽的語彙を広げていく配慮が必要です。導入期には「さくら」や「ふじ山」など、調性が明確な三善作品から始めることをおすすめします。

三善晃 合唱の練習方法と指導のコツ

三善晃の合唱作品を練習する際、効率的な方法と指導のコツがあります。

音取りの段階では、各パート別に徹底的な反復練習が必要です。1小節ずつ区切って、正確な音程とリズムを体に染み込ませます。メトロノームを使い、テンポを通常の半分(例えば♩=60を♩=30に)に落として練習すると、複雑なリズムパターンも習得しやすくなります。

和声感を養うには、2つのパートずつ組み合わせて練習する方法が効果的です。ソプラノとアルト、アルトとテノール、テノールとバスという具合に、隣接するパート同士で合わせることで、不協和音程の響きに慣れていきます。最初は違和感があっても、10回、20回と繰り返すうちに、その響きが自然に感じられるようになるのです。

発音練習では、子音を強調した読み稽古が役立ちます。歌詞を楽譜のリズム通りに読み上げ、各子音をはっきり発音する練習を5分程度行います。「たちつてと」「かきくけこ」などの無声子音は特に意識的に発音し、音楽の流れを止めずに言葉を乗せる技術を磨きましょう。

録音を活用した自己チェックも重要です。スマートフォンのボイスレコーダーアプリで練習を録音し、客観的に聴き直すことで、音程のずれやリズムの乱れに気づけます。週に1回、5分程度の録音を聴き返す習慣をつけるだけで、上達速度が2倍以上早まります。

反復練習が上達の鍵です。

全音楽譜出版社では、三善晃の合唱曲の楽譜と練習用音源が入手できます。

三善晃 合唱作品が音楽教育に与える影響

三善晃の合唱作品は、日本の音楽教育に大きな影響を与えてきました。

その教育的価値はどこにあるのでしょうか。

現代音楽の語法を学ぶ入口として最適です。クラスター和音(音を塊として扱う技法)、トーンクラスター(半音階的な音の集合)、特殊奏法といった20世紀音楽の技法が、合唱という親しみやすい形で体験できます。「王孫不帰」では、無調音楽の美しさと表現力の豊かさを、実際の演奏を通じて理解できるのです。

日本語の音楽的可能性を再発見させてくれます。三善は日本語の高低アクセントやイントネーションを旋律線に巧みに取り入れ、言葉と音楽の一体感を生み出しました。この手法を学ぶことで、保育士が日常的に歌う童謡やわらべうたの指導にも応用できます。

アンサンブル能力の向上にも貢献します。複雑な対位法や不協和音を含む和声を正確に演奏するには、他のパートの音をよく聴き、自分の音程を調整する能力が不可欠です。この訓練を通じて、音楽的コミュニケーション能力が飛躍的に向上します。

表現力の幅が広がります。三善作品では、単なる美しい響きを超えて、緊張感、不安、喜び、静寂といった多様な感情を音楽で表現する技術が要求されます。保育現場で子どもたちに多彩な感情表現を教える際、この経験が大いに役立つのです。

音楽的視野が広がります。

ただし、演奏技術の習得には時間がかかります。アマチュア合唱団が三善作品を演奏会のレパートリーに加える場合、最低でも3〜6ヶ月の準備期間が必要です。保育士が個人で学ぶ場合は、まず音源を繰り返し聴き、楽譜分析から始めることをおすすめします。全日本合唱連盟が主催する講習会に参加すれば、専門家の指導を直接受けることも可能です。

三善晃 合唱の楽譜入手方法と関連資料

三善晃の合唱楽譜を入手する方法と、学習に役立つ関連資料を紹介します。

楽譜は主に全音楽譜出版社、音楽之友社、カワイ出版から発行されています。価格は1冊1,500円〜3,000円程度で、組曲の場合は2,500円〜4,000円が相場です。大型書店の楽譜売り場や、オンラインショップで購入できます。絶版になっている作品もあるため、図書館の音楽資料室で閲覧するのも一つの方法です。

音源はCD、配信、YouTubeで入手可能です。「東京混声合唱団」「合唱団ゆうか」などのプロ合唱団による録音が高品質で参考になります。CD1枚2,500円〜3,500円程度、配信は1曲250円〜が目安です。無料で聴ける公式動画も増えており、各合唱団の公式チャンネルで検索すると見つかります。

楽譜と音源は別々に用意します。

全日本合唱連盟では、三善晃作品の講習会情報や演奏会のスケジュールが確認できます。

研究書籍では、「三善晃の音楽」(音楽之友社)が最も詳しい解説書です。作曲技法の分析から、作曲家本人のインタビューまで収録され、3,800円で入手できます。保育士向けには、やや専門的すぎる内容も含まれますが、第3章「合唱作品の世界」は必読です。

オンライン資料も充実してきました。国立国会図書館デジタルコレクションでは、三善晃に関する論文や雑誌記事が無料で閲覧できます。「三善晃 合唱 分析」で検索すると、音楽学の専門論文が20本以上ヒットし、PDFでダウンロード可能です。

演奏動画の活用も効果的です。YouTubeで「三善晃 合唱」と検索すると、全国の大学合唱団やアマチュア合唱団の演奏が視聴できます。同じ曲でも指揮者や団体によって解釈が異なるため、複数の演奏を比較することで、作品への理解が深まります。

楽譜を購入する際の注意点があります。版によって音符の配置や強弱記号の位置が微妙に異なる場合があるため、合唱団で練習する際は全員が同じ版を使うことが重要です。出版社と版番号を確認してから注文しましょう。楽譜の再版時に作曲家自身が修正を加えたケースもあり、最新版を使うことで作曲家の最終的な意図に沿った演奏ができます。


三善晃「レクイエム」