ヒツジ歌で保育が変わる!子どもの発達を引き出す歌の選び方

ヒツジ歌を保育で活かす!発達を引き出す選び方と使い方

「メリーさんのひつじ」の日本語訳詞は、今も著作権が残っていてあなたが無断使用すると著作権侵害になります。

この記事のポイント
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ヒツジ歌の種類と特徴

保育現場で使える「ひつじ」をテーマにした歌を年齢別に紹介。それぞれのねらいと発達効果を解説します。

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著作権の落とし穴

「メリーさんのひつじ」の日本語訳詞は2071年まで著作権が有効。保育士が知らずに使うと違反になるリスクがあります。

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英語版・手遊びの取り入れ方

英語版を使えば著作権問題をクリアしながら、言語発達・音感・英語への親しみを同時に育てることができます。

ヒツジ歌の種類と保育での使い分け方

 

保育現場でよく耳にする「ひつじ」をテーマにした歌は、実は複数あります。代表的なものをまとめると、「メリーさんのひつじ」「ねむねむのひつじ」「ブルッキーのひつじ」の3曲がよく知られています。それぞれの特徴を把握しておくと、場面に応じた選曲がしやすくなります。

「メリーさんのひつじ」 は1830年にアメリカで生まれたマザーグース童謡で、日本では1952年頃にNHKラジオの番組「うたのおばさん」で広く知られるようになりました。明るく軽快なメロディで、0歳児から楽しめます。音程の幅が広いため、音の聞き分けを促す効果もあるとされています。

「ねむねむのひつじ」 はフジテレビ系「ポンキッキーズ」の楽曲として知られ、子どもたちを就寝前や昼寝の時間へと誘導するのに向いた穏やかな曲調が特徴です。10月の保育テーマとしても活用されており、とくに2〜3歳クラスの落ち着きタイムに合います。

「ブルッキーのひつじ」 は絵本「ブルッキーのひつじ」(M・B・コブスタイン作、谷川俊太郎訳)をもとにした歌で、保育士やピアノなしでも一緒に歌える点が特徴です。「ピアノがなくても子どもと歌える歌」として保育士の間でも親しまれています。伴奏なしで歌えるのは、散歩中や活動の隙間にも使いやすく便利です。

歌のタイトル テンポ 向いている場面 目安の年齢
メリーさんのひつじ 明るい・軽快 朝の会体操・手遊び 0歳〜
ねむねむのひつじ ゆったり 昼寝前・落ち着きタイム 2〜5歳
ブルッキーのひつじ 中程度 絵本との連動・散歩中 3歳〜

どれを選ぶかは活動の目的次第です。子どもたちの気持ちを高めたいときは「メリーさんのひつじ」、落ち着かせたいときは「ねむねむのひつじ」、と使い分けるのが基本です。

ヒツジ歌「メリーさんのひつじ」の歴史と誕生の背景

この曲が生まれたのは、1830年のアメリカ・マサチューセッツ州です。実話に基づいていることはあまり知られていませんが、メリー・エリザベス・ソーヤーという少女が白い子羊を学校に連れていき、大騒ぎになった実際の出来事がもとになっています。意外ですね。

詩を発表したのは作家のサラ・ジョセファ・ヘイル(Sarah Josepha Hale)。彼女は「女の子も学校に通えるように」という願いをこめてこの詩を書いたとされており、単なる動物の歌以上の意味を持っています。メロディを付けたのはアメリカの教会音楽家・ローウェル・メイソン(Lowell Mason, 1792〜1872)です。

さらに、この曲には特筆すべき歴史上のエピソードがあります。1877年12月6日、トーマス・エジソンが世界で初めて蓄音機(レコード)に録音した曲が、まさにこの「メリーさんのひつじ」だったのです。つまり、音楽録音の歴史の第1ページを飾った曲でもあります。保育の現場で当たり前に歌っているこの歌が、実は音楽史の偉大な1ページを刻んでいると知ったら、子どもへの紹介にも使えるエピソードになります。

日本では、詩人の高田三九三(たかだ みくみ)が1927年に日本語訳詞を発表。その後1952年頃、NHKラジオ「うたのおばさん」でオンエアされ、全国的に知られるようになりました。つまり現代日本で歌われているあのメロディと歌詞が定着したのは70年以上前の出来事です。

参考:「メリーさんのひつじ」の詳しい成り立ちや歌詞の著作権情報はWikipediaにまとまっています。

メリーさんのひつじ – Wikipedia

ヒツジ歌の著作権に関して保育士が知っておくべき落とし穴

「メリーさんのひつじ」は古い曲だから著作権は切れていると思っていませんか。これが大きな落とし穴です。

確かに、原曲(英語歌詞・メロディ)の著作権は消滅しています。しかし日本で広く歌われている高田三九三による日本語訳詞は、2001年1月29日に高田が亡くなったため、著作権の保護期間が死後70年間となり、2071年12月末日まで有効です。つまり今から約45年以上もの間、この訳詞は著作権で守られています。

では、保育の場でどういったケースがリスクになるのでしょうか。代表的な例をまとめると次のとおりです。

  • 園のおたよりや配布物に歌詞をそのまま印刷して配布する
  • 発表会のプログラムに歌詞を載せる
  • 園のWebサイトやSNSに歌詞テキストを投稿する
  • 保護者向けの動画に歌詞テロップをつけて配信する

「ちょっとした使い方」に見えますが、これらは正式にはJASRACへの使用料の支払いが必要になる場合があります。ただし、教育目的での利用については著作権法第35条の例外規定が適用されるケースもあります。重要なのは「知らなかった」では済まないケースもあるということです。

一方で、英語の原詞(Mary had a little lamb)は著作権が切れているため、英語版で歌う分には著作権上の問題はありません。英語版の活用は問題ありません。むしろ後述するように英語版を活用することで子どもの発達にも好影響があります。

保育での日本語版使用については、各園が加入しているJASRAC手続きの範囲内で行うことが安全です。判断に迷ったときは園長や施設管理者に確認する、これだけ覚えておけばOKです。

参考:音楽と著作権(期限・許諾・使用料)についての解説ページ

ヒツジ歌を英語版で取り入れると子どもの発達に何が起きるか

英語版「Mary Had a Little Lamb」を保育に取り入れることには、著作権問題をクリアする以外にも明確な発達上のメリットがあります。これは使えそうです。

大阪府立大学名誉教授の安藤幸江先生(マザーグース学会賞受賞)の研究によれば、マザーグース童謡は「英語特有のリズムを体全体で学べる」教材であり、幼少期から繰り返し聞くことで英語の音声感覚が自然に形成されるとされています。「メリーさんのひつじ」はそのマザーグースの代表曲のひとつです。

具体的には、次のような発達への効果が期待できます。

  • 音韻認識の発達:英語特有の語末の音(”lamb, lamb”など繰り返しの音)が音の聞き分けを促す
  • リズム感の獲得:英語のストレスリズム(強弱の規則性)が体に刻まれる
  • 語彙への興味:”white as snow(雪のように白い)”などの表現が感覚的に入ってくる
  • 記憶力・模倣力の向上:同じフレーズの繰り返し構造が、0〜2歳の模倣発達を助ける

ポイントは、「教える」のではなく「繰り返し流す・一緒に歌う」ことです。英語に不慣れな保育士でも、1日1回歌うだけで十分に効果が出はじめると言われています。

英語版の音源として無料で活用できるYouTubeチャンネルも複数あります。たとえば保育士・教師向けに教育現場での活用を目的として公開している「ゆめある」チャンネルでは、英語版「Mary Had a Little Lamb」の歌付き動画を視聴できます。活動の導入として流すだけで一日のルーティンに組み込めます。

参考:保育・教師向けに制作された英語童謡の解説・活用情報

親子の遊びに取り入れるだけで教育効果抜群!英語の童謡「マザーグース」とは – こどもまなびラボ

ヒツジ歌を使った手遊びアイデアと年齢別のねらい

「メリーさんのひつじ」をはじめとするヒツジの歌は、手遊びとの相性が非常に良い曲です。歌詞のテンポや繰り返し構造が、子どもの模倣を引き出しやすい設計になっているからです。

0〜1歳向けの手遊び例として、保育士がゆっくりと両手の指を動かしながら「ひつじが歩いてくる」動作を表現し、子どもの視線を引きつける方法が挙げられます。この時期のねらいは「歌に反応する」「音楽を楽しむ」で十分です。言葉の意味は理解できなくても、リズムや抑揚に反応することが脳の発達につながります。

2〜3歳向けでは、「メェメェ」の部分で手を耳の横に持っていきヒツジの耳を表現したり、「まっしろね」でふわふわした動きを体で表したりする工夫が効果的です。この年齢は模倣力が急速に発達する時期で、保育士の動きを「そっくりまねする」ことで達成感と自信が育まれます。

4〜5歳向けでは、子どもたちが自分でオリジナルの振り付けを考える活動に発展させられます。「ひつじがどんな動きをするか想像してみて」と問いかけるだけで、表現の幅が広がります。これは保育所保育指針に示す「思考力表現力の芽生え」に直結する活動です。

手遊びの際に意識したいポイントが1つあります。それは「動きの難しさよりも、繰り返しの楽しさを優先する」ことです。難しすぎる振り付けは子どもの集中を分散させ、歌の楽しさより「失敗体験」が先に来てしまいます。むしろシンプルな動作を何度も繰り返すことで、子どもたちは自信を持って参加できます。

年齢 ねらい 手遊びの難易度の目安
0〜1歳 音・リズムへの反応 保育士が見せる・触れる
2〜3歳 模倣・言葉への興味 2〜3動作の簡単な振り付け
4〜5歳 表現力・創造性 子どもが考えた振り付けも取り入れる

手遊び歌の参考情報や年齢別の動画は「保育士バンク!」などの専門サイトでも確認できます。

乳児に人気の手遊び歌とねらい・演じ方の解説 – 保育士バンク!コラム

ヒツジ歌を使う独自視点:「歌の背景を子どもに伝える」効果

ほとんどの保育士は、曲を「歌う素材」として使いますが、歌の背景にある物語を子どもと共有することが、歌の教育効果を格段に高める視点として見逃されがちです。

「メリーさんのひつじ」には、実話に基づいたストーリーがあります。アメリカの女の子・メリーが本当に子羊を学校に連れていった、という出来事が歌の起源です。4〜5歳の子どもたちは「これはほんとうにあったこと」という情報に強く反応します。「この歌、昔本当にあったお話なんだよ」と一言添えるだけで、子どもたちの目の輝きが変わります。

さらに、「この歌は世界で最初にレコードに録音された曲でもあるんだよ」と伝えると、子どもなりに「すごい歌なんだ」という感覚が生まれます。これは歌への愛着形成であり、反復して歌いたいという意欲を自然に高めます。

また、歌の中に登場する「学校」という場所は、就学前の4〜5歳児にとって身近なテーマです。「どうしてひつじは学校についていったんだと思う?」と問いかけると、子どもたちなりの言葉で「好きだから」「さびしかったから」という応答が引き出せます。これは言語表現と感情理解を同時に育てる活動になります。

「歌を知っている」から「歌の世界を感じる」へ。この一歩が、保育における音楽活動の質を引き上げます。歌を道具として使うのではなく、子どもと一緒に歌の世界を探求するパートナーになれる保育士は、子どもからの信頼が格段に厚くなります。

保育における音楽活動の発達的意義については、研究資料としてまとめられた論文が参考になります。

発達と音楽:音楽療法的視点からの考察(神戸大学リポジトリ)

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