おてあわせ歌で保育が変わる!種類と効果とねらい

おてあわせ歌で保育がぐっと豊かになる!ねらいと種類と活かし方

おてあわせ歌は「楽しければそれでいい」ではなく、やり方次第で子どもの脳に直接アプローチできる強力な保育ツールです。

この記事のポイント
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おてあわせ歌とは何か?

2人で向かい合い、歌に合わせて手を打ち合う伝統的な遊び歌。わらべうたや童謡と深くつながり、保育現場で長年愛されてきた活動です。

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発達効果と保育のねらい

脳の活性化・リズム感・協調性・語彙力など、複数の発達領域に同時にアプローチできます。年齢別のねらいを理解することで活用の幅が広がります。

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おすすめ曲と場面別の使い方

アルプス一万尺・茶摘み・一かけ二かけなど代表曲の特徴と、朝の会・活動導入・すきま時間など場面別の活用法を解説します。

おてあわせ歌とは?手遊び・わらべうたとの違いを整理する

 

「おてあわせ歌」とは、2人が向かい合って歌いながら、一定のリズムで互いの手を打ち合う遊び歌のことです。「手合わせ歌」とも書き、アルプス一万尺や茶摘みをイメージすると分かりやすいでしょう。

広い意味での「手遊び歌」は1人でも遊べますが、おてあわせ歌はパートナーと息を合わせることが前提の二人遊びという点が大きな特徴です。もう1つのカテゴリである「わらべうた」との違いも整理しておく必要があります。わらべうたは日本に古くから伝わる伝承的な遊び歌全般を指し、おてあわせ要素を含むものも多く含まれます。つまり、おてあわせ歌はわらべうたの一形式とも言えるのです。

保育士が現場でおてあわせ歌を正確に理解しておくべき理由は明確です。単に楽しませる道具として使うのと、発達上のねらいを意識して使うのでは、子どもへの効果がまったく変わってくるからです。「楽しかった」で終わらせない意識が大切ですね。

代表的なおてあわせ歌の種類をまとめると以下のとおりです。

曲名 特徴 対象年齢の目安
アルプス一万尺 テンポアップが楽しい定番 4〜5歳
茶摘み(夏も近づく八十八夜) 季節感・リズムの安定 4〜5歳
一かけ二かけ三かけて まりつき・わらべうた系 5歳以上
ちゃちゃつぼ テンポが変化する高難度 5〜6歳
せっせっせーのよいよいよい 導入に最適なシンプル系 3〜4歳

手の動きが複雑になるほど年齢が上がる傾向があります。曲の難易度と子どもの発達段階のマッチングが最初のポイントです。

保育のねらいを設定するときは、「おてあわせ歌」という分類で考えるより、「その歌が何を育てるか」を1つひとつ確認する姿勢が大切です。それが基本です。

【参考】大阪芸術大学紀要「保育における手遊びの効果」(手遊びが言語発達・音楽的発達に与える効果の学術的考察)

おてあわせ歌が子どもの脳と発達に与える5つの効果

おてあわせ歌が保育で重視される最大の理由は、その多面的な発達効果にあります。手は「第二の脳」とも呼ばれ、脳の広い範囲を刺激する器官です。両手を使い、相手のリズムに合わせながら歌うという行為は、脳に対して同時に複数の刺激を与えます。

これは意外な事実です。脳科学の研究によれば、手合わせ遊びを行っている最中、子どもの前頭前野が活性化することが確認されています。前頭前野は集中力・判断力・感情コントロールの中枢です。つまりおてあわせ歌には、集中力を育てる保育ドリルとしての側面があるのです。これは使えそうです。

発達効果を具体的に整理します。

🧠 ①脳の活性化

左右の手を別々に動かしながら、歌詞を記憶して発声する。この2つ以上のことを同時に行う「マルチタスク」が脳全体を刺激します。

🤲 ②手先の器用さ・微細運動の向上

細かい手の動きを繰り返すことで、鉛筆の持ち方や着替えの動作など、日常生活の微細運動の基礎が育ちます。アルプス一万尺の複雑な指の動きは、はがきの厚み(約0.2mm)を感じ取るほどの繊細な触覚刺激を指先に与えます。

🎵 ③リズム感・音楽的発達

一定のテンポで相手と手を打ち合う行為は、内側からリズムを刻む力を育てます。外部の音楽に合わせて体を動かすよりも、相手という生身の存在とリズムを共有することで、より高度な音楽的感覚が育まれます。

💬 ④語彙力・言語発達

歌詞に含まれる言葉を自然と繰り返すことで、語彙が増加します。特にわらべうた系のおてあわせ歌には、日常会話では出てこない昔ながらの言葉が含まれており、多様な語彙に触れられるという点でも価値があります。

👥 ⑤協調性・コミュニケーション能力

相手のペースに合わせる、テンポが合ったときの喜びを共有する。これはまさに対人コミュニケーションの原体験です。言葉より先に「息を合わせる」という体験が積み重なることで、友達関係の土台が育まれます。

5つの効果が一度に得られる保育活動は多くありません。おてあわせ歌はそのコストパフォーマンスが群を抜いていると言えるでしょう。準備も道具も不要です。

【参考】東京YMCA社会体育・保育専門学校「保育士必見!手あそびのねらいと上手に盛り上げるコツ」(脳の発達・コミュニケーション能力・運動能力の向上について解説)

おてあわせ歌のおすすめ曲と年齢別のねらい・振り付けのポイント

保育士にとって曲の選び方は非常に重要です。発達段階に合わない曲を使うと、子どもは「できない」という挫折感を味わうだけで終わってしまいます。これは避けたいですね。年齢ごとの特徴を理解した上で曲を選びましょう。

🎵 3〜4歳向け:せっせっせーのよいよいよい(東京音頭 / わらべうた系シンプル手合わせ)

3歳頃から取り組めるシンプルな手合わせ遊びです。「せっせっせー」の掛け声とともに向かい合って手を合わせるだけのシンプルな動作から始まります。ねらいは「向かい合ってリズムを合わせる体験」そのものです。複雑な手順は必要ありません。

相手の顔を見て同じ動きをする、という基本的なコミュニケーション行動を遊びの中で経験させることが最優先です。保育士がゆっくりとしたテンポで丁寧に実演することが大切ですね。

🎵 4〜5歳向け:茶摘み(夏も近づく八十八夜)

唱歌「茶摘み」はアルプス一万尺と並ぶ定番のおてあわせ歌です。向かい合って右手・左手を交互に打ち合わせながら歌います。歌詞が「夏も近づく八十八夜」と始まり、茶摘みの季節感が楽しめる点が特徴です。4月下旬〜5月上旬の保育に取り入れると季節の学びにもつながります。

ねらいとしては「相手と息を合わせる調整力」「季節や農業文化への興味関心」の2点が挙げられます。手の打ち合わせのリズムが安定しているため、初めてのおてあわせ歌としても取り組みやすい構成です。

🎵 4〜5歳向け:アルプス一万尺(いちまんじゃく)

保育現場で最もよく使われるおてあわせ歌のひとつです。2人で向かい合い、拍に合わせて手をパン・パン・合わせる・合わせる…という動作を繰り返します。慣れてきたらテンポを上げていくのが醍醐味です。「もう1回!もっと速く!」と子どもたちが自然とリクエストしてくれます。

ねらいは「速さの変化に対応するリズム感」「友達との共同体験による喜び」です。アルプス一万尺には実は29番まで歌詞があり、日本アルプス(北アルプス・槍ヶ岳周辺)を歌ったものです。一万尺とは約3,030メートルを意味し、槍ヶ岳の高さ(3,180m)にほぼ匹敵します。こうした豆知識を子どもに伝えると、地理や自然への興味が広がります。

🎵 5歳以上向け:一かけ二かけ三かけて(まりつき手合わせ)

「一かけ二かけ三かけて…」と数を数えながら手を打ち合うわらべうた系のおてあわせ歌です。歌詞に「十七・八のねえさんが」といった情景描写が含まれており、物語を想像しながら遊べる点が5歳以上の知的発達に合っています。

ねらいは「数え方の学習」「文化的背景を含む伝承遊びへの親しみ」です。歌詞が長く内容が複雑なため、まず保育士が全体を歌って見せ、ゆっくりと一節ずつ覚えさせていくアプローチが有効です。

【参考】HoiClue「アルプスいちまんじゃくの遊び方・振り付け解説」(ステップごとの動作説明と保育での活用方法)

おてあわせ歌を保育の「導入・切り替え」で最大限活用するコツ

おてあわせ歌の最大の強みは「道具ゼロ・準備ゼロ」で即座に使えることです。この強みを最大限に生かすには、「どんな場面で使うか」の引き出しを保育士自身が持っておく必要があります。

場面別の活用例を整理しましょう。

🌅 朝の会の最初に使う:集中モードへの切り替え

朝の会が始まっても、子どもたちの気持ちはまだバラバラです。この状態でいきなり話をしても伝わりにくいのが現実です。「せっせっせー」と声をかけてシンプルなおてあわせ歌を1曲はさむだけで、クラス全体の注目が集まります。理由は、相手と向き合って手を合わせる行為が「今ここに意識を向ける」スイッチとして機能するからです。

📚 絵本・工作などの活動前に使う:ワクワクの高め方

活動内容に関連したおてあわせ歌や季節の歌を1曲挟むことで、子どもたちの気持ちが「次の活動に向かう準備モード」に切り替わります。茶摘みを歌ったあとにお茶の絵本を読む、という流れは非常にスムーズです。つまり「おてあわせ歌=活動のプロローグ」として機能させることができます。

⏳ 給食前・着替え待ちなどのすきま時間に使う

5分未満の待ち時間に子どもたちを落ち着かせるのに、おてあわせ歌は最適です。ペアを組ませることで自然と友達同士の関わりが生まれます。待ち時間が「関わりの時間」に変わります。

保育士が実演するときの3つのポイント

  • 大きな動作と誇張した表情で見せる:子どもは保育士の動きを目で覚えます。手の動きが小さいと伝わらないことが多いです。
  • テンポはゆっくりから始める:最初のテンポが速すぎると子どもが動作を追えません。子どもが動作を覚えてから徐々に速めていくのが鉄則です。
  • 失敗を笑いに変える雰囲気を作る:手が合わなくても「あはは!もう1回!」と言える空気感を保育士が先に作ることで、挑戦が継続します。

おてあわせ歌は保育士の「ちょっとした引き出し」に入れておくほど、現場での万能さを発揮します。1日1曲、新しい歌を試してみるだけで、3か月後には驚くほどレパートリーが増えますよ。

おてあわせ歌を通じた「子ども同士の関係づくり」という独自視点

おてあわせ歌に関する記事の多くは「発達効果」や「やり方」に焦点を当てます。しかし実は、おてあわせ歌が持つ最も見落とされがちな価値は「子ども同士の関係づくりツール」としての機能です。

2人で向き合ってやるおてあわせ歌は、保育士主導の一方向の活動ではありません。子ども同士が「相手を意識し、相手に合わせ、相手と喜びを共有する」という水平な関係を、遊びの中で自然に経験できる仕組みになっているのです。これは他の手遊び歌にはない特性です。

内気な子・コミュニケーションが苦手な子への効果

言葉でのやりとりが苦手な子も、手を合わせるという身体的な接触と共同動作を通じてならば、相手と繋がれることがあります。「うまく話せなくても、リズムが合えばOK」という成功体験が、その後の対人関係における自己効力感を育てます。保育士がペアを上手に組み合わせることで、この効果は何倍にも高まります。

具体的なペアリングの工夫を紹介します。

  • 積極的な子と内気な子を組み合わせる(リード役・フォロー役を自然に体験させる)
  • 普段あまり関わらない子同士を意図的に組み合わせる(新しい関係のきっかけになる)
  • 逆に、仲が良すぎてふざけやすいペアは一時的に分けることも検討する

おてあわせ歌は、保育士にとって「クラスの人間関係を整える」ための見えない手段にもなります。1曲5分以内の遊びでそれができるなら、使わない理由はないでしょう。

仲間意識が生まれる「グループ手合わせ」への発展

慣れてきたら、2人ペアから3人・4人グループへと発展させるアレンジも効果的です。例えば「茶摘み」を輪になって順番に手を打ち合うルールにアレンジすることで、クラス全体が一体となる体験が生まれます。特に運動会発表会の前には、クラスの一体感を高める手段として取り入れると効果的です。

グループでの手合わせは難易度が一気に上がるため、「できた!」という達成感も大きくなります。年長クラスでの試みとして特におすすめです。

おてあわせ歌を「個人の発達を促すもの」という視点だけで見るのはもったいないです。集団を育てるツールとしても積極的に活用してみてください。

【参考】保育士バンクコラム「保育園で手遊びをするねらいとは?期待できる効果や演じるときのポイント」(コミュニケーション能力・語彙発達など複数の効果を保育士目線で解説)

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