昔遊びのおもちゃを手作りして保育で使う方法
手作りしたおもちゃは、市販品よりも子どもの集中時間が平均1.5倍長くなるという現場報告があります。
昔遊びのおもちゃを手作りすることで得られる発達効果
昔遊びのおもちゃを手作りする活動には、遊ぶ前の「製作段階」からすでに発達への働きかけが始まっています。市販の完成品とは異なり、子どもが自ら素材を切り、貼り、形にする工程そのものが、脳と手指の神経を同時に刺激するからです。
手先には脳に直結する末梢神経が多く集まっており、指先を細かく動かすことで思考力や記憶力の発達を後押しすることが知られています。紙を折る・ハサミで切る・糸を結ぶといった動作は、まさにこの神経ネットワークを鍛える行為です。つまり、製作自体が立派な知育活動ということですね。
さらに注目したいのが「試行錯誤の機会」です。昔遊びのおもちゃは「こうしなければならない」という厳密なルールがほとんどなく、子どもが自分なりにアレンジできます。たとえば紙コップのこまを作る場面では、「どのくらいの重さにするとよく回るか」「どこを持つとうまく回せるか」を自分で考え、何度でも試すことになります。この繰り返しが、問題解決能力と集中力を育む土台になります。
保育士として13年のキャリアを持つ現場の声によれば、こまに夢中になった子どもが1時間近く試行錯誤を続けた例もあるといいます。集中力の持続という観点からも、昔遊びの手作りおもちゃは非常に有効です。
主な発達効果をまとめると以下の通りです。
- 🧠 脳の活性化:手先を使う製作と遊びが、思考力・記憶力・空間認識力を刺激します。
- 💪 運動能力の向上:けん玉・竹とんぼ・ぽっくりなど、全身のバランスや協調運動を鍛えます。
- ✨ 集中力・持続力の育成:何度でも挑戦できるシンプルな構造が、深い集中を生み出します。
- 🤝 社会性・協調性の発達:複数人で遊ぶメンコ・かるた・あやとりを通じてルールを守る力が育ちます。
- 🌱 創造力・工夫する力:アレンジ自由な昔遊びは、自分なりの発見と発明の場になります。
参考として、お手玉についての学術的な考察もあります。手指の操作が多く、幼児期の脳・神経系に高い効果が期待できると述べられており、昔遊びが持つポテンシャルの高さがわかります。
伝承遊びに関する研究(1)/長野県短期大学 ─ お手玉遊びと幼児の脳・神経系発達効果に関する考察
昔遊びの手作りおもちゃに使える廃材と素材の選び方
廃材こそが最強の材料です。保育士が実感する手作りおもちゃの最大のメリットの一つが、製作コストをほぼゼロに抑えられることにあります。牛乳パック・ペットボトル・紙コップ・段ボール・新聞紙・ストローといった、保護者に協力をお願いすれば毎月集まってくる素材だけで、多くの昔遊びおもちゃが完成します。
ただし、廃材を使う際には素材選びに注意が必要です。特に0〜2歳の乳児クラスでは、口に入れることを前提とした素材チェックが欠かせません。切り口で怪我をしないようにテープで補強する、小さなビーズ類は蓋をしっかり固定するなど、製作段階からの安全対策が基本です。
よく使われる廃材と、作れる昔遊びおもちゃの対応表は以下の通りです。
| 素材 | 作れる昔遊びおもちゃ | 対象年齢の目安 |
|---|---|---|
| 紙コップ | けん玉・こま・竹とんぼ・ロケット | 3〜5歳 |
| 牛乳パック | ぽっくり・竹とんぼ・こま・船 | 2〜5歳 |
| ペットボトル | けん玉・マラカス・じょうろ | 1〜5歳 |
| 段ボール | メンコ・パズル・的当て | 3〜5歳 |
| 新聞紙 | 紙鉄砲・帽子・野球グローブ | 2〜5歳 |
| ストロー | 竹とんぼ・風車・笛 | 3〜5歳 |
| フェルト | お手玉・ままごと食材 | 0〜5歳 |
フェルト素材は特に乳児クラスにおすすめです。柔らかく肌当たりが良く、万が一口に入れても素材として比較的安全です。小豆や米を入れたお手玉は0歳児でも握って感触を楽しめます。ただし、中身が出てこないよう縫い目をしっかり確認することが条件です。
手作りおもちゃ用の素材補充には、100円ショップも活用できます。ストロー・割り箸・輪ゴム・折り紙などは1点110円以内で購入でき、クラス全員分の材料を500〜600円以下でそろえることも十分可能です。これは使えそうです。
年齢別・昔遊びの手作りおもちゃ製作アイデア
保育現場で使える昔遊びの手作りおもちゃは、子どもの発達段階に合わせた製作内容の選定が重要です。難しすぎると達成感が得られず、簡単すぎると集中が続きません。「ちょっと難しい」くらいがちょうどいいというのが現場の感覚です。
0〜1歳向け:感触を楽しむお手玉・マラカス
0〜1歳児は「触れる・握る・振る」という感覚遊びが中心です。フェルトで作るお手玉は、柔らかな手触りと軽い重みが月齢の低い子どもに最適です。拾って集める、大きな容器に入れる・出すといった行動が自然と生まれ、手指の発達を促します。
ペットボトルのマラカスは0歳児から遊べる定番の一つです。内側にビーズや小石を入れてキャップをしっかり固定し、振るとシャカシャカ鳴る音が子どもの好奇心を刺激します。中身を変えると音が変わる点も面白く、保育士がいくつかバリエーションを用意すると比較遊びにもなります。
2〜3歳向け:牛乳パックのぽっくり・こま
2〜3歳になるとバランスをとる力や手首のひねり動作が発達してきます。牛乳パックで作るぽっくりは、バランス感覚と体幹の強化にぴったりです。牛乳パック2本を組み合わせて台を作り、紐を通すだけで完成します。最初はうまく歩けなくても、乗れるだけで十分な達成感があります。
紙皿や牛乳パックで作るこまも2〜3歳から楽しめます。紙皿の中心に鉛筆を差し込んで回すシンプルなタイプは、3歳前後から挑戦できます。シールや絵の具で模様を描く作業も一緒に楽しめるので、製作と遊びが一体化した活動になります。
4〜5歳向け:けん玉・竹とんぼ・メンコ
4〜5歳は「ルールを理解して遊ぶ」ことが可能になり、手先の制御能力も飛躍的に上がります。紙コップのけん玉は、製作のシンプルさと遊びのやりごたえのバランスが絶妙です。紙コップに毛糸でボール(アルミホイル丸めたもの)をつなぎ、コップの中にボールを入れるのが目標です。繰り返し挑戦することで集中力と達成感が育まれます。
牛乳パックとストローで作る竹とんぼは、羽の角度によって飛び方が変わるため、科学的な気づきも生まれます。「どっちが遠く飛んだか」「どうしたら高く上がるか」という問いかけが、子どもの探究心を引き出します。段ボールで作るメンコは厚みの調整でオリジナリティが出せ、絵を描く創作活動にもつなげられます。
【年齢・素材・季節別】保育士バンク!の手作りおもちゃアイデアまとめ ─ 紙コップ・牛乳パック・廃材を使った製作例を年齢別に一覧で確認できます
昔遊びの手作りおもちゃで保育活動に取り入れるねらいと指導案のポイント
手作りおもちゃを保育に組み込む際、「ただ作る・ただ遊ぶ」で終わらせないことが保育士の腕の見せどころです。指導案に落とし込むためには、遊びのねらいを事前に整理しておく必要があります。
昔遊びを取り入れる際の代表的なねらいとしては、「日本の伝統的な遊びを楽しみ、そのよさや豊かさに気づく」「友だちとかかわりを楽しみながら遊ぶ」「遊びの中で自分なりに工夫しながら楽しむ」の3つが軸になります。文部科学省の幼稚園教育要領においても、5領域「環境」の中で伝統的な遊びへの親しみが社会とのつながりを育む点が示されています。
幼稚園教育要領(文部科学省)─ 5領域「環境」において伝統的な遊びが社会とのつながりを育む点が明示されています
指導案を書く際は、以下の流れを意識すると活動がスムーズになります。
- 🎯 導入:「今日は昔のこどもたちが遊んでいたおもちゃを一緒に作ろう」など、子どもの興味を引く声かけをする。
- ✂️ 製作:年齢に応じて工程を調整し、完成形への見通しが持てるよう見本を見せる。
- 🎮 遊び:製作したおもちゃで実際に遊ぶ時間をたっぷり確保する。「どうしたらもっと上手くいくか」を問いかける。
- 💬 振り返り:「何が楽しかった?」「こうしたらもっとよくなりそう」などで気づきを言語化させる。
敬老の日・お正月・節分といった行事に合わせてテーマを決めると、昔遊びの「文化を伝える」というねらいも自然と達成できます。たとえばお正月前には「こまを一緒に作って回し方を競おう」という企画が定番で、保護者参加型の行事にも発展させやすい活動です。保育計画との連動が大切です。
製作後の遊びの展開についても、「勝敗より楽しむことを優先」「ルールを子どもたちと一緒に作る」「気づきを褒めて次の挑戦につなげる」という3点を指導案の留意事項に入れておくと、現場での対応が安定します。
保育士が押さえておきたい手作りおもちゃの安全管理と注意点
手作りおもちゃの最大のリスクは「STマークがない」という点です。市販の玩具には、日本玩具協会が定めるST(Safety Toy)基準に基づいた安全検査が行われており、合格品にのみSTマークが付きます。この基準は機械的安全性・可燃安全性・化学的安全性の3つで構成されており、誤飲のリスクや有害物質の有無なども含まれます。手作りおもちゃにはこの保証がない分、作る側の保育士が安全確認を担う必要があります。
STマークについて(一般社団法人 日本玩具協会)─ ST基準の内容と、万が一の事故対応のための損害賠償補償制度についてまとめられています
特に注意すべき点は以下の3つです。
- 🔴 誤飲リスクの確認:直径3.2cm未満の小部品(ビーズ・ボタン・キャップなど)は3歳未満の子どもにとって誤飲の危険があります。「直径3.2cm」は500円玉よりやや大きい円のサイズです。ペットボトルのキャップや小さなビーズは要注意です。
- ✂️ 切り口・とがり部分の処理:牛乳パックや段ボールの切り口は紙やすりをかけるか、マスキングテープで覆う。紙コップの切り込みはセロハンテープで補強する。製作後のチェックを習慣化することが原則です。
- 🧪 素材の安全性:塗料を使う場合は食品衛生法基準を満たした水性絵の具を使用する。ビニールテープは問題ありませんが、長時間口に入れることが想定されるおもちゃにはテープの使用を最小限に抑えます。
日常的な管理の面では、手作りおもちゃは市販品と比べて耐久性が低いため、使用前に毎回「壊れていないか」「はがれていないか」を確認するルーティンが必要です。破損したおもちゃはすぐに修理または廃棄という判断を迷わずできるよう、園内でルールを統一しておくことも大切です。これが安全管理の基本です。
乳児クラスでは特に、フェルト製のお手玉の縫い目や、ペットボトルのキャップのテープ固定が緩んでいないかを毎朝チェックする習慣を持ちましょう。一見問題ないように見えても、子どもは予想外の力で引っ張ったり噛んだりします。「使う前に一秒確認」くらいのシンプルなルーティンが事故予防につながります。

