川の歌・童謡で保育の自然感覚を育てる完全ガイド

川の歌・童謡で保育する際の知識と活用法

今歌っている「春の小川」は、高野辰之が書いた元の歌詞ではありません。

川の歌・童謡:保育士が押さえるべき3つのポイント
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歌詞の歴史を知って正確に伝える

「春の小川」は1942年と1947年の2回にわたり歌詞が改訂されています。現在歌われている版は元の作詞者・高野辰之が書いたものではなく、別の人物による改訂版です。

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著作権を理解してトラブルを防ぐ

「春の小川」「めだかの学校」など明治〜昭和初期の童謡は著作権切れのものが多い一方、「川の一日」など昭和後期以降の楽曲は現在も著作権保護期間中です。

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川の歌を季節と自然体験につなげる

川の歌を歌うだけでなく、実際の自然観察や水辺の生きものへの関心と組み合わせることで、子どもの情操教育・表現力・語彙力が格段に育まれます。


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川の歌・童謡の代表曲一覧と保育での位置づけ

 

川をテーマにした童謡は、保育現場で長く親しまれてきた曲が数多く存在します。まず主要な曲を整理してみましょう。

曲名 作詞 作曲 発表年 著作権状況
春の小川 高野辰之 岡野貞一 1912年 保護期間終了(パブリックドメイン)✅
めだかの学校 茶木滋 中田喜直 1951年 保護期間終了 ✅
船頭さん 武内俊子 河村光陽 1941年 保護期間終了 ✅
川のうた 峯陽 中田喜直 昭和後期 要確認(JASRAC管理曲)⚠️
川の一日 新沢としひこ 中川ひろたか 現代 著作権保護期間中 ⚠️

「春の小川」は1912年(大正元年)に発表され、作詞・高野辰之、作曲・岡野貞一による文部省唱歌です。作詞者・高野辰之は長野県中野市出身ですが、このモデルとなった川は東京都渋谷区を流れる渋谷川の支流「河骨川(こうほねがわ)」とされています。これが意外なポイントです。

「めだかの学校」は1951年3月、NHKラジオ番組「幼児の時間」で発表された作品で、作詞が茶木滋、作曲が中田喜直です。2013年には保育士実技試験課題曲にも取り上げられた記録があります。これは使えそうです。

川をテーマにした童謡には季節性が高いものが多く、春は「春の小川」「めだかの学校」、夏は「船頭さん」「川のうた」と組み合わせることで、一年を通じた自然観察のサイクルをつくることができます。川の歌が基本です。

保育の現場でこれらの曲を選ぶ際には、子どもの年齢に合わせた歌詞のわかりやすさ、メロディの難易度、そして著作権の状況の3点を確認してから使い始めるのが安全な手順です。

「春の小川」「めだかの学校」のように著作権保護期間が終了した曲であれば、掲示物に歌詞を書いたり、保護者向け通信に掲載したりする際の手続きが不要になります。ただし「川の一日」などの現代曲は別の話です。JASRAC管理楽曲かどうかをあらかじめ調べる習慣をつけておきましょう。

以下のリンクでは、著作権の保護期間が終了した童謡の一覧を確認できます。

著作権切れの童謡・唱歌一覧と確認方法(JASRACへの問い合わせ方法も掲載)

著作権情報センター(CRIC):著作権の保護期間について

川の歌「春の小川」の歌詞が2回改訂された意外な歴史

保育士のなかには、「春の小川」を長年歌ってきたという方が多いと思います。しかしいま歌っている歌詞は、実は高野辰之が書いた元の歌詞ではありません。

「春の小川」は発表から現在までの間に2回、歌詞が改訂されています。1回目は1942年(昭和17年)に林柳波(はやし りゅうは)によって文語体から口語体に変更されました。このとき、元の3番の歌詞が丸ごとカットされています。2回目は1947年(昭和22年)にさらに一部が手直しされました。つまり元の歌詞は3番まであったということです。

元の1番の歌い出しは「春の小川はさらさら流る」でしたが、現行版では「春の小川はさらさらいくよ」に変わっています。また「にほひめでたく」「色うつくしく」などの表現も改められました。これは意外ですね。

歴史を知ったうえで子どもに伝えると、「昔の人はこんな言い方をしていたんだよ」という文語表現との比較が生まれ、言葉への興味を引き出す入り口にもなります。

さらに驚くのは、このモデルとなった川・河骨川(こうほねがわ)が現在は東京都渋谷区の地下に暗渠(あんきょ)として埋められているという事実です。都市化が進んだ渋谷の、山手通りと井の頭通りが交差するあたりには「春の小川」の石碑が今も立っています。現地を訪ねるだけで十分な教材になります。

保育活動でこの話を使うとすれば、「昔の渋谷には小川があって、スミレやレンゲが咲いていた」という事実を伝えるだけで、子どもたちの想像力が大きく刺激されます。今の街と昔の自然の風景を結ぶ話として、5歳以上のクラスで活用できる場面があります。

唱歌「春の小川」のモデル・河骨川と渋谷川の関係について(東京都第二建設事務所)

春の小川|渋谷川・古川流域連絡会 東京都建設局

川の歌・童謡「めだかの学校」の歌詞と保育ねらいの深め方

「めだかのがっこうは かわのなか」という一節から始まるこの曲は、保育の現場で特に人気が高い川の歌です。歌詞が単純に見えて、実はかなり奥が深い作品です。

注目すべきは「だれがせいとか せんせいか」というフレーズです。この表現は、先生と生徒の役割を固定せず、聴く側の想像にゆだねている点が特徴的だとされています。実際、魚の群れを英語では「school(スクール)」と呼び、メダカの群れは生物学的にもリーダーが常に入れ替わる仕組みであることが研究で確認されています。つまり生物学的にも正確なのです。

3番の「みずにながれて つーいつい」という擬音語も見逃せないポイントです。一般的にはメダカの泳ぎを「すいすい」と表現することが多いのですが、作詞者の茶木滋はあえて「つーいつい」という言葉を選びました。ゆったりと流れに乗って、群れがそろって進む様子をリズムよく表現したものとされています。この擬音語の違いに気づかせるだけで、言語感覚を育てる活動になります。

保育活動での活用法としては、以下の3つが実践しやすいです。

  • 🎤 「つーいつい」を歌いながら手や腕をゆっくり動かすリズム遊びは、1歳児から取り入れられます
  • 🪣 「そっとのぞいてみてごらん」の歌詞に合わせ、実際に水槽のメダカを静かに観察するルールを教える導入に使えます
  • 🖌️ 「みんなでおゆうぎ」のフレーズを使い、友だち同士で動きをそろえる表現活動(4〜5歳)に発展できます

「そっとのぞいてみてごらん」という歌詞は、自然を観察するときに生き物を驚かせないようにするという観察の倫理を、歌を通じて自然に伝えられる表現です。声かけで伝えるより、歌で染み込ませる方が効果的な場面があります。

めだかの学校の由来・歌詞の背景・保育でのねらいの参考情報

世界の民謡・童謡:めだかの学校 歌詞の意味・由来

川の歌・童謡を保育の季節活動と自然体験につなげる方法

川の歌を歌うだけで終わらせてしまうのは、実はかなりもったいないことです。歌詞に出てくる自然の情景を実体験として補うことで、子どもの学びの質が大きく変わります。

研究者の指摘によると、「たとえ歌を忘れずにいても、実体験なしに想像の中で歌うだけでは不十分だ」とされています(山口大学の論文より)。川の歌に出てくるスミレ・レンゲ・メダカ・エビを、一度でも実際に見た経験がある子どもとない子どもとでは、歌詞の定着度に明確な差が生まれます。これは覚えておきたい視点です。

季節ごとの組み合わせの目安は以下の通りです。

  • 🌸 春(3〜5月):「春の小川」を歌いながら、園庭にタンポポやスミレを探す観察活動とセット。水場の近くでエビやメダカを観察できると理想的です
  • ☀️ 夏(6〜8月):「めだかの学校」「船頭さん」のリズムで水遊びを導入。水の流れや浮力を体で感じる活動と組み合わせます
  • 🍂 秋(9〜11月):「もみじ」(芹洋子)など川辺の紅葉を題材にした曲で、色彩感覚を育てる造形活動に展開します
  • ❄️ 冬(12〜2月):「どじょっこふなっこ」で、冬の水の中の生き物の変化(氷の下に隠れる)を想像する活動につながります

保育園や幼稚園の施設内に水槽があれば、日常的にメダカを育てながら「めだかの学校」を歌う文脈をつくれます。水槽のメダカは1匹あたり200〜500円程度で入手できるため、クラス予算内での準備が現実的です。

川の歌を通じて自然体験と結びつけることで、子どもの感覚語彙(「さらさら」「つーいつい」など)が日常会話の中で自然に増えていきます。結論は語彙と自然体験のセットです。

歌と自然体験を組み合わせる教育的意義についての学術的参考

NII学術情報ナビゲータ:一昔前の子どもの歌で体験する自然(山口大学)

川の歌・童謡を保育士が深く理解するための独自視点:歌詞の擬音語と言語発達

川をテーマにした童謡には、擬音語や擬態語(オノマトペ)が特に多く盛り込まれています。これは保育の世界では見落とされがちな重要ポイントです。

「春の小川」の「さらさら」、「めだかの学校」の「つーいつい」、「船頭さん」の「ギッチラコ」、「どじょっこふなっこ」の「どじょっこ」など、川の歌には水や生きものの動きを表す独特の音の言葉が次々と出てきます。乳幼児の言語発達において、オノマトペは最初に獲得されやすい語彙のひとつとされており、こうした川の歌はまさに言語発達の入口として機能します。

「ギッチラコ」という「船頭さん」の舟をこぐ擬音はとくに面白い例で、実際にリズムにあわせて体を前後に揺らす動作遊びへと発展しやすいです。この曲は1941年発表で、現在は著作権保護期間が終了しているため、楽譜の複写や掲示物への歌詞掲載も自由に行えます。著作権フリーは助かりますね。

さらに保育士が知っておくと深みが増す視点として、「川の歌の擬音語には方言的なバリエーションがある」という点があります。たとえば地域によっては「さらさら」を「せせらぎ」と表現したり、「どぶどぶ」「ちょろちょろ」と表現したりします。保護者との懇談や、地域の自然と歌をつなげる話題として活用できます。

子どもが歌の擬音語に着目できるよう促す声かけの一例を示します。

  • 💬 「”さらさら”って、どんな音に聞こえる?川の水はどんな音がするかな?」
  • 💬 「”つーいつい”と”すいすい”ってどっちが速そう?どっちが気持ちよさそう?」
  • 💬 「”ギッチラコ”って言いながらやってみよう。何の動きに似てる?」

こうした問いかけは、歌を「聴いて終わり」ではなく「考えて広げる」活動へと変えます。これが保育の中での川の歌を真に活かすアプローチです。オノマトペに注目するだけで保育の深さが変わります。

幼児の言語発達とオノマトペの関係を確認したい場合は、以下のリンクが参考になります。

わらべうた・手遊び歌と子どもの感覚発達・言語発達の関係(保育学専門家によるインタビュー)

ほいくらし:「わらべうた」が子どもの発達を左右する!?保育学・心理学的視点から

川歌(かわうた)(4) (ビッグコミックス)