小学校音楽教科書の歌を保育士が知るべき全知識

小学校音楽教科書の歌を保育士が知るべき理由

「小学校の歌は入学後の話だから、保育士には関係ない」と思っていませんか? 実は、教員採用試験(都道府県によっては小学校教諭の採用試験)の音楽実技では、5県市以上で小学校歌唱共通教材のピアノ弾き歌いが出題されており、保育士養成校のカリキュラムにも全24曲が組み込まれています。

この記事でわかること
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歌唱共通教材24曲の全ぼう

学年別・曲名・作詞作曲者を一覧でまとめ、保育活動での活用ポイントも解説します。

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弾き歌い対策の実際

保育士養成・教員採用試験での頻出曲と、ピアノ初心者でも取り組める練習法を紹介します。

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著作権の落とし穴

「文部省唱歌は全部フリー」は誤解です。曲によって保護期間が異なり、SNS投稿などで注意が必要です。

小学校音楽教科書の歌唱共通教材とは何か

 

文部科学省は小学校学習指導要領の中で、全国どの学校でも必ず扱うべき歌唱教材として「歌唱共通教材」を指定しています。各学年4曲ずつ、小学校1年生から6年生まで合計24曲がその対象です。これらは「文部省唱歌」「わらべうた」「日本古謡」を中心に構成されており、日本の自然・季節・行事をテーマにした楽曲が並んでいます。

全24曲の中には、保育現場でもおなじみの「うみ」「かたつむり」「ひらいたひらいた」「夕やけこやけ」などが含まれています。これが重要な点です。

保育園や幼稚園で日常的に歌われている曲の多くが、そのまま小学校の歌唱共通教材と重なっているのです。つまり保育士は知らず知らずのうちに、小学校音楽の橋渡し役を担っています。

参考:小学校学習指導要領(音楽)歌唱共通教材の正式な一覧については以下を参照できます。

文部科学省「第2章 各教科 第6節 音楽」小学校学習指導要領

小学校音楽教科書の歌・学年別24曲一覧と保育活動への活用

歌唱共通教材を学年別に整理すると、次のようになります。

学年 曲名 種別
1年 うみ/かたつむり/日のまる/ひらいたひらいた 文部省唱歌・わらべうた
2年 かくれんぼ/春がきた/虫のこえ/夕やけこやけ 文部省唱歌
3年 うさぎ/茶つみ/春の小川/ふじ山 日本古謡・文部省唱歌
4年 さくらさくら/とんび/まきばの朝/もみじ 日本古謡・文部省唱歌
5年 こいのぼり/子もり歌/スキーの歌冬げしき 文部省唱歌・日本古謡
6年 越天楽今様/おぼろ月夜/ふるさと/われは海の子 日本古謡・文部省唱歌

保育現場での活用という観点で特に注目したいのが、1・2年生の共通教材です。「ひらいたひらいた」はわらべうたで、手遊びを組み合わせた集団遊びとして保育園でも広く使われています。「夕やけこやけ」「春がきた」「虫のこえ」なども、季節の歌として保育活動に取り入れやすい曲ばかりです。

音域が比較的広い傾向にある点には注意が必要です。幼児(就学前4歳半〜6歳)の声域はおおむね「シ♭0〜ソ1」程度とされており、小学校共通教材の音域とは一部ずれがある曲もあります。そのため、保育現場で扱う際には移調(キーを下げる)して歌わせる工夫が有効です。

つまり「そのまま使える曲」と「移調して使う曲」を分けて考えるのが基本です。

参考:幼児の声域と教材曲の音域については以下に詳しい考察があります。

宮崎国際大学「幼児の歌唱声域と子どもの歌曲集の音域についての考察(PDF)」

小学校音楽教科書の歌と保育士試験・採用試験の深いつながり

「保育士試験の実技音楽は保育の課題曲(年度ごとに指定された2曲)だけ練習すればいい」と考えている人が多いかもしれません。実情は少し違います。

保育士試験の実技音楽は毎年2曲の課題曲(たとえば令和7年は「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」「証城寺の狸囃子」)が指定されています。ただし、保育士・幼稚園教諭の採用試験(就職時の実技試験)では話が変わります。調査によると、少なくとも5県市以上の採用試験において、小学校歌唱共通教材のピアノ弾き歌いが出題されています。

これは保育士志望者にとって、見落としがちな盲点です。

「とんび」「おぼろ月夜」「まきばの朝」などは採用試験での指定頻度が高いとされています。これらは原曲がニ長調やト長調など、歌いにくいキーのものもあり、ハ長調(Cメジャー)に移調した上で弾き歌いするパターンが試験でも一般的です。

また、保育士養成校のカリキュラムにも小学校音楽科の歌唱共通教材が全曲収録された教材集が採用されています。つまり、保育士を目指す段階から小学校の共通教材24曲を習得することは、カリキュラム上も実質的に求められているのです。採用試験に備えるためにも、24曲の弾き歌いは早めに取り組むのが得策です。

参考:保育士・小学校教員の採用試験における音楽試験内容の調査については以下が参考になります。

甲南女子大学「幼稚園・保育所・小学校の採用試験における音楽に関する実技試験についての調査(PDF)」

小学校音楽教科書の歌に関する著作権——文部省唱歌は「全部フリー」ではない

保育士の中には「文部省唱歌は著作権が切れているから、SNSに歌声動画をアップしても問題ない」と思っている人がいます。これは大きな誤解です。

著作権の保護期間は、作者の死後70年です。24曲の中でも「うみ」の作詞者・林柳波と作曲者・井上武士はともに1974年(昭和49年)に亡くなっています。そのため「うみ」の著作権は2044年まで有効です。SNSに歌声動画や歌詞をアップすると、著作権侵害になる可能性があります。これは見落としがちなリスクです。

一方で、「かたつむり」「日のまる」「かくれんぼ」「虫のこえ」などは作者不詳または作者の死後70年が経過しており、著作権が切れているもの(パブリックドメイン)も存在します。同じ「文部省唱歌」というカテゴリであっても、一律ではありません。

  • ✅ 著作権が切れているもの(パブリックドメイン):かたつむり、日のまる、かくれんぼ、虫のこえ など作者不詳の唱歌
  • ⚠️ 著作権が現在も有効な曲:「うみ」(2044年まで)、「夕やけこやけ」(草川信中村雨紅)など
  • ⚠️ 「さくらさくら」「うさぎ」「越天楽今様」などの日本古謡は作者不詳でパブリックドメインのものが多い

保育園の発表会で歌ったり、施設内での保育活動として歌わせたりする行為は、著作権法上の「教育目的の利用」として認められる範囲が広いです。問題になりやすいのは、SNSへの歌声・演奏動画の投稿や、歌詞をそのまま印刷した資料を不特定多数に配布する行為です。

日常の保育活動での使用は原則問題ありません。SNS投稿の際は、使用する曲の著作権状況を必ず確認する習慣をつけておきましょう。

参考:学校教育における著作物利用のルールについては以下の文化庁資料が参考になります。

文化庁「学校教育における著作物利用のルール(PDF)」

小学校音楽教科書の歌を保育に活かす——幼保小連携の視点から

保育士にとって、小学校音楽教科書の歌を知っておくことは「幼保小連携」という観点でも非常に大切です。2022年以降、幼稚園・保育所・認定こども園と小学校の連携・接続が一層強調されるようになり、保育現場でも「小学校での学びへの架け橋」を意識した保育が求められています。

つまり、小学校で学ぶ歌を保育段階から体験しておくことは、子どもの音楽的発達にとって自然なつながりを生むのです。

たとえば「ひらいたひらいた(わらべうた)」は小学1年生の共通教材ですが、保育園の3〜5歳児クラスでも手遊び歌として親しみやすい曲です。「春の小川」「春がきた」「虫のこえ」は季節感を育む歌として、年長クラスの音楽活動で積極的に取り入れることで、小学校入学後の音楽の授業への親しみにもつながります。

保育士が日頃から歌唱共通教材を意識して活動に取り入れることで、子どもたちはなめらかに小学校の音楽へと移行できます。これが「架け橋」の役割です。

また、24曲の中には日本の伝統音階(陰音階)を用いた「うさぎ」「さくらさくら」などが含まれています。これらは5音音階(ペンタトニックスケールの和風版)で構成されているため、音感を自然に養うのに適した曲です。年長児でも違和感なく歌えるうえ、「日本らしい音の世界」を感じさせる教材として保育活動に組み込む価値があります。

参考:音楽科教科書にみる保幼小連携についての考察は以下に詳しいです。

「音楽科教科書にみる保幼小連携および小中連携についての考察(PDF)」

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