乙女の祈りピアノの難易度と弾き方・練習のコツ
中級と聞いて安心していると、発表会本番でオクターブだけ全部ミスタッチが出ます。
乙女の祈りのピアノ難易度を全音ランクで正しく理解しよう
「乙女の祈り」のピアノ難易度を語るとき、まず基準になるのが全音楽譜出版社のピアノピース難易度ランクです。この曲は全音ピアノピース016番に収録されており、難易度は「C(中級)」に分類されています。具体的には、ショパンの「子犬のワルツ」やシューベルトの「楽興の時」と同程度とされており、ツェルニー30番の後半〜終了レベルに相当します。
全音のランクはA〜Fの6段階で設定されており、CはちょうどEの中間あたりです。つまり、ピアノをそれなりに弾いてきた人向けの曲ということですね。
バイエルを終えてブルクミュラー25番を進めている段階では、この曲に挑戦するには少し早いかもしれません。ただし、初心者向けにアレンジされた楽譜であれば話は別です。難易度ランクはあくまで原典(オリジナル)版の評価である点に注意が必要です。
| 全音ランク | レベル目安 | 代表曲例 |
|---|---|---|
| A(初級) | バイエル前半〜中盤 | メヌエット ト長調など |
| B(初中級) | バイエル後半〜ブルクミュラー序盤 | ソナチネ Op.36-1など |
| C(中級) | ツェルニー30番後半〜終了 | 子犬のワルツ、乙女の祈り |
| D(中上級) | ツェルニー40番程度 | 幻想即興曲など |
| E(上級) | ツェルニー50番以上 | 英雄ポロネーズなど |
| F(最上級) | 音大受験・プロレベル | ラ・カンパネラなど |
piadoorというピアノ教育サイトでは、独自の難易度評価として「4(中級上)」と位置づけています。これは、全音Cランクという数字以上に、この曲には表現力や身体的な条件(手の大きさ)が加わるからです。難易度は「中級」でも、実質的なハードルはやや高めと考えておくのが現実的です。
参考(ピアノ曲の難易度と弾き方の詳細解説)。
ピティナ・ピアノ曲事典|バダジェフスカ:乙女の祈り 変ホ長調 Op.4
乙女の祈りのピアノ難易度を上げる3つの技術的ポイント
楽譜を見た瞬間に「音が多い!」と感じる方は多いですが、実はパターンは限られています。つまり中身は意外とシンプルです。
ただし、技術的にクリアすべき3つのポイントがあり、これを知らずに練習を始めると無駄な時間がかかってしまいます。
① オクターブの連続
この曲の最大の難所といえるのが、冒頭から登場するオクターブ(1オクターブ=ピアノの白鍵8個分、約15cmの幅)でのメロディ演奏です。右手の親指と小指でオクターブをつかむのが基本ですが、黒鍵が絡む場合は親指と薬指で押さえます。手のひらの横幅が15cm前後ある方は比較的楽に届きますが、それ以下だとかなり苦労します。
コーダ(後奏部分)もオクターブの連続になるため、手首の柔軟性と脱力が必須です。固く握ったままオクターブを連打すると、腱鞘炎になるリスクも出てきます。オクターブが条件です。
② 10連符・7連符
バリエーション1に登場する10連符は、一見複雑に見えますが、実際に使う音は「ソ・シ♭・ミ♭」の3音だけです。指くぐりのタイミングをつかめば、反復練習で自然とできるようになります。7連符も構造は同じなので、10連符をマスターすれば問題ありません。
③ トリル(左手のクロスを伴う箇所)
第2変奏以降では、左手が右手の上をクロスする珍しいパターンが登場します。手を交差させながら弾く感覚は最初は戸惑いますが、左右の高さを意識して練習すれば慣れてきます。トリルも同時に出てくるため、指独立のトレーニングが必要です。
技術的には「指使いのパターンは少なく、音使いもシンプル」という特徴があります。これが原因で「中級レベルなのにすぐ弾けると思っていたのに意外と時間がかかった」という体験談が多く出てくるわけです。
参考(難易度・弾き方・練習のコツを詳しく解説したピアノ教育サイト)。
piadoor|乙女の祈り Op.4(バダジェフスカ)難易度・弾き方・練習のコツ
乙女の祈りのピアノ練習ステップ:保育士にも使える段階別アプローチ
保育士として活躍しながらピアノを練習する方にとって、練習時間は限られています。毎日1時間も確保するのは難しい。だからこそ、練習の「順番」が合否を分けます。
以下のステップを守るだけで、上達スピードが大きく変わります。
STEP 1:左手の3パターンを丸暗記する(所要目安:1〜2日)
この曲の左手伴奏は、全体のほぼ8〜9割が3種類のパターンで構成されています。このパターンを見ずに弾けるレベルまで覚えてしまえば、後の練習がぐっと楽になります。左手はハノンのように単独で繰り返し練習するのが効果的です。
STEP 2:右手を「8分音符刻み」で譜読みする(所要目安:2〜3日)
10連符や7連符は、いきなり原曲のテンポで練習しようとすると混乱します。まず「8分音符刻み」という方法で、1拍ずつ区切りながら音を確認しましょう。右手だけをゆっくり練習するのが原則です。
STEP 3:両手を合わせてゆっくり通す(所要目安:1週間程度)
左手が自動化され、右手の音が頭に入ったら、両手を合わせます。このとき、絶対にいきなりテンポを上げないことが重要です。ゆっくり、正確に、1小節ずつ積み上げていく方法が最短ルートです。
STEP 4:難所を集中的に繰り返す(所要目安:2週間〜1ヶ月)
オクターブ、10連符、左手クロスの3箇所だけに絞った集中練習を組み込みます。練習量の7割をこの3箇所に当てると効率がいいです。残り3割で全体をつなげる通し練習をします。
保育士の現場では「短時間でも毎日触れること」が一番効果的とされています。週に1回まとめて練習するよりも、1日10分でも毎日弾く方が、指の記憶が定着しやすいです。これは使えそうです。
練習期間の目安としては、ピアノ中級レベルの方が毎日30分〜1時間練習した場合、1ヶ月前後で一通り弾けるようになるのが一般的です。ただし、発表会で人前に出せるクオリティにするには、さらに1〜2ヶ月かかることも珍しくありません。
乙女の祈りの作曲者バダジェフスカの意外な歴史的事実
「乙女の祈り」を弾くなら、作曲者の背景を知っておくと表現の引き出しが増えます。実はこの曲、音楽史上の驚くべき記録を持っています。
テクラ・バダジェフスカ(Tekla Bądarzewska-Baranowska)は、1829年(または1834年)にポーランドで生まれた女性作曲家です。彼女が「乙女の祈り」を作曲したのは22歳のとき(1851年ワルシャワで出版)で、1858年にフランスの著名な音楽雑誌「La Revue et Gazette Musicale(音楽新報)」の付録として掲載されたことをきっかけに世界中で大ヒットしました。
驚くべきことに、当時の音楽評論誌は「以前の版は1回につき4千部ずつ売れたが、五大陸に散らばったこの曲の総数は百万部単位になるだろう」と記しています。これは音楽史上、世界初のミリオンヒット曲といわれる所以です。当時はレコードもラジオも存在しない時代であり、楽譜の販売だけで100万部を超えたことは、前代未聞の出来事でした。
80社を超える出版社がこの曲を出版し、一部は無断で「バダジェフスカ名義」の偽作を出すほどでした。作曲者本人が著作権を巡って戦った記録まで残っています。
しかし、バダジェフスカ自身は正式な音楽教育を受けておらず、一部の音楽評論家から「素人くさい」「時代遅れ」と酷評されていました。にもかかわらず、当時ベートーヴェンやショパンの楽譜さえも凌ぐほどの売り上げを記録した事実があります。
彼女はその後、1861年に32歳という若さで亡くなりました。5人の子の母でもありながら、手がけた作品のうち確かに自作と確認できるのは「乙女の祈り」「甘き夢」「田舎小屋の思い出」「マズルカ」の4曲のみとされています。
参考(世界初のミリオンヒット曲としての歴史的背景に関する解説)。
Nasz Dom Japonski|《乙女の祈り》は世界初のミリオンヒット曲(ドロタ・ハワサ著)
乙女の祈りのピアノ演奏をさらに美しく仕上げる表現テクニック
音符を全部正確に弾けても、「なんか機械的だな」と感じる演奏になってしまうことがあります。この曲は技術的な難易度以上に、「音楽的な変化のつけかた」が最大の難所だとピティナ(全日本ピアノ指導者協会)のピアノ曲事典でも指摘されています。
以下のポイントを意識するだけで、演奏の印象が大きく変わります。
🎶 左手の音量コントロール
左手の伴奏はメロディの土台ですが、主役ではありません。ベースの低音だけしっかり鳴らし、2〜4拍目の内声は左手の中に収めるようにやわらかく弾くと、自然とメロディが際立ちます。右手と左手の音量比率は「右手7:左手3」くらいのイメージが目安です。
🎶 バリエーションごとにキャラクターを変える
この曲は変ホ長調(E♭-dur)で一貫しており、転調が一切ありません。そのため、「どのバリエーションも似て聞こえる」という問題が生じやすいです。バリエーション1は躍動感、バリエーション3は大人っぽい落ち着き、バリエーション4は軽快なトリルの活き活きとした感じ、というように明確にキャラクターを変えることが重要です。
🎶 フィナーレの3連符は「ためる」
後奏に登場する休符から始まる3連符は、休符の後の2音をやや「ため」て弾くのがポイントです。この小さな「間」が、曲全体の感動的な締めくくりにつながります。潔く明るい雰囲気で終わるのが「乙女の祈り」らしい仕上がりになります。
🎶 ペダルの使い方
全体を通して、ペダルは効果的に使いますが「踏みっぱなし」は厳禁です。特にバリエーション部分では、濁りを避けながら音の余韻を残すためにハーフペダル(少し浅めに踏む技法)を活用するとよいでしょう。
普段、電子ピアノだけで練習している方は注意が必要です。電子ピアノと生ピアノではペダルの踏み心地や音の広がり方が大きく異なるため、発表会前は必ず生ピアノでの練習時間を確保することを強くおすすめします。
参考(乙女の祈りの弾き方と練習のアドバイスが詳しいサイト)。


