音楽教科書 小学校の曲を保育士が活用する方法

音楽教科書・小学校の内容を保育士が知っておくべき理由

保育士なら「どうせ小学校は別の先生が教えるから関係ない」と思っていると、子どもの音楽体験に3年分の空白をつくることになります。

この記事でわかること
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小学校音楽教科書の全体像

出版社・学年構成・掲載曲の特徴など、保育士が知っておきたい基本情報をまとめています。

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歌唱共通教材・全24曲とは

全国どの学校でも必ず使う24曲の一覧と、保育現場でも親しまれている曲の重なりを解説します。

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幼保小接続での音楽活用法

小学校の教科書を参考にすることで保育での音楽活動がより豊かになる具体的な方法を紹介します。

小学校の音楽教科書はどの出版社が使われているか

 

小学校の音楽教科書は、全国の学校で主に2社が使われています。シェアトップは教育芸術社(「小学生の音楽」)で、続いて教育出版(「小学音楽 音楽のおくりもの」)が採用されています。教育芸術社は音楽の教科書において「圧倒的」と言われるほどのシェアを誇っており、全国の多くの小学校で使われている事実上の標準教材です。

教科書の採択は各市区町村の教育委員会が4年ごとに行います。つまり、同じ地域の子どもでも使う年代によって教科書が変わる可能性があります。保育士が「小学校の教科書の曲」を参考にするときは、教育芸術社の「小学生の音楽」シリーズを基準にするのが最もカバー範囲が広く、実用的です。

令和6年度版(2024年度版)が現在の最新版です。1年生から6年生まで1冊ずつ、合計6冊で構成されており、各学年ページ数は80〜86ページ程度になっています。保育士が参考にするなら、まず1・2年生の教科書に目を通すだけで十分な情報が得られます。

教育芸術社「令和6年度 小学生の音楽」掲載曲一覧(全学年)

小学校音楽教科書に必ずある歌唱共通教材・全24曲の内容

文部科学省が学習指導要領で定めた「歌唱共通教材」があります。これは出版社やその年代に関わらず、全国どの小学校でも必ず扱う曲の一覧です。全部で24曲あり、各学年に4曲ずつ配置されています。

つまり全24曲が基本です。

以下が学年ごとの内訳です。

学年 共通教材 4曲
1年生 うみかたつむり・日のまる・ひらいたひらいた
2年生 かくれんぼ・春がきた・虫のこえ・夕やけこやけ
3年生 うさぎ・茶つみ・春の小川・ふじ山
4年生 さくらさくら・とんび・まきばの朝・もみじ
5年生 こいのぼり・子もり歌・スキーの歌冬げしき
6年生 越天楽今様・おぼろ月夜・ふるさと・われは海の子

このリストを見ると、「うみ」「かたつむり」「夕やけこやけ」「春の小川」など、保育の現場でも日常的に歌われている曲が複数含まれていることに気づきます。これは偶然ではなく、「日本で世代を超えて共有できる曲」を選んでいるためです。保育士がこれらの曲を保育で取り上げておくことが、小学校入学後の音楽活動の土台づくりに直結します。

24曲の大半は文部省唱歌・日本古謡・わらべうたで構成されており、西洋のポップスは含まれません。「ふるさと」「もみじ」「おぼろ月夜」など、秋冬の情景や自然をテーマにした曲が多いのも特徴の一つです。保育のうちからこれらの曲に親しんでおくことは、子どもの情操教育に大きなプラスになります。

歌唱共通教材の全一覧と楽譜・音源まとめ(階名付き楽譜サイト)

小学校音楽教科書に登場する楽器・リコーダーと鑑賞曲の構成

小学校の音楽の授業では「歌唱」だけでなく、「器楽」と「鑑賞」も大きな柱になっています。そのなかでも保育士が特に把握しておきたいのが、3年生から始まるリコーダーの学習です。

1・2年生の器楽教材は鍵盤ハーモニカが中心です。3年生になると教科書の最初のページに「ようこそリコーダーの世界へ」というコーナーが設けられ、ソプラノリコーダーの学習がスタートします。子どもたちは入学前にリコーダーの経験はほぼゼロですが、3年生の授業で急にシ・ラ・ソなどの音から練習を始めます。

保育の段階でリコーダーを教える必要はありません。ただ、「息のコントロール」や「指の細かい動き」は、保育での鍵盤ハーモニカや笛遊び、吹き遊びを通じて養われる力と深く関連しています。保育士が意識的にそうした活動を取り入れておくことで、子どもたちの3年生以降の器楽体験がよりスムーズになります。

鑑賞教材については、現在の学習指導要領(平成10年以降)では「鑑賞共通教材」という固定リストは定められておらず、各学年の指導基準に沿って各学校が選曲しています。1・2年生ではチャイコフスキーの行進曲やルロイ・アンダーソンの楽しい小品など、子どもが体を動かしながら楽しめる曲が多く選ばれます。3・4年生になると和楽器を含む日本の音楽や民謡が登場し、5・6年生ではベートーヴェンの第9交響曲や滝廉太郎の「荒城の月」などが扱われます。

文部科学省「第2章 各教科 第6節 音楽」学習指導要領(音楽科の目標・内容)

保育士が小学校音楽教科書の内容を保育活動に活かす具体的な方法

幼保小接続の観点から、保育士が小学校の音楽教科書の内容を把握しておくことには明確なメリットがあります。子どもたちが「小学校でも知っている曲があった!」と感じることは、新しい環境への不安を和らげる重要な橋渡しになるからです。これは意外な効果ですね。

最も取り組みやすい活用法は、歌唱共通教材の1・2年生分(計8曲)を保育の中に組み込むことです。特に「うみ」「かたつむり」「夕やけこやけ」「春がきた」「虫のこえ」などは、季節の活動とも結びつきやすく、無理なく保育の流れに乗せられます。保育のうちから親しんでおくことで、子どもたちは1年生の授業で「この歌、知ってる!」と積極的に参加しやすくなります。

鑑賞活動への応用も効果的です。1年生の音楽教科書では「さんぽ(久石譲)」「シンコペーテッド・クロック(アンダーソン)」「クシコスポスト(ネッケ)」などの鑑賞曲が登場します。これらを保育のBGMや朝の会などで流しておくだけで、子どもたちは小学校入学後に「あの曲だ!」と感じる経験ができます。

また、音楽づくり(即興・創作)の要素も1年生の教科書には多く含まれています。「言葉でリズム」「絵から生まれる音楽」など、子どもが主体的に音を探求する活動は、保育での自由遊びや感触遊びと本質的に重なります。保育士が小学校の音楽教科書に目を通しておくことで、「この遊びは小学校でも続く学びにつながる」という確かな見通しを持ちながら関わることができます。

「子どもの音楽表現から考える幼小連携」(拓殖大学・論文PDF):小学校音楽教科書の低学年掲載曲の分析と幼稚園への応用を論じた学術資料

保育士だからこそできる!小学校音楽教科書を見るときの独自視点

一般的に「小学校の教科書は教師が読むもの」と思われがちですが、保育士の視点で教科書を読むと、見えてくるものがまったく違います。これは使えそうです。

小学校の音楽教科書には「学習マップ」というページが各学年にあります。そこには「音楽を形作っている要素(音の高さ・長さ・強さ・音色・テンポ・拍・リズムなど)」が視覚的に整理されています。保育士がこれを見ると、「自分が保育でやってきたリズム遊びや声遊びが、実はこういう概念と結びついていたのか」と改めて気づく場面が多いはずです。

たとえば「拍に乗ってリズムを感じ取る」という1年生の題材は、保育での手遊びや音楽遊びで自然に育まれる力です。教科書の言語化によって、自分の保育実践がどのように子どもの育ちに働きかけているかを整理しやすくなります。保育士が自分の実践を言語化することは、保護者への説明力にもつながる重要なスキルです。

また、小学校の音楽教科書1年生には「わらべうた」セクションがあり、「おちゃらか ほい」「おおなみこなみ」「さんちゃんが」などが掲載されています。これらは保育の現場でも定番の遊びです。つまり保育で取り組んでいる活動が、そのまま小学校の教科書にも収録されているということです。「保育でやっていた遊びが小学校の勉強になる」という事実は、保護者に伝えることで保育の専門性への理解と信頼を高める強力な根拠になります。

小学校の音楽教科書は一般の書店では購入できませんが、文部科学省の教科書展示会(毎年6〜7月ごろ開催)に足を運ぶか、教育芸術社の公式ウェブサイトから掲載曲の一覧・指導資料の一部を無料で確認することができます。令和6年度版であれば掲載曲一覧がPDFで公開されています。保育士が教科書そのものを手元に一冊置いておくことで、日々の保育計画を立てるときの参考資料として長く活用できます。

教育出版「令和6年度 小学音楽 音楽のおくりもの」教科書紹介ページ:掲載教材・指導資料のダウンロードが可能

うたのレパートリー 保育現場から小学校までうたいつなぐ歌230