四部輪唱とは保育での指導法
四部輪唱を保育で実施すると年長児でも混乱します。
四部輪唱の基本構造と仕組み
輪唱とは、同じ旋律を複数のグループが時間差で歌う合唱形式です。グループ数によって二部輪唱、三部輪唱、四部輪唱と呼ばれます。四部輪唱では4つのグループが順番に入り、それぞれが同じメロディーを一定の間隔(通常2〜4小節)をずらして歌います。everplay+1
各グループが異なるタイミングで歌うことで、音が重なり合い美しいハーモニーが生まれます。例えば1小節ごとにグループが入る場合、1番目のグループが1小節目を歌い始めたら、2番目のグループは2小節目から、3番目は3小節目から、4番目は4小節目から歌い始める仕組みです。ragnet+1
つまり四部輪唱が完成した状態では、4つの異なる部分が同時に響くことになります。この技法が成立するには、旋律が自己と重なったときに許容される和声進行を生む設計が必要です。音域が狭く、基本和音にうまく触れる構造が求められます。
参考)輪唱曲の魅力と技法:歴史・理論・名曲から作曲・演奏のコツまで…
四部輪唱と二部・三部輪唱の違い
声部数が増えるほど難易度は上がります。二部輪唱は2つのグループで行うため比較的シンプルで、保育現場でも取り組みやすい形態です。三部輪唱になると3つのグループが重なり、ハーモニーの幅が広がります。syowakai+1
四部輪唱はさらに複雑になります。4つのグループが異なるタイミングで歌うため、子どもたちは他の3つの声に惑わされず自分のパートを維持する必要があります。タイミングをずらして入る人数が増えるほど、難易度は上昇します。ragnet+1
混声四部合唱(SATB)とは別物です。混声四部合唱はソプラノ、アルト、テノール、バスの4パートがそれぞれ異なる旋律を歌いますが、四部輪唱はすべてのグループが同じ旋律を歌う点が大きな違いです。esutawachorus+2
四部輪唱が保育現場で難しい理由
幼児の発達段階と四部輪唱の難易度が合っていません。幼児は頭声的発声の習得が難しく、声域も未発達で狭いため、複雑な音楽表現には限界があります。小学校でも頭声的発声は中学年以降、または高学年で指導されることが多いです。
参考)https://www.kanto-gakuen.ac.jp/junir/info/pdf/bulletin_595163.pdf
他のパートに惑わされないという能力が求められます。二部輪唱でも「つられないように注意」が必要ですが、四部になると3つの異なる声部が同時に響くため、自分のパートを維持することが極めて困難になります。
年長児でも混乱するケースが多いです。
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段階的な指導期間も長期間必要です。デイサービスでの輪唱プログラムでは、3回〜10回程度の利用日の中で3つのクールに分けて進める計画が推奨されています。これは大人向けのプログラムであり、幼児にはさらに時間がかかります。保育現場で四部輪唱まで到達するには相当な準備期間が必要です。
四部輪唱に適した年齢と発達段階
小学校中学年以降が現実的なラインです。文部科学省の学習指導要領解説では、輪唱の曲を扱う際に「ずれて音が重なることで音の重なりや和音が生まれる面白さを感じ取る」ことを目標としています。
これは基本的な音楽理解が必要な活動です。
保育園・幼稚園では二部輪唱が適切です。デイサービスの輪唱プログラムでも「2つのグループ」で実施する設計になっており、これは参加者の負担を考慮した結果です。幼児の場合、まず斉唱を十分に行い、その後段階的に二部輪唱に近づけていくアプローチが推奨されています。
三部以降は小学校高学年からが無難です。変声期に差し掛かる中学生向けには混声三部合唱(ソプラノ・アルト・男声)が採用されており、これは発達段階を考慮した構成です。四部輪唱を目指すなら、子どもたちが音楽的な基礎力を身につけてからが安全です。
参考)合唱の種類(形態・編成)を覚えよう|声・伴奏による違いと魅力…
四部輪唱を成功させる段階的指導法
斉唱から始めることが絶対条件です。いきなり輪唱に入るのではなく、まず全員で同時に歌う斉唱を2回程度繰り返し、メロディーと歌詞をしっかり定着させます。同時発声・同時終止の合図を丁寧に行い、最後の音を十分に伸ばす練習も重要です。
次に二部輪唱で音の重なりを体験させます。2つのグループに分け、歌い出しの合図をしっかりと行います。「せーの!」と大きな声でタイミングを促してあげると、子どもたちが入りやすくなります。2回程度は繰り返して、2つのグループの声が調和する時間を確保します。ragnet+1
二部が安定したら三部へ、そして四部へと進めます。ただし保育現場では二部で十分という認識が大切です。三部以降は小学校以降の課題と考え、無理に進めるとかえって音楽嫌いを生む可能性があります。輪唱が成立したという実感を持ってもらうことが最優先です。
四部輪唱の指導で避けるべき失敗パターン
練習不足のまま本番を迎えるパターンが最も多い失敗です。斉唱の段階を飛ばして輪唱に入ると、子どもたちはメロディーを覚えきれずに混乱します。デイサービスのプログラムでも「斉唱を十分に行った後に、段階的に輪唱に近づけていく」ことが明記されており、これは大人でも同じ原則が適用されるということです。
歌い出しの合図が曖昧だと全体が崩れます。リーダーが明確に合図を出さないと、グループごとの入りがずれて輪唱として成立しません。終止の合図と予備動作もしっかり行い、同時終止の時に最後の音を十分に伸ばしてハーモニーを味わえるようにする必要があります。
年齢に合わない難易度設定も問題です。四部輪唱を保育園で実施しようとすると、ほぼ確実に失敗します。子どもの発達段階を無視した指導は、音楽への苦手意識を植え付けるリスクがあります。二部輪唱で美しいハーモニーを体験させることの方が、よほど教育的価値があります。
四部輪唱におすすめの楽曲と選び方
「かえるの合唱」は最も有名な輪唱曲です。ドイツ民謡で、シンプルなメロディーが特徴です。保育者養成でも4部輪唱の教材として使われており、音楽的に輪唱向きの構造を持っています。1小節ごとにどこから入ってもきれいな響きになるため、四部でも取り組みやすい曲です。wikipedia+2
「静かな湖畔の森の影から」も定番です。この曲も輪唱向きの和声進行を持ち、終始音の重なりが美しいと評価されています。長い曲に耐えられない子どもには、短めの曲を選ぶ配慮が必要です。wikipedia+1
曲選びのポイントは音域の狭さです。幼児の声域は未発達で狭いため、広い音域を要求する曲は避けるべきです。歌詞が覚えやすく、動きが一目瞭然の曲だと子どもはすぐに輪唱にチャレンジできるようになります。ただし輪唱しながら体操すると動きがずれてぶつかるので注意が必要です。ragnet+1
保育向けの輪唱曲リスト(1〜10曲)が紹介されており、小さな子どもにオススメの楽曲選びの参考になります
四部輪唱の練習で使える具体的テクニック
見本を見せてイメージをつかんでもらう方法が効果的です。言葉で説明するより、保育士が実際に2つのグループに分かれて歌ってみせると、子どもたちは輪唱の仕組みを視覚的・聴覚的に理解できます。範唱・模唱で1回練習してから、歌詞コールで支援しながら2回程度斉唱する流れが推奨されています。
テンポを一定に保つ訓練も重要です。後から入る声部がずれると和声が乱れるため、メトロノーム練習が有効です。保育現場ではピアノやタンバリンでテンポを刻みながら歌う方法も使えます。音程(イントネーション)のずれも顕著になりやすいので、耳を合わせる訓練が必要です。
最後の音を十分に伸ばし余韻を味わえるようにします。同時終止の時に、全員が息を合わせて音を伸ばすことで、四部が重なった美しいハーモニーを実感できます。これが「輪唱って楽しい!」という感覚につながり、次回への意欲を高めます。
四部輪唱を保育で取り入れる独自の工夫
季節や行事に合わせた曲選びで子どもの興味を引きます。春なら「春の訪れ」をテーマにした輪唱曲を選び、春の自然をテーマにした振り付けを考えて歌うと楽しさが倍増します。保育園での春のイベントにもぴったりで、子どもたちと一緒に春を感じながら楽しく歌えます。
グループ分けに色や動物の名前を使う方法も有効です。「うさぎグループ」「ぞうグループ」のように名付けると、幼児でも自分のグループを認識しやすくなります。各グループにリーダーを決め、そのリーダーが合図を出す役割を担うと、子どもたちの主体性も育ちます。
録音して聴かせることで達成感を与えられます。スマートフォンやタブレットで録音し、「みんなの声が重なってきれいだね」とフィードバックすると、子どもたちは自分たちの歌声を客観的に聴けます。これは音楽の楽しさを体験できる貴重な機会です。
保護者参観で披露する目標を設定すると、練習へのモチベーションが上がります。ただし四部は難易度が高いため、二部輪唱で美しく仕上げることを目標にする方が現実的です。完璧を求めず、子どもたちが笑顔で歌える環境を作ることが何より大切です。
