三善晃 合唱|選曲と指導のポイント

三善晃 合唱の魅力と実践

三善晃の合唱曲は保育士でも演奏できます。

この記事のポイント
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三善晃作品の特徴

現代音楽でありながら子どもの声域に配慮された作品が存在し、保育現場でも実践可能です

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代表的な合唱曲

「唱歌の四季」や「五つの童画」など、子ども向けの作品から大人の合唱まで幅広いレパートリーがあります

指導のコツ

音程の取り方や響きの作り方に独自の工夫が必要で、段階的なアプローチが効果的です

三善晃 合唱曲の基本的な特徴

 

三善晃(1933-2013)は日本を代表する現代音楽の作曲家です。合唱作品は200曲以上にのぼり、児童合唱から混声合唱まで幅広いジャンルで作品を残しています。

現代音楽というと難解なイメージがありますね。しかし三善作品の多くは、日本語の美しさを活かした旋律が特徴です。言葉のイントネーションを大切にした作曲法により、歌詞が自然に聴こえる工夫がされています。

保育現場で注目したいのは、子どもの声域への配慮です。児童合唱曲では無理な高音を避け、ド(C4)からラ(A5)程度の範囲に収められた作品が中心となります。これは一般的な小学生の声域とほぼ一致する範囲です。

和声進行は独特ですが、メロディーラインは歌いやすく設計されています。複雑に聴こえる響きも、パート毎に分解すれば比較的シンプルな音型で構成されているんです。

つまり段階的な練習で習得可能ということですね。

全日本合唱連盟のコンクール課題曲にも頻繁に選ばれており、2020年代も「五つの童画」などが課題曲として採用されています。これは作品の教育的価値が広く認められている証拠です。

三善晃の代表的な合唱作品

児童合唱の代表作として「唱歌の四季」(1984年)があります。日本の唱歌をモチーフにした4楽章構成の組曲で、「春の小川」「われは海の子」などの旋律が現代的にアレンジされた作品です。

演奏時間は約15分で、小学校高学年から中学生に適しています。各楽章は3~4分程度なので、発表会で1楽章だけ取り上げることも可能です。難易度は中級レベルで、音程の安定した合唱団なら挑戦できます。

「五つの童画」(1976年)は、まど・みちおの詩に曲をつけた作品です。「やぎさんゆうびん」など親しみやすい題材が選ばれており、子どもたちが共感しやすい内容となっています。

どういうことでしょうか?

詩の世界観を音楽で表現する手法が秀逸で、言葉のリズムと音符のリズムが一体化しています。保育士が参考にできる言葉遊びの要素も豊富です。

混声合唱では「嫁ぐ娘に」(1962年)や「レクイエム」(1972年)が有名です。これらは高度な技術を要する作品ですが、三善作品の真髄を知るには重要な位置づけとなります。

女声合唱の「三つの抒情」(1964年)は、中原中也の詩による作品です。演奏時間は約10分で、情感豊かな表現が求められます。保育士の合唱サークルで取り組むには適度な難易度です。

全音楽譜出版社から多数の楽譜が出版されており、入手しやすい環境が整っています。三善作品の楽譜カタログでは、難易度や編成から検索できるシステムが用意されています。

三善晃 合唱の音楽的特徴と和声

三善作品の和声は、機能和声(ドミナントトニックのような伝統的な進行)から離れた響きが特徴です。しかし無調ではなく、調性感を保ちつつ独自の和音を用いる手法が取られています。

具体的には、長三和音に短九度や長七度を加えた複雑な響きが頻出します。これは一見難しそうですが、実際には各パートの音程関係を理解すれば歌えるんです。

リズムの扱いも独特で、拍子の変化や複雑なシンコペーションが用いられます。ただし言葉のアクセントに従った自然なリズムなので、歌詞を正しく発音すれば自然とリズムが取れる設計です。

「音の密度」という概念も重要です。クライマックスでは多くの音が重なり合い、緊張感のある響きを作ります。一方、静かな場面ではユニゾン(同じ音)やシンプルな二部に減らされ、コントラストが生まれます。

フレージング(音楽の句読点)は長めに設計されており、一つのフレーズが8小節以上続くことも珍しくありません。これが原因で息継ぎのタイミングに困ることがあります。ブレスの計画は事前に指導者が示す必要があるということですね。

ダイナミクス(音量の変化)の指示も細かく、pppp(極めて弱く)からffff(極めて強く)まで幅広い表現が要求されます。子どもの合唱では、音量の幅を2段階程度に調整する工夫が効果的です。

保育現場での三善晃作品の活用法

保育園や幼稚園で三善作品を導入する場合、年長クラスから始めるのが現実的です。5歳児であれば音程の安定や簡単なハーモニーの理解が可能になります。

最初の1曲には「五つの童画」の中から1曲を選ぶ方法がおすすめです。「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」など、既に知っている詩から入ると抵抗感が減ります。

練習時間は週1回30分程度で、3ヶ月かけて仕上げるペースが適切です。急いで詰め込むと音程が不安定になり、三善作品特有の美しい響きが損なわれます。

指導のステップは以下の順序が効果的です。

  • ステップ1:歌詞の朗読と内容理解(1週目)
  • ステップ2:リズム読み(2週目)
  • ステップ3:音程の確認(3~5週目)
  • ステップ4:パート練習(6~8週目)
  • ステップ5:合わせ練習と表現づくり(9~12週目)

音程を取る際は、ピアノで各パートの音を弾いて確認する時間が必要です。三善作品は半音階的な進行が多いため、隣の音との違いを耳で識別する訓練が求められます。

録音を活用する方法も有効です。練習の様子を録音し、子どもたちに聴かせることで客観的な耳を育てられます。スマートフォンの録音アプリで十分対応できますね。

発表の場としては、園内の音楽会や地域の合唱祭が考えられます。三善作品は聴き手にも新鮮な印象を与えるため、プログラムの中で良いアクセントになります。

保護者向けには、事前に作曲家の紹介や作品の特徴を説明する時間を設けると理解が深まります。「現代音楽」という言葉だけで敬遠されないよう、親しみやすい解説が大切です。

三善晃作品の演奏技術と練習のポイント

発声の基本として、明るく軽やかな声質が求められます。重たい声では三善作品特有の透明感が出ません。子どもたちには「風船が浮かぶように」といった比喩で指導すると効果的です。

母音の統一も重要なポイントです。日本語の「あ・い・う・え・お」の口の形を揃えることで、合唱の響きが整います。鏡を使って口の形を確認する練習を取り入れましょう。

ピッチ(音程)の正確さは、三善作品では特に重視されます。半音のずれが和声全体を崩すため、チューナーを使った確認も有効です。最近のチューナーアプリは無料で高性能なものが多く、スマートフォンで手軽に使えます。

アンサンブル感覚を育てるには、少人数のパート練習が効果的です。各パート3~5人程度のグループに分け、お互いの声を聴き合う訓練をします。他のパートとの音程関係を理解できるようになるということですね。

指揮者の役割も大きく、拍子の変化や複雑なリズムを視覚的に示す必要があります。保育士自身が指揮の基本を学ぶことで、子どもたちへの伝達がスムーズになります。

楽譜の読み方については、音符だけでなく強弱記号や速度記号の意味を説明することが重要です。小学校高学年なら記号の意味を理解できるので、楽譜から音楽を読み取る力を育てられます。

発表会前の最終調整では、会場の音響特性を考慮します。体育館のような残響の多い場所では、テンポを若干遅めに設定すると響きが混濁しません。リハーサルで会場の響きを確認する時間を確保しましょう。

三善晃の音楽教育への貢献と影響

三善晃は作曲家としてだけでなく、音楽教育者としても大きな足跡を残しています。東京藝術大学で長年教鞭を取り、多くの作曲家を育成しました。

日本の合唱界に与えた影響は計り知れません。1960年代から現代まで、合唱コンクールの課題曲として採用され続けており、延べ1000以上の合唱団が三善作品を演奏してきました。

子どもの音楽教育に対する思想も明確です。「子どもだから簡単な音楽」という考えを否定し、年齢に応じた適切な複雑さを持つ作品を書くことを信条としていました。

これは保育現場にとって重要な示唆です。子どもたちの可能性を過小評価せず、挑戦的な課題を与えることで成長を促すという考え方ですね。

三善作品を通じて、子どもたちは以下のような能力を育てられます。

  • 複雑な和声を聴き分ける耳
  • 言葉のリズムと音楽のリズムの関係理解
  • 仲間と協力して一つの音楽を作る協調性
  • 美しい日本語の発音と表現力

音楽之友社から出版されている「三善晃 合唱作品集」には、作曲者自身による解説が収録されています。作品の背景や意図を知ることで、より深い理解と演奏が可能になります。

音楽之友社のウェブサイトでは、三善作品の試聴サンプルも提供されており、選曲の参考になります。

現代の作曲家たちも三善作品から多くを学んでいます。日本語と音楽の融合という課題に対する一つの解答として、今後も研究され続けるでしょう。保育現場で三善作品に触れることは、子どもたちに本物の芸術体験を提供することになるんです。


未来に伝える三善晃の世界 I,II,III