まど・みちお 保育園 童謡
まど・みちお 保育園 童謡 ぞうさんの歌詞の読み取り
保育園で「ぞうさん」を扱う価値は、“歌える定番”だからだけではありません。東大阪大学のブログでは、「ぞうさん」が昭和26年(1951年)に、幼児向けの童謡を依頼されて“一晩で書きあげた”こと、そしてシンプルな歌詞に“個性”や“生命愛”への思いが込められている、という趣旨で紹介されています。
この背景を知っておくと、保育者の声かけが変わります。たとえば1番の「おはながながいのね」は、からかいにも見える言葉ですが、子ぞうは「そうよ かあさんも ながいのよ」と、母と同じであることを誇らしげに返す構造として解釈できます。
現場での導入は、難しい解説より「ことばの向き」を整えるのが安全です。おすすめは、歌う前に次のようなミニ問いかけを一つ入れる方法です。
・「いまの言い方、ほめてる?からかってる?」
・「“そうよ”って、どんな顔で言う?」
・「“あのね”の前、どんな気持ちで間をあける?」
この問いは、子どもに“正解”を求めるのではなく、感じ方の多様性を肯定する設計にします(多様な感じ方を許容する方が、この歌の核に沿いやすい)。
また、歌唱のねらいを「音程」だけに置かないのがポイントです。短い歌詞を繰り返す曲は、発声よりも「相手に向けて言う」「間をつくる」など、対話の基礎体験に寄せられます。結果として、朝の会の返事や友だちへの声かけにも波及しやすくなります。
参考:ぞうさんの制作経緯・解釈(個性/生命愛の読み取り)
まど・みちお 保育園 童謡 やぎさんゆうびんの活動
「やぎさん ゆうびん」は、手紙のやりとりが“食べられて消える”という、子どもが笑える仕掛けを持ちながら、くり返し(反復)と因果(送る→食べる→読めない)を同時に体験できる題材です。まど・みちおが「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」「一ねんせいになったら」など多数の代表作を持つことは、作品一覧やプロフィールでも繰り返し確認できます。
保育園での活動は、歌唱+ごっこ遊びにすると伸びます。次のように、日常のコーナー遊びへ落とし込むと準備が軽く、クラスの子が自然に参加できます。
・「郵便屋さん」コーナー:空き箱ポスト、封筒、スタンプ、配達バッグ。
・「やぎ」アイテム:手袋人形、写真カード、画用紙の角(つの)。
・「手紙を食べる」表現:やぎ役が“もぐもぐ”してから「なんてかいてあった?」と困る。
ねらいは、文字指導ではなく、コミュニケーションの連鎖を楽しむことです。特に年中〜年長では「読めないのに返事を書く」状況が面白いので、返事は“絵だけ”“模様だけ”“シールだけ”でも成立させると、子どもの創造性が上がります。
参考)https://www.ehonnavi.net/author.asp?n=12371
さらに、保護者支援の視点でも使えます。連絡帳やおたよりで「今日は“読めない手紙”を楽しみました」と一言添えると、家庭でも“伝える”遊び(お絵描きメモ、配達ごっこ)に接続しやすいからです。
まど・みちお 保育園 童謡 一ねんせいになったらの使い方
「一ねんせいになったら」は、就学前の不安と期待が混ざる時期に、子どもが“前に進むイメージ”を持ちやすい歌です。東大阪大学のブログでも、入学準備のわくわくと同時に不安も抱く子どもを、元気いっぱいの歌が励ます趣旨で触れられています。
保育園では、卒園期だけに閉じず、年中後半から少しずつ“日常の歌”として入れると効果が出ます。理由は、行事の一回きりより、繰り返し触れる中で歌詞が「自分のこと」として内面化しやすいからです(就学への自己効力感が育ちやすい)。
実践のコツは「数を誇る」部分を“比べ合い”にしないことです。歌詞に出てくる人数や大きさを、競争の材料にせず「100人いたら、どんなににぎやか?」のように情景づくりへ寄せると、自己肯定感を削らずに盛り上げられます。
まど・みちお 保育園 童謡 作品集と選び方
曲選びで迷うときは、まず「作品の母体」を押さえると整理しやすくなります。国立国会図書館のNDLサーチには、収録内容として「ぞうさん」「やぎさん ゆうびん」「ふしぎなポケット」「ドロップスのうた」「きのこ」「一ねんせいになったら」などが並ぶ資料があり、保育で使われがちな代表曲群を俯瞰する手がかりになります。
また、周南市ゆかりのオフィシャルサイトには、詩集・作品集の刊行情報が大量に整理されており、「童謡の人」というより“長い詩作の積み重ねがある人”として捉え直せます。
保育園向けの選び方は、学年ではなく「場面」で分けると外しにくいです。例を挙げます。
・朝の会:短くて繰り返しが効く曲(挨拶の前に気持ちが整う)。
・移動:テンポが一定で歩行に合う曲(列が崩れにくい)。
・絵本導入:情景が浮かぶ曲(歌→絵本→会話の流れが作れる)。
・情緒が揺れる時期:肯定で終わる曲(“できた/できない”を直接扱わず支える)。
さらに、意外と見落としがちなのが“作者の地元での扱われ方”です。オフィシャルサイトには、周南市の駅の自由通路が「ぞうさんのさんぽみち」と名づけられていること、駅ホームで列車到着メロディーとして「ぞうさん」「一年生になったら」が採用されていることが紹介されています。
この話題は、園内研修や新人指導の雑談ネタとしても使いやすく、「歌が生活の中に溶けている例」として、保育の環境構成(音・言葉・掲示)を考えるヒントになります。
参考:まど・みちおの作品集・刊行年の一覧(選書の根拠になる)
まど・みちお 保育園 童謡 保育者の独自視点
検索上位の記事では「名曲紹介」「歌詞の意味」「行事で使える」などが中心になりやすい一方、保育の現場で効くのは“歌う前後の設計”です。特に、まど・みちお作品の強みは、短い言葉に余白が多いことなので、保育者がその余白を「指導」ではなく「対話」に変換できるかが勝負になります。
独自視点として提案したいのは、「童謡を“観察の道具”にする」使い方です。たとえば同じ「ぞうさん」でも、ある子は“かあさんがすき”に反応し、別の子は“おはながながい”の部分で笑うかもしれません。そこに良し悪しはなく、子どもが今どこに安心を求めているか、何が面白いのかの手がかりになります(歌=アセスメントの窓)。
具体的には、歌った後に「どの言葉が好きだった?」を毎回は聞きません。代わりに、活動の端で次のような“拾い方”をします。
・子どもが口ずさんだフレーズを、保育者が復唱して返す。
・絵や制作にそのフレーズが出たら、「いま“ぞうさん”の気分?」と結び直す。
・トラブル時に「そうよ、かあさんも…みたいに、好きなことを言ってみる?」と、気持ちの切り替えに借りる。
この運用だと、童謡は「歌の時間」から出て、生活の言葉になります。オフィシャルサイトで駅メロに採用された事例が示すように、童謡が生活の背景音になると、言葉は“思い出”として残りやすいので、園でも同じことが再現できます。


