児童合唱団と保育園と子どもの歌
児童合唱団と保育園の子どもの歌の選曲
保育園で「児童合唱団みたいにきれいに歌いたい」と思ったとき、いちばん効くのは、実は練習量ではなく選曲です。市販の「保育園・幼稚園・こども園でうたう歌」系の収録曲は、園で歌われることを前提に、音域やテンポが極端に難しくなりにくい傾向があります。たとえば園生活で定番の曲がまとまっている音源・企画が複数あり、導入にも使いやすい材料になります。
選曲の基準は「好きそう」だけでなく、次の4点をチェックすると失敗が減ります。
- 音域:いきなり高音が続く曲は、園児の声が裏返る→大声になる→疲れるの連鎖が起きやすい。
- 言葉:早口の歌詞、子どもが意味をつかめない語が多いと、口が回らず音程も落ちやすい。
- 繰り返し:Aメロの繰り返しが多い曲は、短時間の練習でも「まとまって聞こえる」成果が出やすい。
- 行事との接続:卒園・入園・季節行事など、歌う場面が具体的だと子どもの集中が上がる。
「よく歌われる園の歌」を候補に入れると、保育者側も伴奏や歌い回しを掴みやすいです。園向け楽曲集には「園生活のうた」「季節のうた」など目的別に整理されたものがあり、行事計画と合わせて曲を選ぶのに向いています。
園で歌われやすい曲の集め方として、曲集(楽譜)と音源(CD/配信)の両方を使い分けるのが実務的です。
保育のうた・こどものうたが目的別に整理されていて、選曲の棚卸しに便利(曲リスト参考)
園で歌う歌の収録例が見られ、候補曲を素早く増やせる(収録曲参考)

児童合唱団と保育園の子どもの歌の発声
保育園の歌唱で起きがちな落とし穴は、「元気よく=大きな声」と受け取られて、怒鳴り声に近づくことです。実際、保育の現場では「元気よく大きな声で歌いましょう」という声かけが、子どもにとって“怒鳴って歌う声”のイメージにつながる可能性が指摘されています。ここを外すと、音程が下がる・声が枯れる・聞き合いができない、の三重苦になりやすいです。
では、児童合唱団のような「揃う声」に近づけるには何をするか。ポイントは「弱い声にする」ではなく「丸い声にする」ことです。保育向けの歌唱指導でも、がなり声になっているときに“気づきを促し”、さらに「まあるい、優しい声で」など具体的な言葉で方向づけるのが大切とされています。
現場で使える、短い発声の導入例です(朝の会でも2分でできます)。
- 「にこにこの声」:口角を少し上げ、息を“ふーっ”と一定に出してから歌い始める。
- 「ささやき→ふつう」:同じフレーズをささやき声→話し声→歌声で段階的に。
- 「息の列車」:息を長く吐く遊びをしてから、伸ばす音がある曲へつなぐ。
「意外と効く」工夫として、先生の手本を“強い声”でなく“軽い声”にすることが挙げられます。子どもは先生の音量や質感をそのまま模倣するので、保育者が先に「小さくても響く声」を提示できると、園児の声が整う速度が上がります。
幼児期の発声・歌唱指導で「大きな声」が怒鳴り声につながる点がまとまっている(研究・考察参考)
https://seizan.ac.jp/wp_new/wp-content/uploads/2021/05/vol13_y01.pdf
園での歌の教え方として、がなり声への気づきや「優しい声」の導き方が具体的(指導の言い回し参考)
児童合唱団と保育園の子どもの歌の練習
合唱の練習は「通し練習」だけだと伸びにくいので、要素を分解して“短く回す”ほうが、保育園では結果が出やすいです。特に園児は集中の波が大きいので、1回を長くするより、毎回の練習を短い単位で組むほうが実務に合います。
練習を組むときの基本は、次の4分割です。
- ①ことば:歌詞を読んで、意味がわからない語を先生が置き換えて説明する。
- ②リズム:手拍子で言葉のリズムだけを揃える(音程は後でOK)。
- ③音程:サビだけ、最後の1行だけ、など“最小単位”で成功体験を作る。
- ④聞き合い:隣の声を聞くゲームにして、声量を上げる方向に行かないよう誘導する。
また、園でありがちな「伴奏が難しい問題」は、音源の活用で一部解決できます。保育園・幼稚園で歌う歌の音源集は多数あり、先生が“指揮と声の手本”に集中する時間を確保できます。Spotifyなどの配信アルバムでも「保育園・幼稚園・こども園でうたう歌」系のまとまった選曲が見つかるため、候補の試聴にも便利です。
さらに、子どもが飽きないための小技として「部分練習の見える化」が効きます。
- ホワイトボードに「Aだけ」「サビだけ」「最後だけ」と書いて、できたらチェック。
- 曲を“3つのミッション”に分けて、達成すると次へ進む。
- 歌えたら拍手ではなく「今日そろったところ」を言語化して褒める(例:語尾がそろった)。
園生活の歌がまとまっていて、試聴しながら選曲・練習計画を立てやすい(音源参考)
児童合唱団と保育園の子どもの歌の行事
保育園で合唱を披露する場面は、発表会だけではありません。入園・進級・卒園、季節の行事、保護者参加の会など、「みんなで歌う」機会は園生活の節目に多くあります。行事での歌は、子どもにとって“役割がある活動”になりやすく、日常の歌より集中が上がることも多いです。
行事向けに設計するときは、「本番に強い構成」にします。
- 冒頭は“声が出やすい”曲:最初から難曲にしない(緊張で声が固まりやすい)。
- 立ち位置は“聞こえやすさ”優先:背の順より、声の出方のバランスで並べる。
- 本番の導線も練習:歩いて入る→立つ→礼→歌う、をセットで練習する。
また、保護者の満足度を左右するのは「音程の正確さ」だけではありません。子どもが歌詞の意味を理解して、表情がついていると、多少の音の揺れがあっても“伝わる合唱”になります。だからこそ行事前ほど、歌詞の情景づくり(絵カード、簡単なストーリー、動作)を丁寧にすると、結果的に歌も揃いやすいです。
「意外な盲点」として、当日のマイクやBGM音量があります。BGMが大きすぎると、子どもは自分の声が聞こえず、さらに大声になって崩れます。音源を使う場合は、リハーサルで“子ども同士の声が聞こえる音量”を基準に調整すると安全です。
児童合唱団と保育園の子どもの歌の独自視点
検索上位の多くは「選曲」「教え方」「発声」になりがちですが、保育園で合唱を安定させるなら、もう一段奥にある“音の揃う条件”を整えるのが近道です。ここでは、園だからこそ効く独自視点として「声の衛生」と「環境デザイン」を扱います。歌が上手になる以前に、声が出る土台を守ると、クラス全体の音が驚くほど整います。
独自視点①:声の衛生(のどを守る設計)
- 歌う前の水分:活動の切れ目で一口飲める流れにする(乾燥すると声が荒れやすい)。
- 連続で歌いすぎない:歌→絵本→歌、のように声帯を休ませるブロック設計にする。
- 声を張る場面を減らす:整列の声かけや指示を、視覚合図(カード、手)に置き換える。
独自視点②:部屋の響き(音が揃う配置)
- 壁に向かって歌う:音が返ってきて、自分の声を聞き取りやすい(ふざけ声も減る)。
- 円より“ゆるい弧”:互いの声が届きやすく、先生の合図も通る。
- ピアノ位置を固定:子どもが「どこを聞けばよいか」が安定する。
独自視点③:先生の「評価語」を変える
園児に「大きな声!」と言うほど、声が硬くなりやすいのは現場でもよく起きます。そこで評価語を、音量ではなく質に寄せます。
- 「やさしい声」
- 「まあるい声」
- 「そろってる」
- 「ことばが聞こえる」
こうした言葉を使うと、子どもの目標が「叫ぶ」から「整える」に変わり、結果として児童合唱団のようなまとまりに近づきます。
最後に、保育園での合唱は「上手に聞かせる」だけが価値ではありません。日々の歌が、生活の切り替えや気持ちの整理、仲間意識の形成に結びつくからこそ、無理のない指導で“続く仕組み”を作ることが、いちばんの成果になります。


