ハングルの歌・歌を保育士が活用する実践ガイド
「ハングルの歌は子どもには難しすぎる」と思っていませんか?実は、日本語より韓国語の子ども向けの歌のほうが発音習得が早い子が多いという報告があります。
ハングルの歌・歌の基本構造を保育士が知っておくべき理由
ハングルは、子音14個・母音10個の計24文字を組み合わせて表現する「組み文字」の言語です。アルファベットが26文字、ひらがなが46文字であるのと比べると、ベースとなる文字数はシンプルです。
しかし、ハングルの歌を保育現場で活用しようとするとき、ほとんどの保育士が最初に感じる壁は「読み方がわからない」という点です。
つまり基本構造を知ることが先決です。
ハングルの仕組みをひと言でいえば「パズル」に近いものです。たとえば、子音「ㄱ(g/k)」と母音「ㅏ(a)」を組み合わせると「가(カ)」という1音節になります。日本語の「か行」と同じ感覚で理解できます。
ここで大切なのは、ハングルの歌を歌うときに”文字を完全に読む必要はない”という点です。歌は音とリズムで伝わるものなので、カナルビ(ハングルに振られたカタカナ読み)さえ確認しておけば、保育活動の中で十分に使えます。
保育現場でハングルの歌の基本構造を知っておくと、次の3つの場面で役立ちます。
- 韓国ルーツの子どもの保護者に「この歌を知っています」と伝えられる(信頼感アップ)
- 子どもに「この文字はこういう音だよ」と簡単に説明できる(言語的刺激の提供)
- 歌の歌詞に出てくる単語の意味をざっくり把握できる(子どもへの声かけに応用)
ハングルは科学的に設計された文字として知られており、15世紀に朝鮮の世宗大王が庶民でも読み書きできるように制定したものです。「誰でも短期間で習得できる」という設計思想が根底にあるため、歌を通じて子どもたちに自然に触れさせやすい言語でもあります。
保育士として基本構造を把握しておくのは、決して難しいことではありません。最初の一歩は、カナルビ付きの歌詞と音源を1曲セットで手元に置いておくことです。
参考:ハングルの文字数・仕組みについてわかりやすく解説されています。
ハングル文字数はたった24文字!ハングルは簡単に覚えられる表音文字|Kvillage
ハングルの歌・歌が保育士に必要な時代背景とは
在留外国人は2024年時点でおよそ322万人と過去最高を更新しています(法務省統計)。そのうち韓国・朝鮮籍の方は約40万9,855人(全体の約14.8%)で、中国・ベトナムに次ぐ第3位の規模です。
これは重要な数字です。
保育施設において「外国にルーツを持つ子ども」の受け入れが全国的に増加しており、近畿大学の研究によると、保育所を利用していた外国ルーツの子どもの保護者出身国・地域のうち「韓国・朝鮮」は中国(59名)に次いで30名と第2位でした。
この現実は、保育現場での韓国語対応の必要性が着実に高まっていることを示しています。
「うちの園はまだそんな状況じゃない」という方も要注意です。外国籍家庭の転入は突然やってくることが多く、事前に準備しておくかどうかで、入園初日の子どもの安心感が大きく変わります。
保育のいろはが紹介しているように、外国籍の子どもの入園初期には「言葉が全部外国語に聞こえる」ため、子どもが黙り込んだり表情が固くなったりするケースが報告されています。そこで効果を発揮するのが「歌」という非言語に近いコミュニケーション手段です。
音楽とリズムは言語の壁を超えやすく、子どもが知っている韓国語の歌を保育士が一緒に歌うだけで、「この先生は自分の言葉を知っている」という安心感を子どもに与えられます。これが信頼関係の最初の一歩になります。
日本語が全くわからない子どもでも「センイルチュッカハムニダ(誕生日おめでとう)」のメロディが流れると顔が明るくなることが現場では多く報告されており、歌は感情を開く鍵として機能します。
参考:外国籍の子どもが増える今、保育現場ができる工夫が詳しく書かれています。
外国籍の子どもが増える今、保育現場ができる工夫とは?|ほいくのイロハ
保育士がすぐ使えるハングルの歌・歌おすすめ5選
ここでは保育活動に取り入れやすい韓国語の歌を5つ厳選して紹介します。選定の基準は「①日本でもおなじみのメロディ」「②動作遊びができる」「③歌詞が短くて覚えやすい」の3点です。
ひとつずつ確認しましょう。
🎵 1. 幸せなら手を叩こう(우리 모두 다같이/ウリ モドゥ タガッチ)
タイトルの意味は「私たちみんな一緒に」です。手を叩く(チャッチャッ)、頭をコクン、足をトントンと続くシンプルな動作歌で、リトミック活動にも取り入れやすいです。日韓どちらの子どもも知っている曲のため、一緒に歌うことで自然な交流が生まれます。
🎵 2. あたまかたひざぽん(머리 어깨 무릎 발/モリ オッケ ムルプ パル)
「頭・肩・膝・足」と体のパーツを触りながら歌う定番の体操歌です。「モリ(頭)」「オッケ(肩)」「ムルプ(膝)」「パル(足)」という4単語だけ覚えれば歌えます。語彙が少なく発音しやすいため、韓国語初挑戦の保育士にも最初の1曲としておすすめです。
🎵 3. きらきら星(반짝반짝 작은별/パンチャパンチャ チャグンピョル)
「パンチャパンチャ」がキラキラを意味します。日本語版と同じメロディのため、日韓混合クラスの誕生日会や季節の製作活動のBGMとしても活用できます。「ピョル(星)」という単語は子どもの名前にも使われる身近な単語で、韓国出身の子どもが親しみを感じやすい曲です。
🎵 4. ハッピーバースデー(생일 축하합니다/センイルチュッカハムニダ)
保育士が覚えておくと最も即効性が高い1曲がこれです。「センイル(誕生日)」「チュッカハムニダ(おめでとう)」の2フレーズだけで成立します。韓国ルーツの子どもの誕生日に保育士がこの歌を歌えると、保護者との信頼関係が一気に深まります。保育の現場で最も活用頻度の高い曲といえるでしょう。
🎵 5. まるくまるく(둥글게 둥글게/トゥングルケ トゥングルケ)
韓国では老若男女が知っている「最も有名な童謡の1つ」といわれる曲です。「イカゲーム2」にも登場したことで日本でも注目度が上がりました。輪になって踊る動作と合わせれば、運動会や発表会の集団遊びとして取り入れることができます。
これら5曲のカナルビ付き歌詞と音源は、YouTube上で無料で確認できます。プリントアウトして職員室に貼っておくだけで、誰でもすぐに保育活動に使えます。
参考:日本でおなじみの歌の韓国語バージョンとカナルビ付き歌詞が一覧でまとめられています。
ハングルの簡単な歌で覚える韓国語!ハングルの暗記におすすめ|mizuki87.net
ハングルの歌・歌を使った保育活動への具体的な組み込み方
「曲を知っていること」と「保育活動に組み込めること」は別物です。ここでは、日常の保育の流れの中でハングルの歌を無理なく使う方法を3つのシーン別に紹介します。
朝のサークルタイムに使う場合
サークルタイムの最後に「今日の韓国語の一言」として1フレーズ紹介するだけで十分です。たとえば「アンニョンハセヨ(こんにちは)」を朝のあいさつに加えるだけでも、韓国ルーツの子どもが反応し、クラスに笑顔が生まれます。
「アンニョンハセヨ」は朝昼晩どの時間帯でも使えるオールマイティな挨拶です。保育士が一言添えるだけで、子どもたちは「先生が知ってる!」と喜びます。
身体を使う遊びの時間に使う場合
「あたまかたひざぽん」や「幸せなら手を叩こう」などの動作歌は、日本語バージョンを普段使っているなら、そのまま韓国語バージョンに切り替えるだけで新鮮な活動になります。子どもたちは「同じ動きで違う言葉」という体験に自然と興味を示します。
動作が同じなので、韓国語が初めての子どもも体で理解できます。これは非常に重要なポイントです。
誕生日・行事の場面で使う場合
誕生日会で「センイルチュッカハムニダ」を1回だけ韓国語で歌う時間を取り入れてみましょう。特に誕生日の子どもが韓国ルーツであった場合、その子の保護者から「先生が韓国語で歌ってくれた」というフィードバックが届くことが多く、園全体への信頼感につながります。
こうした小さな積み重ねが、多文化保育の実践として評価されるようになってきています。厚生労働省の調査でも「保護者からお気に入りの歌を聞いた時には保育中にその言葉を投げかけたり、歌ったりすることが有効」という事例が報告されています。
組み込む際に意識したいのは「韓国語デーを作る」「特別な活動にする」のではなく、「日常の延長に少しだけ加える」という感覚です。特別扱いするのではなく、「みんなの言葉の一つ」として自然に取り入れることが、子どもたちの多文化感覚を育てる近道です。
参考:厚生労働省の調査報告書。外国籍等の子どもへの保育の実践事例が詳しく掲載されています。
外国籍等の子どもへの保育に関する調査研究報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
ハングルの歌・歌を入口に保育士が韓国語を学ぶ独自の方法
多くの保育士は「韓国語を勉強しようとしたけど、テキストを開くと挫折する」という経験を持っています。この節では、「テキストを使わずに保育に役立つ韓国語力をつける」方法として、歌を学習ツールとして使う具体的な手順を紹介します。
ほかの勉強法とは少し違うアプローチです。
ステップ1:1曲だけ選んで3日間聴き続ける
おすすめは「あたまかたひざぽん」です。4単語しかないため、3日間で十分に耳に馴染みます。YouTubeで「머리 어깨 무릎 발 동요」と検索すると、子ども向けの動画が多数見つかります。通勤時間に聴くだけで十分です。
ステップ2:歌詞の単語を1つだけ保育現場で使ってみる
「モリ(頭)」という単語を頭を触るジェスチャーとともに使ってみましょう。韓国ルーツの子どもが「あ、先生知ってる!」と反応したら、それがコミュニケーションの起点になります。1単語から始めるのが継続の秘訣です。
ステップ3:気になった単語を歌から取り出して覚える
たとえば「きらきら星」を歌う中で「ピョル(星)」という単語に出会ったら、夜空や星の製作活動のときに使ってみます。語彙を「歌の中のエピソード記憶」として蓄積することで、忘れにくくなります。これが歌学習の最大の強みです。
音楽を聴くことで脳の聴覚野の神経細胞が増えるという研究知見もあり、歌を通じた言語学習は記憶の定着において非常に効果的とされています。文法を学ぶ前に「音を体に馴染ませる」ことが、外国語習得の最初のステップとして理にかなっています。
保育士が自分で楽しみながら学ぶ姿は、子どもにも「知らない言葉に挑戦することは楽しい」というメッセージとして伝わります。これは言語的な多様性への姿勢そのものを育てるという意味で、保育の本質に深く関わることでもあります。
韓国語学習に特化したアプリ「Duolingo」では韓国語コースが無料で提供されており、5分程度の学習を習慣化しやすい設計になっています。保育士向けの多言語対応フレーズ集を収録した書籍も複数刊行されており、「ほいくis」が紹介している「保育で使う言葉の外国語」関連書籍では、韓国語・中国語など6カ国語の保育フレーズが掲載されています。
参考:外国籍の子どもを受け入れる際に役立つ保育書籍の紹介ページです。


