モーツァルトの子守歌 歌詞 日本語の意味と保育への活かし方
「モーツァルトの子守歌」はモーツァルトが作っていないのに、保育士が正しく教えると子どもの信頼が一気に高まります。
モーツァルトの子守歌の日本語歌詞(全3番)堀内敬三版
保育の現場でよく歌われるのは、音楽評論家・堀内敬三が訳した日本語歌詞です。歌い出しの「ねむれよい子よ」は、多くの保育士が一度は口ずさんだことがあるでしょう。全3番の歌詞を確認しておくことは、子どもへの歌いかけの質を高める第一歩です。
第1番
ねむれよい子よ 庭や牧場に
鳥もひつじも みんなねむれば
月はまどから 銀の光を
そそぐ この夜
ねむれよい子よ ねむれや
第2番
家の内外(うちそと) 音はしずまり
たなのねずみも みんなねむれば
奥のへやから 声のひそかに
ひびくばかりよ
ねむれよい子よ ねむれや
第3番
いつも楽しい しあわせな子よ
おもちゃいろいろ あまいお菓子も
みんなそなたの めざめ待つゆえ
夢にこよいを
ねむれよい子よ ねむれや
3番の歌詞はバージョンによって「みんなそろって朝を待つゆえ」や「夢に今宵も」と異なる場合があります。これが条件です。保育の現場で楽譜や教材を選ぶ際には、使用する版を事前に確認しておくと安心です。
第1番では「庭・牧場・鳥・羊・月の光」という穏やかな夜の自然が描かれます。第2番は屋敷の内側に視点が移り、「ねずみまで眠っている」という静寂の深まりを表現しています。第3番では「目が覚めたらおもちゃとお菓子が待っている」という、子どもへの優しい励ましで締めくくられます。つまり1→2→3番の順に「外の世界→家の中→明日への期待」と物語が進む構造になっているということです。
保育士として子どもに歌う際は、歌詞の情景を思い浮かべながら声のトーンを落ち着かせることが大切です。情景を想像しながら歌うと、自然と抑揚がやわらかくなります。子どもはその変化を敏感に感じ取ります。
参考:曲の歌詞全文とドイツ語原詩の対応はこちらで確認できます。
モーツァルトの子守歌 日本語歌詞(堀内敬三版)全3番掲載 – asahi-net
モーツァルトの子守歌のドイツ語歌詞の意味と日本語との違い
原詩はドイツの詩人フリードリヒ・ヴィルヘルム・ゴッター(1746〜1797年)が書いた劇「エステル」に登場する子守歌です。意外ですね。タイトルは「Schlafe, mein Prinzchen, schlaf ein(眠りなさい、私の王子さま、眠りなさい)」というものです。
原詩と日本語訳を比べると、意味の対応関係がよくわかります。
| ドイツ語(抜粋) | 意味 | 堀内敬三訳詞 |
|---|---|---|
| Schlafe, mein Prinzchen, schlaf ein | 眠れ、私の王子様 | ねむれよい子よ |
| Schäfchen ruhn und Vögelein | 羊も小鳥も眠っている | 鳥もひつじもみんなねむれば |
| Luna mit silbernem Schein | 月が銀色の光で | 月はまどから銀の光を |
| gucket zum Fenster herein | 窓から覗いている | そそぐ この夜 |
| reget kein Mäuschen sich mehr | ねずみ一匹も動かない | たなのねずみもみんなねむれば |
| Spielwerk und Zucker vollauf | おもちゃとお菓子がいっぱい | おもちゃいろいろ あまいお菓子も |
堀内敬三の訳は、原詩の意味に比較的忠実でありながら、日本語のリズムに自然に乗るよう工夫されています。これは使えそうです。「王子様(Prinzchen)」という特定の呼びかけが「よい子よ」という普遍的な表現に翻訳されているのは、日本の保育現場でどの子にも歌いやすくするための配慮とも言えます。
原詩の第2番の後半には「侍女の部屋からため息が聞こえる」という大人向けのニュアンスが含まれています。この部分は堀内訳では「奥のへやから声のひそかにひびくばかりよ」と婉曲に訳されており、保育の場でもそのまま使いやすい表現になっています。歌詞の背景を理解しておくと、保護者への説明や音楽活動の時間にも深みが増します。
モーツァルトの子守歌の作曲者は実はモーツァルトではない?フリースとは誰か
「モーツァルトの子守歌」はモーツァルトが作曲していません。保育士として子どもや保護者に自信をもって語れる知識です。
長い間モーツァルト作曲(ケッヘル番号K.350)とされてきました。しかし近年、ドイツの研究家がハンブルクの図書館で18世紀後半の歌集を発見し、「フリース作曲」の記述が確認されたことで、「フリースの子守歌」が正式な呼称となりました。これが原則です。
作曲者とされているのは、ベルンハルト・フリース(Bernhard Flies、1770年頃〜生没年不詳)というドイツのアマチュア作曲家で、職業は医学博士でした。さらに研究が進むと、フリードリヒ・フライシュマン(Johann Friedrich Anton Fleischmann、1766〜1798年)という別の作曲家説も浮上しており、現時点では決定的な結論には至っていません。
なぜ「モーツァルトの子守歌」と呼ばれるようになったのでしょうか?モーツァルト死後に、妻が持っていたフリースの楽譜を見た音楽目録家のルートヴィヒ・フォン・ケッヘルがモーツァルト作品として整理番号を付けてしまったこと、あるいは妻の再婚相手が出版した伝記に「モーツァルト作曲」と書かれていたことが原因と考えられています。意外ですね。
この話題は保護者への音楽活動の説明や、子どもへの音楽絵本の読み聞かせにも活用できます。「この曲は実はモーツァルト先生が作ったわけじゃないんだよ」と話すだけで、保護者の知識欲を引き出すきっかけにもなります。
参考:作曲者フリースの詳細と歌の経緯についての解説はこちら
モーツァルトの子守歌(フリースの子守歌)作曲者の真実と歌詞の意味 – 世界の民謡・童謡
モーツァルトの子守歌を保育の寝かしつけに使うコツと歌い方
「スピーカーから流すのと保育士が直接歌うのは同じ効果では?」と思っていると、子どもの入眠を損している可能性があります。
小児保健研究(黒石ら、2008年)によると、0〜2歳児を対象に「肉声による歌いかけ」と「オーディオなどの音楽再生」を比較した調査では、おとなしくなる・眠るという反応が、肉声では55.2%、音楽機器では48.2%と、肉声の方が高い割合を示しました。さらに「笑う」というポジティブな反応は、肉声の歌いかけでより多く見られることも明らかになっています。保育士が直接歌うことに意味があるということです。
別の研究(マイアミ大学・フィールド博士の調査)では、子守歌を歌いかけることで幼児の入眠が35%早まったという結果も報告されています。1時間の午睡が確保しやすくなる計算です。これは大きいですね。
実際に保育現場で使えるポイントをまとめます。
- 🎤 声量は「小さめ」が正解:大きな声は覚醒を促してしまいます。話しかける声より少し低めのトーンで、普段の8割程度の音量を意識しましょう。
- 🎶 テンポはゆっくり:モーツァルトの子守歌の場合、♩=60〜72(1分間に60〜72拍)あたりが入眠に適切です。これは静かな時計の秒針のリズムとほぼ同じです。
- 👁 視線は穏やかに:子どもの目を正面からじっと見るより、少し斜め上を見ながら歌うと圧迫感が出ません。
- 🔁 繰り返しがカギ:毎日同じ曲・同じ順序で「布団→トントン→子守歌」と入眠ルーティンを作ると、子どもの脳が「眠るパターン」を学習します。
歌う保育士自身のストレス軽減にもなることが分かっています。歌うことは肺活量を使う呼吸であり、副交感神経を優位にする効果があります。つまり子どもだけでなく、保育士自身も落ち着けるということです。
参考:千葉市子育て支援館の発行資料で、子守歌の月齢ごとの効果が詳しく解説されています。
子守歌が子どもと保護者へ与える効果(千葉市子育て支援館・PDF)
モーツァルトの子守歌とブラームス・シューベルトの子守歌との歌詞・特徴の比較
保育士が「世界三大子守歌」をまとめて理解しておくと、音楽活動の引き出しが格段に増えます。3曲を知ることがポイントです。
世界三大子守歌とは「モーツァルトの子守歌(フリース作曲)」「ブラームスの子守歌」「シューベルトの子守歌」の3曲を指します。
| 比較項目 | モーツァルトの子守歌 | ブラームスの子守歌 | シューベルトの子守歌 |
|---|---|---|---|
| 🎼 作曲者 | ベルンハルト・フリース | ヨハネス・ブラームス | フランツ・シューベルト |
| 📅 作曲年 | 1796年頃 | 1868年 | 1816年(15歳の作) |
| 🌙 歌い出し(日本語) | ねむれよい子よ | ねむれねむれ母の胸に | ねむれねむれ 母のそばに |
| 🎵 テンポの印象 | おだやか・流れるよう | やさしく揺らぐ | 静かで内省的 |
| 👶 保育での使いやすさ | ◎(旋律が明確) | ◎(テンポが安定) | ○(やや難易度高め) |
ブラームスの子守歌(1868年作)は、ブラームスが指導していた合唱団員の出産祝いに贈った曲という背景があります。「眠れ眠れ 母の胸に」という歌い出しは保護者からも親しみやすく、保育参観などで一緒に歌う場面にも活用できます。
シューベルトの子守歌は、彼がわずか15歳のときに亡くした母親への思いをもとに作ったという説が有名です。厳しいところですね。歌詞の静かな哀愁は、落ち着いた昼寝の時間帯に流すBGMとして向いています。
3曲ともドイツ語原詩に日本語歌詞が付けられており、保育の現場では子どもの発達段階に応じて使い分けることができます。入眠の導入には旋律がわかりやすい「モーツァルトの子守歌」から始めると、子どもも覚えやすくておすすめです。
参考:世界三大子守歌のドイツ語原詩と日本語訳の比較はこちら
世界の子守歌 クラシック音楽と童謡まとめ – 世界の民謡・童謡
保育士だから知っておきたい「モーツァルトの子守歌」の音楽的特徴と歌詞の伝え方
「きれいに歌えれば十分」と思っていると、子どもへの情緒的な効果を半分以下に留めている可能性があります。
モーツァルトの子守歌はハ長調(C major)で書かれており、音域はおおむね1オクターブ以内に収まっています。これは声楽的に無理のない音域であり、音楽の専門訓練がない保育士でも歌いやすいという利点があります。なら問題ありません。3拍子のリズム(ワルツのように3拍でひとかたまり)が特徴で、この揺れるようなリズムが赤ちゃんの生理的な揺れの感覚と共鳴しやすいと考えられています。
ヤマハ音楽振興会の研究では、乳幼児への歌いかけにおいて「抑揚・間・視線の向け方」の3点が重要とされています。具体的には次のような工夫が効果的です。
- 🎼 フレーズの区切りで0.5秒の「間(ま)」を入れる:「ねむれよい子よ(間)庭や牧場に」のように区切ると、子どもが音を処理しやすくなります。
- 🌡 テンポを徐々に落としていく:歌い始めよりも3番に向かうにつれてテンポをゆっくりにすると、眠気を誘う効果が高まります。
- 🗣 語りかけるように歌う:音程を正確に歌うことよりも「言葉を大切に伝える」意識の方が、子どもへの伝達力が上がります。
また、歌詞の内容を保護者に説明できると、家庭での子守歌の実践につなげることができます。「この歌には3番あって、お話が続いているんですよ」と一言添えるだけで、保護者の関心度が変わります。
保護者向けに「家でも歌いたい」という声が出たときには、ヤマハの「おんがくなかよし」や「うたと音楽の絵本」といった家庭用教材を紹介するのも一つの選択肢です。保育士からの一言紹介が、家庭での音楽環境の改善に直接つながることがあります。
参考:乳幼児音楽教育の専門家による「歌いかけの3つのコツ」
親子の絆を強くする「歌いかけ」3つのコツ – ヤマハ音楽振興会 ON-KEN SCOPE

ベスト・オブ・ベスト・モーツァルト

