クマの歌を保育で活かす!種類・ねらい・活用法ガイド
「むっくりくまさん」の替え歌をSNSに投稿すると、著作権侵害で損害賠償300万円を請求される可能性があります。
クマの歌の種類と原曲:「むっくりくまさん」はスウェーデン発だった
保育現場でよく使われる「クマの歌」は、実は一曲ではありません。大きく分けると「むっくりくまさん」「森のくまさん」「あめふりくまのこ」「くまさんくまさん(わらべうた)」の4種類が代表的です。それぞれに異なるルーツがあり、そのルーツを知るだけで保育のトークや子どもへの説明がぐっと豊かになります。
まず「むっくりくまさん」の原曲は、スウェーデンの童謡「Bjørnen sover(ビョルネン・ソーバー)」です。タイトルの意味は「眠っているクマさん」。日本語版は志摩桂氏が訳詞したもので、「ぐーぐー寝ているクマが目を覚ましたら食べられちゃうよ」という歌詞の構成は原曲と同じ雰囲気を持っています。
次に「森のくまさん」の原曲はアメリカ民謡「The Other Day, I Met a Bear(ある日、クマに出会った)」です。日本では馬場祥弘氏が訳詞し、女の子とクマがほのぼのと出会う内容になっていますが、原曲の英語歌詞では「銃を持っていない人間を見たクマが、早く逃げなさいと言ってから猛スピードで追いかけてくる」という、かなりシュールでサバイバルな内容です。意外ですね。
「あめふりくまのこ」は純粋に日本オリジナルの童謡で、作詞は鶴見正夫氏、作曲は湯山昭氏です。雨の中でいたずらクマのこが川のそばで魚を覗き込む情景が描かれており、雨の日の保育でそのまま使いやすい一曲です。
「くまさんくまさん」はわらべうたの一種で、特定の作詞・作曲者がいない伝承歌です。生後4か月頃から使えるふれあい遊びとして、膝の上で赤ちゃんと向き合いながら体に触れて楽しむスタイルが基本です。これが条件です。
| 曲名 | 原曲・出身 | 対象年齢の目安 |
|---|---|---|
| むっくりくまさん | スウェーデン童謡(Bjørnen sover) | 1〜5歳 |
| 森のくまさん | アメリカ民謡(The Bear Song) | 2歳〜 |
| あめふりくまのこ | 日本オリジナル(鶴見正夫/湯山昭) | 1歳〜 |
| くまさんくまさん | わらべうた(伝承) | 0歳〜 |
原曲の違いを知っておくと、保護者への説明や実習生への引き継ぎのときにも役立ちます。これは使えそうです。
クマの歌の年齢別ねらいと「むっくりくまさん」の集団遊び展開
クマの歌を保育に取り入れるとき、「なんとなく歌っている」状態から「ねらいを持って使う」状態に変えると、月案や指導案の記録がスムーズになります。それぞれの年齢でどのようなねらいが設定できるかを整理してみましょう。
0〜1歳児では、まず「くまさんくまさん(わらべうた)」が適しています。保育士が赤ちゃんを膝に乗せ、歌に合わせて手足に触れることで、スキンシップと発語の促進を同時に図れます。この段階では音とリズムを体感すること自体が主なねらいです。
1〜2歳になると「むっくりくまさん」の手遊びバージョンが使えるようになります。追いかけっこは難しくても、クマが起きた瞬間の「がおー!」という場面でどきどきする表情の変化が育ちます。役になりきって感情表現を楽しむ段階です。
3歳以上になると、集団遊びとして本格的に展開できます。「むっくりくまさん」では次のステップが基本です。
- STEP 1:クラスから1人くま役を決め、その子が目をつぶってしゃがむ
- STEP 2:周りの子が手をつないで円になり、歌いながらくまの周りをぐるぐる回る
- STEP 3:歌が終わったら「くまさ~ん、起きて~!」と全員で呼びかける
- STEP 4:くまが「がおー!」と立ち上がり、逃げる子を追いかける。捕まった子が次のくま役になる
つまり基本ルールはシンプルです。慣れてきたらくま役を2〜3人に増やすと、幼児クラスでも十分盛り上がります。室内で行う場合は机や椅子を端に寄せ、子どもが走り回れるスペースを確保することが安全上の条件です。
保育のねらいとしては「①他の子との触れ合いを楽しむ ②役になりきる表現を楽しむ ③保育士の説明を聞いてルールを理解する」の3点が挙げられます。月案に書き起こす際は、この3点をベースにクラスの発達状況に合わせて文言を調整するのが基本です。
クマの歌が子どもにもたらす発達的な効果:音楽と運動の二重の力
保育士として「どんな発達上の効果があるか」を説明できると、保護者への信頼感が大きく変わります。クマの歌が子どもに与える影響は、音楽的な側面と身体運動的な側面の2方向で考えることができます。
音楽的な側面では、歌に合わせて繰り返しリズムを体感することで、リズム感・音程感・歌詞の記憶力が同時に育ちます。特に「むっくりくまさん」のような、緊張感のあるクライマックス(「めをさましたら、たべられちゃうよ」の部分)は、子どもの感情を揺さぶり、感情表現力の発達につながります。
身体運動的な側面では、集団遊びとしての「むっくりくまさん」に特に大きな効果があります。円になって歩く、歌のタイミングで止まる、「がおー!」の合図で走り始めるという一連の動きは、「音や合図に反応して体を動かす能力(協応動作)」を育てます。これは就学後の体育や集団行動にも直接つながる力です。
また、「あめふりくまのこ」は曲調が穏やかで動と静の切り替えに使いやすく、活動後に落ち着いた雰囲気を作りたいときに適しています。逆に「むっくりくまさん」は活動前のウォーミングアップや、子どもたちのエネルギーを発散させたい場面に向いています。場面に合わせて曲を使い分けることが、保育士の「引き出し」の多さにつながります。
社会性の発達という観点からも、「みんなで歌う→一緒に逃げる→捕まえる・捕まる」という体験は、同じルールの中で遊ぶ楽しさを感じる最初の集団遊びとして機能します。3歳頃から本格的に「友だちと遊ぶ面白さ」が育つ時期に、クマの歌はちょうどよいツールです。いいことですね。
発語面では、「あめふりくまのこ」のように語彙が豊かで情景描写が具体的な童謡を繰り返し歌うことで、ことばの発達を促す効果が報告されています。発達支援の現場でも取り入れられているほどです。
【旭化成グループ・あすかホールディングス】手遊び歌が子どもの脳の発達を促す効果について(詳しい解説あり)
「森のくまさん」の替え歌・SNS投稿が著作権トラブルになる理由と保育士が知っておくべきこと
保育士がSNSや動画投稿サイトに「クマの歌の替え歌動画」を投稿する際、見落としがちな法的リスクがあります。保育の場で子どもたちと歌うのは問題ありませんが、インターネット上に公開することはまったく別の話です。
実際に起きた事例として、2017年に芸人のパーマ大佐さんが「森のくまさん」を元にした替え歌CDを発売したところ、日本語訳詞者の馬場祥弘氏から慰謝料300万円の請求と販売差し止め通知が届いた騒動があります。これは「著作者人格権」の中の「同一性保持権」が問題になったケースです。著作権そのものではなく、著作者の人格的な権利、つまり「自分の作品を無断で改変されない権利」が侵害されたと主張されました。
つまり「森のくまさん」の日本語歌詞(馬場氏の訳詞)は、現在も著作権が存在しています。この点は特に注意が必要です。
| 利用シーン | 著作権処理の要否 |
|---|---|
| 保育室で子どもと一緒に歌う | 不要(非営利・教育目的) |
| 発表会・お遊戯会で歌う(無料・非営利) | 不要 |
| 替え歌を作って保育室で使う | グレーゾーン |
| 替え歌動画をSNS・YouTubeに投稿 | ⚠️ 著作者人格権侵害のリスクあり |
| 保育の様子(歌っている場面)をSNSに投稿 | 要注意・子どもの肖像権も絡む |
厳しいところですね。保育士自身が演奏・歌唱した動画をYouTubeにアップする場合、楽曲がJASRAC管理楽曲であれば利用は可能ですが、替え歌や歌詞の改変は別の問題として残ります。
保育士として安全に発信するには、「わらべうた(伝承曲)」や「著作権フリーの楽曲」、あるいは「作詞者・作曲者が没後70年以上の曲(著作権消滅済み)」を選ぶのが確実です。気になる楽曲はJASRACの検索サービス「J-WID」で確認すると1件単位で管理状況を調べられます。
【JASRAC公式】学校など教育機関での音楽利用ガイドライン(保育園・幼稚園も対象)
クマの歌を保育の引き出しにする!季節・場面別の使い分けアイデア
クマの歌には複数の種類があるからこそ、場面や季節に合わせて使い分けることで保育の質が上がります。「とりあえず知っている曲を歌う」ではなく、「この場面にはこの曲を選ぶ理由がある」という意識を持つことが大切です。
季節別の使い分け
- 🌸 春(3〜5月):「むっくりくまさん」が最適。「春になってクマが冬眠から目を覚ます」という設定が、進級・入園で新しい生活が始まるシーズンにぴったりです。とくに4月の緊張した子どもたちのムードをほぐすのに、「がおー!」と走り回る活動は効果的です。
- 🌧️ 梅雨〜夏(6〜7月):「あめふりくまのこ」が定番。雨の日に外で遊べないときも、この曲を歌うことで「雨って楽しいかも」という気持ちを育てられます。
- ❄️ 冬(12〜2月):「むっくりくまさん」の「冬眠」設定が改めて生きます。クマは冬眠する動物として、動物の生態についての話題と絡めて歌うと、言語・知識の発達にもつながります。
場面別の使い分け
- 朝の会・活動の切り替え時:「あめふりくまのこ」のような穏やかな曲で落ち着いた雰囲気を作る
- 活動前のウォーミングアップ:「むっくりくまさん(手遊び)」でじわじわテンションを上げる
- 集団遊び・体を動かす活動:「むっくりくまさん(集団遊び版)」で全員参加の鬼ごっこを展開
- 絵本との連携:『きょうはみんなでクマがりだ(マイケル・ローゼン作)』は「クマ狩り」の遊び歌が原作の絵本で、読み聞かせ後にクマの歌につなげると子どもが没入しやすい
また、保育の独自の視点として「クマという動物の特性を知る」導入として使う方法があります。「クマは冬眠する」「クマは蜂蜜が好き」「クマは大きな声を出す」など、歌をきっかけに動物の生態へ興味を広げる展開は、探求的な学びにつながります。これは大きなメリットです。実習記録や日誌に「クマの歌を入口として、動物の生態に関する探求的な活動へと展開した」と書ける内容になるので、評価される指導案になります。
クマの歌一つを入り口に、季節・体験・知識をつなげる保育ができれば、それはまさに「遊びから学びへ」の理想的な流れです。クマの歌を引き出しの一つとして活かす意識が、保育士としての実力を底上げします。


