つるの恩返し歌を保育で活かす方法と発表会のねらい
「つるの恩返しの歌は、4歳から歌わせると子どもの約束を守る力が育たなくなる」と言われています。
つるの恩返し歌の歌詞と曲の特徴を理解しよう
童謡「つるのおん返し」は、作詞・平井多美子、作曲・橋本祥路によって作られた楽曲です。冒頭の歌い出しは「むかし まずしい村の人 つるを助けてあげました」という静かな一節から始まり、やがて鶴が娘の姿に変わり、機織りをして恩を返す場面へと展開していきます。
「トントンカラリ、トンカラリ」という擬音語は、機織り機の音を表現したフレーズです。このリズミカルな言葉は子どもの耳に心地よく響き、自然とまねしたくなる魅力があります。つまり、擬音語が歌の入口になるということですね。
歌詞は物語の流れに沿って構成されており、鶴がなぜ帰ってしまうのか、その背景まで短い詩の中に凝縮されています。日本の民話が持つ切なさと温かさが同居しているのが、この曲の大きな特徴と言えます。
保育の現場で使うにあたって重要なのは、歌詞の意味を子どもに分かりやすく伝えることです。「機織り」という行為は現代の子どもにはなじみがうすいため、保育士が絵や動作を使いながら説明することで、歌詞のイメージが格段に広がります。「機織りはね、糸で布を作る仕事なんだよ」と手でゆっくり横に動かしながら伝えると、子どもたちの目がきらりと輝きます。
また、この楽曲にはいくつかのアレンジバージョンが存在します。YouTubeで「つるを助けてあげました」と検索すると、2025年11月に公開された結花乃(ゆかの)によるアニメーション版など、現代的な映像付きのバージョンが見つかります。保育の導入時に映像を見せることで、物語への興味を自然に引き出せます。これは使えそうです。
童謡「つるのおん返し」の詳細情報と関連楽曲紹介(RAG MUSIC)
つるの恩返し歌の対象年齢とねらいを整理する
「つるの恩返し」の歌や劇遊びの対象年齢は、一般的に4〜5歳児(年中・年長)とされています。4歳になると、繰り返し表現がなくても物語を1つの道筋で理解できるようになるからです。同時に友達との関わりも増え、役になりきって演じる楽しさを味わえる時期でもあります。
保育のねらいとして設定しやすいポイントは、大きく3つに整理できます。
- 🐦 物語に親しみを持ち、歌を通じて日本の民話の世界に浸る:「つるの恩返し」は日本各地に古くから伝わる民話であり、歌で親しむことが日本語の豊かな表現に触れるきっかけになります。
- 🤝 「約束を守ることの大切さ」を感じ取る:のぞいてはいけないという約束を破ったことで鶴が帰ってしまう。このストーリーの核心は、4〜5歳の子どもが「約束」「信頼」という概念を感性で受け取るのにちょうどよい素材です。
- 🎤 友達と一緒に歌い、表現する喜びを味わう:合唱形式で歌うことで、声を合わせる協調性や、自分が大きな表現の一部であるという充実感が育まれます。
3歳児には少し物語の深みが難しい場合がある一方、5歳児(年長)には物語の意味をより深く掘り下げた指導も可能です。年長クラスであれば、「なぜ鶴は帰ってしまったのか」を子ども同士で話し合う活動に発展させることもできます。約束が条件です。
一方で、無理に全員に同じセリフを言わせる必要はありません。歌が得意な子は歌声で、動きが得意な子は表現で貢献できるように、役割に幅を持たせることが大切です。
鶴の恩返しの対象年齢・ねらい・台本まで詳しく解説(ちょきぺたファクトリー)
つるの恩返し歌を使った生活発表会の演出アイデア
生活発表会で「つるの恩返し」の歌を取り入れる場合、大きく分けて「純粋な合唱」として披露する方法と、「劇(オペレッタ)」の中に歌を組み込む方法の2パターンがあります。
合唱として披露する場合は、子どもたちが白や薄いグレーの衣装を纏うと、鶴の清楚なイメージと重なり、視覚的にも美しい演出になります。「トントンカラリ」のパートでは手を横に動かす振り付けを加えると、機織りのシーンが目に浮かびやすくなります。保護者にも好評なポイントです。
劇やオペレッタとして展開する場合は、ナレーター役・おじいさん役・おばあさん役・つる(娘)役・村人役といった役割に分かれます。「つるのおん返し」の歌をBGMや挿入歌として使い、場面の転換点に流すと、物語のテンポが生まれます。歌とセリフの組み合わせがポイントです。
🎭 演出の工夫ポイント
| 場面 | 演出アイデア |
|---|---|
| 鶴が罠にかかる場面 | 雪を模した白い布やペーパーを降らせる |
| 機織りの場面 | 「トントンカラリ」に合わせて手の動きを揃える |
| 鶴が飛び立つ場面 | 白い布を羽に見立て、子どもたちが両腕を広げてはばたく |
| フィナーレ | 歌の最後のフレーズに合わせてゆっくり幕を降ろす |
なお、劇の展開に合わせた楽譜・CDセットは教材として市販されており、城野賢一・城野清子によるドレミ楽譜出版社の教材が保育現場で広く使われています。場面ごとにBGMが分かれているため、初めて劇を作る保育士でも扱いやすいのが利点です。
4歳児(年中)におすすめの劇の題材10選とねらいまとめ(保育LOVE)
つるの恩返し歌が持つ民話としての深みと意外な起源
保育士として「つるの恩返し」の歌を子どもに伝える際、この民話の背景を少し知っておくだけで、歌に対する向き合い方が大きく変わります。意外ですね。
まず、現在私たちが絵本や歌で知っている「つるの恩返し」の物語の原型は、1949年に戯曲作家・木下順二が発表した「夕鶴」という作品に基づいています。「夕鶴」はおじいさん・おばあさんではなく、若者「よひょう」と鶴「つう」の純粋な愛情と、人間の欲を描いた大人向けの物語でした。それが後に子ども向けに改変され、おじいさん・おばあさんが登場する「恩返し」の構図へと変化していったのです。
さらに驚くべきことに、「鶴の恩返し」には発祥の地とされる場所が存在します。山形県南陽市漆山地区には江戸時代の古文書にこの民話が記録されており、現在でも「鶴巻田」「羽付」「織機川(おりはたがわ)」など、鶴の恩返しに由来した地名が現地に残っています。つまり、この民話は山形県で生まれたということですね。現地には「夕鶴の里」という資料館もあり、語り部が地元の方言で民話を語り継いでいます。
📍 鶴の恩返し ゆかりの地 概要
| 場所 | 内容 |
|---|---|
| 山形県南陽市漆山 | 民話「鶴の恩返し」発祥の地(江戸時代の古文書に記録) |
| 鶴布山珍蔵寺(かくふざんちんぞうじ) | 民話を開山縁起として伝承するお寺 |
| 夕鶴の里(資料館) | 語り部による民話の語り継ぎを行う生涯学習施設 |
| 織機川(おりはたがわ) | 「機織り」の民話にちなんだ地名が川名として残る |
こうした背景を知ったうえで歌の歌詞を見直すと、「雪がふりつづいたある日」という情景描写の重さが増し、保育士自身が深い実感を持って子どもたちに届けられるようになります。これは大きなメリットです。
山形県南陽市と「鶴の恩返し」民話の伝承について(政府広報オンライン)
つるの恩返し歌を保育士が子どもに届けるための独自アプローチ
ここでは、検索上位の記事にはない保育士ならではの視点から、「つるの恩返し」の歌を子どもたちの心に響かせるための独自のアプローチを紹介します。
「約束を守れなかった」側の気持ちを語ることの価値
多くの保育現場では「約束は守りましょう」という教訓を伝えることに重点が置かれますが、実は「約束を守れなかったおじいさん(よひょう)の気持ちも理解する」視点を加えると、子どもたちの共感力が大きく育ちます。理由はシンプルで、子ども自身も毎日のように「やってはいけないと分かっていてもやってしまった」経験を積んでいるからです。「おじいさんはどんな気持ちだったと思う?」と歌を歌い終わった後に問いかけるだけで、子どもたちから「こわかった」「心配だったんじゃないかな」「悪いと思ってたけど止められなかった」など、豊かな言葉が出てきます。
これは道徳的な正解を教えることではなく、人間の複雑な内面を感じ取る力を育てることです。結論は「共感力を育てる」です。
日常保育の中に歌を溶け込ませる方法
発表会の練習だけに歌を使うのは、実はもったいない活用法です。「トントンカラリ、トンカラリ」のリズムは、朝の会の始まりや帰りの会の終わりに挟むだけで、子どもたちが自然と歌い始めるルーティンになります。1週間ほど続けると、子どもたちがクラスの仲間と一緒に「トントンカラリ」とリズムを取り始め、物語の歌詞も自然と覚えていきます。朝の導入に使う場合は、最初の1フレーズだけを保育士が歌い出し、子どもたちに「続き、知ってる人は一緒に!」と呼びかけると、達成感と参加意欲が同時に生まれます。
日常保育に溶け込ませることが条件です。
歌の前後に「鶴」という生き物を紹介する
「鶴の恩返し」の歌を歌う前後に、タンチョウ(丹頂鶴)の写真や映像を見せてあげることで、歌の世界がぐっとリアルになります。タンチョウは翼を広げると約2.4メートルにもなる日本最大級の野鳥で、北海道を代表する鳥です。ちょうど名刺を横に並べると約2枚分の長さが1メートルになるので、「この鳥の羽の端から端まで、名刺が24枚分の長さなんだよ」と伝えると、子どもたちの目が丸くなります。実物を想像させることで、鶴が羽を抜いて布を織るという場面の切なさが、子どもにもぐっとリアルに迫ってきます。
これはぜひ試してほしいアプローチです。
保育士向けの指導案ヒント
日々の保育指導案に「つるの恩返し」の歌を組み込む際は、以下の流れが実践的です。絵本の読み聞かせ(10分)→歌詞の意味の確認(5分)→歌の練習(10〜15分)→感想を言葉にする(5〜10分)という構成で進めると、語彙力・音感・感情表現の3つを一度に養うことができます。


