冬げしき歌の歌詞の意味と保育士向け指導のポイント

冬げしき歌の歌詞の意味と保育士向け指導のポイント

「冬げしき」は真冬の歌ではなく、実は12月初旬の初冬が舞台です。

この記事でわかること
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歌詞の全文と意味

1番〜3番の歌詞を「朝・昼・夕暮れ」の時間軸で丁寧に解説。難しい文語の言葉も一つひとつわかりやすく説明します。

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この曲の歴史と背景

大正2年(1913年)に尋常小学唱歌として誕生した110年以上の名曲。作者不詳のまま「日本の歌百選」に選ばれた理由にも迫ります。

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保育現場での指導のコツ

文語体の歌詞を子どもにわかりやすく伝えるための導入方法や声かけのポイントを具体的に紹介します。

冬げしき歌の基本情報と誕生の歴史

 

「冬げしき(冬景色)」は、1913年(大正2年)5月に文部省が発行した『尋常小学唱歌 第五学年用』に収録された文部省唱歌です。初出から110年以上が経過した現在も、小学校5年生の音楽の教科書に掲載され続けており、日本の音楽教育を語る上で欠かせない一曲となっています。

4分の3拍子(ワルツのリズム)で書かれており、文語体の歌詞は1番から3番まであります。それぞれが「朝・昼・夕暮れ」という日本の冬の一日を時間経過で描いた、叙景歌の傑作として高く評価されています。

2006年(平成18年)には、文化庁と日本PTA全国協議会が共同で選定した「日本の歌百選」に選ばれました。これは一般からの推薦と投票をもとに選ばれた100曲で、「冬げしき」はその中の冬の名曲として名前を連ねています。

つまり国民的な認知度がある歌です。

項目 内容
曲名 冬景色(冬げしき・ふゆげしき)
作詞・作曲 不詳(文部省唱歌)
発表年 1913年(大正2年)
拍子 4分の3拍子
使用教科書 尋常小学唱歌 第五学年用(現在も小学5年生の共通教材)
選定歴 2006年「日本の歌百選」選定

作詞者・作曲者がともに「不詳」のままであることも、この曲の大きな特徴です。文部省唱歌の多くは、当時の文部省の編纂委員会が合議制で詞や曲を作り上げていたため、個人名が記録されていませんでした。作詞は武島羽衣氏、作曲は岡野貞一氏ではないかという文献も複数存在しますが、現在もなお確定には至っていません(出典:国立国会図書館レファレンス協同データベース)。

作者がわからなくても、名曲であることに変わりはありません。

国立国会図書館|文部省唱歌「冬景色」の作詞者・作曲者に関する調査

冬げしき歌の歌詞と全番の意味をわかりやすく解説

「冬げしき」の歌詞は文語体(古い書き言葉)で書かれており、大人でも意味が取りにくい表現が数多く含まれています。ここでは全3番の歌詞と、現代語訳・各フレーズの意味を丁寧に確認していきましょう。

🎵 1番の歌詞(朝の港の情景)

さ霧(さぎり)消ゆる 湊江(みなとえ)の
舟に白し 朝の霜
ただ水鳥(みずとり)の 声はして

いまだ覚めず 岸の家

【現代語訳】

朝霧がゆっくりと消えていく港の入り江、そこに係留された舟には白い霜が降りている。水鳥の鳴き声だけが響き渡り、岸辺の家々はまだ眠ったまま目覚めていない。

  • さ霧:「さ」は語調を整える接頭語。漢字では「狭霧」。もともとは秋の季語で、「さ霧消ゆる(霧が消えた)」=秋が終わり冬が始まった、という季節の移ろいを表す。
  • 湊江(みなとえ):港になっている入り江のこと。
  • 水鳥:カモやユリカモメなど、冬の水辺に集まる鳥。人間がまだ起きていない時間にも活発に動く存在として描かれている。
  • いまだ覚めず:「まだ目覚めていない」という意味。人々が眠る静寂の中、冬の朝の凛とした冷気が伝わってくる。

🎵 2番の歌詞(昼の畑の情景)

烏(からす)啼きて 木に高く
人は畑(はた)に 麦を踏む
げに小春日(こはるび)の のどけしや

かへり咲(ざき)の 花も見ゆ

【現代語訳】

カラスが木の高いところで鳴き、人々は畑で麦踏みをしている。本当に穏やかな小春日和だなあと感じる、そんな陽気に誘われて季節外れの花まで咲いている。

  • 麦を踏む(麦踏み):秋に種をまいた麦の芽を足で踏む農作業のこと。11月〜3月頃に行い、霜柱で根が浮き上がるのを防いだり、茎を太く丈夫に育てたりするための大切な知恵。
  • げに:「本当に、いかにも」という意味の古語。
  • 小春日(こはるび):晩秋から初冬(11〜12月頃)にかけての、暖かく穏やかな晴れた日のこと。「小春日和」のこと。

冬の季語で、「春」の言葉が入っているが春の話ではない点に注意。

  • のどけしや:「のどかだなあ」という詠嘆。古語「のどけし」の感嘆形。
  • かへり咲き:春の花(サクラ、ツツジ、ウメなど)が小春日和の暖かさに誘われて冬に時期外れに咲くこと。

冬の季語。「返り咲き」「二度咲き」「帰り花」などとも呼ばれる。

🎵 3番の歌詞(夕暮れの里の情景)

嵐吹きて 雲は落ち
時雨(しぐれ)降りて 日は暮れぬ
若し灯火(ともしび)の 漏れ来(こ)ずば

それと分かじ 野辺(のべ)の里

【現代語訳】

激しい風が吹き、雲が低く垂れ込め、冷たい時雨が降るうちに日が暮れてしまった。もし家の明かりが漏れてこなかったなら、そこに里があるとは気づかなかったことだろう。

  • 雲は落ち:雲が低く立ち込める様子。空の暗さと圧迫感を表現している。
  • 時雨(しぐれ):秋の末から冬の初めにかけて降ったり止んだりする冷たい小雨のこと。
  • 灯火(ともしび):昔の家の明かりのこと。街灯がなかった時代、暗い野原の中で家から漏れる灯りは、旅人や帰路を急ぐ人にとって大きな心の支えだった。
  • 野辺(のべ)の里:野原の中にある集落のこと。「それと分かじ」の「じ」は打消推量で「わからなかっただろう」という意味。

歌詞の意味が分かると、景色がぐっと近くなりますね。

世界の民謡・童謡|冬景色 ふゆげしき 歌詞の意味(詳細解説)

冬げしき歌が実は「初冬」の歌である理由

多くの人が「冬げしき」を聞いて、雪が積もる真冬のイメージを抱きます。しかし実際には、この歌が描いているのは12月初旬ごろの「初冬」の情景です。これは意外と知られていない事実で、歌詞をよく読み解くと納得できます。

その証拠となるキーワードが歌詞の中にいくつも隠れています。1番の「さ霧消ゆる」の「さ霧(狭霧)」はもともと秋の季語で、「霧が消えた」という描写は「秋が終わって冬になった」という季節の切り替わりを表しています。2番の「小春日(こはるび)」は晩秋〜初冬(現代の暦で11月頃)の穏やかな晴れた日のことで、これも冬の始まりを指す言葉です。「かへり咲き」も、小春日和に誘われて季節外れに咲く花の表現であり、厳冬期ではなく初冬ならではの情景を描いています。

雪の歌ではありません。これが原則です。

3番の「時雨(しぐれ)」も同様で、秋の末から冬の初めにかけて降るものとされています。降ったり止んだりする冷たい雨、という描写は、吹雪ではなく初冬の気候そのものです。歌全体を通じてみると、雪は1度も登場しないことも注目すべき点です。

この「初冬の歌」という視点は、保育の現場でも大いに活用できます。「今の季節ってどんな季節かな?」「朝の外、どんなにおいがしたかな?」といった問いかけと組み合わせることで、子どもたちが窓の外の実際の景色と歌詞をつなげて考えるきっかけになります。季節感を体で覚えさせる絶好の教材です。

なっとく童謡・唱歌|大正の唱歌(冬景色の季節に関する解説)

冬げしき歌の保育現場での導入とわかりやすい言葉への変換方法

「冬げしき」は文語体の歌詞のため、そのまま歌っても子どもには意味が伝わりにくい部分があります。保育士として大切なのは、歌詞の内容を子どもたちがイメージできるような言葉や視覚的な工夫に置き換えることです。

【導入前の準備:わかりやすい言葉への変換例】

歌詞の言葉 子どもへの言い換え例
さ霧消ゆる 朝のもやが消えていく
湊江(みなとえ) 港のある入り江・船着き場
麦を踏む 畑で麦の芽を足で踏む農作業
小春日(こはるび) 冬なのにぽかぽか暖かい日
かへり咲き 時期でもないのに花が咲いた
時雨(しぐれ) 降ったり止んだりする冷たい雨
灯火(ともしび) 昔の家の電気の光(ろうそく)

言葉の変換が第一歩です。

【導入の手順】

まず、歌に入る前に子どもたちへ「冬の朝って、外はどんな感じかな?」と問いかけてみましょう。「寒い」「白くなってた」「息が白くなる」など、子どもたちの日常経験と歌の情景がつながり始めます。

次に、1番〜3番をそれぞれ「朝・昼・夕方」の場面として絵カードやペープサートで視覚的に提示すると、歌の構成が理解しやすくなります。絵カードには「港で眠る舟」「麦踏みをする人」「暗闇の中で窓から光が漏れる家」のような絵を描いておくと効果的です。

【歌の練習での声かけのコツ】

文語体の歌詞は、無理に全て説明しようとするより、歌いながら「この言葉はね、こういう意味だよ」と1フレーズずつ少しずつ伝えていく方が子どもには伝わりやすいです。「大きな声で歌おう」ではなく「やさしい声で歌おうね」「ふんわりとしたまるい声で」という声かけが、のびやかな発声につながります。

これは使えそうです。

音楽の授業や保育でも参考になる映像資料として、歌詞のイメージを映像化した動画もあります。子どもたちに事前に見せることで、歌の世界観を共有する材料にもなります。

保育士就職ナビ|保育園での歌の教え方(選曲・導入・指導ポイントまとめ)

冬げしき歌が保育の情操教育に与える効果と独自の視点

「冬げしき」のような唱歌・童謡を保育の場で取り上げることは、子どもの情操教育に対して単に「音楽を楽しむ」以上の効果をもたらします。この視点は、一般的な記事ではあまり掘り下げられていない重要なポイントです。

まず、この歌が持つ「時間の流れ」という構造が子どもの語彙力と想像力の両方を育てます。朝・昼・夕方という1日の変化を1曲の中で追体験できる歌は実は珍しく、子どもたちが「時間の流れ」や「移り変わり」という概念を自然と身につけられる構造になっています。伸芽会(幼児教育の専門機関)の調査でも、季節感を学ぶことが語彙力や判断力の発達に影響すると指摘されています。

季節感は日々の積み重ねが大切です。

次に、この歌に登場する自然の描写——霜、霧、麦踏み、時雨、灯火——は、現代の子どもたちにとって非常に新鮮な体験になります。エアコンが常備された室内で過ごす機会の多い現代っ子にとって、「夜明けの霜が降りた舟」「夕暮れに窓から漏れる灯り」というイメージは、想像力を大きく刺激します。これは「美しいものに感動する力」という情操教育の核心部分に直接働きかけます。

さらに、2007年に「日本の歌百選」に選ばれたこの曲を取り上げることで、子どもたちに「110年以上歌い継がれてきた本物の文化」に触れさせることができます。保育士が「これはね、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんの時代から歌われてきたんだよ」と伝えるだけで、子どもたちの中に「文化の縦軸」という感覚が芽生えます。

また、音楽療法の分野でも、「冬景色」のような季節感のある唱歌は、聴く人の感情を安定させる効果が認められています(東京ミュージック・ボランティア協会)。保育士が情緒の安定を意識した保育活動を設計する際に、この曲を選択肢の一つとして知っておくことは大きなプラスになります。

この情報を知っていると得です。

こどもまなびラボ|季節感を教えることが子どもの国語・理科の理解にも影響する理由
東京ミュージック・ボランティア協会|音楽療法と季節の歌(冬景色の活用事例)

冬げしき