ソルフェージュ 保育 音感
ソルフェージュ 保育で音感を育てる基本
ソルフェージュは本来「楽譜をドレミで歌う」だけを指す言葉として始まりましたが、現在は読譜・聴音・リズム反応・記譜などを含む音楽基礎の総称として扱われます。特に保育で重要なのは、楽譜に入る前段階として「豊かな音楽体験」を喜びを伴って積むこと、つまり“音楽で遊ぶ”という発想です。これは幼児が音楽を「好き」と感じ、のびのび反応できる状態を守るための前提でもあります。
また、幼児期は聴覚機能が急速に発達し、音の高さの判別やリズムの感受が伸びやすい時期だと指摘されています。保育現場でのソルフェージュは、専門的な理論を先に教えるよりも、歌う・動く・聴くを往復させ、自然に「気づき」を増やすことが中心になります。
ここでのポイントは「できた/できない」を強く評価しないことです。音に正確に合わせる以前に、音へ注意を向けて“反応する”習慣がつくと、後から精度が上がりやすくなります。
参考:保育音楽におけるソルフェージュの位置づけ(定義、幼児期の聴覚発達、遊びとしての導入)
https://omu.repo.nii.ac.jp/record/3945/files/2009000316.pdf
ソルフェージュ 保育のリズム感とリトミックの関係
保育でよく使われるリトミックは、音楽に合わせて身体を動かす活動として理解されがちですが、体系としては「リズム運動・ソルフェージュ・即興演奏」の三つの柱で成り立つと整理されています。つまり、リトミックの中にもソルフェージュ(聴く・歌う・音程を確かめるなどの聴覚訓練)が含まれ、音感育成と相性が良い構造です。
実践面では、まず“拍を感じる”活動(歩く、手をたたく、膝をたたく)を歌とセットで行うと、機械的なリズム練習になりにくいとされています。さらに、長さの違う音(例:2分・4分・8分相当)を「動物の歩き方」に置き換えるなど、意味づけして身体化すると理解が進みます。
保育者養成の授業実践でも、音の高低で「しゃがむ/手を上げる」、長調/短調で表現を変える、じゃんけん列車をピアノの和音数で制御するなど、即時反応を促す活動が紹介されています。子どもが夢中になりやすい「ごっこ」「動物」「乗り物」に寄せると、音の要素が自然に混ざります。
参考:リトミックは「リトミック・ソルフェージュ・即興演奏」の3本柱で構成される(授業実践と理論の整理)
http://www.ariake.ac.jp/pdf/library/bulletin_016/bulletin_016_05.pdf
ソルフェージュ 保育で使える音感あそび(歌・高低・和音)
音感を育てる導入は「高い/低い」の比較から始め、差を大きくしてから徐々に狭める方法が示されています。いきなり細かい音程当てにせず、まずは“違いに気づく耳”を作るのが狙いです。保育での具体例としては、次のような流れが組みやすいです。
- 🎵「高い音=きらきら」「低い音=どしん」など、擬態語で反応を統一する(全員が迷いにくい)。
- 👂短い旋律を保育者が歌い、子どもが“まねして歌い返す”(模唱)を数秒で回す。
- 🧠歌の途中を“心の中で歌う”(サイレント)にして、拍やリズム打ちだけ残す(集中と記憶を刺激)。
さらに、意外と見落とされやすいのが「和音感」の入口です。乳幼児期から和音を含む合奏・合唱の響きを環境として与えること、玩具や楽器の“音程が狂っていないか・濁っていないか”に配慮することが重要だと述べられています。保育室で使う鉄琴・ベル・鍵盤ハーモニカ(園の備品)も、音程が大きく狂っていると「違いに気づく耳」ではなく「違いが分からなくなる耳」を作ってしまう可能性があるため、定期点検の観点が実務的に効きます。
活動の組み立ては「1項目3分程度で次々に展開し、注意がそれる暇を作らない」という提案があり、現場の時間管理にもそのまま使えます。長く説明してから始めるより、短くやってすぐ切り替える方が“音への即時反応”が出やすいです。
ソルフェージュ 保育指針と表現のつなぎ方
保育所保育指針(2017)では、音楽表現は単独の「音楽」領域というより「表現」の中で扱われる枠組みとして整理される読み方があります。つまり、歌や楽器だけで完結させず、生活・遊び・ことば・身体表現と混在させて「表現を楽しむ」方向へ持っていきやすいということです。
現場で説明責任が必要なときは、「音感を鍛えるために音名を教えます」よりも、「音に親しみ、友だちや保育者と一緒に表現する経験を増やします」と書く方が、指針・要領の文脈に沿いやすくなります。ソルフェージュは“専門の訓練”としてではなく、表現活動の質を上げる「設計思想」として説明すると通りやすいです。
また、保育者側の課題として、リトミック実践の報告では「現場でやりたいがピアノ即興が不安」という声が多いことも示されています。ここから逆算すると、録音音源だけに頼らず、打楽器・声・手拍子など“即時に止める/変える”操作ができる手段を複数用意しておくことが、実践継続の鍵になります。
参考:指針・要領における音楽表現が「表現」に位置づくという整理(比較研究PDF)
https://www.mgu.ac.jp/miyagaku_cms/wp-content/uploads/2021/12/hatsurin_05.pdf
参考:保育所保育指針(2017年告示)の原典
ソルフェージュ 保育での独自視点:音感より先に「音の衛生」を整える
検索上位の多くは「ソルフェージュとは」「リトミックとの違い」「練習メニュー」に寄りがちですが、保育現場では“音の衛生(サウンド・ハイジーン)”が成果を左右します。ここで言う音の衛生とは、騒音や反響で「聴き取りたい音が埋もれる」状態を減らし、子どもが音の違いを安心して拾える環境にすることです。静かな場所が理想であり、外部騒音や内部の雑音の配慮、音量・音質への留意が必要だという指摘もあります。
例えば、次のような見直しは“音感トレーニング”より先に効く場合があります。
- 🔇朝のBGMを常時流しっぱなしにせず、「鳴らす時間」と「止める時間」を作る(音の輪郭が戻る)。
- 🪵大きく響く部屋では、鉄琴・鈴を一斉に鳴らす前に「1人ずつ鳴らして聴く」順番を入れる(音色の識別がしやすい)。
- 🎹保育者の歌い出しの高さを毎回大きく変えない(子どもの同調が起きやすい)。
音の衛生が整うと、同じ活動でも「音が合った/外れた」の前に「音を聴いて動けた」「友だちの音に気づけた」という成功体験が増えます。結果として、音感の精度を上げる段階へ進むときに、子ども側の抵抗が減ります。これは“技能の前に態度(聴く姿勢)を育てる”という意味で、保育の文脈にも乗せやすいアプローチです。


