アメリカ民謡 聖者の行進 歌詞の意味と保育での使い方
この曲を「楽しいお祭りの歌」として子どもたちに教えると、クレームにつながる場合があります。
聖者の行進の英語歌詞と日本語訳の意味
「When the Saints Go Marching In」の歌詞は、一見すると行進の喜びを歌う明るい曲に聞こえます。しかし実際の歌詞には、「月が血で赤く染まるとき」「星が空から降り注ぐとき」「トランペットが終末を告げるとき」といった、ヨハネの黙示録(the Book of Revelation)に基づく終末的なイメージが随所にちりばめられています。
参考)子供と歌える英語の童謡 歌詞の和訳 When the Sai…
歌の核心は、繰り返される「Oh Lord, I want to be in that number(主よ、私もあの列に加わりたい)」というフレーズです。 「聖者(Saints)」とは信仰を持つすべての正しい者のことを指し、その聖者たちが行進して行く先は「天国」を意味します。 つまり「自分も死後に聖者の列に加わり、天国へ行きたい」という切実な祈りがこの歌の本質です。
日本では「聖者が街にやってくる」という邦題もよく使われていますが、英語原文は「来る(come)」ではなく「行く(go)」であり、「街(street)」に当たる言葉もないため、この訳は厳密には誤訳と指摘されています。 作詞作曲者は不明とされており、様々なバージョンの歌詞が存在します。 日本語の保育現場でよく歌われている「今日からみんなで歌をうたおうよ……」という歌詞は、久野静夫が作詞した完全に別の内容です。 宗教的な原詞とは全く異なるものだということが基本です。musiquest+3
参考:歌詞の意味・背景について詳しく解説されているページ
聖者の行進が葬儀の曲だった歴史と黒人霊歌のルーツ
「聖者の行進」は、アメリカ南部ルイジアナ州ニューオーリンズの黒人社会に伝わる「ジャズ葬儀(Jazz Funeral)」から生まれた曲です。 ニューオーリンズでは、人が亡くなると葬儀隊列が2つに分かれます。墓地までは「ファースト・ライン」として厳かな音楽を演奏しながら棺を運び、埋葬が終わると「セカンド・ライン」として賑やかな音楽を演奏しながら帰路につくという伝統です。
参考)「聖者の行進」、実は黒人が亡くなった人を祝福する曲だった。 …
この「セカンド・ライン」で演奏されるのが「聖者の行進」です。明るく演奏する理由は、「辛い奴隷の暮らしから解放されて天国へ行けるのだから喜ばしい」という考え方に基づいています。 奴隷制度の下で苦しんでいた黒人にとって、死は解放の始まりとして祝福すべきものでした。soundgon+1
セカンド・ラインのパレードには遺族だけでなく、音楽に引き寄せられた通行人も加わり、ハンカチを振り、色とりどりの傘を掲げて踊りながら行進します。 これが現代のニューオーリンズにも受け継がれている文化です。ジャズの起源そのものが、この葬儀文化の中にあると言っても過言ではありません。意外ですね。
参考:ニューオーリンズのジャズ葬儀の文化的背景
聖者の行進〜亡くなることを祝う!?黒人奴隷たちの心の叫び | TAP THE POP
聖者の行進のルイ・アームストロング版の特徴と歌詞の違い
「聖者の行進」を世界的に有名にしたのは、”サッチモ”の愛称で知られるルイ・アームストロング(Louis Daniel Armstrong, 1901〜1971)です。 アームストロングはトランペット奏者でありながら独特のしゃがれた歌声でも知られ、「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」など多くの名演を残しています。
アームストロングが録音したバージョンでは、原曲の宗教的な色合いを残しつつも、ディキシーランドジャズの明るく躍動的なスタイルでアレンジされています。 原曲の作曲者については諸説あり、James Milton BlackとKatharine Purvisの名前が挙げられることが多いですが、黒人霊歌としての民間伝承的な起源も指摘されています。 作詞作曲者不明というのが原則です。tapthepop+2
アームストロングが弾き語り形式で演奏したバージョンでは、一般的によく知られている「Oh, when the saints go marching in / I want to be in that number」というシンプルな歌詞の他に、「We are traveling in the footsteps of those who’ve gone before(先人の足跡をたどって旅している)」という導入部が加えられています。 このバージョンを聴くと、曲の宗教的・歴史的な深みがより伝わってきます。これは保育士としても知っておきたい知識です。
参考:ルイ・アームストロングと聖者の行進の歴史
聖者の行進(聖者が町にやってくる)歌詞の意味 和訳 | 世界の民謡・童謡
保育現場での聖者の行進の使い方とリズム活動への応用
保育現場で「聖者の行進」を使う場合、久野静夫作詞の日本語バージョンが最もよく使われています。「今日からみんなで歌をうたおうよ、朝から晩まで陽気に歌おう」という歌詞は子どもたちに親しみやすく、行進のリズムに合わせて体を動かす活動にぴったりです。
この曲の最大の特徴は、4分の4拍子でテンポが安定していて、子どもが体を動かしやすい点にあります。保育でよく使われるリズム活動として、次のような展開が考えられます。
- 🎶 行進遊び:音楽に合わせて部屋の中や園庭を行進する(2〜3歳〜)
- 🥁 楽器合奏:カスタネット・鈴・タンバリン・ピアニカで合奏(3〜5歳〜)
- 🎹 鍵盤ハーモニカ:4歳児向けのピアニカ曲として定番教材として使われる
- 🎺 リコーダー練習:小学校への接続として5〜6歳頃から導入可能
- 💃 リトミック:リズムに合わせて全身を動かす表現活動に使いやすい
保育士の指導シラバスでも、「器楽合奏:聖者の行進」として取り上げられることが多く、学生の段階から演奏実技の課題として扱われている曲です。 リズム感が育ちやすい時期に繰り返し聴かせることで、子どもたちの音楽的素地が育まれます。これは保育の基本です。
参考)https://www.misono-jc.ac.jp/misono_h30syllabus.pdf
参考:4歳児向け保育ピアニカ曲の選び方
保育士が知っておきたい聖者の行進の歌詞指導の注意点と独自視点
保育現場で「聖者の行進」の英語原詞を子どもたちに伝える機会は少ないですが、保育士自身が背景を理解しているかどうかで、指導の質は大きく変わります。英語原詞には「月が血で赤く染まるとき」「星が空から落ちるとき」という黙示録的な表現が含まれており、幼い子どもに直接訳して伝えることは適切ではありません。 対象年齢と文脈に注意すれば問題ありません。
一方、「この曲には長い歴史があって、遠い国のお祭りみたいなパレードで演奏されていたんだよ」という形で、子どもの発達段階に応じた言葉で文化的背景を伝えることは、グローバルな視野を育てる保育につながります。特に5歳以上の子どもには、「なぜ行進するの?」という問いを投げかけることで、思考力・言語力の発達を促す機会にもなります。
また、この曲はNFLニューオーリンズ・セインツの公式テーマソングであり、サッカープレミアリーグのサウサンプトンFC(愛称「セインツ」)のアンセムとしても使われています。 スポーツ観戦の応援歌としても世界中で親しまれているという事実は、子どもたちが「音楽は国や時代を超えてつながるもの」と実感するための格好の教材です。これは使えそうです。
さらに、運動会の鼓笛隊演目として「聖者の行進」を採用している保育施設も実際にあります。 行進曲としてのリズムの安定感と、子どもたちが集団で体を動かしやすい構成は、発表会や運動会でも効果的です。保育士が「ただ楽しい曲」としてではなく「歴史と文化を持つ曲」として扱うことで、音楽活動全体の教育的な深みが増します。
- 📌 英語原詞の直訳は年齢に応じて判断:終末的な表現は幼児向けには不向き
- 📌 日本語版(久野静夫作詞)は保育全般に安心して使える:宗教色なし
- 📌 文化的背景を「物語」として伝える:5歳以上には歴史的エピソードも有効
- 📌 行進・合奏・リトミックと組み合わせる:曲の構造がシンプルで展開しやすい
- 📌 スポーツや世界の場面とリンクさせる:音楽と社会のつながりを学べる
保育士が曲の背景を深く理解していれば、同じ「聖者の行進」でも指導の言葉が豊かになります。子どもたちの「なんで行進するの?」という質問に自信を持って答えられる準備が、質の高い音楽保育の出発点です。musiquest+1


