ハンガリー民謡 くじゃく による変奏曲 解説と保育への活かし方

ハンガリー民謡 くじゃく による変奏曲 解説と保育のつながり

保育士がこの曲を子どもに聴かせると、言語発達が明らかに早まる可能性があります。

この記事でわかること
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曲の成り立ちと背景

コダーイが1939年に作曲した16変奏の構成と、自由への抵抗を込めた歴史的背景を解説します。

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ペンタトニック音階の特徴

5音音階(ペンタトニック)だから子どもが覚えやすい。保育現場でも使える理由を詳しく説明します。

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コダーイメソッドとの接点

作曲家コダーイが提唱した音楽教育法と、この変奏曲が保育士の実践にどうつながるかを紹介します。

ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲の作曲背景と歴史

 

この曲の正式タイトルは『ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲』といい、ハンガリーの作曲家ゾルターン・コダーイ(1882〜1967)が1939年に作曲した管弦楽曲です。 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の創立50周年記念として委嘱され、1939年11月23日にウィレム・メンゲルベルク指揮のもと初演されました。

参考)ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲 – Wikipe…

主題となったハンガリー民謡「飛べよ、くじゃく」は、かつてオスマン帝国の支配下に置かれたマジャール人を囚人になぞらえ、自由への情熱を歌ったものです。 「鎖なき囚人」とも呼ばれるこの状況が歌詞に象徴されています。

コダーイはこの民謡をもとに1937年に無伴奏合唱曲を作り、その2年後にオーケストラ用変奏曲として発展させました。 作曲当時、勢力を強めていたファシズムと、ナチスと結んだホルティ・ミクローシュ政権への抗議が曲に込められています。 つまり、「くじゃく」は単なる音楽作品ではなく、政治的メッセージを帯びた抵抗の歌でもあります。masenoblog+1

保育士として音楽の由来を知ることには大きな意味があります。民謡が生まれた土地の歴史や感情を知ることで、子どもへの語りかけ方に深みが生まれるからです。コダーイ自身も「歌われる音楽の背景を伝えること」を教育の一部と考えていました。

ハンガリー民謡 くじゃく 変奏曲の構成と各変奏の特徴

曲は主題と16の変奏、そして終曲から構成されています。 演奏時間は約25分で、すべての変奏が切れ目なく繋がって演奏されるのが特徴です。m8portal+1

主題はチェロとコントラバスによるペンタトニック(5音音階)の主題提示から始まります。 全体の流れをざっくりまとめると下表のとおりです。

変奏番号 テンポ・拍子の特徴 主な聴きどころ
主題 Moderato・2/2拍子 チェロ・コントラバスによる民謡提示
第1変奏 Con Brio・4/4拍子 弦のff対木管pの対比
第3変奏 Piu mosso・4/4拍子 情熱的なチャルダッシュ風
第4変奏 Poco calmato・4/4拍子 わずか8小節のメランコリックな場面
第13変奏 Tempo di marcia funebre・4/4拍子 金管による葬送行進曲風コラール
第14変奏 Andante poco rubato フルート・ピッコロの長大なソロ
終曲 Vivace・2/4拍子 全曲の約1/3(235小節)を占める壮大なクライマックス

終曲は全体のおよそ3分の1(710小節中235小節)を占め、fff のクライマックスで民謡主題が情熱的に歌われます。 これが曲全体の解放感を最高潮に引き上げる瞬間です。

保育士がこの曲を聴くとき、「変奏ごとにキャラクターが全く変わる」点に注目してください。第4変奏はわずか8小節しかなく、絵本の1ページをめくるような短さです。 子どもに変奏曲の概念を説明するときの好例になります。

権威ある解説はこちら↓(ちば交響楽団によるプログラム・ノート)

コダーイ ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲 | 千葉フィルハーモニー管弦楽団

ハンガリー民謡 くじゃく のペンタトニック音階と保育への適性

「飛べよ、くじゃく」の主題はペンタトニック(5音音階)の農民の歌です。 ペンタトニックとは、ドレミソラの5音だけで構成される音階で、半音がないため耳に非常に馴染みやすい特性があります。

これは保育の場で重要な意味を持ちます。5音音階は世界中の民謡に共通して現れる「人類共通の音楽言語」とも言われ、子どもが音程を取りやすく、自然に口ずさめる構造です。 日本のわらべうた「ほたるこい」や「かごめかごめ」も同じペンタトニックを基盤としているため、日本の子どもにも直感的に親しみやすい響きです。

参考)歌をつかった幼児教育法「コダーイシステム」ってどんなもの?|…

コダーイはこのペンタトニックの性質を知っていたからこそ、民謡を音楽教育の土台に置きました。 「くじゃくの変奏曲」の主題は、まさにその哲学の象徴的な素材です。

参考)コダーイ 作曲家 保育教育 わらべうた 音楽教育 ソルフェー…

保育士がピアノで主題だけを弾いてみると、その単純さと美しさに気づきます。ドレミソラの5音だけで成り立っています。子どもが耳で覚え、自然に歌い出す体験が生まれる可能性があります。

なお、コダーイのペンタトニックと音楽教育の関係を詳しく知りたい方には以下が参考になります↓

歌をつかった幼児教育法「コダーイシステム」ってどんなもの? | 保育士Plus

ハンガリー民謡 くじゃく 変奏曲とコダーイメソッドの実践的つながり

コダーイが提唱したコダーイシステム(コダーイメソッド)は、現在も世界中の保育・幼児教育現場で採用されています。 その核心は、「音楽教育はわらべうた・民謡から始めるべき」という考え方です。uta.zenhp+1

コダーイメソッドには3つの大きな特徴があります。

  • わらべうたを最初の教材にする:母国語を覚えるように、母国の音楽から音楽教育を始める
  • ピアノに頼らずアカペラで歌う:自分の声で音程を作ることで、正しい音感(純正調)を養う
  • ソルフェージュとハンドサインを使う:手の形でドレミを表現し、楽譜読みの基礎を身体で覚える

保育現場での具体例として、3歳を過ぎた子どもには歩行・手拍子・ダンスを組み合わせた身体運動で音楽を学ばせます。 この段階でピアノは使わず、歌のみで進めるのがコダーイ流です。

「くじゃくの変奏曲」の主題は、このコダーイメソッドの理念そのものを音楽として表現しています。コダーイ自身がフィールドワークで収集した農民の歌を素材にしているからです。 つまり教育哲学と作曲活動が一本の線でつながっているということですね。

保育士だからこそ知っておきたい くじゃく 変奏曲の独自視点:「抵抗の音楽」を子どもに伝える意味

この変奏曲は「戦時下に書かれた抵抗の音楽」という側面を持っています。 保育士がこの事実を知って子どもに音楽を届けることは、ただの情操教育を超えた体験になります。

コダーイは1939年、ナチスと結んだホルティ政権が非人道的な政策を強行していた時代に、この曲を書きました。 「囚人が自由を求める」という民謡のテーマは、そのままファシズムへの異議申し立てでした。これは厳しいですね。

しかし保育士が子どもに伝えるのは、難しい政治の話ではありません。大切なのは「音楽には気持ちが込められている」という感受性の土台を作ることです。コダーイも「感受性が豊かな子どものうちに質の高い音楽体験をしたことがない人間は、生涯にわたって音楽の恩恵を受けることができない」と述べています。

たとえば第13変奏(葬送行進曲風)と第15変奏(生き生きとした掛け合い)を続けて聴かせると、子どもは言葉がなくても「重い」「軽い」「暗い」「明るい」という感情の違いを体で感じます。 この体験の積み重ねが、感情語彙と言語発達の両方につながります。

実際に保育の場でこの曲を使うとき、一度に全曲(約25分)を聴かせる必要はありません。 主題と印象的な変奏を1〜2個組み合わせた「5分版」を作って使うのが現実的です。特に主題→第3変奏(チャルダッシュ)→第15変奏(元気な掛け合い)という流れは、テンポと雰囲気の変化が大きく、子どもの反応を引き出しやすい組み合わせです。

参考)【吹奏楽ナビ】#45 ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲

コダーイの音楽教育と保育実践についてさらに深掘りしたい方はこちら↓

コダーイ作曲家と保育教育・わらべうたの解説 | 保育園の歌
幼児教育におけるわらべうたの意義と指導法〜コダーイ・メソッドの観点から(PDF・学術論文)

参考)https://lib.cku.repo.nii.ac.jp/record/840/files/KJ00008553664.pdf


ショルティ エルガー エニグマ変奏曲 コダーイ ハンガリー民謡 孔雀 変奏曲 ブラッハー ウィーン・フィル オリジナル 紙ジャケ