田植えの歌 歌詞と意味を保育士向けに完全解説

田植えの歌 歌詞と保育での使い方をまるごと解説

「田植えの歌」の歌詞カードを園で配ると、最悪1,000万円以下の罰金になることもあります。

この記事でわかること
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歌詞の全文と意味

「そろた 出そろた」から始まる2番まで、難しい言葉の意味も含めて丁寧に解説します。

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誕生の背景と歴史

昭和17年の戦時中に作られた経緯と、歌詞が現代に変更された理由をわかりやすく紹介。

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保育現場での活用法と著作権

食育・季節の歌として使うねらいと、歌詞コピー時の著作権リスクを具体的に解説。


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田植えの歌 歌詞の全文と読み方

 

「田植えの歌(田植)」は、作詞・井上赳(いのうえたけし)、作曲・中山晋平(なかやましんぺい)による文部省唱歌で、昭和17年(1942年)に発表されました。歌いだしの「そろた 出そろた さなえが そろた」という元気なリズムは、現在でも5月の保育現場でよく歌われています。

歌詞は以下の通りです(現代で一般的に歌われているバージョン)。

歌詞
1番 そろた 出そろた さなえが そろた
植えよう 植えましょ みんなのために
米はたからだ たからの草を
植えりゃ こがねの花が咲く
2番 そろた 出そろた 植え手も そろた
植えよう 植えましょ みんなのために
今年ゃ豊年(ほうねん) 穂(ほ)に穂が咲いて
みちの小草(こぐさ)も 米がなる

歌詞の中には、今の子どもたちにはなじみが薄い言葉もいくつか出てきます。「さなえ(早苗)」は田植えに使う稲の若苗のこと、「植え手」は田植えをする人のことです。「こがねの花」は稲穂が実った黄金色の風景を指しています。つまり、豊かな実りを願う気持ちが込められた歌です。

「今年ゃ豊年」の「今年ゃ」は「今年は」の意味で、口語的な省略表現です。「みちの小草も米がなる」という表現は、今年は豊作すぎて道端の草までお米がなるかのようだ、という豊年への喜びと誇張を表しています。子どもたちには「お米がどんどんとれる嬉しい年だね」という言葉でかみ砕いて伝えるとわかりやすいでしょう。

ちなみに、もともとの歌詞では「みんなのために」の部分が「み国のために(または皇国のために)」という表現でした。これは戦時中に作られた歌である影響を反映しており、戦後の教育改革にともなって現在のように改定された経緯があります。歌詞の変更は意外と知られていません。

歌詞の意味が理解できると、保育現場での説明がぐっとしやすくなります。

参考:歌詞の原文確認に役立つ日本語の民謡・童謡データベース

田植 文部省唱歌 – 世界の民謡・童謡(worldfolksong.com)

田植えの歌 歌詞が生まれた背景と中山晋平の作曲

この曲が作られたのは昭和17年(1942年)、太平洋戦争のさなかのことです。当時の文部省が国民学校(現在の小学校)2年生の音楽教科書として制定した曲のひとつで、稲作と食料生産への意識を高める目的がありました。意外ですね。

作曲を担当した中山晋平(1887〜1952年)は、「しゃぼん玉」「証城寺の狸囃子」「東京音頭」など明治〜昭和に活躍した日本を代表する作曲家です。わかりやすいメロディーと庶民的なリズム感が特徴で、子どもにも歌いやすい旋律を多く生み出しました。

「田植」の歌いだしである「そろた 出そろた」のフレーズは、豊作を田の神に感謝する福島県の民謡「相馬盆唄」の歌詞表現から影響を受けていると考えられています。民謡の持つ労働のリズムが、童謡に取り込まれた形です。これはなかなか知られていない事実です。

また、作詞を担当した井上赳(いのうえたけし)は明治30年(1897年)生まれの歌人・詩人で、文部省の委嘱を受けてこの歌詞を書きました。「米はたからだ」というシンプルな言葉の中に、食を大切にするという普遍的なメッセージが込められており、現代の食育にも十分通じる内容です。つまり、80年以上前の歌詞でも今の保育に活かせます。

田植えという農作業を通じて、稲・米・自然の恵みへの感謝が詰まったこの歌。保育の場で背景を一言添えるだけで、子どもたちの歌への親しみが深まります。

田植えの歌 歌詞を使った保育のねらいと活用場面

「田植えの歌」を保育に取り入れる主なねらいとしては、次のような点が挙げられます。

  • 🌱 季節感を育てる:5月〜6月の田植え時期に合わせて取り入れることで、子どもたちが季節の変化を歌を通じて感じられます。
  • 🍚 食育への橋渡し:毎日食べているお米がどのように育つのかを、歌詞を通してイメージできるきっかけになります。
  • 🎵 リズム感音感の発達:テンポよく繰り返すリズムが、子どもの音楽的発達にも効果的です。

食育と音楽活動を同時に進められる、一石二鳥の歌です。

保育での活用場面は幅広く考えられます。朝の会やサークルタイムの導入として歌う方法はもちろん、稲の写真や田んぼの絵本と組み合わせた視覚教材と併用することで、子どもたちの興味がより深まります。絵本では「うさぎのおいしいものは?」シリーズや「おこめができた」(福音館書店)などが食育の文脈で活用しやすい素材です。

また、田植え体験活動と連動させた活用も効果的です。プランターや園庭での稲の苗植え活動(バケツ稲)の前後に「田植えの歌」を歌うと、子どもたちが活動とリンクして歌の意味を実感できます。実際に世田谷区立松ヶ丘幼稚園をはじめ、複数の保育施設でプランターを用いたイネ栽培体験が行われており、食への関心と感謝の気持ちを育てる効果が報告されています。食育として使うなら、歌と体験はセットが基本です。

  • 🪣 バケツ稲と組み合わせる:5月に苗を植え付け、成長を観察しながら歌を繰り返すことで、季節を通じた「生きた音楽教育」になります。
  • 🖼️ 田んぼの絵カードを使う:田んぼ・早苗・稲穂などをイラストで描いたカードを用いることで、視覚的に歌詞の内容が伝わります。
  • 👐 苗を植える動きで表現:しゃがんで苗を植える動作を真似しながら歌うと、体全体でリズムを感じられます。

参考:保育園での食育・稲作体験の実践事例

保育園で稲作体験!〜お米にして食べるまで〜 – 信州やまほいくの郷

田植えの歌 歌詞カードのコピーと著作権の落とし穴

保育現場で「歌詞カードをコピーして配る」のは当たり前のこととして行われがちです。しかしこの行為が、著作権法上のリスクをはらんでいることは意外と知られていません。

「田植えの歌(田植)」の作詞者・井上赳は1972年没、作曲者・中山晋平は1952年没です。著作権の保護期間は原則として「著作者の死後70年」であるため、中山晋平の場合は2022年末に保護期間が満了しました。つまり、現在(2026年時点)はパブリックドメイン(著作権消滅)の状態にあります。

この点は重要です。著作権が消滅しているため、歌詞カードのコピーや掲示、保護者への配布も基本的には自由です。ただし、特定の歌集や楽譜に収録されたアレンジ版を使用する場合は、その編曲者に別途の著作権が発生している場合があります。「田植えの歌」の音源そのものや、商業的に出版された楽譜には引き続き注意が必要です。

一方、保育現場で使われる他の多くの童謡には注意が必要です。たとえば「おもちゃのチャチャチャ」(サトウハチロー作詞、1973年没)は2043年まで保護期間が続きます。この楽曲の歌詞カードを無許諾でコピーして配布した場合、著作権法違反として最大で1,000万円以下の罰金が科せられるリスクがあります。園内配布であっても「外部への複製配布」とみなされるケースがあります。

著作権侵害は知らなかったでは済まない場合があります。以下に、保育士が現場で守るべきポイントをまとめました。

チェック項目 内容
著作者の没年確認 没年+70年を超えていればパブリックドメイン
JASRAC登録の確認 JASRAC作品データベース(J-WID)で検索できる
アレンジ版の扱い 編曲・翻案には別の著作権が発生する場合あり
SNS・ブログ掲載 歌詞の全文掲載は原則NG(公衆送信権の侵害)

知っておくだけで大きなリスクを防げます。

参考:著作権管理楽曲の確認と利用申請に便利な公式データベース

一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)公式サイト

田植えの歌 歌詞を子どもに伝えるための独自の工夫(保育士視点)

検索上位の記事では語られない視点として、「歌詞の意味を体験と結びつける伝え方」があります。ただ歌うだけでなく、歌詞に登場する「さなえ」「米」「豊年」といった言葉を日常の体験とつなぐことで、子どもの理解と記憶が格段に変わります。これが保育士にとって最も大切な視点です。

具体的には、次のような進め方が効果的です。

  • 🌾 「早苗(さなえ)」を見せる:ホームセンターや農家から分けてもらった稲の苗を実際に手に取らせることで、「さなえ = これのことだ!」という具体的なイメージが生まれます。稲の苗1本は鉛筆くらいの細さで、子どもの指先でも持てる感触です。
  • 🍚 「米はたからだ」を給食と結びつける:歌を歌った後に「今日の給食のごはんも、この歌の早苗が育ったものだよ」と話すだけで、食べることへの感謝の気持ちが自然に生まれます。
  • 🎨 稲穂の絵カードを作る:「こがねの花」という表現は、実は稲穂が実ったときの黄金色を指しています。子どもたちと一緒に黄色い絵の具で稲穂カードを作ると、歌詞と表現活動が結びつきます。

さらに、歌詞に合わせた簡単な「振り」を加えることも有効です。

1番では「さなえが そろた」のフレーズに合わせて両手を横に広げてそろえる動き、「植えよう 植えましょ」では前かがみになってしゃがみ込み、指で苗を植える動作を取り入れます。2番では「今年ゃ豊年」のフレーズで両手を高く上げてバンザイするなど、歌詞の内容と体の動きが一致することで理解が深まります。動きで体感させるのが基本です。

「田植えの歌」は昭和17年という時代背景を持ちながら、現代の食育・季節感教育・リズム表現活動まで幅広くカバーできる優れた素材です。歌詞の一言ひとつを丁寧に子どもたちに届けることが、保育士の腕の見せどころと言えるでしょう。

参考:5月の保育で使える歌・童謡の活用情報


田植唄本集 (1966年) (中世文芸叢書〈6〉)