でいごの花の歌が伝える沖縄戦と平和の意味

でいごの花の歌が伝える沖縄と平和の深いつながり

「島唄」はラブソングだと思って歌うと、子どもへの平和教育の機会を丸ごと失います。

この記事でわかること
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でいごの花が歌われる理由

「島唄」の歌詞に登場するでいごの花は、1945年春の沖縄戦開始と重なる沖縄の県花。歌詞の一行一行に戦争の悲劇が込められています。

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保育士が知っておきたい歌の背景

でいごの花と沖縄音楽の特徴を理解することで、子どもたちへの平和学習・文化教育がより豊かになります。

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保育現場での活用ポイント

6月の慰霊の日に向けた平和月間の活動に、でいごの花の歌をどう取り入れるか、具体的な活用例をご紹介します。

でいごの花とは何か——沖縄の県花を保育士が知るべき理由

でいご(梯梧)は、沖縄県の県花です。マメ科の落葉高木で、毎年4月から5月にかけて真っ赤な花を枝いっぱいに咲かせます。沖縄では公園や街路樹として広く栽培されており、高さは10メートルを超えることもあります。成長が早く、枝を大きく横に広げるため木陰をつくる力が強いのが特徴です。

沖縄でデイゴが県花に選ばれた理由は二つあります。深紅の花が南国・沖縄を象徴するにふさわしいこと、そして幹材が漆器の原料として経済的価値を持つことです。これが基本です。

ただし、でいごには一つ、注目すべき言い伝えがあります。「でいごの花が見事に咲く年は、台風の当たり年になる」という沖縄に古くから伝わる伝承です。実際、沖縄県内では花の咲き具合でその夏の台風シーズンを占う文化が根強く残っています。でいごは毎年同じように咲くわけではなく、年によって花の量が大きく変わります。そのため「今年はよく咲いているから注意が必要だ」と感じる沖縄の人も少なくありません。

項目 内容
🌺 分類 マメ科 落葉高木
📅 開花時期 4〜5月(初夏)
🎨 花の色 深紅(真っ赤)
📍 沖縄での位置づけ 沖縄県の県花・三大名花の一つ
🌀 言い伝え よく咲く年は台風の当たり年

保育士として子どもたちに沖縄の文化を伝えるとき、でいごという花の存在を知っておくことで、絵本や歌を通じた話の幅が広がります。これは使えそうですね。特に6月の慰霊の日前後には、でいごに関連した絵本や読み聞かせを通して平和について話す機会が生まれます。

沖縄の公立・私立を問わず多くの保育園では、6月を「平和月間」と位置づけ、絵本の読み聞かせやうた、製作活動を通して子どもたちと平和について考える取り組みが行われています。でいごの花の存在はそういった活動の入り口として機能しやすいのです。

でいごの花が登場する歌「島唄」——歌詞の本当の意味を保育士が理解する

「でいごの花が咲き 風を呼び 嵐が来た」——この歌い出しを持つ「島唄」は、1992年にTHE BOOMの宮沢和史によって生み出されました。1993年に全国発売されると150万枚以上を売り上げ、同年の紅白歌合戦にも出場した大ヒット曲です。

多くの人がこの曲を「沖縄らしいリズムの恋愛ソング」として聴いていますが、それは誤りです。歌詞の一行、一語の全てに、沖縄戦の悲劇への深い思いが込められています。宮沢和史自身も「歌詞の全てに裏の意味があった」と語っています。

歌詞に登場する言葉の意味を整理すると、次のようになります。

  • 🌺 「でいごの花が咲き」……1945年4月、米軍が沖縄本島に上陸した春。でいごが咲く季節と戦争の開始が重なっている。
  • 🌪️ 「風を呼び嵐が来た」……「嵐」は米軍の侵攻そのものを表している。
  • 🌾 「ウージの森」「ウージの下」……ウージとはサトウキビ畑のこと。その下にある洞窟(ガマ)では多くの民間人が命を落とした。
  • 💔 「千代にさよなら」……ガマの中での集団自決による永遠の別れを意味している。
  • 🕊️ 「島唄よ風に乗り鳥とともに海を渡れ」……死者の魂を東の神界「ニライカナイ」へ送る鎮魂の祈り。

つまり「島唄」は鎮魂歌です。表向きには男女の別れを歌ったラブソングに聞こえますが、実際は沖縄戦で命を落とした人々への祈りが込められた曲です。宮沢和史は「戦争のことをそのまま歌っても聴いてくれないだろう」と考え、あえてラブソングの形式をとったといいます。

作成のきっかけは1991年の冬でした。山梨県出身の宮沢が「ひめゆり平和祈念資料館」を初めて訪れ、ひめゆり学徒隊の生き残りのおばあさんと出会ったことが起点です。極限状態の戦場で起きた事実を聞くうち、「何も知らずに生きてきた自分への怒り」を覚えたと本人は語っています。

保育士として「でいごの花の歌」を子どもたちに紹介するとき、この背景を知っているかどうかで話の深さが変わります。単に「沖縄の曲」として流すのと、「でいごの花が咲く頃に何があったか」を添えて伝えるのとでは、子どもたちの受け取り方が全く異なってきます。

参考:「島唄」の歌詞が持つ本当の意味と解説(調布の医療法人サイト内コラム)

あなたは「島唄」の歌詞の本当の意味を知っていますか?

でいごの花の歌に使われる琉球音階——保育士が知っておくと活動が広がる音楽の仕組み

「島唄」を聴くと「沖縄っぽい雰囲気」を感じますが、その理由の一つが音階にあります。沖縄の民謡には「琉球音階(りゅうきゅうおんかい)」と呼ばれる独特の音の並びが使われています。

通常のドレミファソラシドから「レ」と「ラ」を抜いた「ド・ミ・ファ・ソ・シ」の5音で構成されます。これがいわゆる「レラ抜き音階」です。この音階で演奏すると、南国特有の明るく開放的な響きが生まれます。

ただし「島唄」は少し特殊です。全体的には琉球音階を基調にしていますが、「ウージの森であなたと出会い、ウージの下で千代にさよなら」という集団自決を表すパートだけ、あえて本土の西洋音階に切り替えられています。宮沢は「彼らに命を捨てさせたのは本土の軍国主義教育だった」という思いから、この部分のみ本土の音階に戻したといわれています。音楽的な仕掛けにまで意味が込められているのです。意外ですね。

  • 🎵 琉球音階とは……「ド・ミ・ファ・ソ・シ」の5音からなる音階。レとラを含まないのが特徴。
  • 🎶 琉球音階が使われている代表的な曲……「てぃんさぐぬ花」「安里屋ユンタ」「芭蕉布」「涙そうそう」「島人ぬ宝」など
  • 🎸 「島唄」の音階の特徴……基本は琉球音階、集団自決の場面だけ西洋音階に変わるという構成

保育現場でこの知識をどう活かすかというと、例えば子ども向けの音楽活動で「沖縄っぽい音」を鍵盤ハーモニカ木琴で体験させる場面に使えます。「レとラを弾かないで弾いてみよう」と提案するだけで、子どもたちが「あ、沖縄みたい!」と気づく体験ができます。琉球音階は実践しやすい教材です。

また、沖縄のわらべうたや民謡を保育活動に取り入れるとき、「この曲にはレとラがないよ」と一言添えるだけで、子どもたちの耳が音楽に向きやすくなります。保育士が音楽の仕組みを少し知っているだけで、活動の質が変わるのです。

参考:沖縄の琉球音階についての解説(沖縄県公式)

沖縄の音楽|沖縄県公式ホームページ

でいごの花の歌を保育活動に活かす——6月の平和学習・文化教育への取り入れ方

保育士として「でいごの花の歌」を活動に取り入れるとき、最も自然なタイミングは6月です。6月23日は「慰霊の日」として沖縄では重要な日です。沖縄の多くの保育園や幼稚園がこの時期を「平和月間」と位置づけ、絵本の読み聞かせやうた、製作活動を通して子どもたちと命・平和について考えています。

沖縄以外の地域で働く保育士にとっても、6月はこのテーマを取り入れるよい機会です。「遠くの話」として終わらせず、でいごの花という植物をきっかけに「戦争があった頃、沖縄のお花が咲いていたんだよ」と語りかけることが、子どもたちの想像力を育てます。これが大切です。

具体的な活動の例を以下に示します。

  • 🌺 でいごの花の絵を描く……沖縄の赤い花として写真を見せ、クレヨンや絵の具で表現する活動。色彩感覚と文化への興味を同時に育てられます。
  • 🎵 「てぃんさぐぬ花」を歌う……でいごの花ではなくホウセンカを題材にした沖縄のわらべうたで、保育向けに音域が扱いやすく、琉球音階の入門曲として取り入れやすいです。
  • 📖 平和をテーマにした絵本の読み聞かせ……でいごが描かれた絵本や沖縄の自然・歴史を描いた作品を読み聞かせることで、年齢に合った形で平和を伝えられます。
  • 🎨 「島唄」のメロディーを流す……BGMとして流すだけでも沖縄の雰囲気が保育室に生まれます。年長クラスでは歌詞の意味を少し紹介することも可能です。

子どもに戦争の話をするとき、「怖い」「つらい」だけで終わらせないことが重要です。でいごの花のように「美しいものがあった」「その花が今でも咲いている」という視点を添えることで、命や平和の尊さが子どもたちの中に自然と根付いていきます。

また、活動前に保育士自身が「島唄」の歌詞の意味をしっかり理解しておくことが前提です。意味を知らずに流すのと、背景を知った上で伝えるのでは、子どもへの影響が全く変わります。準備が大事です。

参考:沖縄の保育園における6月の平和月間の取り組み(琉球新報)

園児の発想、詞に「平和のうた」で「命どぅ宝」継承 あじゃ保育園

でいごの花の歌と沖縄文化——保育士の独自視点「見えない部分を子どもに見せる」アプローチ

ここからは少し別の角度から考えます。「でいごの花の歌」を保育活動で扱う上で、多くの解説記事では「歌詞の意味」や「歴史背景」が中心に取り上げられます。しかし実際の保育現場では、「どうやって子どもに見せるか」という方法論が欠けていることが多いのです。

「見えないものを見える化する」という視点が、でいごの花の歌には特に重要です。歌詞に出てくる「でいごの花」「ウージ(サトウキビ)」「ガマ(洞窟)」「ニライカナイ」——これらは沖縄の子どもには身近な言葉ですが、内地(本州)育ちの子どもたちにとっては全て未知のものです。言葉だけ聞かせても想像がつきません。

そこで有効なのが「実物・写真・体験」を組み合わせるアプローチです。結論はこれです。

  • 📸 でいごの写真を見せる……「この真っ赤な花、見たことある?」と問いかけることで、子どもたちの関心が一気に高まります。沖縄の街路樹や公園にある写真を大きく印刷して見せると効果的です。
  • 🌿 サトウキビ(ウージ)を触ってみる……スーパーや農産物直売所などで手に入ることがあるサトウキビを保育室に持ち込み、「これがウージというんだよ」と触らせると記憶に残りやすくなります。
  • 🗺️ 沖縄の地図を見せる……「でいごの花はここで咲いているんだよ」と日本地図上の沖縄の位置を指し示すことで、地理感覚も育ちます。
  • 🎋 三線の音を聴かせる……YouTubeなどで三線の演奏動画を見せることで、「普段聴く音楽と違う」という気づきが生まれます。子どもたちが「なんか不思議な感じ!」と言い出せば大成功です。

保育士が「歌の意味を正確に伝えること」に気を取られすぎると、逆に堅苦しい時間になってしまいます。厳しいところですね。大切なのは「子どもの中に一つの小さな疑問を植えつけること」です。「でいごってなに?」「ウージってなに?」——その問いかけが生まれた瞬間、保育士の役割は果たされています。

また、でいごの花言葉は「愛」「生命力」「活力」です。戦争の悲しみと命の力強さという、一見相反するイメージが一つの花に宿っているのです。その事実自体が、子どもたちにとって感じる力を育てる素材になります。

「歌の意味を説明する」のではなく「歌の世界に子どもたちを連れて行く」ことが、保育士の歌活動の本来の役割です。でいごの花の歌は、その力を十分に持っている素材です。

参考:沖縄の文化・音楽に関する文化デジタルライブラリーの解説

琉球音階(りゅうきゅうおんかい)|文化デジタルライブラリー