リコーダー保育リコーダー
リコーダー保育リコーダーのねらいと導入
保育でリコーダーを扱うとき、最初に決めたいのは「何歳で何を到達点にするか」です。小学校の器楽のように“曲を吹ける”をゴールにすると、指の運動や息のコントロールの難度が一気に上がり、苦手意識につながりやすくなります。むしろ保育では、音楽の入口として「音が鳴る楽しさ」「息をコントロールする感覚」「合図を聴いて動く(止める)経験」を積み上げる方が実用的です。
導入のねらいを、子どもの行動に落とすと整理しやすいです。
・「静かに息を入れる/強く入れすぎない」を試す
・「フー」「トゥ」の違いに気づく(音の切れ方の違い)
・合図の音で集合・片付けに切り替えられる
・音の高低より、音の長短・強弱で表現を楽しめる
初めての回は「練習」より「儀式化」をおすすめします。たとえば、①ケースから出す→②持ち方→③一回だけ音を出す→④布で拭く→⑤戻す、を毎回同じ順番にします。リコーダーは“口に触れる道具”なので、遊びの楽しさと同時に、扱いの丁寧さも身に付きます。
合図として使う発想は、保育現場で特に相性が良いです。リコーダーに目玉シールを貼って「ぴーぴーさん」のようにクラスの仲間に見立て、片付けや待ち時間の切替に活用する実践が紹介されています(作り方は目玉を貼るだけ、合間の時間に便利、100均でも入手可能等)ので、導入ネタとして取り入れやすいです。
保育で役立つ遊び(擬人化・合図の使い方の例)
リコーダー保育リコーダーの息づかいとタンギング
リコーダーで“それっぽい音”が出ない原因は、指より先に「息」と「舌」のタイミングにあることが多いです。学校向け教材でも、初めて演奏する子の指導ポイントとして「姿勢・息づかい・タンギング・指づかい・練習方法」が整理されており、基礎の順序が明確です。
姿勢・息づかい・タンギング等の指導ポイント(教材の概要)
保育でのコツは、専門用語を減らし、体感の言葉に置き換えることです。
・息:ろうそくを「消さないで揺らす」くらいの息(強すぎ回避)
・舌:飴を上あごに「ちょん」と付けて離す感じ(歯で噛まない)
・音の切り方:長く伸ばす音/短く区切る音を、手拍子とセットで体験する
「タンギング」は、舌を使って音の始まりを作る技術ですが、幼児には“言葉の頭の音”で説明すると入ります。たとえば「ト・ト・ト(トゥ)」と「フー(息だけ)」の違いを遊びで聞き分けるだけでも、音の輪郭が変わるのが分かります。
意外と効く小技が、「音を出す前に“無音のタンギング”」を入れることです。いきなり吹かずに、口の形だけ作って「トゥ(息は弱め)」を2回やってから音を出すと、最初の一音が割れにくくなります。子どもが失敗したときも「もう一回、無音トゥしてからね」と戻す場所が明確になるので、保育者側の声かけも安定します。
リコーダー保育リコーダーの遊びと教材
「リコーダー=曲を吹く」だけにするとレパートリーがすぐ尽きますが、保育では“音が鳴る道具”として広く使えます。ポイントは、①短時間、②役割が分かる、③成功しやすい、の3点です。
遊びの例(ねらい別)
・合図遊び:片付け前に「ピッ(1音)」で集合、座れたら「ピピッ(2音)」で合格
・音まね遊び:保育者が「長い音/短い音」を鳴らし、手拍子でまねる(吹かせない日も成立)
・誰の番?:名札カードを引いて、その子の名前のリズムで「タ・タ・ター」
・物語BGM:絵本の場面転換だけ「音」で演出(音量は小さく、回数も少なく)
“吹かせない日も成立”というのが大事です。クラス全員に順番で吹かせようとすると、待ち時間が長くなり、口に当てる共有・衛生の管理も難しくなります。保育者が演奏し、子どもは「聴く・動く・止まる」を担当する形なら、短時間で高密度の活動になります。
また、吹く遊びの延長線として「ストロー笛」「簡易リード笛」などから入るのも有効です。療育の文脈では、ストローやティッシュ、風車などの“吹く遊び”で呼吸のコントロールや口周りの動きを育て、次の段階で「リコーダーやハーモニカ等、息で音を出す楽器に触れる」流れが例示されています。いきなりリコーダーに行かず、段階を作ると導入の成功率が上がります。
吹く遊び→息で音を出す楽器へ(段階の例)

リコーダー保育リコーダーの衛生と消毒
保育で最も揉めやすいのが、実は「音」より「衛生」です。口に触れる以上、基本は個人持ち(記名・個別保管)が安全で、共有するなら“共有できる前提の手順”が必要です。
まず押さえる注意点として、樹脂(プラスチック)製は熱湯や煮沸で変形するリスクがあるため避ける考え方が一般に示されています。メーカー系資料でも、中性洗剤での洗浄を基本に「こまめに洗う」ことが推奨され、準備物として洗面器・中性洗剤・掃除棒・布・タオルなどが挙げられています(窓の水滴を取る手順も含む)。
中性洗剤での洗い方・準備物(メーカー資料)
https://www.aulos.jp/topics/pdf/AULOS_CleaningManual.pdf
現場用に、判断が迷いにくいルール例を置きます(園の方針・保護者説明に合わせて調整してください)。
・原則:リコーダーは個人用(吹き口が口に触れるため)
・共用する場合:その日使う人数を最小にし、使用順を固定(誰が使ったか追える)
・洗浄:中性洗剤→よくすすぐ→水分を拭く→内部も布で水滴除去→十分乾燥
・消毒:材質によって変色・変質の可能性があるため、アルコールや塩素系の扱いは園で統一(自己流にしない)
「アルコールは使えるのか?」は質問されやすいので、根拠を揃えるのが安全です。楽器店の案内では、柔らかい布に消毒用アルコールを染み込ませて拭く方法が紹介され、外側の汚れは石けん水を含ませた布で拭く旨も書かれています。一方で、材質によっては変色・変質の懸念があるという注意喚起もあるため、園では“採用する方法を一つに決める”のがトラブル予防になります。
アルコールで拭く方法・汚れは石けん水(楽器店の解説)

材質の変色・変質リスクへの注意(消毒に関する考察)
保育者が見落としやすい“意外な衛生ポイント”は「乾燥」です。洗った直後にケースへ入れると内部に水分が残り、におい・カビの原因になりやすいので、乾かす時間を確保できる運用(活動日を固定、予備を用意、乾燥ラックを作る等)が重要です。乾燥の工程が確保できないなら、「吹かせる」より「合図として保育者が吹く」運用に寄せた方が安全に回ります。
リコーダー保育リコーダーの独自視点の配慮
検索上位では「吹き方」「曲」「指使い」に寄りがちですが、保育では“多様な子どもが参加できる設計”が活動の質を左右します。たとえば指や手に欠損がある子どものリコーダーについて、支え方の工夫(滑り止めで机上に置く、ウエストポーチ等で支える)や、状態に合わせた改良リコーダーという選択肢が紹介されています。園の段階で「みんな同じが正解」になりすぎない雰囲気を作っておくと、小学校以降の器楽にもつながりやすいです。
支え方の工夫・改良リコーダーの紹介(多様性の視点)

保育向けに落とし込むなら、次のような“参加の複線化”が実務的です。
・吹く担当:今日は1~2人だけ(短時間・成功体験優先)
・合図担当:保育者が吹く音で、みんなは動く/止まる
・聴く担当:強弱や長短をカードで当てる(耳の参加)
・作る担当:ケースのラベル、注意カード、順番カードを作る(役割参加)
さらに、独自視点としておすすめなのが「リコーダーを“呼吸の観察ツール”にする」ことです。吹く遊びの延長で、息が強すぎる子、息が続かない子、口が閉じにくい子などが見えやすくなり、日常の遊び(風車、シャボン玉、紙飛ばし)へ支援を戻せます。音楽活動を、発達支援・生活習慣(口を閉じて鼻呼吸しやすい環境づくり等)と分断せずに接続できるのが、保育で扱う価値です。


