凧揚げの歌 歌詞を保育士が子どもに伝える全知識

凧揚げの歌 歌詞を保育士が子どもへ伝えるすべて

実は「たこのうた」は1番しか歌わないと、凧が落ちかける最大の山場を子どもに体験させる機会をまるごと逃しています。

この記事でわかること
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歌詞全文と各フレーズの意味

1910年初出の文部省唱歌「たこのうた」の1〜3番の歌詞と、難しいフレーズの意味をわかりやすく解説します。

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由来と名前の秘密

凧が「イカ」から「タコ」になった江戸時代の面白い理由と、保育で子どもへ伝える語り方を紹介します。

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保育での指導・振り付けのポイント

年齢別の振り付け例から、凧揚げ活動との連携方法、安全に活動するための注意点まで網羅しています。


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凧揚げの歌 歌詞の全文と各フレーズの意味

 

「たこのうた」は、1910年(明治43年)に文部省が編纂した『尋常小學讀本唱歌』に初めて掲載された文部省唱歌です。翌1911年(明治44年)の『尋常小学唱歌』では「紙鳶の歌(しえんのうた)」として収録され、現在は「たこのうた」として広く親しまれています。つまり、100年以上歌い継がれてきた唱歌ということですね。

歌詞は全3番あります。ところが、後の教科書で3番が省かれたこともあり、現在「1番と2番しか知らない」という保育士も少なくありません。まずは歌詞全文を確認しておきましょう。

歌詞
1番 たこたこ上がれ 風よく受けて 雲まで上がれ 天まで上がれ
2番 絵凧に字凧 どちらも負けず 雲まで上がれ 天まで上がれ
3番 あれあれ下がる 引け引け糸を あれあれ上がる 離すな糸を

1番は「たくさん風を受けて、雲まで、天まで高く揚がれ!」と凧に向かって呼びかける場面です。子どもが凧を見上げて声をかけているイメージで歌うと、表情が豊かになります。

2番に出てくる「絵凧(えだこ)」とは絵が描いてある凧のこと、「字凧(じだこ)」とは文字が書いてある凧のことです。保育の場で子どもに説明するときは「お絵かきした凧と、字を書いた凧、どっちも一緒に空に上がれー!ってお話だよ」と伝えると理解しやすくなります。

3番は凧揚げ中の緊迫した場面で、歌の中で最もドラマ性があります。「あれあれ下がる 引け引け糸を」は、凧が風を失って落ちてきたときに素早く糸を引いて上に戻せというシーン。「あれあれ上がる 離すな糸を」は、凧がぐんぐん上昇するときに手から糸を放してしまわないよう注意する場面です。凧揚げを実際にやったことがある方なら、あの手元にかかるテンションがすぐ頭に浮かぶはずです。

3番まで歌うと、凧の動きが「上がる→さらに上がる→落ちかける→また上がる」という一連の流れで表現された一曲になっているということですね。

保育で3番まで丁寧に歌う場合は、事前に凧揚げの映像や絵を見せておくと、子どもたちが歌詞のイメージをつかみやすくなります。3番の緊迫感を引き出すために、保育士が少し声を大きくして「あれあれ!」と表情豊かに歌いかけると、子どもたちも自然に引き込まれます。

世界の民謡・童謡「たこのうた(凧の歌)」歌詞と解説(worldfolksong.com)

凧揚げの歌 歌詞の由来——「イカのぼり」が「タコ」になった理由

「なぜ空を飛ぶものを『タコ』と呼ぶの?」と子どもに聞かれたとき、すぐ答えられますか?実はこの疑問には、江戸時代の面白いエピソードが隠れています。意外ですね。

凧が日本に伝わったのは平安時代、中国からとされています。中国では「紙鳶(しえん)」と呼ばれ、もともとは厄払いや占いの道具でした。日本では、バランスをとるために胴体から長い足をつけた凧がイカに似ていたため、「いかのぼり」と呼ばれるようになりました。

ところが江戸時代中期、「いかのぼり」は市民の間で大ブームに。大人も子どもも夢中になりすぎた結果、事故が多発。幕府はついに「いかのぼり禁止令」を発令しました。ブームの真っただ中での禁止令です。

禁じられたらやりたくなるのが人の性。江戸の庶民は「これはイカではなく、タコだ!」と言い張り、名前をすり替えて凧揚げを続けたのです。これが「たこあげ」という名前の起源とされています。

この話を保育の場でするとどうなるか。子どもたちは「ずるい!でも面白い!」と目を輝かせます。「昔の人もこっそり遊んでたんだね」という話から、ルールや約束の意味を自然に考えるきっかけにもなります。これは使えそうですね。

その後「たこのぼり」から「たこあげ」へ呼び名が変化し、今に至ります。ちなみに「凧」という漢字は「いかのぼり」とも読むため、辞書を引いてみると歴史の深さを実感できます。子どもと一緒に辞書を引く導入として活用するのもおすすめです。

関西では明治初期まで「いか」「いかのぼり」という呼び名が残っていたともいわれています。地域によって呼び名が違う、という話は子どもの「なぜ?」を引き出す格好のネタになります。

文部省唱歌「たこのうた」と凧揚げの由来・イカのぼり禁止令の詳細(himawari-song.com)

凧揚げの歌 歌詞を使った振り付けと歌い方の指導ポイント

「たこのうた」は振り付けをつけることで、歌詞の世界観が格段に体感しやすくなります。歌詞に合わせた体の動きは表現力を育て、言葉の意味の理解も深まります。歌と動きは一体です。

年齢によって振り付けの難易度を変えることが大切です。以下を目安にしてください。

年齢 振り付けのポイント
2〜3歳 両手を上に広げて「凧が上がる」動きだけでOK。シンプルに楽しむことを優先する
4歳 糸を持つまね・引っ張る動き・手放さない動きを追加。歌詞に動きを対応させる
5歳 歌詞のコマごとに動きを変える・友だちと糸を持つ役割分担にチャレンジする

基本的な振り付けの例は以下のとおりです。

  • 🪁 1番:両手を頭の上で広げて「凧」の形をつくり、ゆっくり上に向かって動かす
  • 🎨 2番:右手・左手を交互に上に上げて「絵凧・字凧」を表現する
  • ⬇️ 3番前半:両手をゆっくり手前に引き寄せる(糸を引くしぐさ)
  • 3番後半:両手をぎゅっと握りしめる(糸を離さないしぐさ)

振り付けは一度に全部覚えさせなくて大丈夫です。1番の動きを定着させてから2番、3番と少しずつ加えていくほうが無理なく身につきます。

歌い方の指導でもう一点意識してほしいのが、母音の発音です。「たこのうた」には「あがれ」「うけて」「いとを」「あれあれ」など、母音で始まる言葉が多く出てきます。前の単語の音に引っ張られて曖昧に歌うと、歌詞が聞き取りにくくなります。特に「かぜよくうけて」の「く」と「う」が続く箇所は、「かぜよくーけて」のように溶けてしまいがちです。母音の語頭は少し言い直す感覚で発音するよう意識しましょう。

歌う前の導入として、「凧揚げしたことある人?」と問いかけたり、凧の絵や映像を見せたりするひと手間が、子どもの集中力を引き上げます。お正月明けの1〜2月に取り入れると季節感もぴったりです。

たこのうた【童謡】振付き/文部省唱歌(YouTube・にこおとちゃんねる)——振り付きの動画参考に

凧揚げの歌 歌詞から広げる凧揚げ保育活動のねらいと注意点

「たこのうた」を歌うことは、凧揚げ活動の最良の導入になります。「凧ってどんな形してると思う?」「なんで風が吹くと上がるんだろう?」という問いを歌の前後に投げかけると、子どもの好奇心が活動全体を通じて持続しやすくなります。

凧揚げ活動のねらいの例(5歳児クラス)は次のように設定できます。

  • 🎏 伝承遊びに親しみ、日本のお正月文化を体で感じる
  • 🌬️ 風という自然現象に気づき、観察力・探究心を育てる
  • 🤝 友だちと協力して凧を揚げ、達成感・協調性を育む
  • 🏃 走ることで体力・平衡感覚・全身の運動機能を高める

凧揚げは「走る+風を感じる+手元の糸を操作する」という、全身と感覚をフル活用する活動です。感覚統合——視覚・前庭感覚・固有感覚などを脳が統合して適切な行動へ導くプロセス——が自然な遊びの中で促される点は、専門家の間でも高く評価されています。シンプルに見えて発達効果はとても大きい。

安全面には特に注意が必要です。電線の近くで凧を揚げると糸が触れた際に感電する危険があります。九州電力など多くの電力会社が「電線のない広い場所で行うよう」明示しており、園庭や公園で活動する場合は事前に障害物・電線・植栽の位置を必ず確認してください。

また、空港周辺では国土交通省・航空法第134条の3の規定により、一定の空域での凧揚げが制限されています。空港近くの施設に勤務する保育士は、活動前に必ず確認することが条件です。

手作り凧の製作と「たこのうた」を組み合わせると、保育活動としてのまとまりが生まれます。「製作→歌で凧のイメージを深める→実際に揚げる」という流れが理想的です。手作り凧はビニール袋と竹ひご(または割り箸)で簡単につくれます。たこ糸の長さは子どもの身長の2〜3倍(1〜1.5メートル程度)を目安にすると揚げやすくなります。

保育士バンク「お正月に凧揚げをする意味とは。手作り製作のアイデアや注意点」——製作アイデアと援助のポイントを詳しく解説

凧揚げの歌 歌詞が持つ文化継承の意味と保育士の役割

「たこのうた」を保育で取り上げることには、単なる季節の歌という以上の意義があります。文化継承と発達支援の両面から整理しておきましょう。

まず、唱歌という形式は子どもの言語発達に有効です。「雲まであがれ」「天まであがれ」「引け引け糸を」といったリズミカルな繰り返し構造は、記憶に残りやすく語彙の獲得を助けます。単語の意味を知らなくても、まずリズムで楽しめるのが唱歌の強みです。

見落とされがちなのが、文化的アイデンティティの形成への貢献です。1910年に初出した「たこのうた」は、100年以上にわたって歌い継がれてきました。子どもたちがこの歌を知ることは、祖父母世代・親世代と「共通の文化体験」を持つことでもあります。お正月に祖父母の家を訪ねて一緒に歌える——そんな場面につながる可能性があります。いいことですね。

さらに、凧揚げというお正月の行事そのものにも深い意味があります。江戸時代には「男の子が生まれた家が、その誕生と健やかな成長を祈って凧を揚げる」という文化がありました。また「立春の季に空に向くは養生のひとつ」という言葉どおり、新年に空を見上げることで健康を祈る風習にもつながっています。こうした背景を保育士が知っておくことで、子どもへの語りかけの深みが変わります。

年齢別に整理すると、次のような発達的意義があります。

  • 🟡 2歳児:歌詞のリズムを感じ、模倣することで音楽への興味が育つ
  • 🟠 3歳児振り付けを真似しながら、身体表現の楽しさを体験する
  • 🔵 4歳児:歌詞の意味を理解し始め、凧のイメージと結びつけながら歌える
  • 🟢 5歳児:歌を通じて日本の文化や季節行事の意味を考え、友だちと共有できる

つまり、どの年齢でも「たこのうた」を取り入れる意義があるということですね。

保育士として意識したいのは「ただ歌うだけ」にならないことです。歌の前後に「凧ってどんな形してると思う?」「なんでタコって名前なんだろう?」という問いを一言添えるだけで、子どもたちの思考が動き出します。歌の時間が「学びにつながる時間」になるかどうかは、保育士の言葉がけにかかっています。

歌詞の意味・由来・背景を正確に知っている保育士と、知らない保育士とでは、子どもへの伝え方の豊かさがまるで違います。保育士が文化的背景をしっかり理解しておくこと——それが条件です。


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