たべもののうた歌を保育で活かす完全ガイド
「たべもののうた」を歌うだけでは、偏食の子に給食を食べてもらう効果は半分しか出ていません。
たべもののうた歌が保育にもたらす5つの効果
「手遊び歌は子どもが喜ぶから使う」というだけでは、実はその効果の半分も活用できていません。たべもののうた歌を保育に取り入れることには、子どもの発達を多角的に支える裏付けがあります。
手遊びを研究した論文(国士舘大学)でも、手遊び歌は幼児期の様々な機能の発達を促す効果があり、保育の場で欠かせない遊びとして位置づけられています。つまり、準備いらずで始められる手遊び歌は、非常にコストパフォーマンスの高い保育ツールということですね。
以下の5つが、保育士が意識しておきたい主な効果です。
- 🗣️ 語彙の増加:「にんじん」「おにぎり」「たこやき」など食材名を繰り返し歌うことで、自然に食の語彙が定着します。特に1〜3歳の語彙爆発期に大きな効果を発揮しやすいです。
- 🤝 コミュニケーションの深まり:保育士と同じ動きと表情を共有することで、信頼関係が育まれます。0歳児や1歳児との「ふれあい遊び」としても有効です。
- ✋ 手指の器用さの向上:歌詞に合わせて指を1本ずつ動かしたり、握ったり開いたりする動作が運動機能の発達につながります。
- 🍽️ 食への関心・食欲の促進:給食前に食材が登場する歌を歌うことで、「今日の給食に何が入っているかな?」という期待感が生まれます。子どもが食べ物を話題にすることが、厚生労働省の食育指針でも「食を営む力の基礎」として明記されています。
- 🧠 想像力・記憶力の強化:歌詞の世界に入り込んで表現する体験が、創造性と記憶力を刺激します。繰り返し歌うことで歌詞を丸ごと覚えるため、記憶のトレーニングにもなります。
この5つが基本です。中でも保育士として特に注目したいのが「食への関心の促進」。給食前に歌うだけで、子どもが食材名を口にするきっかけになり、「知っているものは食べやすくなる」という食育の基本原理と合致するからです。
食材が出てくる歌を「ただ楽しませるため」に使うより、「今日の食材の予告」として位置づけると、歌と給食がつながって食育の質が上がります。これは使えそうです。
参考:保育士バンク!「保育園で手遊びをするねらいとは?期待できる効果や演じるときのポイント」
たべもののうた歌・年齢別おすすめ曲と選び方
曲を選ぶときに「なんとなく知っているから」という理由で選んでいませんか?年齢に合わない曲を選ぶと、子どもが楽しめないだけでなく、活動自体が空回りするリスクがあります。年齢別に合った曲を知っておくことが原則です。
以下の目安で選ぶと、現場の準備がスムーズになります。
| 年齢 | おすすめのたべものうた歌 | 特徴・ポイント |
|---|---|---|
| 0〜1歳 | さかながはねて | ゆったりしたテンポ。体の部位に触れるふれあい遊びとして楽しめる |
| 1〜2歳 | ミックスジュース | くだもの名を歌うシンプルな歌詞。まねっこしやすく、語彙強化にも〇 |
| 2〜3歳 | おべんとうばこのうた | 食材名を次々紹介。食に興味が出る時期とマッチし、2歳以降から楽しめる |
| 3〜4歳 | カレーライスのうた / たこやき | 調理の様子を体で表現。食材の組み合わせを楽しめる |
| 4〜5歳 | やきいもグーチーパー / 大阪うまいもんのうた | ゲーム性が高い。集団で盛り上がり、地域の食文化にも触れられる |
特に「おべんとうばこのうた」は、保育の現場で最も広く使われているたべもの手遊び歌の一つです。歌詞の中にはおにぎり・たまご・しいたけ・ごぼう・さくらんぼなど多様な食材が登場し、1回の歌で10種類近い食材名に触れることができます。はがき1枚を並べた横幅(約15cm)ほどの小さなお弁当箱という設定が、子どもの頭の中に具体的な絵を作りやすいのも特徴です。
「ミックスジュース」はアメリカ民謡のメロディーを使っており、テンポよく繰り返しが多いため、1歳代から楽しみやすい曲です。難しい動きがなく、保育士側の習得負担も低いので、新任の保育士にもおすすめです。まずこの1曲から始めれば大丈夫です。
一方、「やきいもグーチーパー」(作詞:阪田寛夫 / 作曲:山本直純)はじゃんけんゲームの要素が入っているため、ルールを理解できる4歳以降向きです。グループ対抗でやると、5歳児クラスが大盛り上がりします。グループ活動を計画しているなら、この曲が条件です。
参考:ほいくis「たべもの手遊び歌10選メドレーを保育士が実演」
たべもののうた歌を偏食対策に活かす保育士の実践術
偏食のある子どもに「食べなさい」と声をかけることは、食への嫌悪感を強めるリスクがあります。だからこそ、たべもののうた歌を使った「間接的アプローチ」が有効なのです。
広島大学の研究では、幼稚園児の偏食改善に向けた保育実践として、食材に関する栄養指導と観察・体験を組み合わせたアプローチに効果が見られたことが報告されています。歌はその体験の入り口として機能します。
具体的な実践の流れはこうです。
- 給食の前に、その日の献立に入っている食材が登場するたべもの手遊び歌を1曲歌う
- 歌い終わったら「今日の給食にも出てくるよ、どこにあるか見つけてみよう」と一言添える
- 給食中は「さっきの歌に出てきた〇〇だね」と自然に声をかける
このたった3ステップで、子どもの視点が「嫌いな食べ物」ではなく「知っているもの」に切り替わります。これがポイントです。苦手な食材でも「名前を知っている・歌に出てきた」という親しみが、食卓での心理的ハードルをぐっと下げるのです。
愛知県の食育実践でも、「食まるファイブ」などのキャラクターや歌を使い、バランスよく食べることへの関心を引き出す手法が採用されています。歌や物語を介して食材を「友だち」にする感覚を作ることが、偏食対策の本質だといえます。
さらに一歩進めるなら、「色で分類する食材探しゲーム」も効果的です。給食の食材を「赤・緑・白」などの三色に分けて紹介する手遊びにアレンジすると、子どもが食材を主体的に観察するようになります。観察が入ると「食べる・食べない」の二択がゆるみ、まず「触れてみる」という段階に移行しやすくなります。
保育士側のポイントとして、同じ曲を最低2週間続けて使うことが重要です。繰り返しによって子どもが歌詞を覚え、自分から「あの歌やりたい!」と言い始めた段階で、その食材への興味は確実に生まれています。定着に注意すれば大丈夫です。
参考:厚生労働省「楽しく食べる子どもに〜保育所における食育に関する指針〜」食育の考え方と「料理と食」の位置づけ
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf
たべもののうた歌の著作権と保育現場での正しい取り扱い
「子どもと歌うだけだから著作権は関係ない」と思っている保育士は多いですが、これは大きな誤解です。状況によっては著作権の問題が発生するケースがあります。
まず基本を整理します。著作権には「著作財産権」と「著作者人格権」の2種類があります。著作財産権のうち、特に保育現場で関係するのは「複製権」「演奏権」「翻案権」の3つです。
- 📋 複製権:歌詞を印刷して配布する場合に関わります。著作権保護期間内の歌詞を無断でプリントして保護者に配るのはNGです。
- 🎵 演奏権:子どもと教室で歌う「演奏」は、営利目的でなく入場料を取らない場合は著作権法第38条によって許可なく行えます。日常の保育活動での歌唱は基本的に問題ありません。
- ✂️ 翻案権・同一性保持権:替え歌に関わります。著作権保護期間内の歌詞を改変する替え歌は、著作者の同一性保持権を侵害するリスクがあります。
「保護期間内かどうか」が判断の分かれ目です。日本の著作権法では、作者の死後70年が経過すると著作権が消滅します(パブリックドメイン)。例えば「おべんとうばこのうた」は作詞・作曲者が不詳のため扱いが複雑ですが、「やきいもグーチーパー」は作詞:阪田寛夫(1934〜2004年)、作曲:山本直純(1932〜2002年)のため、まだ著作権保護期間内です。
替え歌を完全にオリジナルの歌詞・メロディーにした場合は問題ありませんが、元のメロディーをそのまま使って歌詞だけ変えた場合は要注意です。これは有料無料に関わらず、著作権者の許諾なく行うと翻案権の侵害になり得ます。
一方、保育者養成大学での研究では「替え歌創作」を授業で取り扱う事例もあり、教育的文脈での活用方法が模索されています。替え歌を使いたい場合は「著作権者への確認」か「著作権フリーの楽曲を使う」という2択が現実的な対応です。
SNSやYouTubeに手遊び動画を投稿する場合は、さらに別のルールが適用されます。JASRACなどが管理している楽曲であれば、プラットフォームがJASRACと包括契約を結んでいる場合には投稿できますが、管理外の楽曲は別途許諾が必要です。投稿前の確認が条件です。
参考:ビジネスローヤーズ「パロディと著作権の考え方」

保育士が知らない「たべもののうた歌」活用の独自視点:歌を生活習慣のトリガーにする
検索上位の記事では「ねらい」「おすすめ曲」「歌詞」がよく紹介されていますが、現場で最も効果が出やすいのに語られていない使い方があります。それは「たべもの手遊び歌を、生活習慣のスタート合図(トリガー)として設計する」方法です。
考えてみれば、子どもは「言葉で説明される指示」よりも「聞き覚えたメロディー」のほうが素直に動くことがあります。給食前に「手を洗ってください」と言うより、手洗いの歌が流れた瞬間に体が動く状態を作るほうが、先生の声がけ量を圧倒的に減らせます。
具体的には「3曲ルール」として設計します。
- 🎵 第1の歌(短め・30秒以内):活動開始の合図。「今から給食の準備をする時間」と体に覚えさせる。例)「手をあらいましょ」などシンプルな曲。
- 🥦 第2の歌(たべもの手遊び歌・1〜2分):食材名が出てくる曲でその日の給食内容に関心を引き出す。例)「おべんとうばこのうた」「カレーライスのうた」など。
- 🙏 第3の歌(いただきますの歌・定型):食前の姿勢と感謝のあいさつへの切り替え。全員が静かに揃う合図として機能する。
この3曲を固定して2〜3週間続けると、子どもが歌の始まりを聞いただけで自然に次の行動へ移れるようになります。行動科学的に言えば「条件反射的な行動ルーティン」の形成です。先生が声を荒げる回数が減り、給食準備の時間が短縮されます。結果として、保育士の業務負担の軽減にもつながります。
厚生労働省の食育指針でも、食欲は生活全体の充実によって育まれるとされており、日常の流れの中に食育を組み込むことの重要性が示されています。歌を「授業」ではなく「生活のリズム」として扱うことが、この指針の精神と一致します。
さらに効果的なのが、歌の後に「今日の一言」を固定することです。たとえば「カレーライスのうた」を歌った後、保育士が毎回「今日は〇〇が入っているよ、どんな形かな?」と一言だけ言う、というパターンを作ります。先生が変わっても同じ一言を言うように全職員で共有すると、クラス全体の食育の質が安定します。新しい先生でも同じ運用ができることが条件です。
おたよりに「今月の食育の歌:〇〇」と一行添えるだけで、保護者が家庭で同じ歌を使えるようになります。園で学んだ習慣が家庭に波及すれば、食育の効果が何倍にも増幅されます。家庭連携は難しそうに見えて、実は「歌の曲名を知らせるだけ」で十分に機能します。
参考:厚生労働省「楽しく食べる子どもに〜保育所における食育に関する指針〜」食欲は生活全体の充実と関連
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf

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