初見演奏の楽譜を保育士が現場で活かす読み方と練習法

初見演奏の楽譜を保育士が現場で活かす読み方と練習法

楽譜を1音ずつ丁寧に読む練習をするほど、初見演奏は逆に遅くなります。

この記事のポイント3つ
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初見演奏はパターン認識で速くなる

音符を1個ずつ読まず、音の「模様=パターン」でまとめて捉える方法が、初見演奏スピードを上げる近道です。

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拍感覚とリズムが初見の土台

楽譜の音名を覚える前に、拍子とリズムパターンを身体で感じる力を鍛えることが初見演奏上達の最優先事項です。

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保育現場では「完璧」より「止まらない」が正解

就職試験でも日常保育でも、音を外すより拍を崩さず弾き続ける演奏が子どもに安心感を与え、現場で高く評価されます。

初見演奏の楽譜で保育士が直面する「突然の1枚」とは

 

保育士の就職試験や実習先で、楽譜をその場で渡されて「では弾いてください」と言われた経験は、多くの保育士志望者が経験することです。帝京大学教育学部の研究(2013年)によると、近年では幼稚園・保育園の就職試験において初見奏を課す園が増えており、養成校でも初見奏の専門トレーニングが重要視されるようになっています。

つまり、練習してきた曲だけを弾いていればよい時代は終わりに近づいています。

実際の保育現場でも、急に新しい行事の曲を任されたり、同僚から「この曲、今日から使いたいんだけど」と楽譜を渡されるシーンは日常茶飯事です。そういった場面で焦らず対応できるかどうかは、初見演奏スキルの有無によって大きく変わります。

同研究では、初見奏の学習を通じて学生の読譜能力と拍子・リズムの理解が向上し、4週間という短い期間でも演奏表現力が明らかに改善したことが報告されています。初見演奏は「才能があるかどうか」の話ではなく、正しい手順で練習すれば確実に伸ばせるスキルなのです。これは重要な事実です。

保育現場で必要な初見演奏力は、コンサートピアニストのような「楽譜通りの完璧な演奏」ではありません。「臨機応変に、その場に応じて演奏できること」が求められるのです。この違いを理解しておくことで、練習の方向性がまったく変わります。

参考:帝京大学教育学部紀要「音楽表現力の育成:初見奏を通じた学習内容に関する考察」
https://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/tosho/kyoiku-38-09.pdf(初見奏と保育者養成に関する学術論文)

初見演奏に強くなる楽譜の「パターン読み」とは何か

楽譜を速く読むためのアプローチには、大きく分けて2種類あります。一つは「ドレミ…と1音ずつ音名を確認しながら読む方法」、もう一つは「音の流れを模様(パターン)としてまとめて読む方法」です。初見演奏が上手な人はほぼ例外なく、後者のパターン読みを使っています。

パターン読みとは何かというと、たとえば「ド・レ・ミ・ファ・ミ・レ・ド」という並びを「4つ上がって3つ下がる」という”形”として認識することです。かえるのうたの冒頭部分がまさにこれで、全音符を1つずつ読まなくても、形を見た瞬間に指が動く状態になれます。

つまり、音楽の流れを「文字」ではなく「絵」として見る感覚です。

音楽学習の研究によれば、このような視認パターンの認識力こそが、初見演奏の速さを決定づける中心的な能力とされています。童謡やピアノ教材の「ハノン」で有名な上昇・下降の音形も、パターンとして身体に染み込ませることで、譜読みの手間が大幅に減ります。

実際の楽譜を見る際には、次の3つに注目するとパターンが見えてきます。第一に、音が「上がっているか・下がっているか・同じか」という方向感。第二に、音の幅が「2度(隣の音)・3度(1つ飛ばし)」かという距離感。第三に、「この形、さっきも出てきた」という繰り返しパターンの発見です。

これが基本です。

慣れてくると、初めて見る楽譜でも「ああ、これはスケール(音階)の下降形だ」「これはドミソの和音の分散だ」と瞬時に認識できるようになります。保育士がよく弾く童謡はシンプルな音形の繰り返しが多いため、パターン読みとの相性が非常によい曲ばかりです。これは使えそうです。

参考:初見演奏とパターン読みの解説(ピアノ講師・いのうえちづよ氏サイト)

(音の模様を見つける「パターン読み」の詳しい解説)

初見演奏の楽譜を読む前に鍛えるべき「拍感覚とリズム」

初見演奏がうまくいかない保育士の方に共通している原因は、音符の名前を読むのが遅いことではなく、「拍を一定に保てていないこと」である場合が大半です。音楽は常に流れており、4拍子なら1・2・3・4というサイクルが休みなく続いています。この拍の流れを体内に刻む感覚を「拍感覚(ビートキープ)」と呼びます。

拍感覚が弱いと、初見で楽譜を追っている途中に演奏が詰まったり、知らないうちにテンポが揺れたりします。それが続くと、子どもたちが歌に合わせられなくなるという実害に直結します。

先の帝京大学の研究でも、「学生は音高(ピッチ)に比べて拍子やリズムに無頓着」である傾向が明確に示されており、初見奏には拍子とリズムの把握が不可欠だと結論づけています。

拍感覚を鍛える練習として効果的なのは、メトロノームを使うことです。ただし、注意点があります。メトロノームに合わせることを目的にすると、機械に縛られてかえって演奏がぎこちなくなるためです。メトロノームはあくまで「音楽が流れていく感覚をつかむためのガイド」として使うのが正しい活用法です。

リズムについては、童謡でよく登場する「付点リズム(タタタータのような跳ねるリズム)」を特に意識して練習しておくとよいでしょう。付点がつくだけで難易度が大きく上がるため、このパターンを体に馴染ませておくことは保育現場で直接役立ちます。

拍感覚とリズムが条件です。この2つが整って初めて、音符を読む速さが演奏に活きてきます。

初見演奏の楽譜で「先読み」を使うと止まらなくなる

初見演奏で最も「あるある」な失敗は、弾いている箇所と目が同じ場所を追っていて、次の音が読めずに止まってしまうことです。これを防ぐ技術が「先読み(アヘッドリーディング)」です。

先読みとは、今弾いている小節やフレーズの指が動いている間に、目はすでに次の小節を読んでいる状態のことです。目と手をズラして動かすというイメージで、慣れれば誰でもできるようになります。

実践的な例を挙げましょう。今「ドレミファ」と右手で弾いているとき、目はすでに「ソラシ…」という次のフレーズを確認しています。手は”自動操縦”で動き、目は常に1〜2小節先を読んでいる。この状態が先読みができている状態です。

先読みを練習するためのユニークな方法として、ピアノを使わないトレーニングがあります。じゃんけんで「グー・チョキ・パー」と口で言いながら、手は言葉と違うものを出す練習です。「脳が二つのことを同時に処理する」感覚を、ピアノを弾く前から鍛えられます。

また、音楽を聴きながら別の作業(宿題や家事など)を同時にこなす習慣も、二重タスク処理能力の向上に役立つとされています。意外ですね。

保育士にとって先読みは特に重要です。子どもたちの顔を時々見ながら弾く必要があるため、楽譜から目を離す瞬間があっても演奏が止まらないよう、先読みの精度を高めておくことが実務上の大きなメリットになります。

初見演奏の楽譜に詰まったとき保育士だけが使える「コード活用」という切り札

一般的なピアノ学習者向けの初見演奏の記事では、あまり触れられないことがあります。それは、保育士向けの楽譜の多くに「コードネーム」が記載されており、初見演奏中に左手の音符が追えなくなったとき、コード伴奏に切り替えるという実践的な対応策です。

コードネームとはCやFやG7といった和音記号のことで、保育士向け楽譜集のほとんどに印刷されています。初見演奏の途中で両手の楽譜を完全に追うことが難しくなっても、左手は「Cならドミソを押さえる」「Fならファラドを押さえる」というコード伴奏に即座に切り替えられれば、演奏は途切れません。

帝京大学の前出研究においても、初見奏の授業で「楽譜通りの両手演奏が困難な場合には代替としてコード伴奏も可とした」と明記されており、実際の保育士養成の現場でコード活用は公認の対応法とされています。C・F・G・G7の4種類のコードを押さえられれば、ハ長調の童謡の大半に対応できます。

つまり「コードを覚えておくと初見演奏の保険になる」ということです。

具体的な手順はシンプルで、まず楽譜のコードネームを上から確認し、主に使われているC・F・G7の3つを練習します。次に、左手はコード、右手はメロディという形で初見練習を重ねます。これだけで初見演奏中のパニックリスクを大幅に下げることができます。

保育士向けのコード伴奏については、ヤマハのぷりんと楽譜や「保育士さんに役立つ練習方法」といった専門ブログにも詳しい情報が載っています。楽譜選びの際は、コードネームが記載されているものを優先的に選ぶことをお勧めします。

参考:保育士向けコード伴奏の実践的な解説記事

(忙しい保育士さん向けのコード伴奏を含む練習法解説)

初見演奏の楽譜練習を保育士が毎日続けるための現実的な方法

初見演奏の力を伸ばす最大のコツは、「知らない楽譜をできるだけ多く弾くこと」に尽きます。しかし多忙な保育士には、毎日長時間の練習時間は現実的に確保できません。ここでは、短時間でも継続できる練習法を具体的に説明します。

まず取り組んでほしいのは、1日10〜15分の「初見専用練習」を週3〜4回確保することです。既に弾ける曲を繰り返すのではなく、必ず初めて見る楽譜を使うことがポイントです。毎回のセッションで1〜2曲、簡単な童謡の新しいアレンジ楽譜などを用意して、止まらずに最後まで弾き切ることを目標にします。

完璧に弾こうとするのはNGです。間違えても止まらず流れを維持することが、初見演奏では正しい練習です。

楽譜の難易度の選び方も重要です。「バイエル程度」と表記された簡単な楽譜から始め、慣れてきたら1段階難しいものに移行するというステップアップが有効です。難しすぎる楽譜で練習すると、途中で止まってばかりになり初見の練習にならないためです。

楽譜素材として便利なのが、無料の楽譜ダウンロードサービスです。ピアノ塾(pianojuku.info)では800曲以上の無料楽譜が公開されており、ドレミふりがな付きの簡単なアレンジから徐々にレベルアップできます。ヤマハの「ぷりんと楽譜」では保育士向けに特化した楽譜も1曲単位で購入できるため、練習材料には困りません。

継続は力なりが基本です。

もう一つの独自の視点をお伝えします。初見演奏の力は、ピアノの前に座らなくても鍛えられます。楽譜を手元において目で追うだけの「頭の中での演奏=楽譜の視読」を通勤時間や休憩中に行うだけでも、音符の認識速度と拍感覚の両方を同時に養うことができます。スマートフォンで楽譜アプリを開いて、目で追いながら頭の中で音楽を鳴らす習慣を作るだけで、毎日の通勤時間が練習時間に変わります。

参考:無料ピアノ楽譜・初心者向けアレンジ楽譜の配信サイト
https://pianojuku.info/(ドレミふりがな付き無料楽譜800曲以上。初見練習材料として活用可能)

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