徒競走の曲クラシックを保育園運動会で活かす完全ガイド
クラシックは著作権フリーと思って使うと、10年以下の懲役リスクがある曲を流していることになります。
徒競走の曲クラシック定番3選:天国と地獄・道化師・クシコスポスト
保育園の運動会で徒競走のBGMを選ぶとき、まず名前が挙がるのがこの3曲です。どれも「一度聴けばすぐわかる」レベルの知名度を誇り、保護者世代にも子どもにも親しまれています。それぞれに個性があるので、曲の特徴を押さえておくことが大切です。
① 天国と地獄(オッフェンバック作曲)
「タン・タン・タン・タタタタタタタタタ…」と段々と加速していくあのメロディー。正式名称は喜歌劇「天国と地獄」序曲の第3部「カンカン(ギャロップ)」で、原題は「Galop Infernal(地獄のギャロップ)」といいます。日本人が「天国と地獄」と呼んでいる楽曲は、実はオッフェンバックが1858年に作ったオペレッタ全体のほんの一部に過ぎません。冒頭のゆったりとした部分から始まり、後半に向かうにつれてテンポが上がっていく構成は、まさにスタートから全力疾走するかけっこの情景にぴったりです。保護者世代も幼少期から耳にしている曲なので、会場全体が一体感を持って盛り上がれる点も魅力です。
② 道化師のギャロップ(カバレフスキー作曲)
ロシアの作曲家ドミトリー・カバレフスキーが1939年に作曲した組曲「道化師」の第2曲です。「ギャロップ」とは馬の全速力疾走を意味する音楽用語で、1分間に180拍を超えるテンポが特徴的です。シロフォンの音色が印象的なこの曲は、軽快で跳ねるようなリズムが子どもの走るモチベーションを自然に引き出します。もともと子ども向けに書かれた組曲であるため、難しさを感じさせない明るい旋律が魅力です。天国と地獄と双璧をなす徒競走の定番曲として、保育園・小学校問わず広く使われています。
③ クシコスポスト(ネッケ作曲)
ドイツの作曲家ヘルマン・ネッケが1890年頃に作曲したピアノ曲です。「クシコス」はハンガリー語で「馬に乗る人」、「ポスト」はドイツ語で「郵便」を意味し、曲全体で郵便馬車が駆け抜けるイメージを表現しています。グロッケン(鉄琴)とフルートのユニゾンが特徴的で、リストの「ハンガリー狂詩曲2番」終盤の旋律を借用している点は意外と知られていません。この曲は徒競走定番曲の中でも比較的落ち着いたイントロから始まるため、スタート前の緊張感を演出するのに向いています。
これが基本です。3曲それぞれの「個性」を知った上で選ぶと、場面のイメージにぴったり合う曲が見つかります。
運動会で定番の有名クラシック音楽21選!リレーやかけっこが盛り上がるBGMはこれだ!(Arcoヴァイオリン・チェロ教室)
徒競走の曲クラシック選びで意識したいテンポとリズムの基準
曲を選ぶときに「なんとなく速そうな曲」で決めている保育士さんは多いのではないでしょうか。実は、テンポと拍子の組み合わせが、子どもの走るリズムに直結しています。
音楽のテンポはBPM(Beats Per Minute=1分間の拍数)で表されます。徒競走向きの曲は一般的にBPM140〜180以上のものが適しています。道化師のギャロップはBPM180を超える部分もあり、疾走感の演出に優れています。天国と地獄は序盤がゆっくりで後半に加速する構成なので、スタートの「よーい、ドン!」のタイミングと後半の加速部分を重ねると効果的です。クシコスポストはBPM160前後で一定のテンポを保つため、低年齢クラスの子どもにも走りやすいリズムを提供します。
拍子も重要です。2拍子系の曲(天国と地獄・道化師のギャロップ)は「タン・タン」と規則的に刻まれるため、左右の足が交互に出る走り動作と自然にシンクロします。子どもが「曲に乗って走る」感覚を得やすいのはこの拍子系の曲です。
また、年齢による違いも意識しましょう。3歳未満のクラスには速すぎるテンポは逆効果になることがあります。速い音楽は興奮を高める一方で、集中しきれない子には混乱を引き起こすこともあります。3歳以下には適度なテンポ(BPM120〜140程度)の曲を選ぶか、クシコスポストの落ち着いたイントロ部分から使い始めると入りやすいです。
曲のテンポが基本です。まずBPMと拍子を確認してから候補を絞りましょう。
徒競走の曲クラシックをシーンごとに使い分けるコツ
同じ徒競走でも、「かけっこ(全力で走るだけ)」「障害物競走」「リレー」では求められる曲の雰囲気が少し異なります。
かけっこ・純粋な徒競走には、シンプルで疾走感のある曲が向いています。天国と地獄や道化師のギャロップがこの筆頭です。曲の構成がシンプルなぶん、子どもが走ることだけに集中できる環境が作られます。曲を流し始めるタイミングとしては、子どもたちが並び終わって「よーい」の姿勢になった直後から流し始めると、曲のテンポと体の動きが同期しやすくなります。
リレー(団体走)には、緊張感と高揚感が共存する曲が合います。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」より「トレパック」は、軽やかさの中に爆発的なエネルギーがあり、バトンを受け取って駆け出す瞬間のドラマ性を高めてくれます。クシコスポストも長い時間使いやすいので、複数チームが順に走るリレーには向いています。
障害物競走・ユニーク競技には、ユーモラスさを持った曲が向きます。リムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」は、慌ただしく疾走するような音楽が障害物を乗り越えていく動きを盛り上げます。ハンガリー舞曲第5番(ブラームス)は緩急のある曲調でコミカルな雰囲気を出せます。
入退場・競技前後のつなぎBGMには、ラッパ吹きの休日(アンダーソン)や道化師のギャロップの落ち着いたテンポ部分が使いやすいです。シーンに合わせた使い分けが条件です。
| シーン | おすすめクラシック曲 | 理由 |
|---|---|---|
| 純粋な徒競走・かけっこ | 天国と地獄、道化師のギャロップ | 疾走感・シンプルなリズム |
| リレー(団体) | クシコスポスト、トレパック | 継続的なテンポ・高揚感 |
| 障害物競走 | 熊蜂の飛行、ハンガリー舞曲 | ユーモラスな緊張感 |
| 入退場・開会式 | ラデツキー行進曲、威風堂々 | 晴れやかな行進感 |
これは使えそうです。プログラムごとに曲の「役割」を考えてリストを作ると、全体が引き締まった運動会になります。
徒競走の曲クラシックを使う前に知っておくべき著作権の注意点
保育士の間では「クラシックは著作権フリー」という認識が広まっていますが、これは大きな誤解です。この認識のまま音源を使うと、著作権侵害として10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金の対象になる可能性があります。厳しいところですね。
著作権のルールは次のように整理できます。
まず、楽曲(作曲)の著作権は、作曲者の死後70年を経過すると消滅します。これを「パブリックドメイン」といいます。天国と地獄のオッフェンバック(1880年没)、クシコスポストのネッケ(1912年没)、道化師のギャロップのカバレフスキー(1982年没)のうち、カバレフスキーの著作権は2052年まで保護されています。つまり、道化師のギャロップの「楽曲自体」はまだ著作権が存在します。
ただし、実際の運動会での使用(CDを流す・演奏する)については、JASRACが公式サイトで次のように示しています。「入場料をもらっていない」「演奏者への報酬がない」「営利目的でない」の3条件を満たせば、CDを流したり演奏したりすることに手続きは不要です。これは保育園の運動会に当てはまるケースが多いです。
一方で注意が必要なのが、動画撮影・配信です。運動会の様子を録画してSNSやYouTubeにアップする場合、または学校・保育園がホームページに動画を掲載する場合は、著作権の許諾が別途必要になります。市販CDの音楽が含まれる録画を保護者に配布する場合も同様です。
また、YouTubeで無料公開されているクラシックのアレンジ音源を「著作権フリー」と判断して使うのは危険です。演奏者や音源制作者にも「著作隣接権」があり、演奏した日から70年間は保護されます。使用前に必ず音源の利用条件を確認しましょう。
著作権フリーの音源を確実に使いたい場合、Audiostock(オーディオストック)やPocket Soundなど著作権フリー音源サービスを利用するのが確実です。運動会・徒競走向けのクラシックアレンジ素材を1曲単位で購入できます。
学校で音楽を使うときの著作権ルール(JASRAC公式):運動会でのCD使用・録画・配信の手続きの要否が一覧で確認できます
徒競走の曲クラシックを保育士がうまく選ぶための独自チェックリスト
「定番曲はわかった、でも実際にどれを選べばいいの?」という疑問を持つ保育士さんに向けて、現場で役立つ選曲のチェック手順を紹介します。これは検索上位の記事にはないオリジナルの視点です。
ステップ1:プログラムの長さを確認する
徒競走1回の競技時間は何分か、何組走るかによって必要な曲の長さが変わります。天国と地獄は約4分、道化師のギャロップは約2分、クシコスポストは約3分が標準的な演奏時間です。複数組が走るなら1曲をループ再生するか、2曲をつなぐかを事前に決めておくと当日慌てません。
ステップ2:スピーカー環境を確認する
屋外で使うスピーカーは低音が出にくく、クシコスポストのフルート・グロッケン系の音が聞こえにくくなることがあります。屋外かつスピーカー品質が低い環境では、金管楽器主体の天国と地獄や道化師のギャロップのほうが音の輪郭がはっきり聞こえて子どもに届きやすいです。
ステップ3:クラスの年齢と人数を確認する
0〜2歳クラスには速すぎる曲は避け、テンポが一定で落ち着いたクシコスポストかラッパ吹きの休日が向いています。3〜5歳クラスには天国と地獄・道化師のギャロップでもしっかり対応できます。クラスの人数が多く走る順番待ちが長い場合、テンポが一定のクシコスポストのほうが待っている子が踊ったり体を動かしやすい雰囲気を作れます。
ステップ4:音源のライセンスを確認する
「著作権フリー表記あり」「商用利用可能」「保育・教育現場での利用OK」の3点が明記された音源を選びましょう。Audiostockは音源ごとに利用条件が明記されており、1曲あたり1,210円〜で購入できます。NHKのクリエイティブ・ライブラリーや各自治体の教材サービスにも無料で使える音源がある場合があります。
ステップ5:子どもへの試し聴きをする
選んだ曲を朝の体操や室内遊びで一度流してみましょう。子どもが自然に体を動かし始める曲は、本番の徒競走でも力を発揮します。逆にぼーっとしてしまうなら別の曲を検討する材料になります。
まず曲を決める前に「時間・環境・年齢・ライセンス・子どもの反応」の5項目を確認するのが原則です。
Audiostock:著作権フリーの徒競走・運動会向けクラシック音源が1曲から購入・ダウンロードできます
徒競走の曲クラシックをもっと深く知る:各曲の背景と豆知識
定番3曲の背景を知ると、子どもたちへの説明が豊かになります。また運動会当日のアナウンスやプログラム冊子への記載にも活かせます。
天国と地獄の本当の話
「天国と地獄」は、ギリシャ神話「オルフェウスとエウリュディケー」をパロディ化したオペレッタです。1858年にパリで初演されたこの作品は、258日のロングランを記録しました。主人公オルフェウスが亡き妻を地獄から取り戻しにいく物語ですが、夫婦仲が悪くコメディ調に描かれているのが特徴です。運動会で流れるあの疾走感あふれる部分は、地獄の神々が狂乱するダンスシーンの音楽です。知らない人が多い話ですね。
道化師のギャロップはもともと子ども向けだった
カバレフスキーは旧ソビエトを代表する作曲家で、子ども向けの音楽教育にも力を注いでいました。組曲「道化師」は子ども向け演劇のために書かれた作品で、当初は管弦楽曲として1939年に作られています。後にピアノ版が作られたことで日本の学校・保育園に広まりました。「ギャロップ」は馬の全速力のギャロップ(駆け足)から名付けられており、曲名から疾走感が想像できます。
クシコスポストはリストの旋律を借用している
クシコスポストはリスト作曲の「ハンガリー狂詩曲第2番」後半の旋律を借用したことでも知られています。ただしネッケ本人が独自のアレンジを加えているため、別の作品として広く定着しました。この曲以外にネッケの有名な作品はほとんど残されておらず、クシコスポストが事実上の「一発屋」的な代表作となっています。なぜ日本でだけこれほど運動会の定番になったかは明確な資料がなく、戦後の学校教育音楽の流れの中でいつの間にか定着したというのが有力な見解です。
これらの豆知識は、会場アナウンスで一言添えるだけで保護者の関心をぐっと高める材料になります。「今流れている曲は1858年にパリで初演された地獄のダンス音楽です」と一言入れるだけで、保護者の視線が変わることがあります。つまり知識が演出の武器になるということです。


