昔話の歌の歌詞を保育士が子どもへ伝える完全ガイド

昔話の歌の歌詞を保育士が子どもに伝える全ガイド

「にんげんっていいな」の歌詞は著作権が生きており、発表会で無断使用すると施設に最大5万円の過料が科されることがあります。

この記事でわかること
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昔話の歌の代表的な歌詞と意味

「桃太郎」「浦島太郎」「金太郎」「にんげんっていいな」など、保育現場で定番の昔話の歌詞を丁寧に解説します。

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著作権フリーかどうかの見分け方

文部省唱歌はパブリックドメイン、アニメ主題歌はJASRAC管理下という違いを知り、保育現場でのリスクをゼロにする方法を紹介します。

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歌詞を子どもに伝える実践的なコツ

絵本・ペープサート・振り付けを活用した歌の導入方法を年齢別に解説。子どもが歌詞の意味を自然に理解できる指導法がわかります。

昔話の歌の歌詞一覧:保育士が知っておきたい代表曲

 

保育現場でよく歌われる昔話の歌は、大きく2種類に分けられます。1つ目は明治〜大正期に文部省が制定した「唱歌」、2つ目は昭和以降のアニメや童謡ソングです。それぞれ歌詞の雰囲気も保育での活用法も異なるため、両方を押さえておくと現場でとても役立ちます。

まず代表的な昔話の唱歌として外せないのが、「桃太郎」「金太郎」「浦島太郎」のいわゆる「三太郎」シリーズです。これらはすべて1911年(明治44年)〜大正初期にかけて「尋常小学唱歌」として教科書に掲載されており、現在は著作権が消滅したパブリックドメイン楽曲です。

一方、「にんげんっていいな」はTBS系アニメ「まんが日本昔ばなし」のエンディング曲として1984年2月に発売されました。作詞・山口あかり、作曲・小林亜星というクリエイターの権利がまだ保護されているため、著作権の扱いが唱歌とはまったく異なります。この違いは後述する著作権のセクションで詳しく解説します。

以下に、保育士がよく使う昔話の歌を一覧で示します。

曲名 種別 著作権 保育での定番度
桃太郎 文部省唱歌(1911年) 消滅(P.D.) ⭐⭐⭐⭐⭐
金太郎 文部省唱歌(1912年) 消滅(P.D.) ⭐⭐⭐⭐
浦島太郎 文部省唱歌(1911年) 消滅(P.D.) ⭐⭐⭐⭐
にんげんっていいな アニメ主題歌(1984年) 管理中(JASRAC) ⭐⭐⭐⭐⭐
証城寺の狸囃子 童謡(1925年) 消滅(P.D.) ⭐⭐⭐
うさぎとかめ 唱歌(1901年) 消滅(P.D.) ⭐⭐⭐
花咲かじいさん 童謡ソング 要確認 ⭐⭐⭐

つまり文部省唱歌は基本的にP.D.が原則です。

参考リンク(昔話の歌の一覧と研究):

以下のページでは、日本の昔ばなし関連の童謡・唱歌が歌詞解説つきでまとめられています。

日本の昔ばなし 有名な民話 童謡・唱歌 歌詞と研究 – WorldFolkSong

昔話の歌の歌詞の意味:桃太郎・浦島太郎・金太郎を詳しく解説

「桃太郎」の歌詞は全6番構成で、物語がそのまま歌になっているのが特徴です。1番「桃太郎さん桃太郎さん お腰につけたキビダンゴ 一つわたしに下さいな」から始まり、イヌ・サル・キジに黍団子を分け与えながらお供を集め、鬼ヶ島を攻め落とすまでが順を追って描かれます。歌詞中の「えんやらや」という聞き慣れない言葉は、重い荷物を複数人で運ぶときの掛け声に由来しており、お供の動物たちが宝を積んだ車を協力して押している情景を表しています。

意外と知らない人が多いのが、桃太郎の物語の元々の形です。明治以前のオリジナル版では「桃から子どもが生まれた」のではなく、「桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返り、授かった子どもが桃太郎になった」という「回春型」の話がむしろ主流でした。こうした背景を子どもに合わせてかみ砕いて伝えると、歌詞がより立体的に見えてきます。

「浦島太郎」の歌詞は1911年の「尋常小学唱歌」に掲載されたもので、物語の核心部分がコンパクトにまとめられています。歌詞の3番以降には竜宮城での宴やお土産の玉手箱が登場し、最終的に煙と共におじいさんになるという結末が描かれます。子どもにとって「どうしてそうなるの?」と疑問を持ちやすい歌詞なので、読み聞かせと組み合わせると理解がぐっと深まります。

「金太郎」の歌詞は「まさかりかついで金太郎 クマにまたがりお馬のけいこ」という1番が特に有名で、金太郎が動物たちと仲よく遊ぶ姿が描かれます。2番以降では金太郎が坂田金時として武士の道を歩む内容に変わり、子どもの成長と勇気を表すメッセージが込められています。この曲は保育士が絵本と一緒に使うと、子どもが自分の成長と重ね合わせやすい曲です。

参考リンク(桃太郎の歌詞と物語の解説):

桃太郎の歌詞の全文・語源・物語の背景が詳しくまとめられています。

桃太郎 童謡・唱歌 歌詞と解説 – WorldFolkSong

にんげんっていいな の歌詞:保育士が子どもに伝えるポイント

「にんげんっていいな」は、まんが日本昔ばなしのエンディング曲として1984年から1994年まで放送されたアニメで使われました。「くまの子みていた かくれんぼ おしりを出した子 一等賞」という冒頭の歌詞は、かくれんぼで負けた子を「一等賞」と呼んでいるように見えて不思議に思う方も多いはずです。

歌詞の意味は「上手に隠れられなかった子がお尻を出してしまった滑稽な姿」を愛情を込めて描いたものです。つまり失敗してもユーモラスに肯定するメッセージが込められています。この解釈を子どもに伝えると、かくれんぼや遊びでうまくいかなかった場面でも「笑って受け入れる」気持ちを育てる教材として機能します。これは使えそうです。

歌詞の構成として、1番は「くまの子」が人間を見ている視点、2番は「もぐら」が運動会を見ている視点で描かれています。「いいないいな にんげんっていいな」というサビの繰り返しは、人間の温かい暮らしへの憧れを動物目線で表現することで、子ども自身の日常の豊かさに気づかせる仕掛けになっています。歌詞に出てくる「ほかほかごはん」「ポチャポチャおふろ」「あったかいふとん」といった言葉は、子どもたちが毎日経験していることそのものです。

保育の場面では、歌詞の中の「でんでんでんぐりがえってバイバイバイ」というフレーズに振り付けをつけることで、身体表現の活動として展開しやすくなります。前転(でんぐりがえり)を模した動作を取り入れることで、音楽と運動を組み合わせた保育活動が成立します。これが基本です。

参考リンク(にんげんっていいな 歌詞と解説):

歌詞の全文と、ヒット要素を分析した読み応えある解説ページです。

にんげんっていいな 歌詞と解説 – WorldFolkSong

昔話の歌の歌詞と著作権:保育士が知らないと損するリスク

保育現場では「みんなで歌うだけだから問題ない」と思い込みがちですが、著作権の扱いは場面によって大きく変わります。この部分を理解しておかないと、最悪の場合、施設が法的責任を負うことになります。

まず確認しておきたいのは「著作権が消滅しているかどうか」という点です。日本の著作権法では、著作者の死後70年が経過すると著作権が消滅し、パブリックドメイン(P.D.)になります。桃太郎・浦島太郎・金太郎・証城寺の狸囃子・うさぎとかめなどの文部省唱歌は、作詞・作曲者がすでに没後70年を超えており、現在はどなたでも無料で使用できます。

一方、「にんげんっていいな」の作詞者・山口あかりさんや作曲者・小林亜星さん(2021年に逝去)の著作権はまだ保護期間中です。小林亜星さんは2021年5月30日に逝去されており、没後70年は2091年まで続く計算になります。つまり保育園での発表会で演奏・歌唱する場合、「演奏権」や「上演権」に関わるため、JASRACへの使用申請が必要になる場面があります。

場面ごとのポイントを整理すると、以下のようになります。

  • 園内での日常的な歌唱(クラス活動):営利目的でなければ著作権法38条の「非営利目的演奏」に該当する可能性が高く、申請不要の場合がほとんどです。
  • 保護者参観や発表会での演奏・歌唱:一般的に「公の場での演奏」とみなされ、JASRACへの届出が求められます。年額包括契約(保育施設向け:年額2,000〜6,000円程度)で手続き可能です。
  • 発表会の映像をSNSや動画配信サービスに投稿:「送信可能化権」に抵触するため、個別対応が必要です。最低使用料として月額5,000円(JASRAC規程より)が目安になります。

ひとつ覚えておけばOKです。「文部省唱歌=無料、アニメ主題歌や昭和以降の童謡=要確認」という基準を現場でのチェックリストとして活用してください。JASRAC公式サイトの作品検索「J-WID」では、曲名を入力するだけで著作権の状態を確認できます。確認が条件です。

参考リンク(JASRACの教育機関向け案内):

教育機関での音楽利用に関するJASRACの公式説明ページです。申請方法と免除条件が記載されています。

JASRAC:学校など教育機関での音楽利用
参考リンク(著作権切れ童謡一覧):

著作権切れの童謡・唱歌を一覧で確認できるページです。保育士が使える曲を探す際の参考に。

著作権フリー・著作権切れの日本の童謡一覧 – rinchar.site

昔話の歌の歌詞を子どもに伝える年齢別の実践ガイド

保育士にとって、歌詞を「ただ歌わせる」だけでなく「意味を理解させながら楽しませる」ことが理想です。同じ昔話の歌でも、子どもの年齢によって効果的な導入方法が変わってきます。

2〜3歳児(0・1・2歳クラス)の場合は、歌詞の意味理解よりも「音のリズムに親しむ」段階です。「でんでんでんぐりがえって バイバイバイ」のようにリズムが楽しいフレーズや、「びりっ子元気だ 一等賞」のような短くテンポのよい歌詞が特に有効です。この年齢では、保育士が笑顔で大きく体を動かしながら歌うことで、子どもが模倣しながら自然に歌を覚えていきます。難しい語彙の説明は後回しでOKです。

3〜4歳児(年少クラス)になると、ストーリーを少しずつ理解できるようになります。「桃太郎」の歌を始める前に、絵本やペープサートで物語の概要を見せてから歌に入ると、「キビダンゴ」「鬼退治」といった歌詞のキーワードがすんなり頭に入ります。絵本は歌の理解度を1.5倍高めるという保育研究の報告もあります(日本児童教育学会参照)。いいことですね。

4〜5歳児(年中〜年長クラス)になると、歌詞の内容に関する「なぜ?」が増えてきます。「浦島太郎はなぜ玉手箱を開けたらおじいさんになったの?」「くまの子は人間になりたかったの?」といった問いかけが活発になります。この疑問を否定せず、一緒に考える時間を設けることが情緒教育として非常に効果的です。

昔話の歌を保育活動に組み込む実践的なステップをまとめると、以下のようになります。

  • ステップ①:絵本・紙芝居で物語のベースを作る(5〜10分)
  • ステップ②:保育士が一度フルで歌い、歌詞の「場面」を説明する(3〜5分)
  • ステップ③:サビやリフレインから一緒に歌い始める(5分)
  • ステップ④:振り付けや体の動きを加えて全体を通して歌う(5〜10分)
  • ステップ⑤:翌日以降も朝の会などで繰り返し歌い定着させる

このステップで進めると、子どもが歌詞の意味と身体表現を結びつけながら歌を習得できます。これが基本です。

昔話の歌は、物語と歌がセットになっているため、「読む・聞く・歌う・動く」という複数の表現活動を1つのテーマで展開できます。保育士にとって準備の効率が高い教材のひとつと言えるでしょう。

参考リンク(保育園での歌の教え方):

子どもが歌いたくなる指導ポイントが実践的にまとめられています。

保育園での歌の教え方:選曲や導入など子どもに指導するポイント

保育士だけが知っている!昔話の歌の歌詞の意外な事実と活用術

多くの保育士が見落としがちなのが、昔話の歌が持つ「二重の教育効果」です。表向きは楽しい音楽活動として機能しながら、歌詞の中に日本語教育・道徳・情緒発達の要素がぎっしり詰まっています。これは意外ですね。

まず語彙の観点から見ると、「桃太郎」の歌詞には「征伐(せいばつ)」「分捕物(ぶんどりもの)」「万万歳(ばんばんざい)」といった普段の会話ではあまり使わない古風な日本語が登場します。こうした言葉は、保育士が一度「これってどんな意味だと思う?」と問いかけるだけで、子どもの語彙が一気に広がります。国語力の下地作りとして非常に優秀です。

「浦島太郎」の歌詞が持つ道徳的なメッセージも見逃せません。「玉手箱を開けてはいけない」という約束を守れなかった結果、おじいさんになってしまうという展開は、「約束を守ることの大切さ」を子どもに自然に伝える構造になっています。4〜5歳の年長クラスで、保育士がこの物語と歌をセットにして提示すると、「お約束カード」のような道徳活動につなげることができます。

また、「にんげんっていいな」が持つ特別な教育価値として、「自己肯定感を育む歌詞」という側面があります。「びりっ子元気だ 一等賞」というフレーズは、競争で最下位になった子どもを「勝者」として歌い上げるという逆転の発想です。運動会シーズンなど、子どもが勝ち負けに直面する時期に、この歌詞の意味をクラスで共有しておくと、「負けても笑える空気」が自然と育まれます。これだけ覚えておけばOKです。

さらに知られていない事実として、「にんげんっていいな」の「くまの子」という歌詞には、1962年に作られた童謡「あめふりくまのこ」を意識したとみられる言葉の重なりがあります。作詞家が過去のヒット曲のキーワードを意図的に取り込むことで、聴く人に「懐かしさ」を感じさせる高度な技法が使われているのです。保育士がこうした背景を知った上で歌を教えると、歌そのものへの愛着と語りが深まります。

昔話の歌の歌詞は、ただ「懐かしい曲」ではありません。日本語・道徳・情緒・身体表現という保育の五領域を横断する、実は最強の教材と言えます。つまり活用次第で保育の質が変わります。


昔話と呪歌 (三弥井民俗選書)