スケルツォの意味とショパンが残した4曲の世界
「冗談」と名のついた曲を子どもに聴かせると、逆に泣き出すことがあります。
スケルツォの意味:イタリア語「冗談」から生まれた音楽用語
スケルツォ(scherzo)はイタリア語で「冗談」「おどけ」を意味する言葉です。 楽譜上では「scherzando(スケルツァンド)」という発想記号として「冗談めかしく、おどけて演奏する」という意味でも使われます。 日本語では諧謔曲(かいぎゃくきょく)と訳されますが、この訳語を日常で使う人はほとんどいません。chopinist+1
スケルツォが音楽の世界に登場したのは1605年、イタリアの作曲家プリーティによる「スケルツォ、カプリッチョとファンタジー」が最初とされています。 その後1607年にモンテヴェルディが「音楽の冗談(Scherzi musicali)」を作曲し、広く知られるようになりました。 つまり、スケルツォは400年以上の歴史を持つ言葉ということですね。
音楽形式としてのスケルツォの主な特徴は以下の通りです。enc.piano.or+1
- ⏱️ 急速なテンポ:快活でおどけた感じが基本
- 🎵 4分の3拍子:メヌエットと同じ3拍子系のリズム
- 🔁 3部形式(A–B–A):主部→中間部(トリオ)→主部再現の構成
- 🎼 ソナタや交響曲の第3楽章に挿入:複数楽章の中で位置づけられる
急速な3拍子が基本です。
スケルツォの歴史:ハイドン・ベートーヴェンからショパンへの流れ
スケルツォを音楽史の中心に押し上げたのは、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809年)です。 ハイドンはそれまで弦楽四重奏曲の中間楽章に使われていたメヌエットの代わりに、よりコミカルで軽快なスケルツォを取り入れました。 これが後の音楽家たちへの大きな影響源となります。note+1
ハイドンの弟子だったベートーヴェン(1770〜1827年)は、スケルツォを自身のソナタや交響曲に積極的に採用しました。 ベートーヴェンのスケルツォは、師のユーモラスな性格を受け継ぎながらも、より激しいリズムと力強さを持っていました。この流れがそのままショパンへとつながります。
ショパンが登場する前の流れをまとめると、こうなります。
ベートーヴェンまでは「冗談らしい」スケルツォが主流でした。ショパンが現れることで、その意味は根本から覆されることになります。
ショパンのスケルツォが「冗談」ではない理由:4曲の特徴と感情
ショパンは生涯で4曲のスケルツォを作曲しました(1831〜1842年)。 「スケルツォ」という言葉が本来持っている「冗談」という意味合いを根本から否定するかのように、一曲一曲が極めて重く深刻な情緒を内包しています。 第4番だけが比較的本来のスケルツォ的な明るさを持ち、残りの3曲は激しい感情表現が主軸です。oekfan+2
意外ですね。
その背景には、ショパン自身の人生があります。1830年にポーランドを離れた彼は、祖国への望郷と「帰れない」という痛みを抱えてパリで活動しました。 スケルツォ第2番が書かれた1837〜1839年頃は、27〜29歳という創作の絶頂期でありながら、祖国喪失の傷が深く残っていた時期です。 つまりショパンにとって、スケルツォは「冗談」の器に感情の爆発を詰め込んだ装置でした。
4曲の特徴を整理します。ukiukipiano-score+2
- 🎹 第1番 ロ短調 Op.20:2つの鋭い不協和音の序奏で始まる、最も深刻な曲調
- 🎵 第2番 変ロ短調 Op.31:4曲中もっとも演奏頻度が高く、人気№1
- 🎼 第3番 嬰ハ短調 Op.39:暗さと複雑さが際立ち、男性的な力強さを持つ
- ☀️ 第4番 ホ長調 Op.54:4曲の中で唯一、本来のスケルツォらしい明るさがある
第4番だけは例外です。
スケルツォ第2番の構造:保育士が知っておきたい音楽の「緩急」の仕組み
スケルツォ第2番(Op.31)は、変ロ短調を軸にした複合三部形式で書かれています。 4分の3拍子、テンポは急速で、「急→緩→急(+コーダ)」という3部構成が骨格です。 演奏時間は10分以上になることも多く、集中力と体力を要求する大作です。wikipedia+2
この「緩急」の構造は、保育現場でも非常に参考になります。保育士が子どもたちに読み聞かせや活動をするときも、単調なペースより「緩める場面」と「盛り上げる場面」の使い分けが子どもの集中力に影響します。これは使えそうです。
第2番の構成をわかりやすく図解すると、以下のようになります。
| パート | 調性 | 雰囲気 |
|---|---|---|
| 主部A(冒頭) | 変ロ短調→変ニ長調 | ミステリアスな問いかけ |
| 中間部B | 甘美な長調系 | 静謐で甘い旋律 |
| 主部A’(再現) | 変ロ短調 | 緊張感の再燃 |
| コーダ | クライマックス | 曲最大の盛り上がり |
「問いかけ→癒し→再び問いかけ→爆発」という流れが原則です。
この緩急の設計を理解すると、スケルツォ第2番を「ただ難しい曲」ではなく「感情の物語」として聴けるようになります。そのような聴き方を身につけることが、子どもたちに音楽の魅力を伝えるための第一歩です。音楽の仕組みに興味を持ったときは、ピアノの先生向けの楽曲解説サービスや音楽専門誌「音楽の友」なども参考になります。
参考:ショパンのスケルツォ全4曲の解説・演奏ポイント・難易度が網羅されています。
ショパン・スケルツォ第1番~第4番 作品解説(chopinist.net)
保育士がスケルツォの知識を活かせる独自視点:子どもと「緩急」で繋がる音楽体験
保育士がショパンのスケルツォを子どもに聴かせる必要はありません。しかし「スケルツォとは何か」を知っていることで、音楽を使った保育の質が変わります。スケルツォの本質は「緩急の対比による感情表現」であり、これは子どもの情動発達と密接に関係しています。
具体的な活用場面として、以下のような応用が考えられます。
- 🎵 自由遊びBGMの選曲:ショパン第4番のような明るいスケルツォは、子どもの活動を自然に盛り上げる
- 🧘 切り替えの場面:緩急のある音楽は「活動→静止」の切り替え合図として機能しやすい
- 📚 保育士試験の音楽知識:「スケルツォ」「諧謔曲」「3拍子」は保育士試験の保育実習理論でも出題されるキーワード
- 🎹 自己研鑽としてのピアノ学習:スケルツォの構造を知るとピアノのレッスン内容が深まる
保育士試験の音楽理論では、スケルツォに限らず「楽曲の形式」「拍子」「速度標語」が頻出です。 スケルツォが「3拍子・急速・3部形式」という特徴を持つことは、そのまま試験対策にもつながります。3拍子と速度が条件です。
スケルツォという言葉を「ただの音楽用語」で終わらせないためには、その構造的な魅力を自分の言葉で語れるようになることが大切です。ショパンが「冗談」という言葉に深い感情を込めたように、保育士も「音楽」という道具を深く理解することで、子どもたちへの届け方が豊かになります。
参考:スケルツォの語源・音楽史・発想記号としての用法まで整理されています。
参考:保育士試験「保育実習理論」の音楽基礎知識(楽曲・音楽家)のまとめです。


