もみじの歌を保育で活かす歌詞の意味と指導のコツ

もみじの歌を保育で活かす完全ガイド

「もみじ」の歌詞には、実は”美しい”という言葉が一度も出てこない。

🍁 この記事でわかること
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歌詞の意味と歴史

1911年発表の唱歌「もみじ」がどのような背景で生まれたのか、歌詞に込められた情景の意味を深掘りします。

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保育での歌い方・指導のポイント

3〜5歳児への年齢別ねらいや、ジェスチャー・手遊びを取り入れた実践的な指導方法を紹介します。

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製作・自然活動との連動アイデア

落ち葉拾いや貼り絵など、「もみじ」の歌と組み合わせた秋の保育活動の具体的なアイデアを紹介します。

もみじの歌の歌詞と意味を保育士が深く知るために

 

「もみじ」の歌詞は、1番と2番の全8行で構成されており、どちらもシンプルながら非常に詩的な表現が込められています。まずは歌詞全体を確認しておきましょう。

歌詞
1番 秋の夕日に 照る山もみじ/濃いも薄いも 数ある中に/松をいろどる かえでやつたは/山のふもとの すそもよう
2番 たにの流れに 散り浮くもみじ/波にゆられて はなれて寄って/赤や黄色の 色さまざまに/水の上にも 織るにしき

1番では「夕日に照らされた山全体のもみじ」を遠くから眺める視点で描いています。「山のふもとのすそもよう」という一節は、山の裾野に広がる紅葉の様子を、着物の裾にあしらわれた美しい模様に例えた表現です。見事な比喩ですね。

2番になると、視点が大きく変わります。山全体を遠望していた1番から、谷間を流れる川を覗き込む近距離の視点へとズームインしているのです。散った紅葉の葉が川面に浮かんで揺れる様子を「水の上にも織るにしき」と表現し、川面まで絢爛な絹織物のように見えると歌っています。つまり、遠くから見ても近くから見ても美しいことを、たった2番で対比的に描いているのが「もみじ」の歌詞の構造的な魅力です。

注目すべきは、歌詞の中に「美しい」という言葉が一度も使われていないことです。美しさを直接口にせず、情景描写だけで読者(聴く人)の脳裏に色彩豊かな絵を浮かばせる手法は、俳句や和歌の文学的伝統を踏まえた表現技法といえます。保育の場でこの事実を子どもたちに伝えると、「じゃあどんな気持ちかな?」という豊かな問いかけにつながります。これは使えそうです。

歌詞に登場する「かえで」は、いわゆる「もみじ」として最も代表的な紅葉植物で、掌のような形の葉が特徴です。「つた」はブドウ科の植物で、壁や木に巻きついて育ち、秋になると鮮やかに紅葉します。「裾模様」とは着物の裾部分にある模様のことで、全体に模様がある「総模様」に対して裾だけにある装飾を指します。「にしき(錦)」は金銀糸を使って文様を織り出した最高級の絹織物のことです。これらの言葉を保育士自身が理解しておくと、子どもへの説明もぐっと豊かになります。

「すそもよう」が基本です。子どもに説明するときは「山の下の方を着物の飾りに例えているんだよ」と一言添えるだけで、理解が深まります。

参考:歌詞の意味と情景を詳細に解説しています(作詞・作曲者情報も掲載)

「もみじ」の解説と演奏のヒント|つくしぱんだ音楽教室

もみじの歌の歴史と作詞・作曲者が保育士に与えるヒント

「もみじ」は1911年(明治44年)に文部省が編纂した『尋常小学唱歌(二)』で発表されました。実は当初は2年生向けの教材として掲載されていたのですが、その後1951年(昭和26年)以降は小学3〜4年生の音楽の教科書に採用されて現在に至ります。その後、2006年に文化庁と日本PTA全国協議会が選定した「日本の歌百選」にも選ばれており、日本を代表する秋の歌として広く定着しています。

作詞は高野辰之(たかの たつゆき)、作曲は岡野貞一(おかの ていいち)という二人のコンビによるものです。この二人は「春がきた」「春の小川」「おぼろ月夜」「ふるさと」など、現在でも小学校の共通教材として歌われる名曲を数多く生み出した黄金コンビとして知られています。

高野辰之が「もみじ」の詞を作ったきっかけとして広く伝わるのは、群馬県と長野県の境に位置する碓氷峠(うすいとうげ)の風景です。信越本線の熊ノ平駅(現在は廃線)付近から眺めた紅葉の美しさに感動して詞を書いたといわれています。現在も旧碓氷峠見晴台からの紅葉と夕日の景観は絶景スポットとして人気が高く、毎秋多くの観光客が訪れます。

一方、作曲者の岡野貞一についてはあまり知られていない興味深いエピソードがあります。彼は14歳のときに地元・鳥取の教会でキリスト教の洗礼を受けており、賛美歌との出会いがきっかけで音楽の道に進みました。また、岡野は非常に寡黙な人物で、自分の作曲についてほとんど発言や記録を残さなかったため、「もみじ」の作曲者は今でも「推定」とされているという、意外な事実が残っています。意外ですね。

「もみじ」の楽曲は二部合唱として構成されています。前半の8小節(2行)は、低音部が高音部の1小節後ろを追いかけていくカノン(輪唱)形式です。3行目の4小節は、低音部が高音部の3度下で響き合う和声的な合唱になっています。保育の現場では年長クラス(5歳児)がこの構造を体験できると、ハーモニーの楽しさを自然に感じ取れるでしょう。

参考:「もみじ」が選ばれた「日本の歌百選」については以下を参照できます

日本の歌百選(文化庁PDF)

もみじの歌を保育で取り入れる年齢別のねらいと歌い方

「もみじ」の歌詞には「秋の夕日」「裾模様」「渓の流れ」「錦」など、日常語とは少し異なる詩的な言葉が並んでいます。そのため、言葉と自然への理解がある程度育まれた3歳以上が対象として適しています。

年齢によって同じ歌でも、ねらいも導入の仕方も変えるのが原則です。以下に年齢別の活用方法を整理します。

  • 🌱 3歳児:秋の紅葉の色や形を身体表現と結びつけ、自然への興味を育てることをねらいとします。「秋の山ってどんな色かな?赤や黄色を探してみようね」と問いかけながら導入すると、子どもが自分の経験と歌詞をつなぎやすくなります。
  • 🍂 4歳児:詩的な表現(山紅葉・裾模様・流水)を動作と結びつけ、語彙力や感受性を深めることがねらいです。「松の緑と楓や蔦の赤の違いを見てみよう」と、色と葉の実物観察から入ると理解が深まります。
  • 🎵 5歳児:手や声の強弱、旋律の流れに合わせて表現の幅を工夫する創造性を育てることがねらいとなります。「もみじの葉が川に浮いている様子を想像してみよう、どう動くかな?」と情景を語りながら導入すると、体全体を使った表現活動につながります。

歌い方の具体的なポイントとして、まず保育士自身が「秋の山に向かって遠くまで声を届けるような気持ち」で歌うことが大切です。メロディーは非常にシンプルで、ほとんどの音が隣の音か一つ離れた音に進みますが、一か所だけソから一気にドへと4度跳躍する箇所があります(「松をいろどる」の部分)。この場所で「ツーン!」と突き刺すような声にならないよう、上からそっと音を置くように歌うと、落ち着いた美しさが生まれます。

また「すそもよう」の最後の「よう」は付点2分音符という長い音符で伸ばす部分です。ここを短く切らずに「美しいなあ」という感動を長い音符に乗せて表現すると、曲全体の締まりが出ます。歌い切ることが条件です。

ジェスチャーを取り入れる場合は、「秋の夕日に照る山もみじ」で両手を広げて山を描くように大きく動かす、「濃いも薄いも」で手の高さを変えて色の濃淡を表す、「波にゆられて」のフレーズで体を左右にゆったり揺らす、といった動きが子どもの情景理解を助けます。

参考:振り付き動画と年齢別指導ポイントが詳しく掲載されています

もみじ|近藤夏子による振り付き動画|ほいくnote

もみじの歌と秋の製作・散歩を連動させる保育アイデア

「もみじ」の歌をただ「歌う時間」にとどめてしまうのは、実はとてももったいないことです。この歌は秋の自然観察や製作活動と組み合わせることで、聴く・見る・触れる・表現するという複数の感覚を同時に刺激する総合的な保育活動に発展させられます。

まず、散歩との連動です。「もみじ」を歌う前に、近隣の公園や園庭で実際に落ち葉を拾う「落ち葉探し」を行いましょう。赤い葉、黄色い葉、緑が残る葉など、色の違いを実際に手で確かめてから歌うと、「濃いも薄いも数ある中に」という歌詞が子どもの体験に直接リンクします。拾った落ち葉を手に持って歌うだけで、子どもたちの歌への集中度がぐっと変わります。

次に、製作との連動アイデアです。

  • 🖼️ 落ち葉の貼り絵・スタンプ:拾ってきた落ち葉を和紙や画用紙に並べて貼る「落ち葉の貼り絵」は、色彩感覚と観察力を育てます。また、絵の具を落ち葉に塗って紙に押しつける「葉っぱスタンプ」は0〜2歳児でも楽しめます。完成した作品を壁面に飾り、「もみじ」を歌う際のバックドロップとして使うと、歌の世界観が視覚的に広がります。
  • 🎨 もみじ型の手形アート:手のひらに赤・橙・黄色の絵の具をつけて画用紙に押す「手形もみじ」は、1〜2歳児クラスでも取り組みやすい製作です。手の形がちょうどもみじの葉に似ていることから、「わたしの手がもみじになった!」という発見と喜びをもたらします。
  • 🍂 秋の押し花・ラミネートしおり:5歳児クラスでは、拾ってきた落ち葉を新聞紙に挟んで1週間ほど乾かし、押し花にする作業がおすすめです。できあがった押し花をラミネートして「秋のしおり」にすると、長期間保存できる作品になります。歌の「波にゆられて散り浮くもみじ」を想像しながら葉を選ぶ時間は、情緒豊かな体験になります。

歌と製作を組み合わせるときの順番も重要です。「歌 → 散歩(自然観察) → 製作 → 完成作品を前に再び歌う」という流れにすると、子どもたちは活動全体を通して「もみじ」の歌の世界を体全体で味わえます。これが活動を深める構造です。

また、「こぎつね」という別の秋の童謡と「もみじ」を組み合わせて歌うと、歌詞の中に共通して登場する「もみじ」のイメージを多角的に感じ取れます。「こぎつね」の歌詞には「もみじのかんざし」「かれはのきもの」という言葉が出てきますので、2曲を並べて歌うことで秋の情景がより立体的に広がります。

参考:11月の保育で使える歌と製作連動アイデアが豊富に掲載されています

11月に保育園で歌いたい季節のうた|ほいくのイロハ

保育士だけが知るべきもみじの歌の合唱構造と独自活用術

「もみじ」は、保育の現場ではあまり意識されていませんが、唱歌の中では非常に珍しい「複合的な合唱技法」を1曲に詰め込んだ特別な構造を持っています。この構造を保育士が理解しておくと、5歳児クラスでの音楽活動をぐっとレベルアップさせられます。

「もみじ」の二部合唱は3つのパートで成り立っています。前半の2行(8小節)は「カノン輪唱)形式」で、低音部が高音部の1小節遅れで追いかけていく構造です。3行目の4小節は「3度ハーモニー」で、低音部が高音部の3度下を同時に歌います。最後の1行(4小節)は「副旋律」という、高音部とは全く異なるオリジナルのメロディーラインを低音部が歌う、最も難易度の高い形式です。つまり1曲の中に輪唱・ハーモニー・副旋律という3種類の合唱技法がすべて入っている、学習価値の非常に高い楽曲なのです。

これを保育の5歳児クラスに取り入れるには、段階を踏むのが原則です。最初はクラス全員で主旋律のみを斉唱する期間を十分に取ります。次に「先生の声と子どもの声追いかけっこさせよう」と声かけしながら、輪唱だけを体験させます。前半部分が1小節遅れで重なり始めた瞬間の「あれ、なんか違う声が聞こえる!」という子どもの反応が、音楽的感受性が育っているサインです。意外ですね。

保育士がピアノ伴奏をする際、特に気をつけたい箇所が2点あります。まず4分休符の扱いです。「もみじ」に登場する休符はすべて4分休符(1拍分)だけですが、歌詞の途中にある休符は「次につながる息継ぎ」であり、文節の終わりにある休符は「フレーズの終止」です。この2種類を同じように弾いてしまうと、音楽の流れが途切れた印象になります。

もう1点は、9小節目から始まる中間部の盛り上がりです。「松をいろどるかえでやつた」から曲は一段とダイナミックになりますが、「山のふもと」で再び同じ音型が繰り返されます。ここは「もう一度!」と気持ちを乗せ直す演奏が、曲の高揚感を保つポイントです。

また、「もみじ」はあまり知られていませんが、二善晃(みよし あきら)という著名な作曲家が「2台ピアノのための組曲『唱歌の四季』」の第3曲目として編曲した作品も存在しています。クラシック音楽の名手がこの唱歌に注目したという事実は、「もみじ」が単なる子ども向けの歌にとどまらない普遍的な音楽的価値を持つことを示しています。

  • 🎹 楽器あそびとの連動:手作りのどんぐりマラカスや紙コップの鈴など、秋の素材で作った楽器を持たせて「もみじ」に合わせて音を鳴らすと、楽器への関心と曲の理解が同時に育ちます。
  • 🌊 「波の動き」身体表現:2番の「波にゆられてはなれて寄って」の歌詞に合わせ、子どもが2人1組でゆったりと体を左右に揺らし合う動きを取り入れると、協調性と音楽の柔らかいリズム感が体に染みこみます。
  • 📸 「もみじ図鑑」づくり:散歩で拾った様々な葉を、「もみじ」の歌詞にある植物名(かえで・つた・松)と対応させて貼るオリジナル図鑑を作ると、理科的な関心と言語理解が同時に深まります。

参考:「もみじ」の二部合唱の構造について詳しく知りたい場合はこちら

もみじ(曲)- Wikipedia

モミジの苗 いろは紅葉 3-3.5号ポット苗